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研究成果物



2. 調査研究

2.1 概 要

1.地球環境研究グループ 2.地域環境研究グループ 3.社会環境システム部 4.化学環境部 5.環境健康部 6.大気圏環境部 7.水土壌圏環境部 8.生物圏環境部 9.廃棄物研究部 10.地球環境研究センター


1.地球環境研究グループ

 当研究グループは,1990年度の発足時より,地球環境の諸問題ごとにチームを結成し,中核の研究を自ら推進するとともに,地球環境研究総合推進費を中心として,内外の研究を組織化しながら,環境保全に有効な科学的知見の集積と利用に努めてきた。環境研究所の独立行政法人化を機に,当研究グループはいったん解散し,2001年度から新たな組織に再編成されて活動することになった。
 温暖化影響対策研究チームでは,アジア地域の研究者と共同して,地球温暖化対策とこの地域での経済発展との統合政策を評価するモデル開発に着手し,温室効果ガス削減方策や環境投資が地域の環境負荷改善に与える役割について検討するとともに,温暖化対策の費用や対策がマクロ経済に与える影響を評価した。また,京都メカニズムを活用した費用低減の方策について検討した。
 温暖化現象解明研究チームでは,温室効果ガスの物質循環に関する観測研究を,地球環境研究センターモニタリング事業と協力して行った。地上観測点・船舶・航空機という立体的な観測網による観測結果に加え,同位体比,大気酸素濃度測定など進んだ観測手法を組み合わせ,陸域と海洋の二酸化炭素吸収量を解析する研究,森林の二酸化炭素吸収量変動を解析する研究,太平洋の二酸化炭素吸収量を解明する研究などをすすめた。
 衛星観測研究チームにあっては,1996年10月から1997年6月まで観測を行った環境庁(現在は環境省)のオゾン層観測センサー衛星センサーILASのデータ検証ならびにデータ解析を行った。最新のデータ処理アルゴリズムであるVersion5.20データと,検証実験キャンペーン期間中のキルナ(スウェーデン)およびフェアバンクス(アラスカ)における大気球観測データ,オゾンゾンデ観測データ,HALOE,SAGE II,POAM II等他衛星による観測データ,POLARISキャンペーン期間中のER-2航空機観測データ等とを比較することにより,Version 5.20によるオゾン,硝酸,二酸化窒素,亜酸化窒素,メタン,水蒸気,可視エアロゾル硝酸係数の鉛直分布データ質が十分に高く,科学的解析に利用可能なことを実証した。
 オゾン層研究チームでは,成層圏プロセスを含んだ大気大循環モデル(AGCM)ならびにAGCMをベースに成層圏気象場にナッジングさせた化学輸送モデル(CTM)の開発を行い,極渦内の空気塊と中緯度大気との混合過程などに関する知見を得た。また,成層圏エアロゾル上での不均一反応を評価するための反応データの決定もなされた。極域オゾン変動の要因を明らかにするため,極渦の活動度(強度やサイズなど)の長期変動の解析も行われ,北半球での極渦活動度の短期・長期変動実態を明らかにした。
 地球環境を汚染する酸性汚染物質の半分は硫黄化合物,約半分は窒素化合物であり,酸性雨研究チームではこれらの硫黄並びに窒素化合物の発生,移流拡散,沈着,森林生態系影響,陸水生態系影響等に注目し,航空機観測,地上観測,生態系試料の採取と分析等を行い総合的な研究を推進している。西暦2000年にはつくばで開催された酸性雨国際学会においてその研究成果の多くを発表し,これらはWater Air and Soil Pollution誌の特集号として2001年に印刷発表される。
 人間活動の影響は海洋への有害化学物質,リンや窒素などの負荷を増加させるとともに,ケイ素などのように自然に供給される物質を減少させる傾向がある。海洋研究チームでは,定期航路を利用した継続的観測により,アジア海域の海洋生態系変動や微量有害化学物質分布の動態に関する研究を行っている。また,サンゴ礁生態系の長期変化の検知のために,水中立体画像の継続的取得・アーカイブ作成に関する研究を行っている。
 森林減少・砂漠化研究チームでは熱帯林の保全・研究管理を目指して,択伐などが森林の機能にどのような影響を与えるかについて調査を行っている。本年度は森林伐採が森林の構造,種組成や炭素循環系及び林冠構成種の遺伝的多様性に与える影響などについてマレーシア半島部にあるパソ保護林及びその周辺域で調査を行った。また熱帯林の社会的評価の経済価値をとらえることを目的としてマレーシアにおいて仮想評価手法に基づいた調査を行った。
生物多様性保全の分野では,地理情報システムを活用しながら地理的スケールにおける野生生物の動態を把握し,それをモデル化することを目指している。調査地を特定の水系単位で設定して,その中で土地利用分布から様々な生物の分布・生態までの情報を空間的に,かつ経時的に調査し,生物多様性の保全に寄与する知見の集積に努めている。


