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研究成果物


2.16 科学技術振興調整費による研究


5.国際共同研究(二国間型)


(1)日伊両国におけるダイオキシンの健康リスク評価に関する疫学研究

〔担当者〕

地域環境研究グループ 米元純三・曽根秀子
環境健康部
遠山千春・宮原裕一・小野雅司

〔期 間〕

 平成12年度(2000年度)

〔目 的〕
 低用量のダイオキシン類曝露によって,CYP酵素の発現や子宮内膜症の発症が実験動物で認められている。しかし,ヒトに関するこれらの情報は乏しく,ヒトにおいてダイオキシン類曝露量とその健康影響(CYP酵素の発現,子宮内膜症)との関係を明らかにする必要がある。我が国においてはダイオキシン汚染が想定される地域における住民のダイオキシン曝露量と健康影響との関係の調査が行われてきたが,廃棄物焼却場と血液中ダイオキシン濃度との間には明確な関係は報告されていない。一方,イタリアでは1976年に発生した事故により多量のダイオキシン類の曝露を受けた集団が存在し,継続した疫学調査が行われている。しかし,イタリアではCYP酵素の発現や子宮内膜症に関する情報は得られていない。本研究においては,ダイオキシン曝露形態の異なる日伊両国において,ダイオキシン類曝露量を相互に比較検討すること,また健康影響のうち特に子宮内膜症に焦点をあてて,日伊における発生状況や診断基準についての情報交換を行うことを目的とする。

〔内 容〕
 日伊両国のダイオキシン類曝露量を標準化するため,ダイオキシン類の分析法を比較し,ダイオキシンの高濃度曝露を受けた住民の血清サンプルについて,GC/MS法によるクロスチェックを行った。ダイオキシン類曝露に関する疫学調査に用いる生体影響指標として,ダイオキシン曝露により鋭敏に動くと考えられる薬物代謝酵素,CYP1A1,CYP1A2,CYP1B1をとりあげ,血液サンプル中のこれらのCYP類のmRNA発現の微量・高感度定量法を確立した。一方,子宮内膜症とダイオキシン類曝露量との因果関係を解明するため,日伊において,子宮内膜症患者のデータの収集を行い,子宮内膜症発症に関与する因子の両国における差異についての情報交換を行った。


(2)バイオエコシステムを導入した中国貴州省紅楓湖,百花湖流域における富栄養化抑制技術の開発に関する研究

〔担当者〕

地域環境研究グループ 稲森悠平・水落元之

〔期 間〕

 平成12年度(2000年度)

〔目 的〕
 アジア・太平洋地域のなかで開発途上国として位置付けられている中国では,富栄養湖における有毒アオコの異常増殖が顕在化しており,水資源の安全性確保が脅かされている。このため,富栄養化抑制対策の実行は緊急を要しており,その効果的対策技術の導入が切望されている。しかしながら,有毒アオコの発生実態調査とその抑制技術開発にはほとんど手のつけられていないのが現状である。このような状況を踏まえ,本国際共同研究は新たに国際的水環境の緊急課題としてあがっているWHO(世界保健機関)のガイドラインに位置付けられた青酸カリよりも強力な毒性物質に産生する有毒アオコに着目し,中国湖沼の富栄養化の実態調査を行うとともに水処理工学としてのバイオエンジニアリング,生態工学としてのエコエンジニアリングとを組み合わせたバイオ・エコシステムとしての富栄養化抑制技術の開発を行うことを目的とするものである。本研究開発を行うことで開発途上国に共通する湖沼の富栄養化環境問題に対する効果的対策手法の確立化が可能となり,健全な水環境創りに大いに貢献するものと考えられる。

〔内 容〕
 本研究においては,湖沼の有毒アオコの実態調査,バイオエンジニアリングとしての有毒アオコを捕食する微小動物のスクリーニング,エコエンジニアリングとしての再資源化可能な有用な水耕栽培植物の探索を主に行った。有毒アオコの実態調査では,中国貴州省の紅楓湖および百花湖を対象として有毒アオコの種類および毒性物質ミクロキスチンの現存量を明らかにした。すなわち,有毒アオコの種名は藍藻類のMicrocystis aeruginosa,Microcystis viridisで我が国に出現する種と同じであった。毒性物質ミクロキスチンの現存量は最大で0.113μg・l-1となり少ない傾向にあった。これは調査時期(10月)がアオコの最盛期を過ぎていたことが原因で,アオコ最盛期における現存量調査が必要と考えられた。しかしながら貴州省で毒性物質ミクロキスチンの存在が確認されたのは本調査が初めてであり,学術的に極めて重要な知見を得ることができた。また,有毒アオコを捕食する微小動物のスクリーニングでは,プランクトンネットを用いて湖水をろ過し,濃縮されたアオコを顕微鏡で観察したところ,一塊のアオコの群体の中に多数のアメーバが生存し,アオコの細胞を捕食しているのが確認された。このアメーバは小型のアメーバで糸状仮足を形成するタイプと指状仮足を出すタイプとに分けることができ,有毒アオコ捕食性の微小動物が中国貴州省の富栄養湖でも存在することが明らかとなった。また,再資源化可能な有用な水耕栽培植物の探索では,地域特性に適合した水耕栽培可能な植物を探索したところ,日本でも食用として利用されているクレソンが自生していることを確認し,これを活用した水耕栽培が可能なことが明らかとなった。
〔発 表〕B-18,19,b-54,55,79


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