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研究成果物



2.2 経常研究


4.化学環境部


研究課題 1)環境汚染物質の測定技術および測定手法に関する研究
〔担当者〕相馬悠子・横内陽子・久米 博・藤井敏博
〔期 間〕平成2〜12年度(1990〜2000年度)
〔目 的〕環境を正確に把握するという立場から,環境汚染物質の測定技術および環境の質を的確に計測し評価するための計測手法の確立を目的とする。コンピュターケミストリーを含むシーズ的,先導的研究を行う。
〔内 容〕1)Li+イオン付加反応を利用した質量分析法による,c-C4F8の測定法を確立した。C2H2/N2のマイクロ波放電プラズマ中にC3N4の存在を確認した。2)密度汎関数法により,ダイオキシン類の毒性評価システムの開発を行った。3)カーボキセン1000とカーボパックBを用いた塩化メチル等低沸点化合物の常温吸着/キャピラリーGC/MS法について検討し,再現性,直線性について良好な結果を得た。4)金採掘労働者の毛髪中の水銀についてPIXE分析を行い,健常人に比べて10倍以上汚染されているものがいることがわかった。
〔発 表〕D-37〜42,d-58〜63


研究課題 2)底質,土壌中の有機化合物の存在状態及び化学変化に関する研究
〔担当者〕相馬悠子
〔期 間〕平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕環境汚染に関する有機化合物の底質,土壌における存在状態,化学変化の反応機構を調べ,環境汚染物質の環境における挙動を明らかにする。
〔内 容〕昨年に引き続き,バイカル湖堆積物中のクロロフィル分解生成物で安定に残留しているsterylchlorinesterのステロール組成を調べた。そのために,sterylchlorinesterをHPLCで分取した後,ステロール結合を切断してGCMSで定量する方法を検討した。またsterylchlorinesterの安定性を検討するために,バイカル湖堆積物中では,何百万年前まで検出されるかをHPLC測定から推定した。気候変動による植物プランクトン量の違いもあるが,500万年前になるとかなり減少しているのが見られた。
〔発 表〕D-24,d-46


研究課題 3)バイカル湖の湖底泥を用いる長期環境変動の解析に関する国際共同研究
〔担当者〕河合崇欣・柴田康行・田中 敦・高松武次郎*1・刀正行*2・相馬悠子・森田昌敏*3
(*1水土壌圏環境部,*2地球環境研究グループ,*3地域環境研究グループ)
〔期 間〕平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔目 的〕同名の科学技術振興調整費総合研究課題(〜1999)の成果に関して,解析を進めるとともに終了評価を受ける。次期研究課題の準備を進める。
〔内 容〕成果をまとめた。バイカル湖地域の過去1千万年の気候変動は寒冷化,約270万年前から北半球氷床の形成及び氷期ー間氷期サイクルが始まった。約百万年前ころに温暖性樹種が消滅したが,新属の出現なし。湖内では,ケイ藻の進化頻度増大,種の寿命短縮。


研究課題 4)加速器質量分析法の環境研究への応用に関する基礎研究
〔担当者〕柴田康行・瀬山春彦・田中 敦・米田 穣・植弘崇嗣*1・森田昌敏*2
(*1国際室,*2地域環境研究グループ)
〔期 間〕平成12〜16年度(2000〜2004年度)
〔目 的〕加速器質量分析法(AMS)を環境研究へ応用していく上で必要となる加速器やイオン源などの運転技術,検出系の改良,試料採取,前処理技術等の確立,改良を図るとともに,適用範囲を広げるためのハード,ソフト両面の改良,新しい分析手法の開発等を行う,あわせて関連情報を収集,整理して今後の研究の発展の基礎作りを行う。
〔内 容〕14Cのビーム調整法について再検討を行い,新たな条件を確立した。10Beの測定の際の10Bによる妨害を減らすために,現在の検出系の一部を電気的に隔離されたガス吸収チェンバーとして用いる改良案を飛程の計算ソフト(SRIM2000)を元に設計し,試作を行って基礎検討を開始した。バイカル湖底泥中の10Be,26Alの測定並びに共同研究を実施した。
〔発 表〕D-15,16,62,d-24,25,28,85


