近年,地球温暖化,成層圏オゾン層の破壊,酸性/酸化性降下物,海洋汚染,熱帯林の破壊,砂漠化,生物多様性の減少等の地球規模での環境問題が顕在化し,人類の生存基盤に深刻な影響を与えている。このような事態に対して実効ある取り組みを行うためには,地球環境に関する観測・監視と調査研究を抜本的に強化し,人類の諸活動が地球環境に及ぼす影響を科学的に解明する基礎作りを進めることが不可欠であるという認識が世界的に広まっている。とりわけ,高度な経済活動を営み,優れた技術力を有する我が国としては,「世界に貢献する日本」の立場から,国際的地位に応じた役割を積極的に果たしていくことが必要である。
以上のような背景の下,地球環境研究センターは1990年10月1日に発足した。当センターの基本的任務は,地球環境研究を国際的,学際的,さらには省際的な観点から総合的に推進することにあり,この実施のために,地球環境研究の総合化,地球環境研究の支援および地球環境のモニタリングを業務の「三つの柱」として据えている。本年度には,1998年度までに築き上げた基盤をさらに発展させるべく業務を実施した。具体的には,内外の研究者の参加による地球環境研究者交流会議を2回開催するとともに,各種講演会等を開催して研究者間の交流を促進した。また,地球環境研究センターニュース(月刊)及び研究成果等を取りまとめた各種報告書の発行による広報活動,総合化研究の継続的推進,スーパーコンピュータシステムの戦略的運用,国連環境計画/地球資源情報データベース(UNEP/GRID)のセンターとしてのサービス提供,苫小牧フラックスリサーチサイトの新規整備,落石岬や波照間などの地球環境モニタリングステーションの整備,地球環境モニタリング事業の充実などを図った。また,地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)に搭載された改良型大気周縁赤外分光計(ILAS)によって取得されたオゾン層関連データの解析と一般ユーザーへのデータ提供を継続し,ILAS-Uデータ処理運用システムの改訂作業を行った。
このほか,国際研究協力の観点から,気候変動に関する政府間パネル(IPCC),砂漠化対処条約(CDD),地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP),地球環境変動に関する人間社会的側面研究(IHDP)等の各活動への参加,アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)への支援等の活動を行った。
地球環境問題は,発展途上国における人口増加や貧困,農業用地の乱開発,先進国の都市化,高度な生活の要求および急速な技術進歩等,人間活動が複雑に関連し合って生じている。地球環境研究の総合化においては,地球環境保全に向けて,各分野の研究者の総力を結集して効果的に研究を進めるため,研究の有機的連携を図るとともに,こうした社会現象や環境破壊に至る現象を総合的に把握し,相互作用を解明することにより,地球環境研究の方向づけを行うことを目的としている。
1.地球環境研究の方向づけ
(1)地球環境研究者交流会議
地球環境研究センターでは,体系的,効率的,学術的かつ国際的な地球環境研究を推進するための一環として,地球環境研究に携わっている研究者を広く結集し,研究手法,成果等について総合的かつ分野横断的に検討するための交流会議を開催している。
1)第14回地球環境研究者交流会議
標記交流会議は,「生物多様性とその情報」をテーマに,1999年7月14〜16日にかけてつくば国際会議場で開催された。
発表課題は,基調講演として7件,口頭発表として52件及びポスターセッションとして35件であり,海外から51件,国内から43件であった。
初日は,開会に引き続き,基調講演として「地球規模の生物多様性とその情報」について7名が講演した。続くセッション1では,「生物多様性情報とその分類」について5名の講演が行われた。セッション2では,「分類名目録の入手」について3名の講演が行われた。2日目のセッション3では,「地球規模の生物種別データベース」の最新の情報について5名の研究者が講演を行った。セッション4では,「地域生物多様性情報とその関連研究」について,11名の研究者が講演を行った。また,これと平行して,国内外から35名のポスターによる参加があり,講演の合間のポスターセッションでは,他の研究者等と活発な意見交換が行われた。
3日目は,二つの会場において,それぞれ「アジア・オセアニアにおける現状」を主題とするセッションと,「CODATA/DSAO
Task Group」の会合が行われ,活発な議論と意見交換が行われた。生物多様性情報に係る世界各国の研究者が一堂に会してそれぞれの研究成果や情報を交換するとともに,特に他の地域と比べて連携が遅れていたアジア・オセアニアの研究者の間で,新たなネットワークづくりの端緒ともなる会議であった。
本ワークショップには,国内外から133名の参加者があった。なお,本ワークショップの講演集として,第14回地球環境研究者交流会議報告書が平成12年度に出版される予定である。
2)第15回地球環境研究者交流会議
標記交流会議は,「インドネシア森林火災」をテーマに,2000年3月7日に東京の日本教育会館で開催された。
本会議では,地球環境問題の中でも近年大きな問題として取り上げられているインドネシアを中心とした森林火災について,最新の知見と情報を共有することを目的に,インドネシアを中心に国内外の第一線で研究に携わっている研究者による講演及び意見交換が行われた。