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2.地域環境研究グループ

 地域環境研究グループは“環境保全対策研究”と“環境リスク評価環境”の2分野及び“開発途上国環境技術共同研究”分野について9課題のプロジェクト研究を実施した。それら成果の要点を研究チームごとにまとめると以下のようである。
 海域保全研究チームは,社会的関心の高い干潟を含む浅海域において,物質循環や生態系の機能に関する研究を行い,浅海域生態系の特徴や底生生物による水質浄化能などを明らかにした。播磨灘での調査・実験から,微小生物食物連鎖や,浮遊生態系から底生生態系への食物連鎖を介した物質循環についての解明が進んだ。
 湖沼保全研究チームは湖水中の有機物の特性・起源を適切に把握する手法を確立し,湖水中での難分解性有機物濃度上昇の原因を検討し,さらに湖水有機物の質的・量的変化が湖沼環境・水道水源としての湖沼水質に及ぼす影響を評価した。霞ヶ浦を調査した結果,トリハロメタン前駆物質として,フミン物質よりも親水性成分の重要性が認められた。
 都市大気保全研究チーム及び交通公害防止研究チームは,VOCによる大気汚染および光化学スモック等の二次的汚染の解明のために,走行中の自動車からの排出量調査データ解析などを行って発生状況の把握に努めるとともに,データ解析プラットフォームとしてのGISシステムの運用・評価を行った。また,公共交通,自動車交通,電気自動車等の次世代交通システムのLCA等による比較評価を行い,今後の交通システムのあり方に関する検討を進めた。更に,沿道大気汚染機能解明のための風洞実験や,広域・都市大気汚染解析のための数値モデルの利用に関する研究を行った。これとともに,PM2.5・DEPの発生源推定と環境動態把握に関する予備的な調査・研究を実施した。
 有害廃棄物対策研究チームは,廃棄物中に含まれる有害物質が埋立処分の過程で環境に与える影響を評価する上で不可欠な計測手法の開発と実用化を図るとともに,有害化学物質の溶出挙動,分解挙動などの解明を行った。特に廃プラスチックに含まれる添加物が水系の環境汚染の原因であることを示した。
 水改善手法研究チームは,とくに,河川流域における化学物質の動態のモデル化を支援するための地理情報システムの設計,構築に重点を置いた。環境ホルモン等の多様な環境リスクの評価と管理を目的として,リスク要因についての発生源・環境の状況・影響等にかかわる情報とこれらの相互関係を記述するモデルを地理情報を核として統合した情報システムの構築を進めた。
 環境リスク評価を対象としている分野では,4つの特別研究が行われた。研究内容は,健康リスク評価と生態系リスク評価とに大別できる。
 新生生物評価研究チームは,汚染土壌・地下水の浄化に有用な浄化微生物を探索し,浄化機構を解明するとともに,土壌環境中において浄化能を発揮できる環境浄化型微生物を創生した。さらに,分子生物学的手法を応用した浄化微生物の検出法並びに汚染土壌・地下水中における分解活性の評価法を開発した。
