2.11 内分泌撹乱化学物質総合対策研究
4.環境ホルモン対策の総合化に関する研究
〔担当者〕
| 地域環境研究グループ |
: |
森田昌敏・兜 真徳・田邊 潔・近藤美則・若松伸司・松橋啓介・桜井健郎・曽根秀子・新田裕史・松本幸雄 |
| 社会環境システム部 |
: |
森口祐一・森 保文・寺園 淳 |
| 化学環境部 |
: |
中杉修身・白石寛明 |
| 環境健康部 |
: |
小野雅司 |
〔期 間〕
平成11年〜13年(1999〜2001年度)
〔目 的〕
環境ホルモン対策として2つの目的で研究を行う。1つは対策技術的研究として行うものであり,具体的にはダイオキシンの分解処理についてであり,土壌等に残存するダイオキシンを消失させ,そのリスクを低減させる。もう一つは,環境ホルモン及びその影響と考えられる事象等についての情報システムを整備し,環境リスクの総合的な管理に役立つツールを作成することである。
〔内 容〕
(1)環境ホルモンの分解処理要素技術に関する研究
ダイオキシンは難分解性の芳香族化合物であり過去に放出されたダイオキシンはその物理化学的症状に応じて要素処理技術として,(1)物理的処理法,(2)化学的処理法,(3)生物学的処理法を選択する。当面の課題は水土壌圏の保全が必要なことから水質及び土壌を対象とした新しい処理技術を開発することとする。実験室内のモデル実験により土壌中のダイオキシンを無公害的に抽出する技術,抽出されたダイオキシンを化学的或は光化学的に分解するプロセスについて検討し,これらについて最適な条件等を明らかにする。また土壌に含有されるダイオキシンについては生物化学的な処理法及びその延長として植物系を用いた処理法を検討する。
(2)環境ホルモン等の多様な環境リスクの評価と管理のための統合情報システムの構築に関する研究
本課題は,多様な環境リスクの管理に関して,さまざまな主体の参加のもとでの科学的知見に基づく透明な意思決定を支援のために,(1)環境リスク要因物質の環境排出推計モデルの開発,(2)環境中動態モデル・暴露評価モデルの開発,(3)環境リスク評価・管理のための統合データベースの構築,多様な環境リスク管理のためのコミュニケーション手法に関する研究を実施する。
〔成 果〕
(1)環境ホルモンの分解処理要素技術に関する研究
汚染された土壌からダイオキシン類を除去する方法の一つとして,水による洗浄法について検討した。水は環境にやさしい溶媒であり,またその極性は高温下で急速に低下し,脂溶性物質の溶解性が高くなる。
ダイオキシン類を含有する土壌に高温・高圧条件の水を通じ,土壌からの除去,水への移行,異性体濃度の変化について調べた。その結果,高温・高圧の水によって,土壌からダイオキシン類が効率よく除去されることが確認できた。除去率は300℃,250気圧の場合,PCDDが98.7%,PCDFが91.2%,CO-PCBが82.8%であり,大部分のダイオキシン類が土壌から除去された。洗浄水からは,それぞれ6.22%,18.4%,34.8%のPCDD,PCDF,CO-PCBが検出されたが,検出されなかった残りの部分(PCDD:92.8%,PCDF:72.8%,CO-PCB:48%)は,分解されたものと推測できる。
また除去率には,ダイオキシン類の異性体あるいは同族体によって違いがみられた。土壌中のダイオキシン類同族体組成は,洗浄前には高塩素置換体が多かったが,洗浄後には低塩素置換体の量及び割合が増加していた。なお,洗浄水中ではさらに低塩素置換体が中心の組成となっていた。条件を変えた実験でも,同様の結果が得られており,脱塩素反応が起きている可能性が示唆される。しかし,異性体組成の変化は,やや複雑であり,解析のためには更に実験を続けて情報を収集する必要がある。しかし,全体としては,土壌中のダイオキシンは減少しており,TCDD毒性等量(TEQ)も経る傾向にあった。しかしながら,TEQの減少割合は,実濃度ほど大きくなかった。特に抽出水の中にかなりの濃度で検出された。この原因は,TEQ毒性等価係数(TEF)の小さいOCDDなどが,脱塩素反応を経て低塩素化物(大きなTEFを持つ)に変化し熱水に溶解したためでないかと推察している。従って,水洗浄にかかわる温度や酸化剤の使用等によって,分解反応を促進することができれば,さらに無害化が可能になると思われる。併せて,洗浄水の処理法を検討する必要がある。
(2)環境ホルモン等の多様な環境リスクの評価と管理のための統合情報システムの構築に関する研究