インドネシア環境省と我が国環境庁の幹部による開会挨拶に続いて,セッション1では,「大気・気象」の観点から,対流圏オゾン増加の問題や大気・海洋モデルの利用など,6件の講演が行われた。続くセッション2では,「生物多様性と生態系への影響」について,7名の研究者が植物や野生動物などのケーススタディーをまじえながら最新の研究成果について発表した。「社会経済と環境安全保障」という視点から6名が講演したセッション3では,健康影響や火災防止管理プロジェクト,衛星利用などの発表があり,活発な議論が展開された。最後に全体討論が行われ,国内外から約70名の参加者を得た本会議を終了した。なお,本会議の成果をまとめた講演集として,第15回地球環境研究者交流会議報告書が平成12年度に出版される予定である。
(2)国内・国際ワークショップの開催
1)地球環境研究講演会「温室効果ガスのインベントリーに関する諸問題」
1999年9月28日所内中会議室において,標記講演会を開催した。講師には,地球環境研究センターの客員研究官でもある(財)地球環境戦略研究機関の上級コンサルタントの平石尹彦氏を招き,IPCCの最近のガイドラインやインベントリーに関する計画・活動について講演が行われた。講演終了後,地球環境研究センターの職員等により関連報告がなされ,活発な討論が行われた。なお,本講演会には約40名の研究者が出席した。
2)「中国の草地及び森林に関する生態学的研究」講演会
1999年11月18日所内中会議室において,標記講演会を開催した。岐阜大学流域環境研究センターと共同で研究を進めている中国科学院植物研究所の研究者3名より「内モンゴル草原での草地植生の生産性・炭素収支」などの研究について,また中国科学院西双版納熱帯植物園森林生態研究室の張一平教授により,中国生態システムネットワークの観測ステーションの紹介と成果について発表が行われた。本講演会には国内外より約30名の研究者の出席があった。
3)「植物による環境評価」に関する講演会
1999年12月3日所内中会議室において「植物による環境評価−長期・継続の事例を中心に−」をテーマに,大気環境学会関東支部植物影響部会との共催で講演会を開催した。本講演会は,毎年1回テーマを定めて開催しているものであるが,本年度は野外における植物影響調査について,影響評価・指標・モニタリングの3つの観点から,千葉県環境研究所の岡崎淳研究員,福岡県保健環境研究所の須田隆一研究員,また所内からは地球環境研究センターの鄭有斌氏(STAフェロー)による講演がなされた。本講演会には約25名の出席者があった。
4)第8回シベリア永久凍土地帯日ロ共同研究シンポジウム
2000年1月19〜20日の二日間にわたり,標記シンポジウムが,科学技術振興事業団(戦略的基礎−永久凍土撹乱と温暖化ガス研究グループ)との共催で,所内大山ホールにおいて開催された。第1日目は,ロシアにおけるメタン発生や永久凍土,森林火災など6項目の課題に関して25件の発表が,また第2日目にはロシアにおける動物相・リモートセンシング・大気等5項目の課題に関して18件の発表が国内外の研究者よりなされた。本シンポジウムには,外国人を含め,約90名の参加があった。なお,今回のシンポジウムにおいて報告された内容は講演要旨集として2000年5月頃に出版される予定である。
5)「環境変動に対する植物の適応と順化」に関する講演会
2000年2月22日所内中会議室において標記講演会を開催した。講師は英国ニューカッスル大学のアン・マクラーレン・ボーランド博士であり,CAM植物(サボテン等)の環境変動に対する適応と順化についての講演がなされ,研究全般についての活発な情報交換も行われた。なお,本講演会には外国人も含めた20名余の参加があった。
6)「アジア地域の温室効果ガスインベントリー」に関するワークショップ
本ワークショップは,2000年3月9〜10日に(財)地球環境戦略研究機関との共催で神奈川県葉山町で開催された。第1日目は「農業」と「土地利用,土地利用変化及び森林」のセッションにおいて計13名の発表があり,活発な意見交換,問題提起などが行われた。引き続き行われた「廃棄物」「各セクターに係る諸問題」の両セッションでは,合わせて6名の発表が行われた。第2日目は,「排出源データベース」及び「今後の協力関係」をテーマにグループ討論が行われ,その結果が発表された後,各セッションごとに総括がなされて閉会した。参加者は,アジア諸国を中心とした外国人17名を含む40名であった。
7)「植生と環境変動」に関する講演会
2000年3月13日所内第3会議室において,標記講演会が開催された。講師はカナダより来日したブリティッシュコロンビア大学のガイ博士とゲルフ大学のディクソン博士,中国科学院の馮教授の3名であり,旱魃・大気汚染・酸性雨などの地球環境変動とその植物影響等に関する研究の講演がなされた。所内外より約30名の参加者があった。
8)地球環境研究国際ワークショップ
2000年3月22〜23日の2日間にわたり,「アジア・オセアニア地域における生物多様性研究の現状」と題して地球環境研究国際ワークショップを開催した。本会議は@砂漠化と生物多様性について A熱帯雨林と生物多様性について B国別・地域別の生物多様性に関する情報の3セッションに分類され,第1日目は所内の第3会議室において,セッション@,Aの計8課題が,第2日目には所内中会議室においてセッションBに関する11課題が発表された。両日とも,発表後活発な意見交換が行われた。また22日には発表終了後,海外からの研究者のために所内の実験施設等の見学会も合わせて行われた。なお,本ワークショップにはアジア・オセアニアからの15名の外国人を含め約40名の研究者の参加があった。
(3)地球環境研究総合推進費関連
地球環境研究センターでは,地球環境研究総合推進費の各分野ごとに研究代表者が集まり,課題ごとの連絡を密に取り合うことにより,各分野の効率的な推進を図ること,また,各課題の進捗状況を把握し,地球環境研究等企画委員会に報告することを目的に,研究連絡会議を毎年開いている。本年度も8〜9月にかけて開催し,各分野の課題代表者や環境庁地球環境部の担当者とともに,今後の研究の方向性を含め,活発な議論が行われた。
(4)定期刊行物などによる広報活動
