2.2 経常研究
2.地域環境研究グループ
研究課題 1)外因性内分泌撹乱物質に関する基礎的研究
〔担当者〕森田昌敏
〔期 間〕平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕人間と外因性内分泌撹乱物質とのかかわりについて,社会地球科学的立場からの分析を試みる。
〔内 容〕外因性内分泌撹乱物質が人口,食糧,資源,エネルギー,社会生活上の価値観等とどのようにかかわるかについて引き続き分析し,考察した。
研究課題 2)環境負荷低減のための都市規模と移動手段のあり方に関する研究
〔担当者〕近藤美則
〔期 間〕平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕人が自動車等の交通手段を利用して移動することによって,与えている環境への負荷は非常に大きい。本研究では,経済的,社会的な障害を念頭に置きつつ地域の規模と利用目的に合致した移動手段およびその実現に必要な要件を見いだすことを目的とする。
〔内 容〕現在の移動手段の利用状況を目的とともに調査・整理する。つぎに地域の規模別に必要な移動手段を提示するとともに,実現に当たっての問題点を整理する。そして移動手段の変更による環境負荷低減量について定量的評価を行う。本年度は,前年度検討したデータ収集システムを利用して乗用車の利用実態にかかわるデータを収集するとともにそのデータを平均速度,加速度,距離等などを基準として分類・整理するとともに,その特徴を抽出した。
研究課題 3)都市域における大気汚染現象のモデル化に関する研究
〔担当者〕若松伸司
〔期 間〕平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔目 的〕都市域における大気汚染と発生源の関連性を定量的に明らかにするために気象と反応を含んだモデルの構築を行う。これを基に大気汚染の経年変化や地域分布の特徴を把握することが研究の目的である。
〔内 容〕フィールド観測結果,大気汚染常時監視データ,発生源データ等を総合的に解析し,都市域における二酸化窒素汚染,光化学大気汚染,VOC汚染,PM2.5・DEP汚染などの特性を抽出するとともにこれらの特性を的確に予測・評価できるモデルを構築するこのモデルを用いて大都市地域における大気汚染の比較評価を行う。本年度は長期間にわたる大気汚染トレンドの解析と,PM2.5・DEPモデルの予備的検討を行った。
研究課題 4)沿道大気汚染の簡易予測手法に関する研究
〔担当者〕上原 清
〔期 間〕平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕大都市における沿道大気汚染は,沿道周辺の建物が作り出す複雑な市街地気流の影響を受ける。本研究の目的は1)建物によって仕切られた道路空間の気流分布を温度成層風洞を用いた実験によって明らかにし,2)汚染濃度分布との関連を調べることによって,沿道大気汚染の予測手法を開発することを目的としている。
〔内 容〕市街地の道路の基本的な構成要素であるストリートキャニオン内部の気流分布や大気汚染濃度分布と,1)道路幅 2)周囲の建物高さ 3)大気安定度などの条件との関連を風洞実験によって調べた。
研究課題 5)内湾域における底生生物の動態
〔担当者〕中村泰男・木幡邦男
〔期 間〕平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕海底には,様々な底生生物が生息している。富栄養化した内湾において,特に底生生物の生物量が多く,水質や物質循環に大きく影響している。本研究では,底生生物の現場における摂食・増殖を水柱の一次生産と合わせて解析することで,彼らが内湾の物質循環にいかに寄与するかを明らかにすることを目的とする。
〔内 容〕瀬戸内海,播磨灘にある家島諸島において,底生生物調査を行った。泥食性のオカメブンブクやイカリナマコといった棘皮動物が広い範囲で卓越し,前者は底生生物群衆全体のバイオマスの30%以上を占めることが明らかになった。また,チワラスボ(ハゼ科)が棘皮動物についでバイオマスが大きかった。また,オカメブンブクは冬に着底することも判明した。
研究課題 6)自然水系中における溶存フミン物質に関する研究
〔担当者〕今井章雄