 化学物質健康リスク評価研究チームは,環境中のホルモン様化学物質としてダイオキシンをとりあげ,子(次世代)への影響,とりわけ生殖機能,内分泌機能,免疫機能への影響について実験動物を用いて検討を行い,リスク評価のための基礎データを得た。
 都市環境影響評価研究チームは,人間個体レベルのリスクを評価するため,ヒトを対象とした低レベル電磁界暴露実験動物及び培養細胞系を用いた,低〜高レベル電磁界暴露実験を行った。またヒト集団における曝露レベルを6世帯における1年間の長期連続測定や送電線近接の20世帯の測定により解析した。
 大気影響評価研究チームは,浮遊粒子状物質の中の大部分を占めるディーゼル排気微粒子(DEP,PM2.5粒子)を対象物質として,ディーゼル排気(DE)の暴露実験と組織培養等を含むin vitroの実験を組み合わせることにより,その中のどのような物質がどのような機序で心血管系に傷害を及ぼしているかを明らかにするために,本年度は,DEをラットに長期間暴露(1年半)すると,呼吸器におけるガス交換機能の低下と,異常心電図の出現率が高くなることを見いだした。さらに,DE暴露雌マウスから生まれた子供の成長に影響が及ぶことが推測された。また,DEPは細菌毒素に関連する肺傷害を顕著に増悪した。
 化学物質生態影響評価研究チームは,内分泌撹乱物質の生態影響を明らかにするために魚類及び無脊椎動物を用いた試験法と影響メカニズムの解明を行っている。本年度は,遺伝子型が形態から分別できる系統のメダカを用いてエストロジェン活性物質による性転換,中間性,成長速度および繁殖に及ぼす影響を調べた。
 バイオアッセイ環境リスク評価研究チームは,環境中の化学物質の総リスク評価のために,各種のバイアッセイを組み合わせ環境試料への適用性を含めて,有害性総合指標を目指して,その評価と標準化を行っている。
 開発途上国健康影響研究チームは,中国において深刻化している石炭による地域暖房,工場煤煙,自動車排気など,粒子状物質による都市大気汚染に注目してその健康影響を明らかにする現地調査を開始するため,中国医科大学,対象都市防疫ステーションとの共同研究体制を整えた。また,この研究で個人曝露調査に用いるPM10,PM2.5サンプリング機器の開発を行った。
 水環境改善国際共同研究チームは,開発途上国における生活排水等の処理方法として,多大な施設とエネルギー消費を伴う処理ではなく,有用生物を活用することによって,自然の浄化能力を強化し,効率化した水処理技術の開発を行った。また同時にその技術を我が国における水質改善手法の多様化を計る際においての基礎となるような適正手法の開発を行った。
 生態系管理国際共同研究チームは,植生と自然地形からなるランドスケープと水棲動植物の多様性との関係を解明するための野外調査を実施した。釧路湿原の3湖沼では,水生植物群落の有無と水質,プランクトン群集構造との定量的な関係を調べた。さらに,北海道内に設けた3本の調査河川では,高性能なGPSによって記録したサケの産卵床と瀬-淵構造の空間的な関係を明らかにした。
 大気環境改善国際共同研究チームは,大きさの異なる人為由来の大気エアロゾルと土壌起源系(黄砂)エアロゾルとの多年同時観測を中国各地で行い,大気環境保全帰するための環境化学的解析を行った。