地球環境研究センターニュースは,地球環境研究の推進と情報交換のために,地球温暖化や酸性雨など,地球環境研究の第一線で活躍する研究者による最新の研究成果や,気候変動枠組み条約締約国会議などの国際会議の報告,地球環境研究センター主催会議の案内などの内容を取り上げて毎月発行し,地球環境問題に関心をもつ研究者をはじめ,行政機関,研究教育機関及び一般読者など約2,600名を対象に無料で配付している。
また,「第12回地球環境研究者交流会議報告書(二酸化炭素と海洋)」や,スーパーコンピュータを利用した研究成果をまとめた「アクティビティーレポート」,「モノグラフ」をはじめとする,地球環境研究の成果を取りまとめた報告書を7冊刊行し,関係する研究者,各機関などに配付した。
2.地球環境研究の国際的な組織化
(1)インドネシア森林火災に関する研究者ネットワーク(SNIFF)
1997〜1998年にインドネシアのスマトラおよびカリマンタン島で発生した大規模かつ長期間に及んだ森林火災は,大気化学,気象,地球温暖化,熱帯林保全,生物多様性保全等の分野に多大な影響を与えると考えられ,地球環境保全の観点から監視・研究する戦略について検討する必要が生じた。このため,関連研究者,関係省庁等の情報交換を継続することが重要であるとの認識から,環境庁地球環境部と協議し,当センターが事務局となり,1997年11月にメーリングリストを作成した。本ネットワークではインドネシアを中心に,森林火災の状況や研究関連情報ばかりでなく,社会情勢等を含め,実際に研究を行う上で有用な情報交換がなされている。
また,本年度は,2000年3月に東京において,インドネシア森林火災をテーマに地球環境研究者交流会議を開催し,本ネットワークの登録者も多数参加した。
(2)Species 2000 ASIA OCEANIA
国際生物学連合,国際微生物学連合などの後援を受けたSpecies
2000計画は,統一された生物種名の記載を進め,生物多様性保全のための基盤となる生物種情報の世界規模のネットワークを推進する国際プロジェクトである。ヨーロッパや南北アメリカと並び,アジア・オセアニアにおける地域別活動に関して,日本にそのイニシアチブをとることが求められていた。1999年7月につくば市において開催された第14回地球環境研究者交流会議(テーマ「生物多様性とその情報」)に引き続いて,Species
2000 Asia Oceaniaの第1回実行委員会が開催され,リージョナルセンターを当センターに誘致することとなった。これを受けて,当センターにおいてアジア・オセアニア地域における各国の関係者の情報支援のためのメーリングリストを作成するとともに,生物多様性関連の情報収集にも努めた。また,2000年3月には,第2回実行委員会をつくば市で開催し,Species
2000 Asia Oceaniaの憲章を制定するための打ち合わせを行った。
(3)砂漠化対処条約テーマ別プログラムネットワーク1
(TPN1)
砂漠化対処条約(CCD)では,地域別の活動が推進されており,アジア地域においては,モニタリング,アグロフォレストリーなどのテーマ別プログラムネットワークが動き出している。
1999年7月に開催された,砂漠化対処条約北京会合を受けて,「砂漠化のモニタリング及び評価」を担当するTPN1の日本におけるフォーカルポイント(窓口)として指定され,本年度は電子メール等によるアジア各国の関係機関からの連絡業務への対応を行った。
3.各種研究企画支援活動
(1)第2回地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP)コングレス
1999年5月7〜13日にかけて,IGBP全体にわたる研究成果あるいは問題点を討議するため,神奈川県葉山町において標記会議が開催された。はじめの2日間では,日本におけるIGBPの研究成果の発表を含む全体会議が開かれ,後半の3日間では,28の領域にわたる分科会が開かれて,どのような形で,IGBP全体の統合化を行っていくかが討議された。
今回の会議では,炭素循環や,水資源,食料といった自然と人間活動とのいわば接点となる分野横断的な課題について,今後全地球的に取り込む必要があることが結論として確認された。参加者は,37カ国・地域から350余名に上った。当センターでは企画段階から本コングレスへの支援を行い,また会議には総括研究管理官をはじめ3名が出席し発表などを行った。
(2)地球環境変化の人間・社会的側面に関する国際研究計画(IHDP)研究者による1999年公開会合
1999年6月24〜26日にかけて,神奈川県葉山町において,地球環境変動の原因としての人間活動や,変動の人間社会への影響の研究に携わる研究者が,最新の研究成果を持ち寄り,情報交換をするとともに,研究者の交流,新たなネットワークづくりを目的として,標記会議が開催された。全体会合では,@土地利用と土地被覆変化 A人口変化と環境 B地球環境変動に関する政策決定プロセス C環境と紛争 D生態系が果たすサービスの価値評価というセッションが設けられて講演,討論が行われるとともに,平行して47の分科会が,8会場に分かれて会議を行った。41カ国から300名を超える参加者があり,184件の発表がなされた。本会合に関しても企画段階から支援を行い,当センターからも3名が参加した。
なお,当センターは,日本学術会議地球環境連絡委員会IGBP専門委員会LUCC小委員会幹事として本年度も活動を行い,JAPAN-LUCCのニュースレターや国内ワークショップの開催を通じて,日本でのLUCC関連の研究の現状把握や国外機関との意見交換会を通じての連絡調整等を行った。
(3)IGBP/START(解析・研究・研修システム)地球環境研究能力構築に関する国際ワークショップ
1999年10月26〜29日にかけて,北京において標記会議が当センター主催で行われた。IGBP,IHDP,WCRPの国際研究計画の共同出資により進められている。地球変動に関する地域レベルの研究・研修システムであるSTARTとの共催により,今後の地球環境研究の展開,地域間研究ネットワークの強化,途上国の能力構築の向上などの推進について検討された。出席者は,STARTの運営委員会のメンバーを中心に,平行して開催された地球環境研究に関する資金提供者会議の出席者と合わせて約50名であった。
