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特別研究


5.環境中の化学物質総リスク評価のための毒性試験系の開発に関する研究


〔担当者〕

地域環境研究グループ 国本 学・足立達美・石堂正美・田邊 潔
環 境 健 康 部 青木康展・佐藤雅彦
水土壌圏環境部 稲葉一穂
化 学 環 境 部 中杉修身
 
     下線は研究代表者を示す

〔期 間〕

 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 いわゆる公害のような典型的な環境汚染はみられなくなったものの,現実には汚染の実態はますます複雑化,深刻化している。多くは微量ではあるが無数の化学物質による複合汚染であり,意図的に生成されたものばかりでなく,非意図的に生成されたもの,さらには環境中で変換されたものも存在しうる。従って,化学分析によってこれらすべてを検出,同定し,定量するのは事実上不可能であり,極めて重大な毒性を持つ物質が見過ごされてしまっている可能性も存在しうるわけである。それらを検出できる試験系として,バイオアッセイ・簡易毒性評価試験法の開発が待たれている。比較的早くから環境モニタリングに使われてきている変異原性試験は,実際の生体内での発ガンとの相関がかなり明らかにされている上,試料中に存在する化学物質の種類に関係なく変異原性という指標で判定し,通常の化学分析では漏れてしまうものまで網羅しうる。本特別研究では,この変異原性試験に相当するような,試料中に存在するいわゆる一般毒性(急性,亜急性毒性)の総量を反映しうる新たな有害性総合評価指標の確立を目指して,この分野にかかわる研究者による組織的な試験法の有用性評価と標準化を行うものである。

〔内 容〕
 環境評価に利用するためのバイオアッセイ・簡易毒性試験系の必要条件としては,安価にかつ迅速に再現性のよいデータが得られること,環境試料の実際の姿である未知物質を含む混合物試料にも対応可能であること,毒性学的な裏付けがあること等があげられる。そのためは,現行のバイオアッセイ法の体系化,標準化と環境試料に適用するための技術的検討,バイオアッセイ法の毒性学的裏付け,化学分析に匹敵するような高感度バイオアッセイ法の開発が必要となる。従って,本特別研究では以下の課題を設定した。

 (1)バイオアッセイ法の標準化と簡便化に関する研究
 環境汚染が問題となっている化学物質を参照物質として選定し,現行のバイオアッセイ法(特に培養細胞を用いた毒性試験系)の標準化と簡便化を進める。
 (2)バイオアッセイ法の毒性学的意義付けに関する研究
 様々のバイオアッセイ法で得られる毒性値と実際の生体(ヒト,実験生物等)での毒性発現用量との関連づけを行う。
 (3)環境試料を対象とする際の技術的問題点への対応に関する研究
 未知物質を含む混合物試料という環境試料の特性に起因する技術的な問題点の洗い出しとそれらの解決方法を探る。
 (4)低毒性試料の評価のための試験法の高感度化に関する研究
 環境試料の大部分がそうであると考えられる低毒性試料の評価を正確に行うため,バイオアッセイ法の高感度化を試みる。

〔成 果〕
 (1)参照化学物質を対象とした各種バイオアッセイの実施
 ヒト由来細胞並びに齧歯類由来細胞10数種類を用いた簡易毒性試験系で参照化学物質の毒性評価を行った。また,実験生物としてヒメダカ,ミジンコ,線虫,ミドリゾウリムシ,酵母を用いた毒性試験,さらに,既にキット化されているミジンコ毒性試験(DAPHTOXKIT),海洋発光細菌を用いた簡易試験(MicroTox)を実施した(表1)。得られた結果の解析と相互比較を開始した。

 (2)試験法の高感度化の試み
 低毒性の環境試料に対応するための試験法高感度化の一環として,簡易な環境水試料濃縮法を試みた。遠心濃縮器を用いてスモールスケールでの減圧濃縮をすることにより,簡便かつ高回収率で有害成分の濃縮が可能であることが明らかになった。

 (3)環境試料への適用の試み
 環境庁水質規制課のダイオキシン汚染実態調査と連携して,河川水およびゴミ焼却場排水試料へ,一部のバイオアッセイを適用した。排水試料では化学物質による毒性に加えて,pH,浸透圧等の物理的要因が大きく影響することが明らかになった。一方河川水試料では,前項の濃縮法を適用することによって初めて検出される毒性の存在が明らかになった。
 (4)細胞死誘導機構の解析
 試験法高感度化のため,参照化学物質の一部を対象として細胞死(特にアポトーシス)の誘導機構について分子レベルでの解析を行った。


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