〔期 間〕平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕溶存フミン物質は自然水中の溶存有機物の30〜80%を占める。フミン物質は鉄等の微量必須金属と安定な錯体を形成し,その存在状態に大きな影響を与える。金属の存在状態は生物利用可能性と密接に関係しているため,鉄等の金属とフミン物質との錯化反応を定量化する必要がある。本研究ではその手法の開発を目指す。
〔内 容〕溶存フミン物質と鉄等の錯化反応における安定度定数と錯化容量を電気化学的手法(ボルタメトリー)により測定する手法の検討を引き続き行った。
研究課題 7)環境ストレスの複合影響
〔担当者〕高野裕久
〔期 間〕平成12 年度(2000年度)
〔目 的〕生物は多種多様の環境ストレスの暴露を受けるため,その影響は複合的結果として表現される。単一の環境ストレスが悪影響を発揮し得ない濃度あるいは量においても,他の環境ストレスが加わることにより毒性が出現する場合も想定される。本検討では,ディーゼル排気微粒子の経気道暴露が細菌毒素の併存により修飾されるか否かを検討した。
〔内 容〕ディーゼル排気微粒子あるいは細菌毒素単独の経気道暴露に比較し,両者の併用暴露は顕著に肺傷害を増悪した。その相乗効果はディーゼル排気微粒子あるいは細菌毒素を2倍量に増加して単独投与した場合に比較しても有意に強かった。環境ストレスの複合影響は今後の環境影響評価研究の課題であり,単一物質の毒性発現に内在するメカニズムの解明とともに,他の物質の毒性発現に関するシグナルとのクロストークの総合的解明が急がれる。
研究課題 8)動物の遺伝的背景の特徴をいかした毒性評価系の開発に関する研究
〔担当者〕曽根秀子
〔期 間〕平成12〜16年度(2000〜2005年)
〔目 的〕実験動物に投与される化学物質の量は実際のヒト曝露量に比較し一万倍から百万倍と高い。生体影響の動物からヒトへの外挿をより精度の高いものにするためには,実際のヒト曝露量により近いレベルでの研究が望まれる。そのため,本研究では従来の健常動物ではなく遺伝的背景の特徴を持った動物や遺伝子導入動物の特徴を健康リスク評価に利用した影響評価系の確立を行う。
〔内 容〕本年度は,DNAチップを用いたサブトラクションによる酸化ストレス応答遺伝子の探索を試みた。DNAチップには,8732個のラットESTクラスターがのっているものを用いた。材料には,正常肝と銅の蓄積により障害を受けている肝から抽出した全RNAを用いた。その結果,両者での発現の差が増減している遺伝子が7種確認された。それらの遺伝子群は,DNAメチレーション,ユビキチン化,酸化還元関連分子などであった。
研究課題 9)水中微量化学物質の分析方法に関する研究
〔担当者〕高木博夫
〔期 間〕平成9〜12 年度(1997〜2001年度)
〔目 的〕現在の湖沼,河川水中の微量化学物質の分析法では,化学物質濃度は採水時の瞬時値しか得る事ができないため,流出した総量を推定することは簡単ではない。本研究では,吸着剤の一定時間暴露による化学物質の積算吸着量から総流出量を求める方法について検討する。
〔内 容〕本年度は,河川水の有機物除去に用いている活性炭フィルターを用いた評価手法について検討した。活性炭フィルターにおける内分泌かく乱化学物質として疑われる農薬等の除去率の変動とその要因を検討した。また,活性炭からの化学物質の回収方法について検討した。
研究課題 10)セスジユスリカを用いた底質試験法の検討
〔担当者〕菅谷芳雄
〔期 間〕平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕OECDで検討されている底質試験法は,日本特産のセスジユスリカを試験生物に認めている.ところが本種を使っての底質試験の研究例は多くなく問題点の把握が十分でない.同ガイドラインに沿って実用試験に入る前に他の推奨種との比較検討を行う必要がある.本研究では,ガイドラインに沿って底質中の化学物質の毒性評価を行う際の問題点を検討すると同時に,セスジユスリカの生物特性に合った試験法の開発を行う。
