2.15 国立機関原子力試験研究費による研究(原子力利用研究)
4.GC-AMS:加速器による生体中,環境中微量成分の超高感度追跡手法の開発
〔担当者〕
| 化学環境部 |
: |
柴田康行・田中 敦・米田 穣・内田昌男*(*共同研究員) |
| 国際室 |
: |
植弘崇嗣 |
| 地域環境研究グループ |
: |
森田昌敏 |
〔期 間〕
平成9〜13年度(1997〜2001年度)
〔目 的〕
14C等の放射性同位体は,生体中の様々な物質代謝経路の追跡のためのトレーサーとして,また環境中の汚染物質の起源を探る有力なパラメータとして(現生生物が14Cを一定濃度含むのに対し石油石炭起源の物質は含まない)重要な役割を演じている。しかしながら,従来の方法では,目的とする14C含有物質を手間をかけて分離・精製し,その中に含まれる14C量を液体シンチレーションカウンター等の感度の低い分析手法で測定して追跡を行っていた。本研究では,14C等の長寿命放射性同位体の先端的高感度分析手法である加速器質量分析法(AMS)と,微量成分の高度の分離手法である多次元ガスクロマトグラフ(GC)とを組み合わせて,生体中,環境中の微量化学物質中の微量放射性同位体を個別に追跡できる,新しい高感度な分析システムを開発することを目的とする。
〔内 容〕
分取GCシステムを計画通り二次元に拡張し,多様な化合物の環境試料からの単離精製に対応できる体制を整えた。グラファイト化の必要量を減らしてより少ない試料量にも対応できるよう,体積を減らし反応中の圧力を監視できるようにした新たな微量調製ラインを開発し,従来法の標準であった1mgより2桁低い,Cとして10μgの標準試料,実試料のグラファイト化と分析に成功した。自然の物質循環に関する基礎的なデータを取得するため,陸地から遠く離れた北太平洋日本海溝脇でボックスコアラーを使って堆積物を大量採取し,短鎖,長鎖の脂肪酸の個別年代を測定した。また,同じ層でみつかった底棲有孔虫の殻を拾い集めて年代を測定した。その結果,表層植物プランクトンやバクテリアのバイオマーカーとされる短鎖脂肪酸の方が,陸上植物起源とされる長鎖脂肪酸より2千年前後若い年代を与えた。長鎖脂肪酸同士の比較では,脂肪酸の長さが長くなるほど年代も少しずつ古くなる傾向を示し,その原因が注目された。一方,底棲有孔虫年代は長鎖脂肪酸に近い年代を与えたが,この海域では深海からの湧昇流の影響で,浮遊性有孔虫と底棲有孔虫との間に千年程度の年代差があるものと考えられており,その差を差し引くと同じ植物起源のバイオマーカーの年代に近づくこともわかった。
一方,陸上ピート堆積層の年代を物質群毎に測定したところ,中性脂質画分が一貫して最も古い年代を与えた。フミン酸,フルボ酸も近いものの,少し若く出る傾向があり,セルロース画分はいずれの層でも数百年若めの値を与えた。以上の結果は,植物が死んで堆積する際に,地上部と地下部(根)が違う深さに影響を与えるために,地下部に多く含まれる物質の影響がより古い層にまで及んで見かけの年代を若くすると考えるとつじつまがあう。これまで陸上堆積物の年代決定は土壌有機物丸ごとで行われることが多かったが,こうした方法では植物の根の影響から実際の堆積年代より若い年代を与えてしまう恐れがあり,中性脂質など基本的に地上部にしか含まれない物質,物質群を選んで年代決定することが重要であることを示す結果と言える。
〔発 表〕D-17,18,30,d-12,13,18, 20,21,23,31
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