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3.社会環境システム部

 環境問題は,人間活動が引き起こし,人の自然外囲である大気,水,土,生物等の環境を介して,ふたたび人間の生存,生活,社会経済活動等に回帰してくる問題であるといえる。それゆえ,環境問題は一面すぐれて社会的な問題でもある。社会環境システム部では,こうした問題意識のもとに,システム分析等の手法により環境保全に関する政策科学的及び情報科学的な基礎研究を行うことにしている。
 本年度は,上席研究官及び環境経済,資源管理,環境計画及び情報解析の4研究室,及び主任研究官が,それぞれ基幹となる合計8の広範な経常研究課題を選定し実施した。
 上席研究官を中心として環境の認識構造に関する基礎的研究課題を実施した。この中で,東京周辺の通勤者に対して自由記述法と選択肢法による環境意識調査を実施し,その結果から,居住環境の評価が勤務先,通勤時,居住地のそれぞれの状況によって決定されることを明らかにした。
 環境経済研究室で行う経常研究課題の1つは,企業の環境保全行動がどのような要因により引き起こされるかを,理論・実証の両面から分析し,自主的協定の有効性について検討した。また,気候変動枠組条約に関する国際交渉をとりあげ,公平性の扱いと負担分担の現状を分析した。さらに,アジア太平洋地域の今後の環境の見通しに関するいくつかのシナリオを作成し,今後の環境政策のあり方の検討に備えた。
 資源管理研究室で行う2つの経常研究課題では,廃棄物減量化とその影響に関連し,ライフサイクルによるトータルな環境負荷の算定に重要となるライフサイクル・アセスメント(LCA)手法の確立のため,前年度に引き続き事例研究を進めるとともに手法の簡略化やインパクトアセスメントについて検討した。
 環境計画研究室では,国の環境基本法及びこれに基づく環境基本計画の策定や最近の地球温暖化防止対策推進法の成立を受け,昨年に引き続き,環境マネジメントシステムの認証制度の効果やその問題点,専門家の役割等について検討した。
 情報解析研究室では2つの経常研究課題に取り組んでおり,一つが人工衛星,地図,写真等による地理・画像データの解析手法の開発であり,第二は種々の環境システムの評価に資するモデル化やシミュレーション手法の開発である。さらに,サンゴ礁白化現象に焦点を当てたリモートセンシング解析を行った。第一のテーマについては,前年度に引き続き,様々な地理・画像情報を利用して環境を解析・評価するためのシステムを開発するとともに,第二のテーマについては,音場の数値シミュレーションの改良などを行った。さらに,サンゴ礁の白化現象を検出することに成功し,リモートセンシングの新しい活用分野を開拓した。
 また,主任研究官により,環境計画との関連で,景観評価についての研究が進められている。前年度に引き続き,景観の価値がどのように決まるかを社会文化的及び歴史的背景に基づいて分析した。また科学的風景評価の方法論についての検討を深めた。

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4.化学環境部

 複雑化,多様化する化学物質汚染の環境リスクを適正に管理するには,汚染実態や機構解明のための高感度で信頼性のある環境計測法の開発や挙動の解明が求められている。これらの課題を解決するため,化学環境部では各種環境汚染物質の計測・監視や毒性評価方法の開発と汚染物質の環境動態の解明に関する研究を実施している。
 計測技術研究室では,Li+イオン付加反応を利用した質量分析法,常温吸着/キャピラリーGC/MS法による低沸点化合物の分析,PIXE分析による毛髪中の水銀分析など,環境汚染物質の測定技術の高度化を進めた。
 計測管理研究室では,酵母エストロゲンアッセイシステムを用いて,エストロゲン作用を抑制する化学物質を検出するシステムの開発やイボニシのインポセックスと有機スズ化合物濃度の全国調査など,内分泌撹乱化学物質の研究を行った。また,化学物質分析法のデータベースを公開するとともに,精度管理の研究を進めた。
 動態化学研究室を中心としたグループでは,環境中での元素の存在状態と動態の解明を進めた。セレンの化学形態分析法の改良,岩石や土壌の風化過程を模擬した斜長石の表面状態の変化の解明などを行った。また,タンデム加速器質量分析システムの適用範囲を拡張するため,測定条件等の改良を進めた。
 化学毒性研究室では,アオコの有毒物質の代謝と生体影響を調べ,構造の違いが反応性に著しい差を与えることを見いだした。急性毒性試験でも,構造の違いによる差を見いだしたが,20週間の投与試験では,体重増加への影響や腫瘍の形成などの影響は見いだせなかった。
 継続中の環境標準試料の研究では,フライアッシュ粉末及び抽出物中のダイオキシン類,ヒト尿中のヒ素化合物の保証値を決めた。また,センネンダイから採取した耳石を用い,標準試料を作成した。
 また,バイカル湖の底泥を用いた地球環境の変動解析を始め,各種プロジェクト研究を進めるとともに,地球・地域環境研究グループが実施するプロジェクト研究に多くのメンバーが参加した。