(4)東アジア地域における地球変動研究の地域ネットワーク計画委員会(TEACOM)
IGBP/STARTにおいて,地球規模の変動に関する地域研究所のネットワークづくりを行うため,TEACOMが創設された。本年度には,第8回TEACOM会合が10月18〜19日の日程で神戸のAPN事務局会議室で開催された。当センターは,会合の準備,開催に当たり支援を行った。会合の内容は2つに大別され,第1日目は2000年出版予定のIGBP
Report START特集に掲載されるTEACOM Synthesisの内容と執筆分担および編集スケジュールの打ち合わせであり,2日目は定例のTEACOM会合であり,地域気候モデルプロジェクト及び東アジア温帯域土地利用プロジェクトの活動状況の報告などがなされた。
また,2000年2月21〜23日には,APNとIGBP/START本部からの支援を受けてLUTEA(土地利用・被覆変化研究ネットワーク)のデータベースワーキンググループ会合とLUTEAワークショップが開催され,東アジア地域で整備が進んでいる土地利用・被覆変化関連データベースのインベントリー作成作業の割り振りが行われ,当センターは我が国の農地面積の変遷を分担した。
(5)地球環境保全と土地利用検討会(LU/GEC)
本検討会は,当センターデータベース部門の土地利用に関するデジタルマップ整備事業と平成10年度開始の推進費研究プロジェクト「中国における土地利用長期変化のメカニズムとその影響に関する研究(LU/GEC-U)」との連携,整合性を図り,両者の効率的推進を目指して設置された。数回にわたる検討会を行い,その成果は「LU/GECプロジェクト報告書Y」としてまとめられた。
(6)世界気候研究計画(WCRP)/成層圏プロセスとその気候における役割研究計画(SPARC)水蒸気アセスメント
SPARC Water Vapor Assessment(WAVAS)報告書を2000年中にまとめるべく,SPARCの活動が進行中である。このアセスメントは,温室効果ガスの一つである水蒸気を対象とし,上部対流圏(UT=Upper
Troposphere)と下部成層圏(LS=Lower Stratosphere)を対象領域としている。
UT/LSの水蒸気については,全球分布の定量的把握,その季節内変動,季節変化,年々変動,長期変化等がはっきりした形でこれまでまとめられてこなかった。そのような状況の中で,UT/LSの水蒸気の理解を総合的にまとめることを目指してWCRP/SPARCとしてこのアセスメント活動が行われている。環境庁の衛星センサーILASの水蒸気データが,この活動に貢献しうることから,ILASプロジェクトと連携しながら,このWCRP活動に参加した。
4.国際条約等への貢献
(1)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
IPCCでは,気候変動枠組み条約(UNFCCC)の推進に関連して,科学的知見をまとめた提言などをもとに,政府レベルでの検討などを行っているが,現在,第3次評価報告書と特別報告書の作成が進んでおり,国立環境研究所,地球環境研究センターの研究者も執筆者(リードオーサ)に選出され,関連分野において作業を分担し,活動の推進に貢献した。
1)第3次評価報告書
IPCCでは2001年2月を目途に第3次評価報告書の作成を行っている。1998年7月のスコーピング会合(ドイツ,バドミュンステライル)で目次案と執筆者を決定し,各国政府のコメントを受けて修正を加えた後,同年10月の第14回全体会合(スイス,ジュネーブ)において,目次案と執筆者を決定した。日本から選出された執筆者は第一作業部会5名,第二作業部会7名,第三作業部会12名の計24名である。国立環境研究所からは,第二作業部会に2名,第三作業部会に1名の執筆者(うち2名は執筆責任者)が選出された。1999年4月までに第0次原稿が作成され,内部専門家からのコメントを受け,原稿が修正された後(第1次原稿)に,正式な専門家によるレビューが開始された。2000年3月中には,各作業部会とも,専門家からのコメントを考慮した第2次原稿が作成され,2000年4月以降,政府レビューが開始される。2回の政府レビューの後に2001年1〜3月に,各作業部会の全体会合で第3次報告書として採択される。
2)特別報告書
現在,技術移転,排出量シナリオ,土地利用と森林(吸収源)に関する3つの特別報告書の作成作業が進んでいる。排出量シナリオの特別報告書では,国立環境研究所が開発した統合評価モデル(AIM)が排出量シナリオ作成・評価のモデルの一つとして,選定された。排出量シナリオの特別報告書は,専門家や政府のレビューを経て,2000年3月のIPCC第三作業部会全体会合で審議,採択された。また,技術移転の特別報告書も審議,採択された。土地利用と森林(吸収源)の特別報告書は,1997年12月の気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)で,各国の温室効果ガス削減量に森林の吸収量を含めるかが議論となり,森林の吸収量についてIPCCが科学的知見をまとめることを要請され,作成されている。第3次評価報告書とほぼ時期を同じくして,報告書目次の決定,執筆者の選出が行われたが,地球環境研究センターの研究者も執筆者として協力している。報告書原稿が作成され,専門家や政府のレビューを受けた後,2000年5月のIPCC全体会合で採択される。
(2)砂漠化対処条約北京会合
1999年7月22〜27日にかけて,北京の中国林業科学研究院において,@「早期警戒システムに関するアジア・アフリカ技術ワークショップ」 A「第2回アジア・フォーカルポイント会合」 Bテーマ別プログラムネットワーク(TPN1)立ち上げ会合」が,続けて開催された。
