2.2 経常研究
7.水土壌圏環境部
研究課題 1)環境汚濁物質の水土壌環境中における挙動に関する基礎的研究
〔担当者〕内山裕夫・冨岡典子・徐 開欽・越川 海
〔期 間〕平成9〜13年度(1997〜2001年度)
〔目 的〕水土壌環境中において環境汚染物質の挙動および生態影響を明らかにするために,これらの生成および分解にかかわる生物を検索し,また汚染物質の代謝・変換量等を計測・予測することを目的とする。本年度は,水質浄化能を有した代替自然帯,かつ,浚渫ヘドロの有効利用等を兼ね備えた「浚渫ヘドロを用いた人工ヨシ原」の創出に先立ち,実水域で浚渫ヘドロ上にヨシ種子苗を植栽して,ヨシ原創出の可能性を水質浄化能力から検討した。
〔内 容〕浚渫ヘドロ上に砂または網状担体系を置いた植栽場にヨシを植栽し,下水処理水を用いて浄化特性を検討した。砂を植栽場に用いた系の窒素・リン除去能力は,夏場では自然ヨシ原や他の人工ヨシ原と同程度であった。また,網状担体の系では窒素除去能力が大きく,夏場では自然ヨシ原や他の人工ヨシ原の浄化能力以上であった。さらに,ヨシ原創出時に植栽場構造を工夫することにより,栄養塩類除去能力を高められる可能性が示唆された。
〔発 表〕g-5,7,11
研究課題 2)流域水環境管理モデルに関する研究
〔担当者〕村上正吾・牧 秀明・林 誠二・中山忠暢・亀山 哲
〔期 間〕平成8〜15年度(1996〜2003年度)
〔目 的〕河川流域の持続的発展のためには治水・利水に加えて生態系を含む水環境の管理・保全が必須条件となるが,これらはトレードオフの関係にあり,その最適解を求めることは容易ではない。本研究では,流域全体,上流から下流への水と物質の輸送過程の物理・化学的モデル化を進め,治水・利水・水環境の質と量にかかわる個々の物理化学的機構の解明を行っている。次に,これらの個々の機構が全系として影響を与える水界生態系,陸上生態系を含む形で,流域の水環境の理解を進め,水・物質・エネルギーの効率的な配分と生態系機能の適切な管理を可能にする流域環境手法の開発を目的としている。
〔内 容〕日本の場合,河道沖積地に人間の生産社会活動が集中し,特に低平地における水と物質の輸送現象の理解が重要である。本年度は流域開発の進行とともに釧路湿原への土砂供給量が増加し,湿原の陸地化に大きな影響を有する久著呂川流域を対象に,凍結融解の影響を考慮した融雪出水時の土砂生産モデルを開発し,年間を通しての土砂供給についての検討を行った。
研究課題 3)土壌中における無機汚染物質の挙動に関する研究
〔担当者〕高松武次郎・越川昌美
〔期 間〕平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕湖沼堆積物は流域から流入する天然及び汚染物質の量的・質的変動を記録しているので,その分析から流域の環境変化を知ることができる。また,堆積物中の物質分布を堆積環境(酸化還元,pH,鉄・マンガン酸化物量,有機物量など)との関連で解析することにより,環境での物質動態に関する基礎的知見を得ることができる。この観点から,バイカル湖表層堆積物の分析を行った。
〔内 容〕堆積物の元素組成と水深との関係を検討した。流入形態は元素によって異なるため,濃度が浅い沿岸部で高い元素と深い沖で高い元素がある。ハフニウムは前者の,マンガンやヒ素は後者の代表である。したがって,堆積物の元素組成は通常水深とともに変化する。バイカル湖は複数の湖盆を持つので,その関係は複雑であるが,水深は10元素の濃度の関数で表せた: 水深(m)≒500+0.0014[Al]+0.099[Ca]+150[Co]+16[Cu]+0.032[Fe]−0.27[Mg]−0.15[Mn]−41[Ni]−0.021[S]−2.0[Sr](濃度はppm,r=0.991)。この関係は古水深の再現などに利用できる。
研究課題 4)土壌中における微生物の挙動に関する研究
〔担当者〕向井 哲
〔期 間〕平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕土壌の特定孔隙(細毛管孔隙,粗毛管孔隙)に入るような方法で接種したBHC分解菌が増殖・生残・死滅する過程と土壌孔隙サイズの関係,およびその過程に及ぼす有機資材の添加の影響を明らかにする。
〔内 容〕BHC分解菌(4.5×104MPN/g乾土)を,向井の方法に準じて,山口水田土壌試料の細毛管孔隙,粗毛管孔隙に接種し,次いで有機質資材(稲わら,堆肥,厩肥)を添加・混和した後,25℃の暗所で20週間培養して経週的に本菌の生残性を調べた。その結果,@いずれの処理区土壌においても,本菌の生残性は細毛管孔隙に接種した方が粗毛管孔隙に接種した場合よりも高い傾向があった。A本菌の生残性を土壌の処理区間で比較すると,いずれのサイズの毛管孔隙に接種した場合にも,生残性は稲わら区>堆肥区>厩肥区>有機質資材無添加区の順に低下した。
