2.15 国立機関原子力試験研究費による研究(原子力利用研究)
5.トランスジェニックマウスを用いた環境発がんにおける酸化的ストレスの関与の解明
〔担当者〕
〔期 間〕
平成11〜15年度(1999〜2003年度)
〔目 的〕
一般環境中ではヒトは放射線などの物理的因子と多種類の有害化学物質に曝露されており,ヒトがんの原因として環境発がんが問題となっている。これらの環境有害因子により誘発される腫瘍発生には個体差が認められていることから,人間集団における環境発がんのリスク評価の際には,個々人の感受性要因を解明する必要がある。また,放射線や種々の有害化学物質による発がん過程には,生体内で発生する酸化的ストレスの関与が指摘されている。そこで,本研究では,酸化的ストレスの除去に関与するタンパク質を過剰発現あるいは欠損したトランスジェニックマウスを用いて,放射線発がんや化学発がんにおける酸化的ストレスの関与を明確にすることにより,発がん感受性要因としての酸化的ストレスの重要性を明らかにし,その影響評価のための基礎的知見を得ることを目的とした。
〔内 容〕
強力な抗酸化作用を有するメタロチオネイン(金属結合タンパク質)のT型およびU型の発現を抑えたメタロチオネイン欠損マウスを用いて,7,12-dimethylbenz(a)anthracene(DMBA)単独経口投与による胃での腫瘍発生に対する酸化的ストレスの関与を検討した。17週齢雌のメタロチオネイン欠損マウスおよびその野生型マウスにDMBA(12.5mg/kg)を週1回6週連続で経口投与し,32週後に胃での腫瘍の有無を観察した。その結果,DMBAを投与したメタロチオネイン欠損マウスの前胃における乳頭腫の発生率は85%であり,うち50%に扁平上皮がんの形成が認められた。一方,DMBA投与による野生型マウスの乳頭腫発生率は20%で,扁平上皮がんの形成は認められなかった。以上の結果より,メタロチオネインは,DMBA単独経口投与による胃での腫瘍の発生に対する重要な感受性因子であることが判明した。また,メタロチオネインは強力な抗酸化作用を有するタンパク質であることから,この発がんのメカニズムには酸化的ストレスが深く関与していることが示唆された。
〔発 表〕e-32,34,35
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