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研究成果物


2.16 科学技術振興調整費による研究


3.流動促進研究制度


(1)ダイオキシン類と多環芳香族炭化水素類の複合毒性の評価に関する研究

〔担当者〕

環境健康部 宮原裕一

〔期 間〕

 平成11〜14年度(1999〜2002年度)

〔目 的〕
 ダイオキシン類はゴミ焼却等により日常的に発生し,そのヒト健康影響が懸念されている。しかし,我が国のダイオキシン類に関する疫学調査は始まったばかりであり,両者の因果関係は明らかにはなっていない。さらに,ダイオキシン類同様,燃焼により生じる他の化合物については,その発生量の多さにもかかわらず,その曝露評価と複合作用の解明が遅れているのが実状である。一方,我々は既にディーゼル排気ガス中にダイオキシン類及び多環芳香族炭化水素類が存在することを明らかにするとともに,ディーゼル排気ガス曝露により実験動物に多様な生体影響が生じることを明らかにしている。しかし,これら化合物群と生体影響との因果関係は明らかではない。本研究では,実験動物にディーゼル排気ガスを曝露し,その生体内でのダイオキシン類と多環芳香族炭化水素類の動態と両化合物の複合作用を解明し,ヒト疫学調査に有用となる知見を得ることを目的とする。

〔内 容〕
 本年度は,実験動物に0.3〜3mg-粒子/m3ディーゼル排気ガスを2または6ヵ月間曝露し,ダイオキシン類と多環芳香族炭化水素類の生体内での挙動を観察した。一方,排気ガス曝露チャンバー内のガスを採取し,ガス中のダイオキシン類と多環芳香族炭化水素類含量の測定を行った。
 ディーゼル排気中のダイオキシン類濃度は,10pgTEQ/g-粒子と低く,また,脂肪および肝臓中のダイオキシン類濃度は曝露群に比べ対照群の方が高く,ディーゼル排気曝露によるダイオキシン類の体内蓄積は認められなかった。一方,ディーゼル排気中の主要な多環芳香族炭化水素は,ナフタレン,フルオレン,フェナンスレンであり,その大部分はガス態であった。多環芳香族炭化水素類のうち蒸気圧の低いものが粒子とともに肺に沈着していたが,内蔵脂肪や肝臓ではそれらの顕著な蓄積傾向は認められなかった。以上の結果から,肝臓では多環芳香族炭化水素類により代謝酵素が誘導され,多環芳香族炭化水素類とともにダイオキシン類の排泄が促進されていると考えた。
〔発 表〕e-68


(2)胎盤の機能異常に着目した環境有害物質による胎仔の異常発達のメカニズムの解明

〔担当者〕

環境健康部 石村隆太

〔期 間〕

 平成12〜15年度(2000〜2003年度)

〔目 的〕
 環境中の汚染物質のなかには,日常生活における慢性的蓄積により,胎児の奇形,発育不全,流産や死産をおこす有害な物質が多く存在する。このような胎児発育への影響は母体には障害性を示さない極めて低濃度でおきる。これまで環境有害物質による胎仔への影響の研究は,胎仔への直接影響に関心がもたれており,胎盤や母体側(子宮)の機能に着目した研究は少ない。しかし環境中に存在する極微量の有害物質の多くは胎盤というバリアでまず防御されるため,多くの場合,胎盤機能の変調は胎仔影響に先行すると考えられる。例えば,酸化的ストレス作用を有するカドミウムのような重金属やPCBのような多環芳香属炭化水素は胎仔の発育不全をおこすことが知られている。また,胎盤は,妊娠期間中,卵巣と共にステロイドホルモンを分泌する器官であり,ステロイドホルモン撹乱作用を有する物質の投与により胎仔の子宮内死或いは分娩異常をおこすことが知られている。本研究では,リスク評価のための基礎研究として,有害物質による@酸化的ストレス作用とAステロイドホルモン撹乱作用に焦点を当て,胎盤の機能異常の結果引き起こされる胎仔の発育阻害のメカニズムを明らかにする。

〔内 容〕
 本研究では,有害物質による酸化的ストレス作用とステロイドホルモン撹乱作用に焦点を当て,主に以下の項目について研究を行う。1)妊娠ラットに有害物質を投与して,胎仔の発育不全や死亡をおこさせ,胎盤の組織レベルでの観察と,胎盤特異的なマーカー遺伝子の発現変化を調べる。2)胎盤のモデル培養細胞を用い,マーカー遺伝子の発現変化,子宮内膜モデルヘの浸潤能,ステロイドホルモン合成能等を調べ機能を明らかにしていく。3)機能が明らかになった遺伝子について,胎盤特異的な遺伝子破壊モデルを作成し,有害物質の曝露による胎盤・胎仔への影響を評価する。
 本年度は,初年度として1)の内容に基づき,妊娠動物への有害物質の投与と胎盤の解析を行った。環境有害物質として,次世代への影響という点で社会的に問題となっているダイオキシン(TCDD)を用いた。ラット妊娠中期に極低容量のTCDD(800および1600ng/kg)を投与すると,胎仔の死亡がおきることを観察した。このTCDD曝露ラットの胎盤について組織レベルでの観察を行ったところ,胎盤を構成する一つの細胞種であるグリコーゲン細胞において組織変化が生じていることを見いだし,さらに胎盤のグリコーゲンレベルが上昇することを明らかにした。また,胎盤のグルコース輸送にかかわるタンパク質の発現量を測定したところ,TCDD投与群において発現量が上昇していることが明らかとなった。以上の結果から,TCDD曝露により胎仔の死亡に先行して胎盤のグルコース動態の異常がおきていることが初めて示唆された。
〔発 表〕e-16〜18


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