研究課題 5)土壌生態系における土壌微生物群集構造の解析
〔担当者〕村田智吉
〔期 間〕平成12〜16年度(2000〜2004年度)
〔目 的〕土壌生成過程の相違が土壌に生息する微生物の群集構造に与える影響を明らかにするとともに,これら微生物群集構造の相違が重金属等の汚染物質に対してどのような挙動変化を示すものかをあわせて検証していく。
〔内 容〕土壌型の異なる試料の採取を行い,淡色黒ボク土(つくば市小野川),砂丘未熟土(鹿島市小山),褐色森林土(那珂郡山方町),褐色低地土(水海道市羽生町)の4点をえた。土壌試料中の生菌数の測定方法を検討し,R2A,1/10TSBA,1/10NB,1/100NB培地を用いることとした。今後は各種培養処理間(例:重金属添加など)による生菌数,微生物バイオマス量の変動および16S-rDNAを用いた微生物群集構造解析を行うこととする。
研究課題 6)地盤と地下水の環境に関する物理・化学的研究
〔担当者〕陶野郁雄・土井妙子
〔期 間〕平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕地盤と地下水に関する環境問題について,物理的・化学的な手法を用いてその実態を把握し,それを解明することを目的として研究を行うものである。
〔内 容〕(1)前年度佐賀県白石町に新たに開発した観測装置を用いた観測井を設置し,本年度から経常的な観測を開始した。また,同様な方法で新潟県六日町に設置した観測井において経常的な観測を続けている。ロボットが歩行するために開発された材料などを用いて摩擦力を低減させた装置を作製した。現在,検証のための観測を行っている。(2)前年度に引き続き,非破壊ガンマ線計測による鉛-210年代測定法の堆積学的応用の問題点の検討を行った。東京湾の堆積物中のセシウム-137の濃度分布を測定し,採取されたコアの表層より約20pの位置にセシウム-137濃度のピークがみられ,この層が1960年代前半と推定された。
〔発 表〕G-18,g-26
研究課題 7)水環境中における界面活性剤の挙動の解明とその共存汚染化学物質の挙動や毒性に及ぼす影響の研究
〔担当者〕稲葉一穂・矢木修身*1
(*1地域環境研究グル−プ)
〔期 間〕平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕合成洗剤による水環境汚染は,排出量が大量であること,分解により環境ホルモン物質が生成する場合があること,さらには水に不溶の物質を可溶化してその挙動を変化させることなど様々な問題を含んでいる。このような諸問題点を検討するために,合成洗剤の主成分である界面活性剤の挙動を支配する吸着性や移動性,微生物分解性などを測定するとともに,水中及び底泥中の界面活性剤が共存化学物質の挙動にどのような影響を与えるかを検討する。
〔内 容〕前年度に引き続いて,殺菌洗剤の殺菌成分として使用されているトリクロサンの水への溶解度の測定を行った。トリクロサンは水道水中の残留塩素により塩素付加を受けるが,この反応により生じた3種類の化合物はいずれも界面活性剤ミセルの共存により溶解度が上昇することが確認された。
研究課題 8)地盤沈下地域の地盤調査(特別経常研究)
〔担当者〕陶野郁雄
〔期 間〕平成5〜12年度(1993〜2000年度)
〔目 的〕地下水を揚水すると,おおかれすくなかれ地盤は収縮する。ある地域内で,複数の井戸で地下水を揚水すると,地盤沈下を生じたところがある程度の面積に達し,地盤沈下地域が形成される。このような地盤沈下地域の実態を把握するためには地下水を揚水している帯水層(砂礫層)のすぐ下に存在する難透水層(粘性土層)までの地盤・地下水の情報を得る必要がある。しかも,地盤沈下の将来予測や対策をはかるためには,1回限りの調査ではなく,長期間継続して情報を得る必要がある。そこで,地盤沈下地域の地盤・地下水情報を得ることを目的として調査研究を行うものである。
〔内 容〕ボーリング調査を行って,地盤沈下地域の地盤構成および地下水の実態を把握する。なお,ボーリング調査は隔年に行っている。前年度は行わなかったので,本年度は新潟県上越市新町公園内において深度110mまでボーリング調査を行った。その結果,深度4.3mまでが埋土層,49.9mまでが粘土と砂の互層からなる沖積層,64.0mまでが沖積層の基底礫層(G1層),102.2mまでが上部更新統,それ以深が礫層(G2層)と思われる。
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