1)ダイオキシンに関するケーススタディとして,発生源情報および環境濃度情報の整備を行った。厚生省および通産省による排出量調査等の資料に,独自推計を加え,全国のダイオキシン排出量推計マップを作成した。小型炉からの排出,過去に使用された農薬中の不純物などが今後検討すべき優先事項である。一方,環境濃度については,平成10年度に環境庁が実施した一斉調査から,大気および土壌についてのデータを入力した。こうして整備した情報を用いて,発生源の分布と,大気中および土壌中濃度分布との地理的関係を解析した。都道府県単位で面積あたり排出量と環境濃度の平均値を比較した。また,GISのバッファー集計機能を用いて,個々の環境濃度観測点から一定距離範囲内にある発生源の排出量を集計することにより,排出量と環境中濃度の相関を解析した。両者の間には相関がみられたが,大きく外れる点もあった。産業系排出については個々の施設の値ではなく全国平均の排出原単位をあてていること,未把握の発生源が存在することなどがその原因として考えられる。
なお,暴露評価に関して,大気からの直接暴露割合は小さく,全国的にダイオキシン発生量と大気中濃度が下がってきていることなどから,詳細な濃度分布の予測は行っていない。ダイオキシンは極めて複雑な環境挙動をし,最終的には食品を介して曝露されるため,平成11年度に系統的・広範に行われた水,底質,水生生物調査の結果を取入れ,多媒体モデルの利用と検証を目指すことが今後の課題である。特に,寿命の長いダイオキシン類を正確に評価しうる非定常モデルの導入,産地と消費地が異なる食品の流通を考慮した暴露予測が今後必要である。さらに,底質コアによる環境汚染の歴史解明の成果も反映しながら,人体蓄積量の経年的変化を説明しうるような曝露量,曝露経路の解明を行う計画である。
2)ベンゼン,ディーゼル排気粒子(DEP)等の自動車関連物質に関するケーススタディとして,道路交通センサスによる交通量データをデジタル道路地図の位置情報と結びつけた道路データベースを構築し,全国の幹線道路について,車種別排出係数を乗じることによって,自動車から排出されるベンゼン,DEP,多環芳香族などの排出量分布を推計するシステムを構築した。このシステムによるデータは,排出量分布と呼吸器疾患の有症率との関係等に関する疫学的解析等に利用可能である。
3)化学物質の環境への排出をそのライフサイクルの観点からみると,製造段階よりも,それを利用した製品の使用段階や廃棄段階における排出を重視すべき場合が多くあるが,こうした排出は,PRTR制度では行政が推計するとされている非点源に相当し,その把握手法の整備が急務である。そこで,製品の使途を追跡して生産から廃棄に至るマテリアルフローを把握することにより環境への放出段階とその地理的分布を推計する手法の開発を試みることとし,フタル酸エステルおよびビスフェノールAへの適用に着手した。これら自身の製造,これらを原料,添加剤として製造される塩化ビニル樹脂・ポリカーボネート樹脂・エポキシ樹脂の製造,これら樹脂を利用した製品の用途などについて,関連統計資料および関連業界へのヒアリングをもとにしたマテリアルフローの推計に着手した。
4)河川関係のデータの収集および解析ツールの整備として,建設省および環境庁が河川について行った水質調査,魚類調査などの調査データをGISに入力・表示し,プラスチック添加剤,人畜由来の物質などによる汚染の地理的分布状況を把握するとともに,これと流域の状況との関連の解析に着手した。また,内分泌撹乱物質の生態系への影響を考える上で河川水は重要な媒体であることから,河川水中濃度と流域の発生源との関係を解析するため,GIS上で河川流域ごとに発生源を集計し,観測地点を指定することによりその上流域の発生源負荷を積算する機能の開発に着手した。そのケーススタディの対象として,多摩川・荒川流域,淀川流域,信濃川流域の3地域を選定した。一方,人々の生活に由来する物質など,下水道,下水処理施設を経由して河川に流入する物質に係る解析を支援するため,下水集水域と放流点との関係をGIS上で結び付け,放流点に寄与する排出源を探索・集計する機能についても開発に着手した。
5)いわゆる環境ホルモン問題において,出生における男性の比率の減少について言及される場合があることから,国勢調査による1kmメッシュ単位の年齢階級別人口データを用いて,地域ごとの出生比(男女比)の偏りについて検討した。市町村単位で別途把握されている出生比と比較すると,出生後の転入・転出の性別による偏りに起因するとみられる差異がある地域が一部にみられたが,両調査の傾向は概ね一致し,このデータが,市町村よりも細かなスケールにおける環境要因による性比への影響を解析に利用できる見通しが得られた。5年おきの国勢調査のデータを全国について過去に遡及して収集し,過去20年分のデータについて,出生の男女比の偏りの地域分布を把握した。
6)ダイオキシンや環境ホルモンに係るリスクコミュニケーションについての基礎的検討のため,これらの問題に対するさまざまな主体の認識についての予備調査を行った。また,各種主体間でのコミュニケーション手法について,本課題に先行する研究課題で取り組んだ比較リスク法の成果とりまとめと本分野への適用可能性の検討を行った。
〔発 表〕B-101,B-102,B-105,B-111,b-228,b-255,b-259,b-261,b-262,b-263,b-268
|