〔内 容〕OECDガイドラインがエンドポイントとしている羽化率について調べた結果,本種の対照区の羽化率は92%で,実験の成立条件を満たした。ただし,羽化に要する日数をみると全体の15%が平均日数より2日以上遅れて羽化し,その原因として実験容器内の餌の不均一性が考えられ,給餌方法の改良が必要となった。その後,改良された方法では遅延個体が著しく減少した。
研究課題 11)淡水無脊椎動物の繁殖に及ぼす内分泌攪乱化学物質の影響
〔担当者〕多田 満
〔期 間〕平成11〜12年度(1999〜2000年度)
〔目 的〕陸水域は多種多様な化学物質で汚染されているが,これまでの研究から化学物質は致死濃度以下のレベルでも生物相互作用系を撹乱し,生態系に予測し難い間接的影響を及ぼすことが明らかになってきた。最近では内分泌攪乱化学物質によるとみられる魚類等淡水生物に対する生殖異常が確認されている。本研究ではこれまでに知見のほとんどない淡水無脊椎動物(甲殻類)を対象にその繁殖に対する内分泌攪乱化学物質の影響を調べることを目的とする。
〔内 容〕淡水無脊椎動物ヌカエビ(Paratya compresa improvisa)の抱卵メスに17β-エストラジオールを0.1,1.0,10μg/lの濃度で暴露した結果,孵化後の稚エビの生存率が56.1〜10.1%まで低下した(対照82.1%)。生き残った成熟個体の性比(オス/メス)は,10μg/lの濃度で1.23〜1.83と対照(0.88)に比べて高まった。
〔発 表〕B-66〜68
研究課題 12)バイオ技術の環境適用における生態系影響評価に関する基礎的研究
〔担当者〕矢木修身・森田昌敏・兜 眞徳・中嶋信美・岩崎一弘・玉置雅紀・佐治 光*1・久保明弘*1・青野光子*1・大坪國順*2・内山裕夫*2・冨岡典子*2・向井 哲*2・大井 紘*3・須賀伸介*3
(*1生物圏環境部,*2水土壌圏環境部,*3社会環境システム部)
〔期 間〕平成12年度(2000年度)
〔目 的〕様々な産業分野において組換え生物が利用されつつあり,環境保全分野においても,大気浄化植物や有害物質分解微生物が開発され,これらの利用が期待されている。しかし一方では,生態系への影響も懸念されている。本研究では,環境保全を目指したバイオ技術の活用ならびにその安全性を評価することを目的に,各種の環境浄化に関与する生物を開発するとともにバイオ技術の安全性評価法について検討を行う。
〔内 容〕植物のストレス耐性にかかわるACC合成酵素のアンチセンス植物はオゾンによるエチレン発生,葉の障害が減少することが示された。また,組換え植物の挙動マーカーとしてホメオボックス遺伝子を植物に導入し,葉の形が変化した系統を単離した。 一方,底泥中より水銀浄化活性の高い微生物を分離し,その菌学的性質及び16S rDNA配列を決定し,Bacillus属であると同定できた。また,バイオリアクターを用いてその水銀除去特性を検討した。
〔発 表〕B-25,27,107,108,b-109,110,113〜135,277〜284
研究課題 13)微生物分解機能を活用した環境汚染の評価に関する研究
〔担当者〕矢木修身・岩崎一弘
〔期 間〕平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕テトラクロロエチレン(PCE),トリクロロエチレン(TCE),トリクロロエタン(TCA)等の揮発性有機塩素化合物による土壌汚染が問題となっている。汚染環境における汚染物質濃度,汚染物質分解微生物の種類,数,分解能の関係を調べ,汚染状況と分解微生物の関連を明らかにすることにより,汚染程度を評価する手法を開発する。
〔内 容〕各地のTCE,PCEで汚染した土壌中におけるTCE及びPCEの自然分解速度ならびにポリ乳酸添加による分解促進効果を調べ,有効性を確認した。汚染濃度を測定する場合,現在の公定法である水抽出による分析法では基準値以下の土壌が,オートクレーブ処理することによりかなりのTCE,PCEの溶出が認められ,浄化には含有量試験での評価が必須と考えられた。
〔発 表〕b-278
研究課題 14)環境中における微生物遺伝子の挙動に関する研究
〔担当者〕岩崎一弘
〔期 間〕平成12年度(2000年度)
〔目 的〕近年,培養を必要としない分子生物的な手法によって微生物生態を解明する試みがなされてきている。本研究は環境中の有害物質分解菌の遺伝子の挙動及び分解活性を解析するために,PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)法によるトリクロロエチレン(TCE)分解遺伝子及びそのmRNAの環境試料中からの検出・定量法を開発を試みた。