@では,アジア・アフリカの専門家が参加し,砂漠化に対処する早期警戒システムに関し,技術的な側面から意見交換が行われた。Aにおいては,各国の国レベル,地域レベルでの条約の実施の状況,及び砂漠化対処条約第4回締約国会議に関する討議が行われた。Bにおいては,砂漠化のモニタリングとアセスメントに関する各国の進捗状況報告の後,砂漠化のモニタリングと評価を担当するTPN1(ホスト国は中国)の立ち上げに係る手続きについて議論が進められ,その目的,構造,作業計画,優先的な活動などについて合意に至った。この会合には,当センターからも日本側代表団に参加するとともに,TPN1における日本のフォーカルポイント(窓口)として活動することになった。
(3)地球規模生物多様性情報機構(GBIF)設立のための暫定運営委員会
1999年9月23〜25日及び2000年2月12〜14日まで,米国ワシントンのスミソニアン研究所及びNationalScience
Foundationにおいて標記会議が開催された。
GBIFは経済協力開発機構(OECD)のメガサイエンスフォーラムで議論されていた構想で,生物多様性保全の基盤としての地球規模の生物多様性情報を構築することを目的にしている。1999年からこの構想はOECDを離れ,発展途上国も含めた機構として,また生物多様性条約(CBD)との連携を視野に入れて活動している。当センターからも標記暫定委員会に委員を送り,GBIFのあり方などに関する検討に参加している。なお,GBIFはSpecies2000計画とも密接に関連して推進される予定である。
(4)アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)
APNは,地球変動に係る国際共同関係を効率的,効果的に推進するため,世界を三つの地域に分けて,各地域で地球変動研究のネットワーク化を図る構想の一環のうち,アジア・太平洋地域における政府レベルの協力関係を構築するものである。1996年3月から本格的に活動を開始し,複数の地球環境変化の問題に対してアジア・太平洋地域の研究ネットワークの立ち上げを支援している。当センターからはAPN国内委員を送り出しており,APN事務局を補佐する立場にある。本年度から兵庫県もAPN事業の取り組みに参加し,1999年8月にはAPN事務局が神戸に移転し,活動が強化された。神戸への事務局移転を記念して,10月20〜22日の日程でAPNシンポジウムと,APNの重点課題である「地球環境変化の人間的側面」と「気候変化の変動」に関するスコーピング・ワークショップが開催され,当センターからも出席した。
(5)東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)に関する国際会議
標記会議の第1回会合が新潟市で2000年1月25〜28日まで開かれ,EANETが作成する,モニタリング・ガイドライン,技術マニュアルなどについて及び準備期間中の活動の評価やデータ報告書の取扱いについて議論がなされた。また,この会合の結果を受けて,第2回会合が3月13〜15日まで,インドネシアのジャカルタで開催され,準備期間中のモニタリング・データやタスク・フォースの設置などについて検討を行った。同会議に当センターからは研究管理官が参加し,討論に加わった。
5.総合化研究
地球環境研究総合推進費の中の「総合化研究」については,当センターが中心となって推進しており,本年度年度は,「持続可能な国際社会に向けた環境経済統合分析手法の開発に関する研究」,「温室効果ガスインベントリーシステム構築の方法論に関する研究」及び「地球環境研究推進のための総合化・体系化に関する研究」を実施した。(詳細については,2.3.10参照)
1.データベース
(1)地球環境データベース
地球環境研究センターでは,地球環境に関する各種情報を収集・蓄積し,国内外の研究者や施策決定関係者に対して広く提供を行っている。
本年度には,東アジア・太平洋地域における温室効果ガス吸収源データベースの確立に重点的に取り組むこととし,関連情報,データの収集・整備を開始した。
分野別のデータベースの構築については,情報源情報として,近年のインターネットの普及に伴って急激に変化している世界の地球環境データの入手方法等を把握するため,モニタリング計画の概要,データの所在や入手方法等についてとりまとめた「情報源データベース」の更新を行い,英語版を刊行した。地球温暖化対策としては,アジア・太平洋地域における温暖化対策のデータベース化に着手するとともに,温室効果ガス排出シナリオデータベースの更新及びシステムの改良を引き続き行った。また,平成7年度にとりまとめて以来のIPCC等の新たな知見を加え,改訂作業を行い,「海面上昇データブック2000」を刊行した。温室効果ガス吸収源については,吸収量推定のための衛星画像データベースの作成に着手した。また,平成10年度に仮構築した,吸収源評価のための基礎データベースの改良を行った。排出源については,東アジア地域での長距離越境大気汚染解明のための基礎データベースとして,中国,インド及び韓国におけるSO2,NOx等の市町村ごとの排出インベントリを作成するとともに,その地理情報システムの開発を行った。社会経済分野では,土地利用変化について,中国華北平原周辺(1990年代)及び北朝鮮首都周辺(1980年代)の土地利用モザイク画像の作成及び表示システムの開発・改良を行った。生態系については,タイ国及びマレーシア国の調査プロットにおける調査に基づき,熱帯域における陸上生態系の基礎データ整備を引き続き行った。地球環境モニタリングデータについては,つくば及び黒島にある米国の環境衛星NOAAの受信施設から得られるデータから,当センターが作成している東アジア地域における植生指数データ(1997年)をCD-ROMとして刊行した。また,大気汚染観測データとして,国立環境研究所等が行った航空機・地上観測データ(1996〜1998年度)をCD-ROMとして刊行した。
