2.14 国立機関公害防止等試験研究
3.規制項目等有害元素による地下水高濃度汚染実態解明と修復技術に関する研究
〔担当者〕
| 地域環境研究グループ |
: |
西川雅高 |
| 化学環境部 |
: |
中杉修身・瀬山晴彦・田中 敦 |
〔期 間〕
平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕
有害物質による土壌・地下水汚染が顕在化し,その修復対策が緊急の課題となっている。特に汚染源が面的に広がりを持つホウ素などによる地下水汚染は,環境庁や自治体調査によれば環境基準不適合率が4%を超過し,トリクロロエチレン等による不適合率を上回っている。このような地下水汚染現象は丘陵型農耕地(地下水上流地域であることが多い)に顕在化しており,地下水下流域での伏流水や地下水利用に深刻な影響を与えている。そのような地下水汚染が著しく進行している地域では,ホウ素のみならず,ニッケル,アルミニウム,コバルト,アンチモン等有害な規制項目成分等が指針値を超える高濃度で検出されることが多く,ニッケルのような陽イオン状態で溶存する成分と,ホウ素のように含酸素陰イオン状態で溶存する成分による汚染が混在する特徴がある。そのような汚染が,複数の原因物質による混合汚染なのか,連鎖的二次汚染によるものなのか現在のところ全くわかっていないため,的確な対策の方針が立てられない状況にある。こうした背景を基に,本研究では,ニッケル,ホウ素,アンチモンなど規制項目等による地下水汚染機構を解明し,さらに地下水利用に際して安定かつ低コストな無害化処理技術の開発を目的とする。
〔内 容〕
本研究では,汚染の顕在化している静岡県,岐阜県,福岡県で,汚染地下水の滞留する地下環境を把握するために調査掘削や既存井戸を利用して対象土壌や地下水を採取する。この試料を用いて,規制項目等有害成分の形態別分析手法を確立する。地質資料や土地利用状況の変遷資料等の既存資料との総合的解析は,対象地域自治体の協力を得て共同で行い,汚染されやすい土質機構や地下水帯水層の有害成分による地下水汚染機構の解明を目指す。汚染された地下水や伏流水については,その用途および各自治体の現場に対応した低コストな水処理/修復技術の開発を国及び自治体研究機関の共同研究として実施する。研究の内容は,以下の分担課題に分類し,国立公衆衛生院,野菜・茶業研究所との共同研究により,実施される。
(1)地下水汚染機構の解明に関する研究
地方自治体および国立試験研究機関の協力のもとに収集した施肥や農薬等原単位データを加味し地下浸透機構について解明する。各汚染成分の偏在状況,汚染源や地下水源の特定,汚染評価図の作成を行う。
(2)高感度分析法,形態別分析法の開発に関する研究
水素,酸素,窒素,炭素,ホウ素等は,同位対比の違いから汚染機構や汚染物質の変動予測に有効なため,それらの高精度同位対比分析法の確立を行う。地下水中の存在形態を把握することは,有害金属の毒性評価や処理技術を評価する上で重要であると考えられることから,LC-ICP/MS法等の手法を用いて,化学形態別分析法の検討を行う。
(3)汚染地下水の修復・低減化技術の確立
溶存成分の除去は,NF膜および低圧RO膜による膜分離方式による技術について検討し,茶園溶脱地下水を効率的に処理できる装置を検討する。ニッケル,アンチモン等の有害金属を対象にして,汚染地下水を飲用に用いた場合にも人への健康影響リスクの低減化が可能となるような処理技術に関する研究を行う。
〔成 果〕
本研究の対象地域は,農業活動によって地下水汚染が生じている可能性が高く,野菜・茶業研究所との共同で汚染実態と施肥との関連性を明らかにするためのモニタリングに着手した。ニッケル,アンチモン等の汚染は,硝酸による高濃度汚染地域と一致しており,硝酸による二次汚染である可能性が高い。それゆえ,本年度は硝酸汚染機構の把握を目指し,肥料の硝酸化機構解明のための同位体比分析技術の確立を行った。水環境試料中の窒素同位体比分析は,熟練した前処理技術が要求されるだけでなく,分析操作も複雑であり,一日に分析できる試料数に限りがある。元素分析計ー同位体比質量分析計を組み合わせた装置を用い,溶液中の硝酸態窒素分を固体化後測定する分析方法の開発を目指した。本法を用いれば,従来法の10倍の試料数が1日に分析可能となる。また,アンチモン等含酸素イオン種は,その地下水中での化学形態が複雑である。形態別分析方法の開発と修復技術の開発にあたっては,国立公衆衛生院に参画いただいた。微量有害元素の形態分析には,LC-ICP/MS法による条件を探索した。現地フィールドでは,採水だけでなく,水門学的調査と農業活動の聞き取り調査も開始し,汚染機構解明のための基本データの蓄積も開始した。
〔発 表〕B-84,86,b-212,216〜218,219
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