〔内 容〕M株のTCE分解活性を左右している分解遺伝子の産物であるmRNAを地下水試料中から定量するために,まず環境試料中からの微生物mRNAの効果的な抽出法を開発し,少量のM株菌体(109細胞)からの定量的な回収が可能となった。
〔発 表〕B-26,b-111,112
研究課題 15)植物の気孔開度に影響を与える環境要因の受容と伝達に関する研究
〔担当者〕中嶋信美
〔期 間〕平成8〜12年度(1996〜2001年度)
〔目 的〕植物は乾燥ストレスにさらされると,それに対抗するため様々な代謝変化が起こることが知られている。本研究ではソラマメ孔辺細胞に浸透圧ストレスを与えるとリンゴ酸の蓄積が見られることを明らかにした。本研究では気孔開度へのリンゴ酸役割を明らかにすることを目的とする。
〔内 容〕ソラマメの葉から表皮を剥離し,0.4Mマンニトール水溶液に表皮を浸し浸透圧処理とした。PEP carboxylase(PEPC)の阻害剤を処理すると,リンゴ酸の蓄積が抑えられ,気孔開度も低下した。また,PEPCのタンパク量が浸透圧ストレスによって上昇した。以上の結果から,浸透圧ストレスによるリンゴ酸の蓄積はPEPCタンパク量の上昇に由来し,リンゴ酸が孔辺細胞内浸透圧の上昇に作用していると考えられる。リンゴ酸の合成に関わる酵素の一つであるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性を測定したところ,わずかだが上昇する傾向が見られた。現在,リンゴ酸の合成や分解に関与するほかの酵素の活性に対する影響も分析している。
〔発 表〕b-209,210
研究課題 16)シロイヌナズナのアスコルビン酸合成遺伝子の環境ストレス下における発現に関する研究
〔担当者〕玉置雅紀
〔期 間〕平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕種々の環境ストレスによる植物の被害の多くは,ストレスにより生じる活性酸素によって引き起こされている。アスコルビン酸はその抗酸化作用により活性酸素の消去に重要な働きを持つと考えられるが,植物においてはそれらの遺伝子レベルでの研究はほとんど行われていない。本研究ではシロイヌナズナよりアスコルビン酸合成酵素をコードしている遺伝子を単離し,大気汚染ガス下での発現解析を行う。また,この遺伝子を導入した組換え植物を作製し,そのストレス耐性を検討する。
〔内 容〕前年度までにシロイヌナズナより単離した2種類のアスコルビン酸合成酵素の遺伝子,AtGLDH,AtGMPの発現を変化させた植物を作成するため,これらをセンス,アンチセンス方向につないだ導入用コンストラクトを作成した。これをvaccuum infiltration法によりシロイヌナズナCol, Wsに導入した。その結果,AtGLDHのセンス系統,アンチセンス系統,AtGMPのセンス系統,アンチセンス系統をそれぞれ,49系統,39系統,63系統,64系統作成することができた。現在これらのアスコルビン酸含量の解析を行っている。
〔発 表〕b-208,209,
研究課題 17)電磁界曝露によるヒト由来培養細胞の変化
〔担当者〕黒河佳香・石堂正美
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕細胞を用いた電磁界曝露実験で再現性の高い陽性所見として知られている現象(DB823株MCF-7の増殖へのメラトニンの抑制作用を50ヘルツ磁界が阻害する)が,どのような分子生物学的機序で起こっているのかを調べる。
〔内 容〕放射性物質での標識メラトニンなどを用いた実験により,DB823株MCF-7の細胞膜表面に1a型のメラトニン受容体の存在を確認した。また50ヘルツ磁界を照射することにより,この受容体を介すると思われる細胞内cAMP濃度の変化が抑制されることが判明した。
研究課題 18)有機錫化合物の中枢神経毒性に関する免疫神経内分泌学的研究
〔担当者〕今井秀樹・兜 真徳