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5.環境健康部

 環境健康部においては,環境有害因子(窒素酸化物・ディーゼル排気ガス等の大気汚染物質,ダイオキシンや環境ホルモンなどの有害化学物質,重金属,花粉,紫外線等)がいかにヒトの健康に影響を及ぼすかに関する実験的・疫学的研究を行っている。これらの基礎研究は,健康リスクアセスメントを行うために必要な情報を提供することを意図している。これら環境有害因子の空間的広がりにより,地域規模での環境問題と地球規模の環境問題に分けられるが,それぞれ総合研究部門の地球環境研究グループ及び地域環境研究グループの研究チームと連携をとりながら,「地球環境研究総合推進費」,「特別研究」,「特別経常研究」の研究も行われた。さらに,環境リスク評価のために,重金属,大気汚染物質,紫外線,ダイオキシン・環境ホルモンなどの文献レビューも行った。本年度は,経常研究7課題,奨励研究1課題が行われた。
 生体機能研究室を中心として,大気汚染物質(ディーゼル排ガス粒子,オゾン,花粉など)が免疫系など生体防御機能に与える影響を解明するために,マウスをディーゼル排気暴露環境下で育て,炎症性細胞に及ぼす影響について検討を行った。病態機構研究室では,環境有害因子の毒性に酸化的ストレスがどのように関与しているかを解明するための研究が行われた。そのため,メタロチオネイン欠損マウスに,活性酸素種を細胞内で発生する農薬であるパラコートを投与し毒性発現のメカニズムの検討が行われた。また,妊娠マウスにダイオキシンを投与し,酸化的ストレスの作用メカニズムについても研究した。保健指標研究室では,in vivo状態でのNMRによる機能測定法,行動毒性に関する研究が行われた。環境疫学研究室を中心に,ダイオキシン曝露量と子宮内膜症との関係を調べるため,生体試料中のダイオキシン濃度の分析も行った。さらに,人間集団を対象とした環境保健指標の開発のため,人口動態死亡統計と浮遊粒子状物質濃度と循環器疾患,呼吸器疾患による死亡数との関係,ならびにゴミ焼却施設のデーターベースの作成と死亡統計を用いた解析が行われた。

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6.大気圏環境部

  大気圏環境部では,地球温暖化,成層圏オゾン層破壊,酸性雨といった地球規模の環境問題や,都市の大気汚染問題に代表されるような地域的な環境問題を解決するための基礎となる研究を推進している。本年度は,17課題の経常研究,1課題の奨励研究ならびに1課題の革新的環境監視計測技術先導研究が行われたほか,地球環境研究グループ(温暖化現象解明,オゾン層,酸性雨,衛星観測各チーム),地域環境研究グループ(都市大気保全チーム)の準構成員として,さらには地球環境研究センターの併任または協力研究者としてプロジェクト研究推進への協力も行われた。
 大気物理研究室では,気象学・大気物理学を基礎とした大気循環および物質循環の研究が行われた。大気海洋結合気候モデルを用いた温室効果ガスおよびエアロゾルの増減に伴う将来の気候変化のシミュレーションとその結果の解析,エアロゾルの光学特性の衛星データによる全球分布導出アルゴリズムの開発,大気-陸面間での植生を通じた熱・水蒸気輸送過程のモデル化,地域スケールの大気循環と物質循環のシミュレーション,極中心をとりまく大気の渦運動の解析等が行われた。
 大気反応研究室では,気相の化学反応の研究と大気中の反応性微量成分の観測に関する研究が行われた。芳香族炭化水素トルエンの光酸化反応によるオゾン生成の温度依存性の理論的解析や同反応から生成するエアロゾルの生成過程の解析を行った。また,航空機によるアジア大陸と日本の間の海洋上空の大気観測を行い,高濃度の二酸化硫黄やオゾン,同時に黄砂エアロゾルが観測され,その長距離輸送過程が解析された。
 高層大気研究室では,レーザーレーダー(ライダー)を用いた観測研究や手法の開発が行われた。つくばにおけるライダー連続観測に加え,新たに長崎に2波長ライダー装置を導入して連続観測を開始し,海洋地球研究船「みらい」による太平洋上での観測と合わせて雲・エアロゾルの地域特性などについて解析を行った。また将来予定されている衛星搭載型ライダーによる全球観測のための最適なデータ解析・利用手法を研究した。
 大気動態研究室では,温室効果気体および関連物質の動態を調べるため,濃度の長期観測や同位体比の測定を行っている。本年度は波照間島および落石岬における観測を継続し,メタン濃度の増加率は1998年をピークとして減少傾向にある一方,波照間島における亜酸化窒素濃度増加率は1999年以来上昇していることを確認した。また,日本およびシベリア上空で採取した大気試料中の二酸化炭素について炭素安定同位体比を測定し,年変動を明らかにした。これらに加えて,廃坑を利用した人工雲実験を行い,樹木に対する微小水滴沈着量を測定した。

