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研究成果物



2.2 経常研究


5.環境健康部


研究課題 1)環境有害因子の健康影響評価に関する研究
〔担当者〕遠山千春・小林隆弘
〔期 間〕平成10〜15年度(1998〜2003年度)
〔目 的〕環境有害因子の毒性の有無,毒性発現機構の解明,毒性評価および健康影響モニタリング手法に関する研究を推進する一環として健康リスクアセスメントに関する文献調査を行い,健康リスクアセスメントの現状の把握と今後の研究の方向性を探ることを目的とする。
〔内 容〕ガス状および浮遊粒子状物質の生体影響,ダイオキシンのリスク評価に関する文献レビュー,臭素化ダイオキシンの健康リスク評価に関するWHO文書の翻訳監修業務を行った。ディーゼル排気粒子の生体影響に関する研究の文献レビューを行い中間とりまとめを行った。
〔発 表〕E-8,29〜33


研究課題 2)気道の抗原提示細胞に関する基礎研究
〔担当者〕小林隆弘
〔期 間〕平成11〜15年度(1999〜2003年度)
〔目 的〕ぜん息,花粉症などの原因に抗原に特異的な抗体の産生がある。抗体の産生には多くの素過程がある。抗原提示の過程は抗体産生の初期の段階として重要である。大気汚染物質を曝露したときに抗原提示にかかわる細胞が気道においてどのような挙動をし,抗体産生にかかわるかについて検討を行う。
〔内 容〕オゾンをラットに曝露したときの肺組織中の細胞における抗原提示機能がどのような影響を受けるかについて検討した。オゾン曝露した肺組織中の細胞と感作した動物からのTリンパ球を用いて抗原提示機能を測定した。肺組織中の細胞の抗原提示機能が顕著に増加することが明らかになった。生体が侵襲を受けたときそれに対応するため抗原提示細胞が素早く集まり提示機能を高め,異物を処理し抗体を産生するべくリンパ節に移行していく可能性が示唆された。
〔発 表〕e-29


研究課題 3)T細胞分化と抗原提示細胞との相互作用に関する基礎的研究
〔担当者〕藤巻秀和・野原恵子
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕T細胞は免疫応答系の制御において中心的役割を果たす細胞群である。抗原提示細胞との相互作用がその分化に関与していることが近年明らかにされつつあるが,環境化学物質がこの相互作用に及ぼす影響については不明な点が多い。本研究は,環境化学物質のT細胞ー抗原提示細胞間での相互作用への影響を明らかにすることを目的とする。
〔内 容〕ディーゼル排気暴露したマウスの肺胞洗浄液中に浸潤してきた細胞を集めて抗原提示細胞上の情報伝達の補助分子であるCD80とCD86の発現についてFACSで検討した。炎症性細胞としては,マクロファージ,好中球,リンパ球の集積がみられ,CD80とCD86陽性細胞の比率は,ディーゼル排気暴露によりともに増加しており補助分子の発現している活性化した細胞が増加していることが明らかとなった。
〔発 表〕E-36,37,e-48〜54


研究課題 4)環境因子の生体影響を評価するための遺伝子導入動物を用いたバイオアッセイ手法の開発
〔担当者〕青木康展・松本 理・佐藤雅彦・大迫誠一郎・石塚真由美・石村隆太
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕様々な環境化学物質による毒性発現機構を統一的に説明することは,環境保健研究における重要な課題である。ダイオキシン類や多環芳香族化合物などの化学物質が生体内に取り込まれると,シトクロムP450などの一酸素添加酵素の作用により活性酸素種が発生し,生体内に酸化ストレスを誘起する。この酸化ストレスと毒性作用の関係を明らかにすることにより,化学物質の毒性発現機構の解明を目指す。
〔内 容〕毒性発現に酸化ストレスが関与しているパラコートを投与したメタロチオネイン(MT)の遺伝子欠損マウスでは急性肺毒性が著しく増強され,MTがパラコートの肺毒性の軽減に重要であることが明らかになった。また,妊娠中期に極低容量のTCDDを投与したラットでは胎仔の死亡率が上昇し,胎盤ではCYP1A1が上昇した。この胎盤では酸化ストレスに応答する熱ショックタンパク質Hsp27の発現が上昇していることが明らかとなり,酸化ストレスが起きている可能性が示唆された。
〔発 表〕E-1,3,4,6,8,11,42,e〜6,9,18,31,41,55


研究課題 5)NMRによる生体の無侵襲診断手法の研究
〔担当者〕三森文行,山根一祐
〔期 間〕平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕InvivoNMRの手法を用いて,従来の諸方法ではアプローチできない,生きている生体内臓器の代謝機能等を無侵襲的に解析する方法の開発を行うことを目的とする。生体内の臓器の機能を評価するためのNMR分光法,イメージング法の開発を行い,それを応用して,各種化学物質や,物理的環境要因が臓器の代謝機能に及ぼす影響を明らかにすることを目指す。
〔内 容〕生体NMR分光計の機能向上のために制御用コンピュータ,ラジオ波発信,受信系の改修を行った。この結果,分光計の安定性の向上,測定条件の高速制御等が実現できた。この結果,プロトン核の分光測定,イメージ測定の高度化が実現でき,エコープレイナー法を用いた高速イメージングでは20ミリ秒での画像測定が可能となった。高速イメージング法における偽像軽減のために位相エンコード法の検討を行った。
〔発 表〕e-56