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕いくつかの有機錫化合物は中枢神経系を傷害し,さらに免疫系および内分泌系に影響を及ぼす。有機スズ化合物による脳・神経傷害のメカニズムは詳細にはわかっていない。本年度は,有機スズ化合物投与によって引き起こされる脳内海馬領域における神経細胞死および神経細胞再生について解析した。
〔内 容〕Sprague-Dawley系雄ラット(6週齢)にトリメチルスズを一回投与し,投与後5日目に脳を採取し,海馬領域におけるプログラム細胞死(アポトーシス)をTUNEL法にて,神経細胞再生をBrdU取り込み法によって観察した。その結果トリメチル錫投与ラットの海馬領域ではアポトーシス陽性細胞が観察されたが,特に歯状回下部錐体細胞葉においてその頻度は顕著であった。一方BrdU陽性細胞はTMT投与ラットの海馬領域全般において顕著であったが,その分布は必ずしもアポトーシス陽性細胞のそれとは一致しなかった。
研究課題 19)神経毒性指標としての脳アンキリンの分子生物学的解析に関する研究
〔担当者〕国本 学・石堂正美・足立達美
〔期 間〕平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕細胞膜裏打ち構造を構成する蛋白質の一つ脳アンキリン(ankyrinB)にはオルターナティブスプライシングによって生ずる分子量440kDと220kDの少なくとも2種類のイソ型が存在する。特に,胎児・新生児期に発現のピークを迎える440 kDankyrinBは,神経突起の伸展,ミエリン膜の形成等への関与の他,神経細胞傷害の高感度マーカーとしての利用の可能性も明らかになりつつある。本研究では,このankyrinBの脳神経系における生理学的意義を分子生物学的手法を用いてさらに解析する。
〔内 容〕ankyrinBの生理的意義を明らかにするため,培養神経細胞,あるいは実験動物(ラット,マウス)の脳神経系を対象として,ankyrinBの発現を分子生物学的手法を用いて人為的に変化させることにより引き起こされる神経細胞或いは脳神経系の機能的・形態的変化を解析した。
今年度は,培養神経細胞(NB-1)において,神経細胞に特異的なイソ型である440kD ankyrinBの発現を特異的に阻害するためのアンチセンスDNAの設計を行った。
研究課題 20) 暑熱とオゾンの複合暴露が感染防御能に及ぼす影響に関する研究
〔担当者〕山元昭二・安藤 満
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕オゾン(O3 )による健康影響を考える場合,夏期の暑熱は,O3 の生体影響を修飾する重要な要素の一つとなることが予想される。しかしながら,暑熱とO3 を組み合わせた生体影響に関する検討は十分でない。本研究では,暑熱に着目し,暑熱とO3 の複合暴露が生体の感染防御能に及ぼす影響について検討する。
〔内 容〕暑熱とO3 の複合影響を明らかにするために,本年度は,前年度に引き続きマウスを種々の温熱条件下で高温暴露後,吸入チャンバーでO3 曝露し,黄色ブドウ球菌や変形菌に対する肺の抗細菌防御能や気管肺胞洗浄(BAL)液中の細胞・液性成分への影響について検討した。その結果,高温とO3 の複合暴露によって肺の抗細菌防御能への相加的な抑制影響が認められた。
〔発 表〕B-116,117,b-296〜298
研究課題 21)埋立地浸出水の高度処理に関する研究
〔担当者〕稲森悠平・水落元之・徐 開欽*1
(*1水土壌圏環境部)
〔期 間〕平成7〜15年度(1995〜2003年度)
〔目 的〕社会活動の中で発生する一般廃棄物,産業廃棄物は最終的に埋立地で処分される。この埋立地から発生する浸出水には,重金属や近年問題となっているダイオキシン,内分泌かく乱化学物質等の様々な化学物質を含んでいる可能性がある。そこで本研究では,水環境の水質汚濁および生物への影響を与える可能性のある埋立地浸出水の高度処理手法について検討・開発し水環境改善を図る事を目的として行った。
〔内 容〕埋立地浸出水には有害化学物質が含まれている可能性があり,処理における評価検討は必須である。そこで動物細胞を用いた急性毒性にて埋立地浸出水ならび処理評価検討を行った。その結果,本研究で用いた埋立地浸出水では,細胞影響が示唆された。しかし,生物活性炭処理やオゾン酸化処理等を行なった試料を細胞に暴露した結果,いずれのサンプルについても細胞増殖が見られず,有害化学物質の低減・除去が行われていた事が示唆された。