研究課題 5)環境中/生態系での元素の存在状態並びに動態に関する基礎研究
〔担当者〕柴田康行・瀬山春彦・田中 敦・米田 穣・堀口敏宏
〔期 間〕平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕元素・物質の環境中での挙動,生態系循環の解明や毒性等の評価のためには,それぞれの元素の存在状態/化学形態や局所的な存在/蓄積部位に関する情報が必要である。一方,元素の同位体比は,元素・物質の起源を探り,環境動態を追跡し,さらに生態系における汚染物質の蓄積を解明する上で重要な手がかりを与えてくれる。本経常研究では,そのための基礎研究を実施する。
〔内 容〕セレンの化学形態分析法の改良を進め,MIP-MSを利用した新たな手法を開発した。イカ肝臓中の汚染物質の分析結果をとりまとめ,報告した。岩石,土壌の風化過程を調べるため,酸溶解による斜長石の表面状態変化を調べた。その結果,強酸性下での溶解では,二酸化ケイ素からなる表面溶脱層が形成されるが,酸溶液のpHが大きくなるとこの表面溶脱層は薄くなり,Alが鉱物表面へ集積される傾向が認められ,ケイ酸塩鉱物風化メカニズムは溶液の酸性度に依存していることが分かった。霞ヶ浦での養殖による重金属動態への影響を解析した。タンパク質の同位体分析による起源の推定方法について,考古学試料を用いて検討を行った。
〔発 表〕D-13,22,23,26,31,32,57〜59,d-15,30,43〜45,51,52,54


研究課題 6)外因性内分泌攪乱化学物質の培養細胞を用いたバイオ・アッセイ系の基礎的研究
〔担当者〕白石不二雄・白石寛明・佐野友春・彼谷邦光
〔期 間〕平成11〜12年度(1999〜2000年度)
〔目 的〕環境中に排出される化学物質は生態系への影響のみならず,ヒトへの性ホルモン作用としての影響が危惧されている。比較的簡単に性ホルモン作用を検出できる系として,酵母にレセプターを組み込んだ試験系が開発されているが,簡便性や汎用性といった面からは問題点も多く,多数の化学物質や環境試料のバイオ・アッセイ系としては改良が必要とされている。
〔内 容〕本年度は前年度に開発した酵母エストロゲンアッセイシステムを用いて,エストロゲン作用を抑制する化学物質(アンタゴニスト)を検出できる試験システムの開発を試みた。アンタゴニスト試験はエストラジオールの活性をどれだけ抑制するかを測定する試験法であるが,アンタゴニスト物質の酵母への毒性を検出する試験法と組み合わせ,評価することにより,化学物質のエストロゲン・アンタゴニスト活性を測定することが可能となった。
〔発 表〕d-42


研究課題 7)環境分析の精度管理に関する研究
〔担当者〕白石寛明・伊藤裕康・中杉修身
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕環境の状況の正確な把握のためには,適切なサンプリング計画と高精度の計測法が必要である。本研究では有効な精度管理を実現するために,検討すべき各種要因を明らかにし,環境分析におけるサンプリング法,計測法の高精度化を実現する。
〔内 容〕揮発性有機化合物(VOC)の季節変動,時間変動が問題となると考えられ,当研究所の排水(原水,処理水)のモニタリングし,分析精度,月変化の測定を行った。年1〜数回程度の測定では,その廃水処理等の実務の内容によっては,クロロホルム等VOCs濃度は大きく変動することが判明し,常時モニタリングの必要性が示唆された。また,環境試料中のダイオキシン類(ポリクロロジベンゾ-p-ジオキシン類(PCDDs)とポリクロロジベンゾフラン類(PCDFs))の分析法に関する比較研究を当研究所で作製した環境標準試料を用い,抽出,カラムクロマト等前処理,高分解能GC/MSによる測定,データの解析,分析値の精度管理等を地方自治体の研究所等と実施した。いくつかのダイオキシン類分析法では精度管理上の間題点が示された。
〔発 表〕d-4,5