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7.水土壌圏環境部

 水土壌圏環境部では地球温暖化,酸性雨,海洋汚染,砂漠化といった地球環境問題及び湖沼・海域の水環境保全やバイオテクノロジーを用いた水質改善などの地域環境問題に関して現象解明,影響評価,予測手法,環境改善手法等の基礎的研究を行っている。本年度は地球環境総合推進費研究5課題,重点共同研究1課題,経常研究7課題,特別経常研究1課題,奨励研究2課題,内分泌撹乱化学物質総合対策研究1課題,環境修復技術開発研究1課題,科学技術振興調整費による研究2課題,原子力試験研究2課題,文部省・科学研究費補助金による研究6課題を行った。
水環境質研究室では,漂着重油,有機塩素化合物,窒素,リン等の環境汚濁物質の生成・分解に関与する生物およびそれらの代謝・変換量等について研究を行った。
水環境工学研究室では,水文流出の物理モデルと土砂流出の確立モデルを融合させた流域内農林地域での土砂動態モデルを構築した。提案したモデルを釧路川支川久著呂川流域の1995年の秋季洪水に適用した結果は,土砂生産における流域面と河岸浸食の寄与について観測傾向を十分説明しえるものと判断された。
 土壌環境研究室では,土壌中での無機・有機汚染物質の挙動とその微生物影響についての基礎的研究を行った。また,酸性雨の土壌・植生影響についても調査,研究を行った。
 地下環境研究室では,粘性土の圧縮性状,岩盤内の地下水の流動特性,地盤沈下観測システムの開発と観測についての研究を行った。また,大深度地下水開発の環境影響に関する基礎的研究を行った。

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8.生物圏環境部

  生物圏環境部では分子レベルから生態系レベルまでの生物にかかわる基礎・応用研究を推進している。本年度は奨励研究を含めて17課題の経常研究を行った。また,環境研究総合推進費による研究1課題,未来環境創造型基礎研究1課題,重点共同研究1課題,科学技術振興調整費による研究1課題,重点基礎研究1課題,文部省・科学研究費補助金による研究5課題が推進された。
 環境植物研究室では,環境の変化が植物個体の生理プロセスや,野外での生活,植物群集の動態などに及ぼす影響を,栽培実験,フィールド調査,理論的解析などの各方面から研究している。本年度は,高山に分布する植物の生物季節と温度環境との関係の解析,乾燥地に生育する植物の耐乾燥性,耐塩性などに関する生理生態学的な研究,進化的な時間スケールのなかでの生物多様性の動態についての理論的研究,温暖化環境化での植物の分布域の移動のしかたについてのシミュレーション実験などを行った。
 環境微生物研究室では,水界生態系で重要な役割を果たすピコプランクトンであるシアノバクテリアの1属Synechococcus属や,富栄養化した湖沼で大発生するアオコの 動態に関与するバクテリア,及び二酸化炭素やイオウの循環に関与する円石藻の分子系統学的研究を行った。また,微細藻類の種および遺伝的多様性の解析や測定手法の開発,及び多様性維持機構を解明するための遺伝的マーカーの開発も行われた。
 生態機構研究室では,湿地生態系の構造と機能を解明する研究を行った。まず,尾瀬沼に侵入した帰化植物のコカナダモ群落の変動と在来水生植物の分布と底質調査,尾瀬ヶ原の赤雪現象の分布調査と水の安定同位体比による水循環の解析による発生解明研究を行った。また,底生動物の調査が行き届いてない島嶼地域の河川において底生動物群集の調査を行った。南西諸島の生活史が明らかになっていない淡水エビの数種について種の特徴について明らかにした。さらに,河川渓流における自然環境保全のための評価手法について検討した。また,南西諸島の多様な立地において個体群を成立させている海草類を中心に,各個体群形成種のバイオマスや分布の変動を追跡した。
 分子生物学研究室では,様々な環境要因が原因となって植物に生じるストレスとそれに対する植物の耐性機構を分子レベルで明らかにすることを目的に,シロイヌナズナの環境ストレス感受性変異体の単離とその解析を行っている。これまでに単離した約50系統の変異体のうちオゾン感受性の8系統について,戻し交配による系統の純化と優・劣性の解析を行い,さらに1系統については遺伝子座を決定した。