〔発 表〕b-33
研究課題 22)水質改善効果の評価手法に関する研究
〔担当者〕稲森悠平・水落元之・徐 開欽*1
(*1水土壌圏環境部)
〔期 間〕平成7〜15年度(1995〜2003年度)
〔目 的〕湖沼等における富栄養化対策としての高度処理浄化槽の整備による水域改善効果および水域の安全性・適正水質に関して生態系の観点から解析するため,単一生物種による生物培養系ではなく,生態系における捕食・被食関係を含めた微生物間相互作用を有するマイクロコズムを用いることで,生態学的評価解析を行った。
〔内 容〕農薬を散布した水田からの流出水が,自然水域において水圏生態系にいかなる影響を及ぼすかを解析するため,生態系の基本骨格を有するホールタイプマイクロコズムを用い,影響評価を行った。その結果,農薬散布前の河川水でも構成生物種は影響を受けたことから,サンプリング以前の農薬散布の影響が長期間残存していた可能性やさらに上流における農薬散布の影響を受けた可能性も示唆された。
〔発 表〕B-8,9,b-10,43
研究課題 23)生物・物理・化学的手法を活用した汚水および汚泥処理に関する研究
〔担当者〕稲森悠平・水落元之・松重一夫・徐 開欽*1
(*1水土壌圏環境部)
〔期 間〕平成7〜15年度(1995〜2003年度)
〔目 的〕有用微生物を活用した生物処理と物理化学処理との組合せにより汚濁の進行した湖沼,海域,内湾,河川,地下水等の汚濁水,生活排水,事業場排水,埋立地浸出水等の汚水およびこれらの処理過程で発生する汚泥を,生物・物理・化学的に効率よく分解・除去あるいは有用物質を回収する手法を集積培養,遺伝子操作等の技術と生態学的技術を活用して確立する検討を行うことを目的として推進する。
〔内 容〕汚水からの生物学的窒素除去で極めて重要な役割を演ずる硝化細菌の,リアクターへの大量安定定着化と,活性向上のための検討を行った。その結果,硝化細菌の活性の維持・向上のためにはFeの存在が極めて重要であること,また厳寒期および高流入負荷時の硝化活性低下への対応として,比表面積が大きなろ床表面への効率的な硝化細菌の定着が極めて重要であることが明らかとなった。さらに,これらの窒素除去微生物の高密度培養時には,特に酸素供給の効率化が重要であることも明らかとなった。
〔発 表〕B-10,11,13〜19,21,22,b-11〜16,19,21,23〜26,28〜32,34〜40,47,62〜65,72,73,81,85,87〜89,94〜98
研究課題 24)大気エアロゾルのウオッシュアウト現象に関する研究
〔期 間〕平成12〜16年度(2000〜2004年度)
〔担当者〕西川雅高
〔目 的〕土壌,地下水への大気からの負荷を推定するため,寄与の大きい大気エアロゾルの湿性沈着量を探る。
〔内 容〕国立環境研究所内の大気モニター棟において,全降水の採取を行っている。その化学成分について,イオンクロマトグラフィーで測定した。また,不溶性成分は,分析法の確立をまって分析を行うため,ろ過フィルターごと保存した。
〔発 表〕b-220
研究課題 25)霞ヶ浦の生物資源保護に果たす役割に関する研究
〔担当者〕春日清一
〔期 間〕平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕霞ヶ浦及びその周辺は水・陸両環境を利用する生物が生活し,多様な生態系を形成している。これら生物の存在や生活様式は知られていないことも多く,急激な環境変化により野生生物が気付かれずに消滅する危険性をはらんでいる。このような生物の生活を知り,できる限り記録に残し,保護することを目的とする。
〔内 容〕@霞ヶ浦の湖沼調査時,また随時生物に注意を払い,多くの現象の発見に努力する。これら現象が重要なものであれば記録として残す。A霞ヶ浦ではオオクチバス,ブルーギルばかりでなく外来魚類であるペヘレイやアメリカナマズが定着,繁殖し生態系構造を著しく変え,動植物や水質にまで大きな影響を与える可能性が指摘された。
研究課題 26)霞ヶ浦の湖岸植生帯の衰退とその復元に関する研究
〔担当者〕春日清一