研究課題 8)化学物質分析法のデータベース化に関する研究
〔担当者〕白石寛明
〔期 間〕平成12〜16年度(2000〜2004年度)
〔目 的〕環境中の化学物質の測定法に対する現状の分析法を要素技術で分類し,データベース化する。化学物質の物理化学的性状と分析法における要素技術との関係を整理し,既存分析法の統合や新たな分析法の作成に利用できるようにする。また,有効な精度管理を実現するために,精度管理に及ぼす分析技術の各種要因を明らかにし,環境分析における化学物質の計測法の高精度化に資する。
〔内 容〕各種分析法における精度管理の現状を整理し,問題点を明らかにするために,JISの環境分析法,食品および作物残留分析法,内分泌かく乱化学物質の分析法,米国EPAの環境分析法などのデータベース化を引き続き行い,作成したデータベースの一部を本研究所の化学物質データベースでインターネット上に随時公開した。また,これらの分析法に付随する分析の検出下限や精度管理に関する問題点を整理した。
〔発 表〕D-20,21


研究課題 9)水生生物の内分泌撹乱並びに生殖機能障害に関する研究
〔担当者〕堀口敏宏
〔期 間〕平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕いくつかの化学物質により生物の内分泌及び生殖の撹乱が引き起こされることが知られており,一部の野生生物においてはすでに異常が顕在化している。しかし,国内の生物における内分泌撹乱や生殖機能障害及びそれに起因する個体数減少については不明な部分が多い。ここでは外因性内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の影響を最も受けやすい生物群と考えられる水生生物を対象に内分泌撹乱の実態把握と原因究明及び機構解明を行う。
〔内 容〕イボニシのインポセックスと体内有機スズ濃度に関する全国調査を継続して行った。長崎県(対馬を含む:9調査地点)では,7地点でインポセックスが100%のまま推移し,依然高率であった。相対ペニス長指数(RPLIndex),輸精管順位(VDS)及び輸卵管の閉塞による産卵不能個体の出現率ともに,前回の調査結果(1998年)と比べて横這いないしは微減であった。なお,野母崎町ではインポセックスが見られなかった。
〔発 表〕D-44,47,48,51,d-64,65,67,69,70,72,74,79〜81


研究課題 10)藍藻の有毒物質(Dhb-ミクロシスチン)の代謝及び生体影響に関する研究(奨励研究A)
〔担当者〕佐野友春
〔期 間〕平成12年度(2000年度)
〔目 的〕アオコの有毒物質による飲料水源及び湖沼の汚染は世界中で問題となっており,昨年,WHOからもミクロシスチンの濃度について勧告がなされた。ミクロシスチンは藍藻が生産する環状ペプチドで,肝発がんプロモーターであることが知られている。一方,藍藻が生産するノジュラリンと呼ばれている環状ペプチドは,ミクロシスチンに類似した構造をしており,発ガン性があると報告されている。本研究で対象としているDhb−ミクロシスチンは,淡水産の藍藻が生産する環状ペプチドで,ミクロシスチンとノジュラリンの中間的な構造をしており,その生理活性が注目されている。本研究では,Dhb−ミクロシスチンの代謝や生体影響について調べ,ミクロシスチンとの相違を明らかにする。
〔内 容〕ミクロシスチンは,グルタチオンやタンパク質リン酸化酵素等のチオール基と反応し,不可逆的な付加物を生成することが知られている。Dhb−ミクロシスチンとミクロシスチンの代謝の相違を調べるために,グルタチオンとDhb−ミクロシスチン及びミクロシスチンを反応させ,その反応速度を調べたところ,ミクロシスチンはグルタチオンと反応したが,Dhb−ミクロシスチンは全く反応しなかった。ミクロシスチンのチオール基との反応部位はDha残基であるが,Dhb−ミクロシスチンはDha残基のかわりに,Dhb残基が置換しており,メチル基が1つ余計についただけでも,反応性に著しい相違が出ることが明らかとなった。このことから,Dhb−ミクロシスチン及びミクロシスチンが生体内にとりこまれた場合,Dhb−ミクロシスチンの方が細胞内残留時間が長くなることが推察された。また,Dhb−ミクロシスチンとミクロシスチンの生体影響の相違を調べるために,マウスにDhb−ミクロシスチン及びミクロシスチンを投与し,病理学的な解析を行った。C3HHestonマウスにミクロシスチン及びDhb−ミクロシスチンを週2回,20週間投与し,その影響を調べた。その結果,投与期間を通して,投与群と対照群との間に体重の有意な差は見られなかった。また,ミクロシスチン及びDhb−ミクロシスチン投与群ともに肉眼的には顕著な腫瘍の形成は認められなかった。また,急性毒性実験では,C3HHestonマウスに対しては,Dhb−ミクロシスチンの方が半数致死濃度が高い(毒性が低い)ことが明らかとなった。


