〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
野生鳥類の絶滅は,環境要因による個体数の減少に始まり,末期には近交退化による不可逆的で急激な繁殖能力の低下によって加速されると考えられる。国立環境研究所動物実験施設には,鳥類の実験動物としてニホンウズラの近交系が系統維持されており,しかも近交退化の絶滅型と回復型とに分離している。そこで,まず近交系ウズラを用いて鳥類の近交退化メカニズムを解明し,次に鳥類実験動物で近交退化の事例を解析し,最終的には絶滅が危惧されている野生鳥類を救済するための具体的方策を検討するのが,本研究の目的である。
〔内 容〕
本年度は,実験用ウズラを用いて近交化に伴う繁殖能力の変化を把握するとともに,近交系ウズラ間での交雑試験を行い雑種強勢による繁殖能力の回復を図った。また,鳥類実験動物(ウズラ,ボブホワイト,ニワトリ)の卵形診断技術を開発し,種間・系統間比較を行った。以下に,主な成果を示す。
1)近交系ウズラ(H2及びL2系)の53世代にわたる繁殖能力を解析した結果,H2系は絶滅型へL2系は周期的回復型へ分離したことがわかった。すなわち,L2系のふ化率は回復型ながら増減サイクルを示すことがわかった。これらのモデルは,希少野生鳥類の繁殖能力を改善させるために有用な情報を提供するが,今回は適応度指数(産卵率×受精率×ふ化率×育成率)の有用性を検討した。その結果,育成率を除いても近交退化現象が解析できることがわかった。
2)ウズラ・ボブホワイト・ニワトリの卵形を画像処理し,卵形診断により種間・系統間比較が可能となった。また,H2系の平均卵形には絶滅の兆候が認められることが卵形不良の分析より明らかにされた。
3)近交系ウズラ間で交雑した結果,特定の家系のみで繁殖能力が向上することが確認できた。希少種の増殖を有利に進めるためには相性(Nicking)が重要であることわかった。
4)H2及びL2系のMHC構成を比較した結果,両系ウズラともサザン染色パターンが明確に分離しており,コンタミなく系統維持されていることが証明された。
5)近交系ウズラの種卵は,卵形異常・卵殻不良などにより孵化率が低下している。そこで,ミネラル添加装置を考案し,カルシウムを強化したところ,孵化率が約10%改善された。
〔発 表〕B-55〜57,b-187〜193,C-10〜11
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