研究課題 6)マウスにおける行動毒性試験法の確立に関する研究
〔担当者〕梅津豊司
〔期 間〕平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕環境化学物質の生体影響の評価を行う上で中枢神経系への影響を評価することは重要であるが,そのための方法論については現在のところ未整備の状況にある。本課題では,環境化学物質の中枢神経系への影響を個体レベルで無侵襲的に評価するために,行動科学的手法の体系をマウスで確立することを目指す。
〔内 容〕植物の香り成分(精油)に抗不安作用があるかどうかをゲラー型及びフォーゲル型コンフリクト試験法により検討した。結果,バラの花から得られた精油とラベンダーの花から得られた精油に抗不安作用のあることが判明した。バラの花の精油の含有成分をGC/MSで同定し,各成分についてコンフリクト試験で検討したところ,フェネチルアルコールとシトロネロールが抗不安作用を有する有効成分であることが明らかとなった。
〔発 表〕E-6,15,e-7,10


研究課題 7)環境保健指標の開発に関する研究
〔担当者〕小野雅司・田村憲治・宮原裕一
〔期 間〕平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕環境汚染による非特異的あるいは遅発的な疾病の発生に関する監視が必要となり,今日新たな環境保健指標の開発が要請されている。本研究では,利用可能な既存情報,各種の健康調査及び健康診断データ等を統合し,疫学研究のための環境保健指標の開発,疫学研究デザインの開発・検討を行い,地域健康状況監視システム,環境汚染の健康影響評価法の開発を試みる。
〔内 容〕収集した国保レセプトデータ,人口動態死亡統計等について,データベースの整備をはかるとともに,解析を行った。特に,死亡統計に関して,近年欧米等で指摘されている微小粒子状物質等の急性影響を中心に検討した。その結果,SPM等の大気汚染物質濃度と循環器疾患,呼吸器疾患等による死亡数の日変動に明らかな相関が見られ,大気汚染物質濃度の上昇が死亡を増加させる可能性が示唆された。また,PM2.5曝露評価のための個人サンプラーの開発を行った。さらに,ダイオキシン汚染による健康影響に関して,全国のゴミ焼却施設等ダイオキシン発生源のデータベース化をはかるとともに,死亡統計に関してより詳細な情報収集を開始した。
〔発 表〕E-12,15,e-21


研究課題 8)ヒトのダイオキシン類曝露と子宮内膜症に関する疫学的研究
〔担当者〕宮原裕一
〔期 間〕平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕動物実験の結果から,ダイオキシン類がヒト近縁のサルに子宮内膜症を誘発することが明らかとなっている。また,近年ヒトでも子宮内膜症の増加が示唆されてきている。本研究では,ヒトのダイオキシン類暴露量を明らかにすることを目的とし,ヒト生体試料中のダイオキシン類濃度の測定を行った。
〔内 容〕ヒト生体試料(羊水および胎脂)は,妊婦の了解後,東京大学医学部産科婦人科学教室にて採取した。ヒト羊水および胎脂を定法に従い処理し,ダイオキシン類濃度を高分解能GC/MSで測定したところ,それぞれ湿重量あたり,0.021±0.015pgTEQ/wet-g,1.83±0.85pgTEQ/wet-gであった。また,脂質あたりでは,126±203pgTEQ/g-lipid,19.6±10.1pgTEQ/g-lipidであった。


研究課題 9)PM2.5の個人曝露モニタリングに関する研究(奨励研究A)
〔担当者〕田村憲治
〔期 間〕平成12年度(2000年度)
〔目 的〕大気中の浮遊粉塵,特に微小粒子状物質(PM2.5)の個人曝露モニタリング法については,米国を中心にサンプラーや手法が紹介されているが,日本におけるフィールド調査にそのまま適応できるものではない。特にSPMという基準は日本独自のものであり,これまでの蓄積された環境測定データとPM10,PM2.5との関連も明らかにする必要がある。そこで本研究では,日本における調査手法とサンプラーの選択に関する基礎的検討を行い,最適な手法を提案することを目的にする。特に,被験者の負担を左右するサンプリングポンプの小型化に対応するため,フィルター上の微量な捕集量に対応した秤量機器と環境の整備(温湿度管理と静電気対策など)を行う。
〔内 容〕携帯用小型ポンプは吸引流量が1〜2LPM程度と少ないため,捕集されるPM2.5重量は24時間でも100μg以下である。このような微量なフィルター重量の増加を正確に測定するために,恒温恒湿の実験室に秤量単位0.1μgの精密電子天秤を購入・設置した。天秤の秤量部には秤量に影響するフィルターの帯電を除去するためにα線を放出するアメリシウムを置いて秤量法の改良を行った。
 これまで我々が用いてきたSPM個人サンプラーの捕集特性を変更し,吸引流量1.5LPMにおいてPM10とPM2.5を同時に分級捕集する改良型サンプラーを作成した。このサンプラーと海外においてPM2.5の個人曝露調査に用いられているサンプラー,およびPM2.5の標準的な測定法であるFRMサンプラーとの並行測定試験を川崎市内や横浜市内の屋外環境で行った。その結果,改良型サンプラーは標準法との相関も高く,他の個人サンプラー測定値に比べてもPM10とPM2.5同時測定,取り扱いのしやすさ,費用などで最適なものであった。
 さらに,某大学院生を被験者にして個人曝露調査や家屋内のモニタリングのテストを行ったが,既製の小型ポンプは重量,大きさの点で一般住民での携帯には改善の必要性があることなどが明らかになった。


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