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研究成果物



2.2 経常研究


1.地球環境研究グループ


研究課題 1)昆虫の生活史・繁殖行動における集団内変異性とその維持機構
〔担当者〕椿 宜高
〔期 間〕平成12〜15年度(2000〜2003年度)
〔目 的〕昆虫のオスに見られる繁殖行動の集団内多型現象に着目し,生活史の観点から繁殖行動に関する集団内多型の維持機構を解明しようとする。多くの昆虫に集団内変異として縄張り型・スニーカー型の繁殖行動を示すことがわかっている。2型の共存はESS理論から次の2つの場合が考えられる。ひとつは個体のサイズや闘争能力に依存して行動が決まる場合である。しかし,色彩多型のような遺伝的に支配されている形態形質に依存する行動多型はこの説明に当てはまりにくい。この場合に考えやすいのは頻度依存淘汰による遺伝子型の平衡多型である。しかし,縄ばり型とスニーカー型が共存する集団には,頻度依存淘汰ばかりでなく,密度依存淘汰も表現型依存淘汰も働き,その効果の程度は型によって異なると考えられる。これらの両側面を考慮した上で多型平衡の成立条件を解明する。
〔内 容〕オス成虫のオレンジ翅型と透明翅型の両者について,羽化時点から成熟後約2週間までの脂肪蓄積量を比較した。その結果,資源を闘争によって獲得するオレンジ翅型は羽化して成熟に達するまでの約6日間,急速に脂肪を蓄積するが,運動量の多さのためかその後急速に脂肪を消費する。一方,闘争を避ける透明翅型は羽化後の脂肪蓄積は遅いが,成熟後もゆっくりと脂肪を消費することがわかった。このエネルギー獲得と消費の生活史パターンの違いが集団内の変異の維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。
〔発 表〕A-33,a-55


研究課題 2)3次元モデルによる成層圏光化学−放射−力学相互作用の研究
〔担当者〕秋吉英治
〔期 間〕平成11〜15年度(1999〜2003年度)
〔目 的〕年々変化する温室効果ガス濃度やハロゲンガス濃度の大気環境の中で,オゾン層の将来予測を行うためには,大気中の光化学過程,放射過程,力学輸送過程の個々の過程を理解するのみならず,その相互作用を理解することが必要である。そのために,オゾンホールや極渦崩壊など,成層圏で起こる顕著な現象に対して,その相互作用を考慮に入れた3次元モデルによる数値実験を行い,相互作用に関する知見を得る。
〔内 容〕前年度ボックスモデル上で開発を行った,4種類の極成層圏雲上で起こる不均一反応に関する計算スキームを,3次元光化学輸送モデルへ導入した。3次元モデル内で生成される極成層圏雲の表面積などのチェックを行い,不均一反応スキームが3次元モデルの中で正しく働くことを確認した。
〔発 表〕A-2,a-5,f-86


研究課題 3)生息場所変化に応じた野生生物の分布動態評価に関する研究
〔担当者〕高村健二
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕野生動物の年齢構成・性比・密度・個体変異などの個体群構造と生息環境との関連を把握し,個体群の遺伝的多様性がどのように維持されているかを明らかにし,野生動物保全に役立てることを目的とする。脊椎動物・無脊椎動物の自然個体群を選び,各個体群ごとの個体群密度・生存率・性比・産卵数などを測定し,繁殖成功度を比較することにより個体群内の形質変異および遺伝的多様性の維持機構を解析した。
〔内 容〕つくば市の農耕地流下河川において,河川でふ化・成長・羽化し,周辺の森林で成熟し,繁殖のために河川に再び舞い戻るハグロトンボの個体群を調査した。個体識別標識法を用いて採集個体に標識を付けた上で放逐し,その後の移動先を追跡・記録した。互いに最低500m離れた3ヵ所の森林で各々30〜40個体を標識して放したところ,森林間での移動は認められなかった。これらの森林に2〜300mの距離で近接している河川で個体数調査を行い,その際に標識個体を探索したところ,おおよそ1割程度の個体を再発見することができた。再発見の場所は標識した森林よりも上流に位置することが多かった。
〔発 表〕A-26,a-48


研究課題 4)湿地性スズメ目鳥類の個体群動態に関する研究
〔担当者〕永田尚志
〔期 間〕平成11〜15年度(1999〜2003年度)
〔目 的〕河川敷や湖岸に広がるヨシ原などの抽水植物群落で繁殖するスズメ目鳥類の年齢構成,性比,密度などの個体群構造の変動と生息環境の変化の関連を把握し,河川敷の生息環境が各種の個体群および種間関係に及ぼす影響を明らかにする。最終的には,河川敷に生息する鳥類群集および希少種のオオセッカの保全に役立てることを目的とする。
〔内 容〕河川の上流域に生息するセグロセキレイの標識個体群を長期間にわたって追跡した結果,いったん定着した個体は高い定住性を示し,年間の縄張りの移動距離(繁殖分散距離)は78m程度であり,雌雄差および年齢差は認められなかった。ラック法で得られた成鳥の年生存率の95%推定幅は0.58±0.04であり,個体群中の成鳥の割合(53〜62%)とほぼ一致していて,安定齢構成に近いと考えられた。
〔発 表〕A-44,a-84