(2)GRID-つくば
当センターは,平成3年5月にUNEP/GRID(地球資源情報データベース)のセンターに指名され,以来GRID-つくばとしての活動を進めている。
平成4年度から開始したGRIDの地球環境データの提供業務については,本年度は,国内外から25件の申請があり,147データセット(GRID-つくばホームページからのダウンロード件数を含む)の提供を行った。
本年度は,京都議定書における温室効果ガス吸収源研究の基礎データとして,世界日射量メッシュデータの整備を平成10年度に引き続き行った。また,GRIDセンターや関連機関に関する情報源情報である,GRIDメタデータディレクトリの情報更新を行った。
2.スーパーコンピュータ
1991年度からスーパーコンピュータシステムの利用サービスの提供が開始され,1995年度に現行のシステムに更新されて以降も,超高速・大容量の磁気ディスクを追加し大幅に性能の向上を図るなどして,引き続き研究所内外に開放して運用を行った。運用に当たっては,専門家からなる「スーパーコンピュータ関連研究ステアリンググループ」会議を開催し,その意見等を反映させるとともに,「スーパーコンピュータ利用ワーキンググループ」会議を開催し,代表的ユーザーを中心にスーパーコンピュータへの意見などを収集,整理し,利用研究の改善を推進している。
本システムを利用して実施された本年度の研究課題は下記のとおりである。
・IPCC2000年レポートのための大気海洋結合モデルの長期積分
・IPCC第3次報告書に関連した気候感度実験
・ナッジング光化学輸送モデルの開発
・オゾンホールの再現実験
・Development of the transport model for
inverse modeling of the global and regional
budgets of CO2 and CH4
・東シナ海の生態系モデルに関する研究
・流域環境管理に関する国際共同研究
・化学物質の構造,エネルギーと反応に関する研究
・ダイオキシン類の毒性と電子構造
・衛星データによる地球環境の解析
・ILAS衛星データと3次元化学輸送モデルの比較解析
・大気海洋結合モデルによる最終氷期のシミュレーション
・インバース・フォワードモデルによる炭素吸収源分布の推定
・東アジアの広域輸送モデル開発に関する研究
・アジア縁辺海と太平洋との海水,物質交換
・浅海域における海水面及び海中での熱及び物質の乱流拡散機構の解明と海面での重油が物質交換に及ぼす影響
・熱帯大気海洋相互作用の超高分解能モデリング
・東アジアにおける大気の運動と大気質の特性
・準地衡風渦(極渦)の数値シミュレーション
・金星・地球・火星大気を念頭においた大気大循環の基礎的実験
・地球大気を念頭においた大気大循環の基礎的実験:水惑星での循環構造
・気候モデルによる大気の低緯度・中緯度循環の相互作用の研究
・回転球面上の極渦・地衡風の数値シミュレーション
・球座標系における地球大気流体の数値差分解析方法の開発
・大気輸送モデルを用いたメタン循環の解明
本年度は,当システムを利用して行ってきた研究成果のうち「Tropical
Precipitation Patterns in Response to a Local
Warm SST Area Placed at the Equator of an
Aqua Planet」をCGER'S SUPERCOMPUTERMONOGRAPH
REPORT Vol.6として出版した。また,1998年度の研究成果をCGER'S
SUPERCOMPUTER ACTIVITY REPORTVol.7-1998として出版した。さらに,当システムを利用した地球環境研究の幅広い紹介,利用者間の情報交換などを目的として,第7回スーパーコンピュータによる地球環境研究発表会を1999年9月17日に開催した。代表的ユーザー10グループによる研究発表及び,活発な討論が行われた。なお,本発表会には,約40名が参加した。
地球環境研究センターでは,地球環境研究及び行政施策に必要な基礎データを得るために,世界各国の関係機関・研究所と連携しつつ,地球的規模での精緻で体系的かつ長期的な地球環境のモニタリングを実施している。
1.地球環境研究センターのモニタリング体制
当センターのモニタリング事業は,図4.1に示す実施体制で推進されており,環境庁が実施する地球環境モニタリング事業として位置づけられている。
衛星観測プロジェクト関連を除く事業は,事業の中核となる所内研究者(実施代表者),観測実務を分担協力する所内研究者(協力研究者),専門的見地から指導・助言を行う所外の有識者(指導助言者),事業実務を担当・補佐する民間団体(技術支援団体)からなる実施グループにより実施されている。そして,事業全体の企画調整・予算等は,地球環境研究センターの研究管理官(観測担当)・観測第一係が事務局となり,事業実施グループ・技術支援団体等と緊密な連携を図りながら管理・運営が行われている。例として,地上モニタリングにおける事業実務の連携関係を図4.2に示す。
事業の成果は毎年,国立環境研究所内に設置された地球環境研究センター運営委員会で評価され,幹部会議に報告される。
なお,得られた観測データは検証・評価を経てデータベース化し,報告書,CD-ROM,インターネットなどの情報媒体を通じて逐次公表している。
2.地球環境モニタリングの種別
地球環境モニタリング事業は,@地球環境の諸事象に係る個別のモニタリング(個別事業)A地上ステーションモニタリング(波照間・落石岬)B衛星搭載観測機器のデータ処理運用システムの開発・運用等(衛星観測プロジェクト関連)C国際的なモニタリングネットワークへの参画・支援に大別される。
(1)地球環境モニタリング(個別事業)