〔期 間〕平成12〜13年度(2000〜2001年度)
〔目 的〕霞ヶ浦湖岸植生帯は壊滅的に破壊され,ほとんど機能していない。この植生帯減少の要因を明らかにし,回復手法を検討する。また湖岸植生帯の湖内生態系の中で果たす役割を調べる。
〔内 容〕1993年から霞ヶ浦南岸に定点を設け,定位置から毎月植生帯の写真を撮影した。抽水植物であるヨシ帯は日常的に波による洗掘を受け,根茎が洗い出され枯死する。根茎の洗い出しは水位が高位安定に保たれることによって急速に進んだ。水中のヨシはシュートを横方向に伸展することができず株化,高密度化し倒壊する。また渇水による水位の低下により沈水植物が繁茂した。このことは霞ヶ浦の水門閉鎖による水位安定が植生帯の破壊を招いていることを示し,水位の変動操作によって植生帯が回復することを示唆した。
研究課題 27)環境データの統計解析法に関する研究
〔担当者〕松本幸雄
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕環境に関するデータの多くは,繰り返し測定が困難なこと,データの含む誤差の性質が様々であることなど,特有の統計的特徴をもつので,データの取得,解析,評価に独自の方法論を必要としている。この研究は環境データから有効に情報を引き出すための統計的方法を開発し,データ取得計画とデータ解析に適用することを目的とする。
〔内 容〕1)オゾン濃度の経年データを年次変化,季節変動,偶然変動の各成分にわけ,各成分の経年変化の地点による違いを検討した。
2)ある地域内の大気汚染測定局の年平均値と高濃度出現頻度との間で良く見られる特徴が,その地域内の測定局のある種の分布構造と対応していることを理論的に明らかにした。
3)酸性雨モニタリングデータを用いて,列島レベルの酸性降下物の地域変化と経年変化を解析した。また,地球温暖化による大気汚染の健康影響の増加の検証可能性を吟味した。
〔発 表〕B-99,100,b-243〜247
研究課題 28)粒子状物質が呼吸器に及ぼす影響
〔担当者〕平野靖史郎
〔期 間〕平成12〜17年度(2000〜2005年度)
〔目 的〕微小粒子状物質は肺の深部に沈着し,様々な呼吸器系細胞に影響を及ぼす。本研究では,肺胞腔内に沈着した粒子状物質を貧食していると考えられている肺胞マクロファージや,肺の炎症時に肺胞腔内に浸潤してくる好中球の細胞機能の変化,上皮細胞や内皮細胞における炎症に関連する遺伝子の発現に関する研究を行い,大気汚染物質の呼吸器に及ぼす健康影響評価を行うための指標を開発することを目的とする。
〔内 容〕肺胞マクロファージ,内皮細胞において粒子状物質の曝露指標として最も重要な生体内分子の測定を行った。具体的には cDNAアレーやサブトラクション PCR 法を用いて粒子状物質やその抽出成分を曝露した際,特異的に発現する遺伝子の検索を行った。
研究課題 29)湖沼における有機物の物質収支および機能・影響に関する予備的研究(奨励研究)
〔担当者〕今井章雄・松重一夫・木幡邦男・冨岡典子・林 誠二
〔期 間〕平成12年度(2000年度)
〔目 的〕1980年代中頃から琵琶湖北湖で注目された湖水中の難分解性溶存COD濃度の漸増現象は,その後,十和田湖,霞ヶ浦,印旛沼さらには内湾の富山湾でも観察され,遍在的な広がりを見せている。湖沼での溶存有機物(DOM)濃度の上昇は,植物プランクトンの増殖・種組成を含む湖沼生態系の変化,重金属・農薬等の有害物質の可溶化,水道水源水としての湖沼水の健康リスク上昇および異臭味等,湖沼環境に甚大な影響を及ぼすと考えられる。湖沼環境保全上,緊急に,湖水中の難分解性DOMの漸増メカニズムを定量的に解明する必要がある。
本研究の展望的目的は,平成13年度開始特別研究「湖沼における有機炭素の物質収支および機能・影響の評価に関する研究」と同じく,湖水DOMの特性・起源,湖沼生態系への機能・影響,湖沼における難分解性DOMの主要発生源を有機炭素等の物質収支により明らかにすることである。本研究の限定的目的は,当該特別研究の準備研究として,上記目的を達成するためのデータ収集,予備実験,情報収集を行うことである。
〔内 容〕本研究は,平成13年度開始特別研究の予備研究として実施された。以下に研究内容を記す。