研究課題 11)化学形態分析のための環境標準試料の作製と評価に関する研究(特別経常研究)
〔担当者〕伊藤裕康・白石寛明・柴田康行・中杉修身・堀口敏宏・田邊 潔*1・安原昭夫*1・橋本俊次・山本貴士*1・森田昌敏*1・吉永 淳*2
(*1地域環境研究グループ,*2東京大学)
〔期 間〕平成12〜16年度(2000〜2004年度)
〔目 的〕標準試料は環境分析の信頼性を支える基準となる物質であるが,環境汚染問題の多様化に伴い,さまざまな種類の環境標準試料が必要とされている。特に近年は,微量の汚染物質の化学種や化学形態別の正確な分析値を示すことが必要とされており,こうした分析値の信頼性を確保するために「化学形態分析のための環境標準試料」の作製と配布及び利用が必要不可欠となっている。本研究では,天然の環境試料等から標準試料を作製し,その中に含まれる環境汚染物質(有機金属化合物や有機化合物を対象とする)について化学形態別に保証値を定めることを目的とする。
〔内 容〕環境標準試料NIESCRM No.17「フライアッシュ抽出物」(平成8年度作製)に含まれるダイオキシン類(ジベンゾ-p-ジオキシン類とジベンゾフラン類)の共同分析をし,保証値を決定した。NIESCRM No.18「ヒト尿」(平成8年度作製)は,予備分析として,全セレンと全ヒ素の分析を共同分析機関を行い,トリメチルセレノニウムイオン,ジメチルヒ素,アルセノベタインについて保証値を決定した。NIESCRM No.19「フライアッシュ粉末」(平成9年度作製)に含まれるダイオキシン類の共同分析をし,保証値を決定した。また,NIESCRM No.20「湖沼底質試料」(平成10年度作製)及びNIESCRM No.21は,「土壌試料」に含まれるダイオキシン類の共同分析をし,保証値を検討した。
 平成12年度の環境標準試料は,センネンダイから採取した耳石(約を1.4kg)を用い,NIESCRM No.22「耳石試料」を作製した。大学,公的機関と炭酸カルシウム中の元素分析について共同分析をし,保証値を検討した。また,過去に作製したNIESCRM No.7は,ストックぎれのため,再作製を行い,NIESCRM No.23として元素分析を検討している。
 平成13年度に作製予定のNIESCRM No.24候補として,水質,生体試料,廃棄物関係等が上げられ,分析対象物質は,特に要望の多いダイオキシン類,PCB,クロルデン等有機化合物と,ストック分のない試料の再作製が考えられている。
〔発 表〕D-12,d-1


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