地球環境の諸事象に係る個々のモニタリングを対象としており,進捗状況などにより次の4段階に分類される。
・フィージビリティスタディ(FS)−原則1年間とし,モニタリングの継続可能性・手法等の検討を行う。
・試験モニタリング−原則3年間とし,FSで検討された手法等を試行し,長期モニタリングとしての手法・体制を確立する。
・長期モニタリング−試験モニタリングで確立された手法で長期・継続的にモニタリングを実施する。原則3年ごとに事業を見直す。
・特定モニタリング−特定事象を期間を限定して短期集中的に観測する。
(2)地上ステーションモニタリング
沖縄県波照間島・北海道落石岬に設置された観測局では,温室効果ガスなどの大気微量成分を継続して観測している事業であり,個別事業と切り離し,独立した事業として位置づけている。
(3)衛星観測プロジェクト関連
衛星観測プロジェクトの一環として,ILAS(改良型大気周縁赤外分光計)が取得したデータの処理及び再処理運用,並びに,ILASの後継機であるILAS-Uのデータ処理運用システムの開発業務を担当している。
本事業で得られたオゾン層関連データは,データ質の検証後,インターネット等によるコンピュータネットワークあるいは,CD-ROM等の電子媒体及び印刷物で公表され,一般に広く提供される。
なお,地球環境研究に係る本プロジェクトの必要事項についての検討は,本研究所「研究推進委員会」の下部組織である「衛星観測プロジェクト検討小委員会」において行われている。
(4)国際モニタリングプロジェクトへの参画・支援
世界の関係機関と連携しつつ,国際的なモニタリングプロジェクトの一員として参画すること,かつ,プロジェクト自体の構築・強化への積極的な貢献も我が国の責務である。特に,東アジア・西太平洋地域における中核機関としての機能を果たすことが期待されている。
現在,1977年からUNEPとWHOなどが推進している地球環境監視システム/陸水環境監視計画(GEMS/Water)に参画し,独自にモニタリングを実施するとともに,我が国のコアセンターとして機能している。
3.事業別活動概要
(1)地球環境モニタリング(個別事業)及び地上ステーションモニタリング
<成層圏オゾン層に係るモニタリング>
当センターは地上ベースの遠隔計測器による国際的なオゾン層総合観測ネットワークであるNDSC(成層圏変動探査ネットワーク)に加盟している。
@オゾンレーザーレーダーによる成層圏オゾン層モニタリング(長期モニタリング)
1988年よりオゾンレーザーレーダーによりつくば市上空の高度10〜40kmの低中高度成層圏オゾン濃度の垂直分布を観測している。
Aミリ波放射計による成層圏オゾン層モニタリング(試験モニタリング)
@に加え1995年度よりミリ波放射計による高度35q以上の高高度成層圏オゾン濃度の垂直分布を観測している。これらにより成層圏のほぼ全域における各高度での観測を行っている。
B北域成層圏モニタリング(試験モニタリング)
日本におけるオゾン層破壊の状況を把握するため,北海道陸別町の町立天文台を利用した総合的な成層圏モニタリングとして,成層圏オゾン濃度の垂直分布,有害紫外線量の観測体制を構築した。
C有害紫外線モニタリングネットワーク(試験モニタリング)
成層圏オゾンの減少による有害紫外線量の増加を監視するため,東京・霞ヶ関の第5合同庁舎屋上において,ブリューワ型分光光度計などにより有害紫外線量(UV-B)を試験的に観測するとともに,全国規模での紫外線モニタリングネットワークを構築し一部試験運用を開始した。
<対流圏の温室効果ガスに係るモニタリング>
D地上ステーションモニタリング
人為的発生源の直接影響を受けない地点で大気中の温室効果ガス等の長期変化を監視するため,波照間島(沖縄県)及び落石岬(北海道)に無人観測ステーションを設置して,大気微量成分の高精度自動観測を行っている。
E定期船舶を利用した南北太平洋上大気モニタリング(長期モニタリング)
温室効果ガスに関する観測データの集積が少ない西太平洋海域における,温室効果ガスのバックグラウンド濃度(人為発生源の直接影響を受けない濃度)を観測するために,民間船舶(さざんくろす丸;鰹、船三井)の協力を得て,日本−オーストラリア間の定期航路上で洋上大気を約3度の緯度間隔で自動採取し,温室効果ガス濃度を観測している。
F定期船舶を利用した北太平洋域大気−海洋間ガス交換収支モニタリング(長期モニタリング)
全球的な炭素循環において重要な位置をしめる北太平洋海域の役割を評価するために,民間船舶(スカグラン号;ノルウェー船籍(9月まで),アリゲータホープ;鰹、船三井(11月以降))の協力を得て,日本−カナダ間の二酸化炭素の発生源/吸収源として重要な北太平洋の定期航路上で,大気と海水中の二酸化炭素濃度・海水の水質などを観測し,二酸化炭素の大気/海洋間の交換収支に係る基礎データを収集している。
Gシベリア上空における温室効果ガスに係る航空機モニタリング(試験モニタリング)
温室効果ガスの発生源/吸収源として重要なシベリア地域における,湿地からのメタンの発生や森林による二酸化炭素の吸収などの把握を目的として,航空機を用いた温室効果ガスの観測を行っている。
ロシア連邦の中央大気観測所・凍土研究所の協力を得て,シベリア地域の3地点(スルグート,ヤクーツク,ノボシビルスク)で,チャーターした航空機を用いて大気を採取し,温室効果ガス濃度の鉛直分布(〜7000mまで)を観測している。
H北方林温室効果ガスフラックスモニタリング(FS)
森林生態系による二酸化炭素の吸収能力を観測し評価する手法の確立に向けて,北海道苫小牧地方の国有林において,カラマツ林を対象に,森林の二酸化炭素の吸収/放出(フラックス)をはじめとする森林生態系の炭素循環機能について,総合的な観測研究を行うための拠点整備を実施した。
<海洋環境に係るモニタリング>
I定期船舶を利用した東アジア海域海洋環境モニタリング(試験モニタリング)
人為活動による地球規模の物質循環の撹乱を把握するために,東アジア地域の縁辺海域での海洋汚濁を,生物・化学的指標を用いて観測している。