研究課題 5)マルハナバチ導入に伴う寄生生物の持ち込みに関する研究
〔担当者〕五箇公一
〔期 間〕平成12年度(2000年度)
〔目 的〕近年,化学農薬にかわる農業資材として,天敵昆虫などの生物資材の利用が注目を集めつつある。人体および環境へのリスクが大きく低減されることが期待されているが,現在のところ,利用されている生物資材のほとんどが外国産の輸入種であり,これらが野生化し定着した場合,すなわち生物学的侵入が生じた場合,在来の生物相に影響を与えることも懸念される。ハウス栽培作物の花粉媒介昆虫として輸入されているセイヨウオオマルハナバチは世界中で大量に利用されており,一部の国では野生化している。本種は日本でも年間5万コロニーが輸入・販売されているが,検疫を一切受けておらず,国外の病原菌や寄生生物を持ち込む恐れがある。そこで,本研究では輸入マルハナバチ商品における寄生生物の寄生状況の調査を行った。
〔内 容〕輸入商品の抜き取り調査を行った結果,ハチ体内より寄生性ダニであるマルハナバチポリプダニを発見した。このダニはハチ成虫の気嚢から口針をハチ体内に差し込み,ハチの血液である血リンパを吸汁して繁殖する。商品の平均20%が感染していた。ダニに感染した個体と感染していない個体を同じ飼育ケースで飼育すると2週間でほぼ100%非感染個体にもダニは感染した。また,このダニは日本在来のオオマルハナバチおよびクロマルハナバチにも感染することが示された。今後輸入マルハナバチが野生化した場合,寄生性ダニも日本在来のマルハナバチ個体群を浸食する恐れがある。今回の実験結果は,ダニ以外の寄生生物の持ち込みの可能性も強く示唆するものであり,輸入生物資材の検疫のあり方を議論する必要がある
〔発 表〕A-13,a-29


研究課題 6)太陽掩蔽法における,新たなデータ処理アルゴリズムの開発に関する基礎的研究
〔担当者〕中島英彰
〔期 間〕平成12年度(2000年度)
〔目 的〕地球大気における大気微量物質や気温気圧の垂直高度分布を知ることは,地球温暖化などの把握やトレンド予測をする上でとても重要である。その垂直高度分布を得る方法として従来から衛星大気観測法である太陽掩蔽観測法が使われてきた。従来方法では観測データから単層のスペクトルを取り出すことが難しかった。そこで単層スペクトルを取り出すアルゴリズムとして,コンピュータトモグラフィーの原理を応用したフィルター補正逆投影法を開発し,より容易で高精度な解析手法の研究を行う。
〔内 容〕本年度には,まず最初に新データ処理アルゴリズムであるフィルター補正逆投影法の検証を行った。その結果,この方式が十分実用的であることがわかった。そのアルゴリズムを,実際のILASが観測した可視エアロゾル硝酸係数データに適応した結果,オペレーショナルなILASVer.4.20によるエアロゾルデータとよく一致することがわかった。
〔発 表〕A-39,a-59,63,66,71


研究課題 7)衛星センサー(ILAS/ILAS-U)データ処理におけるエアロゾル・非ガス成分及びガス成分の同時算出に関する研究
〔担当者〕中島英彰
〔期 間〕平成12〜13年度(2000〜2001年度)
〔目 的〕衛星からの大気リモートセンシングによって,ガス濃度とともにPSCを含むエアロゾル消散係数及びノンガス成分を求めることは,衛星のデータを科学的に利用していく上で大変重要な課題である。ここでは,「滑らかさの度合い」といった新たな制約をデータ処理アルゴリズムに加えることで,Levenberg-Marquardt非線形逆変換問題の解法に役立てていくことを試みる。
〔内 容〕本年度は,まず最初にILAS/ILAS-IIの透過率スペクトルを擬したシミュレーションデータの作成し,このシミュレーションデータを用いて,滑らかさ度合いの制約の強さの検討を行った。その結果得られた知見に基づき,実験室から得られたいくつかのエアロゾル・PSCの消散係数スペクトルを用いた検討を行った。さらに,このようにして得られたアルゴリズムを,実際のILASデータへの試験的適用することを試行的に行った。
〔発 表〕K-42〜47,A-40,a-61,73


研究課題 8)衛星センサー(ILAS/ILAS-U)データ処理における可視チャンネルからの気温・気圧の導出に関する研究
〔担当者〕杉田考史
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕衛星からの大気リモートセンシングによって,成層圏・中間圏の大気温度・気圧の情報を得ることは,そこでの気温トレンド解析等を行う上で非常に重要である。大気組成変動の影響は,対流圏よりもむしろ成層圏の気温に敏感に反映されると考えられている。これまでの二酸化炭素の放射吸収を利用した手法よりも高精度な観測が要求される。本研究では,酸素分子の大気バンドを利用した気温・気圧導出の高精度化を目的とする。
〔内 容〕高精度な大気温度導出のためには,その導出アルゴリズムにおいて精度の高い各種パラメータの決定が必要となる。本年度では,衛星センサーILASの可視分光器の軌道上での装置パラメータの評価を行った。また,この時点で出版されていた最新の分子分光学的データの入手を行い,これを利用した気温気圧高度分布の導出を行った。さらにILASから導出された結果を全球気象グリッドデータおよび二酸化炭素の吸収を利用した衛星検証データと比較・検討した。
〔発 表〕K-42〜47,A-25,a-46


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