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9.廃棄物研究部

 2001年1月の中央省庁再編により,廃棄物行政が環境省に一元化された。これに伴い,国立環境研究所においても,2001年1月に廃棄物研究部を新設し,廃棄物・リサイクル研究を進めてきた。その目的は,循環型社会における適正な廃棄物管理のあり方を考察・提案することであり,廃棄物の発生から再資源化・処理及び処分に至るまでの様々な局面での廃棄物問題について,廃棄物の発生抑制や資源化,有害物質の管理やリスク管理を念頭においた基礎的な現象解明研究から対策技術やシステムの開発や評価などの実用研究までを研究対象とした。
 本年度は,廃棄物管理計画,廃棄物資源化・処理,最終処分工学の3研究室が,旧国立公衆衛生院廃棄物工学部の研究を引き継ぎ,廃棄物試験・評価研究室において,2つの経常研究課題を実施した。廃棄物管理計画研究室では,廃棄物管理におけるリスクマネジメント及び情報データベースに関する研究を中心に実施した。廃棄物資源化・処理研究室では,廃棄物の資源化や処理に関する要素技術の開発と,これらを含む施設の整備や運転管理に関する試験研究・調査を核にすえて研究推進してきた。最終処分工学研究室では,最終処分場のリスク削減に関する技術開発やこれらにかかわる施設の整備,維持管理及び監視に関する試験研究・調査を中心に実施した。廃棄物試験・評価研究室は,廃棄物管理における各種試験法の開発・評価,廃棄物本体又は処理過程で発生する有害化学物質の分析・発生機構・挙動などの環境汚染に関する試験研究・調査に取り組んできた。小型焼却におけるダイオキシン類の生成機構の解明に関する経常研究では,無機態の塩化ナトリウムがダイオキシン生成につながる可能性を明らかにし,その生成機構に関する考察を加えた。
 そして,2001年4月に発足の循環型社会形成推進・廃棄物研究センターにおける循環型社会のあり方を基礎的に,かつ政策対応的に研究する態勢の検討を行った。

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10.地球環境研究センター

 地球環境研究センターでは,地球環境研究総合推進費における総合化研究を推進している。総合化研究の研究領域は,分野別に実施されている個々の研究プロジェクトと異なり,@個々の研究プロジェクトの成果を集約しつつ,経済学,社会工学的手法を含む観点から総合的かつ体系的に検討を行い,政策の具体的な展開に資する知見を提供する「政策研究」,A「課題別研究」として分野ごとに研究プロジェクトが推進される地球環境研究に対し,これらの個々の分野にまたがる研究領域や共通する研究領域を体系的かつ集中的に解析する「横断的研究」,B個々の研究領域の重要性を地球環境問題の解決という観点から総合的に評価する「リサーチ・オン・リサーチ」の三つの役割を有している。本年度は,以下の2課題について研究を推進した。「持続的な国際経済社会に向けた環境経済統合分析手法の開発に関する研究」では,多国間経済モデルにおいて土地利用変化を分析するためのモジュールの開発,アジアの発展途上国における水資源利用と経済発展の相互作用のシミュレーション及びCVM手法を用いた国際公共財の評価の試行などを行った。「温室効果ガスインベントリーシステム構築の方法論に関する研究」では,精度の高い温室効果ガスインベントリーシステムの構築を目標に,特にアジア地域を中心にインベントリーの精度の向上方法の検討,および,世界のインベントリー情報の収集整理と,インベントリーに関するネットワーク・システムの開発研究に取り組んだ。いずれの研究も地球環境研究センターの併任研究員,客員研究員等の研究者の協力を得て遂行している。

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