現在,大阪〜別府間を航行するフェリー(さんふらわああいぼり;関西汽船梶jの協力を得て,機関室内に設置した海水自動計測装置と自動採水装置により,我が国沿海の水質を高頻度に観測している。またより広域の東アジア海域への展開として,神戸〜香港間のコンテナ船(アリゲータホープ;鰹、船三井)により試験的な観測を行った。
Jイカを指標生物とした海洋環境モニタリング(特定モニタリング)
有害化学物質による全球的な海洋汚染状況の把握を目的に,広範囲に生息するアカイカ科のイカを指標生物として,肝臓中に高濃度に蓄積された有害化学物質を分析し海洋生態系への影響を観測する海洋環境モニタリングを推進するとともにその手法・体制などについての技術的な検討を行っている。
<陸域生態系に係るモニタリング>
Kリモートセンシングによるアジア地域の植生指数分布モニタリング(試験モニタリング)
東アジア地域の植生および土地被覆状況の変化を把握するため,NOAA衛星のAVHRRセンサ画像を用いて,植生指数モザイク画像を作成している。
(2)衛星観測プロジェクト関連
地球観測プラットフォーム技術衛星ADEOS(1996年8月打ち上げ:打ち上げ後「みどり」と命名)に搭載されたILASのデータ処理運用システム(計算機システムおよびソフトウェアシステムを統合したシステム)の運用を継続した。1997年6月に太陽電池パドルのトラブルにより「みどり」が停止して以後は,得られた約8カ月分のデータ処理・解析を進め,オゾン及びオゾン層関連大気微量成分の高度分布が得られており,さらにデータ質の向上を目指して,アルゴリズムの改訂作業を進めている。また,今後打ち上げを予定している後継機ILAS-Uのデータ処理運用システムの開発を進めている。
(3)国際協力・支援事業
<GEMS/Water支援事業>
地球環境監視システム/陸水監視計画(GEMS/Water)に参画し,参照研究室業務(分析精度管理のための標準試料作成及び内外関係機関への配布・評価等)及びナショナルセンター業務(国内観測点のデータの取りまとめ;現在21観測点)を担当している。
また,従来から研究所の観測研究の一環として継続調査されてきた摩周湖・霞ヶ浦をGEMS/Waterの観測点として位置づけ,摩周湖は人為的汚染源の直接的な影響の少ないベースラインモニタリングステーション(1994年度より),霞ヶ浦は水質汚濁の変化を調査するトレンドステーション(1996年度より)として調査を継続している。
(4)広報・普及業務等の推進
地球環境モニタリングによって得られた成果を,研究者をはじめとして広く活用してもらうとともに,地球環境モニタリングを通じて,地球環境問題への関心を高めてもらうため,本年度には以下の広報・普及業務等を行った。
@サイエンスキャンプの開催
8月に北海道根室市の地球環境モニタリングステーション−落石岬において,全国から応募のあった中から選ばれた6名の高校生が参加して,3日間にわたり地球温暖化をテーマに「サイエンスキャンプ'99」(科学技術庁等が主催し国の試験研究機関が受入機関となって実施)を開催した。
Aエコスクールの開催協力
北海道根室支庁及び根室市教育委員会が6月の環境月間行事として,地球環境モニタリングステーション−落石岬において地元小学生を対象に開催したエコスクールに協力した。
Bつくば科学フェスティバルを通じた普及
10月につくば市で開催された「つくば科学フェスティバル'99」において,小中学生を対象にスクラッチカードを使った「かんきょう問題かんしん度チェック」(地球温暖化,酸性雨など6部門)を行い,2日間で400名以上の参加を得た。
Cデータベースの構築
地球環境モニタリングで得られたデータを,広く研究等に活用してもらうために,データベースの構築作業を進めてきており,本年度には地上モニタリングのデータをホームページから提供するシステムを構築し試行した。
Dホームページの充実
地球環境モニタリングについてわかりやすく説明しているホームページを,随時更新を行うとともに,より理解を深めてもらうための一層の充実を図った。
1.組織
(1)組織概要
本年度末現在で,地球環境研究センター長(充て職),総括研究管理官(1名),研究管理官(4名),主任研究員(1名),課長補佐(観測第一係担当),業務係長,交流係長,観測第一係員及び観測第二係員の体制で業務に当たった。(内併任者:課長補佐,観測第一係員)
また,当センター職員のほかに,重点研究支援協力員(1名),特別流動研究員(1名),EFFフェロー(2名)と,モニタリング,データベース及び総合化研究を主体的に実施する研究者等14名を所内併任として,業務の推進を図った。(2)客員研究官制度
地球環境研究センターには,研究活動推進のための客員研究官を置くこととされており,平成10年7月29日付けをもって6名の大臣発令があり,平成11年1月22日付けでさらに1名の追加発令があった。
客員研究官は地球環境研究に関する有識者としての立場から,地球環境研究センターの活動方針及び地球環境研究の総合化に対し指導,助言を行った。また,平成12年3月に平成11年度地球環境研究センター客員研究官会議を開催した。
2.所外協力活動
(1)地球環境研究等企画委員会,地球環境研究小委員会,地球環境モニタリング小委員会
地球環境研究センターの対外的業務の一つとして,地球環境研究総合推進費による研究の進行管理があり,毎年度策定される実施要綱に基づき研究連絡会議及び研究推進会議を開催し,環境庁企画調整局に設けられた「地球環境研究等企画委員会」及びその下に設置されている「地球環境研究小委員会」にその結果を報告している。また,さらに同企画委員会の下に設置されている「地球環境モニタリング小委員会」においては当センターで行う地球環境モニタリングが審議されている。
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