2.11 内分泌撹乱化学物質総合対策研究
1.環境ホルモンの新たな計測手法に係る開発研究
〔担当者〕
| 地域環境研究グループ |
: |
森田昌敏・菅谷芳雄・多田 満・国本 学 |
| 化学環境部 |
: |
白石寛明・堀口敏宏・白石不二雄・彼谷邦光・柴田康行 |
| 環境健康部 |
: |
青木康展 |
| 生物圏環境部 |
: |
畠山成久 |
〔期 間〕
平成11年〜13年(1999〜2001年度)
〔目 的〕
内分泌攪乱物質(環境ホルモン)の微量分析と迅速スクリーニング法によって環境中における環境ホルモンの種類と量が把握できることになる。種類と量の把握から環境ホルモンの将来予測が可能となるはずである。以上の理由から,本研究では 1)環境中の内分泌攪乱物質(環境ホルモン)の微量計測法の開発に関する研究,2)環境ホルモンの新たな生物検出法に関する研究,の2分野により内分泌攪乱物質(環境ホルモン)の環境中における汚染実態を明らかにする。
〔内 容〕
1.環境ホルモンの微量計測法の開発に関する研究
超微量で生物の根幹となる生殖機能を狂わせる物質(外因性内分泌攪乱物質)を定性定量にするには,新たな有機化学物質の微量分析の開発が必要である。超微量分析としては活性物質の定性(化学構造),定量,細胞内分布,体内分布を対象とし,誘導体化後GC/MS法の応用をエストラジオール及びフェノール類に対して行った。また,新たな方法としてLC/NMRを用いた環境ホルモンの同定手法,LC/MS/MS法を用いた環境ホルモンの定量分析手法,加速器MS法等について検討した。また選択的な吸着法がクリーンアップ法について予備的な検討を行った。
2.環境ホルモンの新たな生物検出法に関する研究
陸水系のリアルタイムバイオモニタリング手法,底生生物種(ユスリカ,二枚貝等)を用いた繁殖障害試験法,魚類の性行動変化および生殖機能を指標とした検出手法,巻貝の雄性化を指標とした生物検定法を検討した。
巻貝の雄性化を指標とした生物検定法の確立を目指す一環として,雄性化の進行過程(雌におけるペニスと輸精管の発達過程,陰門閉塞と卵嚢腺の摂護腺化並びに卵巣内での精子形成の進行過程)を類型化した。また女性ホルモン様作用を有する化学物質(代表としてノニルフェノールとビスフェノールAを選定)が巻貝の雄性化に及ぼす影響について,イボニシを用いた筋肉注射試験により検討した。また巻貝に雄性化を引き起こすことがすでに明らかとなっているトリブチルスズとこれらの女性ホルモン様化学物質との同時曝露(筋肉注射)試験を併せて実施し,その相互作用についても検討した。また,ヒトエストロゲンリセプターとの競合結合を用いた生化学的検出法,イーストを用いたTwo Hybrid法,MCF-7等の哺乳動物およびヒトの細胞を用いた女性ホルモン作用の検定法,環境ホルモン物質によって哺乳動物細胞で誘導される未知タンパク質及び遺伝子を指標として用いることによりホルモン活性の検出する方法等について検討を行った。
〔備 考〕派遣技術員 芹沢滋子,根岸浩美,宮田絵理
〔成 果〕
内分泌攪乱化学物質の汚染実態の解明の上で,本課題1がまず最初に手をつけなければならないものであった。本年度の内分泌攪乱化学物質の研究において本課題のなかでも迅速な生物検定法について経験と技術の習得を行なうことが必要であった。環境庁のモニタリングのための分析法について評価を加え,改善のための知見や,より選択性の高い分析法に関する情報を蓄積した。17β-エストラジオールの分析は従来ELISA法により行なわれていたが,市販キットによって測定値が異なること,またかなり高い値が報告された。このため高分解能GC/MSを標準的な分析手法として本年度の調査は行なわれる。この根拠として本課題で行なわれた水中ビスフェノール分析法の研究がある。
特異的な検出能を持つクロマトグラフィーの応用面で進展があった。N-CLを用いたガスクロマトグラフ質量分析法及び電気化学検出法を用いた高速液体クロマトグラフィーにより,水中の10pptレベルのアルキルフェノール類が容易に検出でき,ルーチン的に利用できるものとなった。LC/MS/MS法及びLS/NMR法は予備的な検討が開始された。
天然の女性ホルモンであるエストラジオール・エストリオール・エストロン及びその抱合体の固相カラムを用いる抽出法の検討を行ない,アミド基を有する固相カラムを用いることにより,良好な回収が得られた。
環境ホルモンの選択的濃縮法を開発するために,Molecular Inprinting法を用いてビスフェノールAの選択的吸着高分子を合成した。
内分泌攪乱作用をプリスクリーン的に検出し,あるいは環境中の内分泌攪乱物質の検出のための高感度な生物検定法の開発と利用を進めた。内分泌攪乱作用のin vitroの検出法として,イーストを用いたTwo-Hybrid Systemによる方法リセプターとの競合結合を観察するELISA法及び蛍光偏光解消度測定法,ヒト乳がん細胞(MCF-7)の増殖を観察する方法の比較試験を実施した。
イーストを用いたTwo-HybridSystemによるエストロゲンアッセイでは,その簡便化,高感度化のための改良を行ない,96%ウェルマイクロプレートと化学発光性を組み合わせることにより,多試料を迅速かつ高感度に測定できる手法を開発した。
免疫系を介する作用を見るため,トリブチルスズ,ベンズ(a)ピレン等を妊娠ラットに経口投与し新生仔のリンパ球の自己反応性T細胞の抑制する比率を検討した。比率が低下し自己免疫反応が起きやすい状態になることが推察された。
また新たな系としてはヒト神経細胞腫NB-1細胞を用いて予備的検討を行った結果,NB-1細胞における神経突起の伸展に影響を及ぼすことを明らかとした。内分泌攪乱物質の作用により特異的に発現される遺伝子をジーンアレイ法を用いて行った。また,同様に特異的に発現されるタンパク質の同定を二次元電気泳動法とアミノ酸マイクロシークエンス法により行ったところ,エストラジオールの作用により,肝細胞で3種類のタンパク質の合成が促進されることが明らかになった。そのうちの1種類はトランスフェリンと推定される。内分泌攪乱物質を含むことで知られているディーゼル排気への曝露により,6種類のm-RMA発現が増加した。ジーンアレン法以外にDiffential Display法等を用いて内分泌攪乱物質による発現する遺伝子の解析が可能であった。
〔発 表〕b-159,b-166,b-248,b-249,b-252,b-266,b-272,b-273,b-274,D-3,D-11,D-19,D-20,D-21,d-7,d-35,d-36,d-37,d-38,d-39,d-40,d-41,d-42
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