本研究は,有機炭素(TOC)を有機物指標として典型的富栄養湖である霞ヶ浦における物質収支をとることを目的とするマクロ的(フレーム構築的)研究と湖水溶存有機物(DOM)の特性・機能評価,湖沼微生物群集構造の解析等のミクロ的(知見探索的)研究に大別される。
課題1 湖における有機炭素収支に関する研究
有機炭素(TOC),溶存有機炭素(DOC),難分解性DOC,フミン物質等を用いた排出源原単位を求めるためのサンプルを採取した。流域発生源モデルおよび湖内モデルについての文献調査を行った。また,TOC物質収支を取る際にモデル予測値と比較するために必要なフィールドデータを湖や河川で取得した。
課題2 湖水溶存有機物(DOM)の特性・起源と機能・影響に関する研究
霞ヶ浦湖水から分離抽出したフミン物質を添加した培地で,フミン物質濃度を変動させて,Mircocystis aeruginosaとOscillatoria agardiiの増殖実験を行った。結果,M. aeruginosaはフミン物質濃度が高くなると増殖が顕著に抑制されたが,一方,O. agardiiはフミン物質濃度による増殖抑制は認められなかった。この結果は,霞ヶ浦で起きたMicrocystisからOscillatoriaへの優占ラン藻種の遷移と整合する。
霞ヶ浦湖心でコアサンプラーにより底泥を毎月採取し,底泥間隙水中のDOMや栄養塩の底泥深さ方向の濃度プロファイルを明らかにした。既存の報告とは異なり,底泥間隙水中のDOM濃度が最も高くなるのは7〜9月ではなく,3〜4月であった。
霞ヶ浦河川流入湾部,湖心及び湖尻の5地点において,DGGEバンドパターンに基づく湖水中の細菌群集構造の解析を行った。その結果,細菌群集は季節によって著しい変化を示し,特に夏季に多様性が低下した。また,バンドパターンを主成分分析解析した結果,春および夏にそれぞれ特徴的な群集構造を形成していることがわかった。
DOMの特性を評価する手法として3次元蛍光光度法の手法を開発・確立した。既存の分光蛍光光度計には3次元蛍光を測定するメニュープログラムがないため測定には多大な時間を労する。この問題を解決するために,3次元蛍光光度測定用のオリジナル測定プログラム(Visual Basic)を作成した。
〔発 表〕B-6,7,14
研究課題 30)瀬戸内海播磨灘における夏季連続環境モニタリング(特別経常研究)
〔担当者〕中村泰男
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕内湾域の富栄養化およびその対策が,長期的に見て,プランクトン群集にどのような影響を及ぼすのかを知ることが本研究の第一の目的である。具体的には,1)富栄養化に伴い,窒素あるいはリンとケイ素の比が増加することで,ケイ藻からベン毛藻への植物プランクトン種のシフトが起きる 2)ケイ藻からベン毛藻へのシフトがクラゲなどのゼラチン質動物プランクトンの卓越を引き起こす,といった仮説の検証を試みる。
一方,内湾域における物質循環の解明は今後とも海洋環境研究室が取り組まなければならないテーマである。こうした立場からの研究を実りあるものにするためには,現場環境のモニタリング,とくに有機物の鉛直フラックスや底層での栄養塩回帰速度を細かいサンプリング間隔で測定することが必要となる。そこで,本研究は底泥をめぐる物質循環解明のための基礎的モニタリングデータを供給することを第二の目的としている。
〔内 容〕播磨灘,家島諸島の西島付近の定点(水深21m)において2000年7月半ばから8月半ばにかけて,連日環境モニタリングを行った。モニタリング項目は次のとおり。
1)物理的環境因子:水温,塩分,透明度
2)化学的環境因子:栄養塩類,溶存酸素,植物色素
3)生物的環境因子:バクテリア,ピコプランクトン,植物プランクトン,微小動物プランクトン,ネット動物プランクトン
7月末の強風により,栄養塩が表層に供給され,これに伴い珪藻の赤潮が発生した。水塊が十分混合されている場合にはケイ藻がベン毛藻を圧倒するという従来からの予想が現場で示された。また,1984年から2000年までのデータの内,透明度,水温,栄養塩,クロロフィル(植物プランクトン量の目安)の経年変動を調べたが,明瞭な傾向は見い出されなかった。
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