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地球環境モニタリングに関する研究
2.地球環境モニタリング
〔担当者〕
| 地球環境研究グループ |
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野尻幸宏5,6,7,10,16・向井人史5,6,7・町田敏暢5,6,7,8・秋吉英治1,2,3・原島 省7,10・■刀正行10 |
| 地域環境研究グループ |
: |
森田昌敏11,13・木幡邦男10・中村泰男10・今井章雄16・松重一夫16・
橋本俊次11・矢木修身16・高村典子16・西川雅高16 |
| 社会環境システム部 |
: |
田村正行12・清水 明12 |
| 化学環境部 |
: |
横内陽子5,7・白石寛明15・伊藤裕康15・堀口敏宏11,13・柴田康行11,13・
田中 敦15・米田 譲11・河合崇欣15 |
| 環境健康部 |
: |
小野雅司4 |
| 大気圏環境部 |
: |
中根英昭1,2,3,4・神沢 博5・畠山史郎5・酒巻史郎5・杉本伸夫1,3・
松井一郎1,3・遠嶋康徳5,8・高橋善幸5,8 |
| 水土壌圏環境部 |
: |
冨岡典子16・井上隆信16・稲葉一穂16 |
| 生物圏環境部 |
: |
野原精一16・上野隆平16 |
| 国際共同研究官 |
: |
植弘崇嗣13 |
| (事務局) |
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藤沼康実・高田雅之・田代浩一・橋本正雄・勝本正之 |
| 地球環境モニタリング検討会委員 71名 |
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| 事業委託,業務請負組織・機関 23団体 |
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| *人名の後の数値は表1中の事業番号を示し,下線は各事業の実施代表者を示す。 |
〔目 的〕
地球環境研究センターでは,所内研究者の参画や国内外の機関と協力を得て,地球環境研究や行政施策に資する基礎的なデータを取得することを目的に,地球環境変動やその影響などを継続して監視・観測する「地球環境モニタリング」を実施している。これらのモニタリング事業は,これまでの地球環境研究によって開発・確立された手法に基づいて実施するもの,地球環境研究に不可欠な観測データを提供するもの,あるいは,国際的な取り組みのもとで観測に参画・支援するものなどがあり,常に地球環境研究と相互補完する視点に立って,推進している。
〔内 容〕
各モニタリング事業においては,それらを成層圏オゾンに係るモニタリング,対流圏の温室効果ガスに係るモニタリング,海洋環境に係るモニタリング,陸域生態系に係るモニタリング,GEMS/Water支援事業の5つの分野に分け,各分野ごとに表1及び図1に示す事業を推進しており,所内研究者が中核となって実施している。
なお,事業の詳細については「4.4 地球環境モニタリング業務」を,また,衛星「ADEOS」に関する事業は,「2.5.1 衛星観測プロジェクト」を参照されたい。
〔成 果〕
<成層圏オゾン層に係るモニタリング>
@オゾンレーザーレーダーによる成層圏オゾン層モニタリング
1988年から,つくば(研究所)でオゾンレーザーレーダーを用いて高度10〜40kmの低中高度成層圏オゾンの鉛直分布の観測を続けており,成層圏の国際観測網であるNDSC(成層圏変動探査ネットワーク)に加盟し,東アジア地域における観測拠点として国際的責務を果たしている。
本年度には,つくば上空で継続して観測するとともに,長期観測体制の構築をさらに進めた。
Aミリ波放射計による成層圏オゾン層モニタリング
ミリ波放射計は,回転励起状態のオゾン分子から放射されるミリ波(110GHz)を超高感度に検出して,高度ごとのオゾン量を算出するもので,1995年からつくば(研究所)で,高高度(35〜75km)のオゾン鉛直分布を,天候に左右されずに5分間隔で自動観測を継続している。
本年度には,データ解析手法の高度化とともに,レーザーレーダーによる検証を行い,良好な結果が得られた。また,各高度のオゾン変動についてとりまとめた。 B北域成層圏総合モニタリング
日本における成層圏オゾン層破壊が最も進行しやすいと考えられる北海道でのオゾン層を総合的に観測するために,名古屋大学太陽地球環境研究所と共同で,北海道陸別町の町立天体観測施設の一室を借り受け,モニタリング体制を構築し,定常観測を実施している。
本年度には,広帯域ミリ波放射計によって観測を行い,高度20〜60kmの高度ごとの時間変化を観測した。1999年末から2000年初頭にかけての連続観測結果を示す
(図2)。また,1999年10月には,NDSC運営委員会を札幌で開催した。運営委員会参加者の陸別成層圏総合観測室への現地視察においては,ミリ波分光観測を含むそれぞれの観測の水準の高さと同時に,総合的な観測を実施していることが高く評価された。
C有害紫外線モニタリングネットワーク
成層圏オゾンの減少により地上到達量の増加が懸念されている有害紫外線(UV-B:290〜315nm)について,人間活動の活発な都市域における増加を監視するために,1993年から1999年度まで東京・霞ケ関においてブリューワ型分光計を用いて,UV-Bの波長別強度を継続して観測してきたが,さらに,1998年度に構築作業を開始した帯域別紫外線計による全国規模での紫外線モニタリングネットワークについて,参加14機関を得てネットワークを立ち上げるとともに,一部試験運用を開始した。
<対流圏の温室効果ガスに係るモニタリング>
D地上ステーションモニタリング(波照間・落石岬)
人為的な発生源の影響が少ないベースラインレベル濃度の温室効果ガスを長期観測することを目的として,沖縄県八重山諸島波照間島と北海道根室半島落石岬に大気微量成分の観測局を設置し,それぞれ1993年秋,1995年秋から観測を継続している。
現在,両観測局では,二酸化炭素・メタンなどの温室効果ガスのほか,オゾン・粒子状物質・ラドン・気象因子などを継続して観測している。
本年度には,波照間で空調設備を更新した。また,落石岬では観測制御用パソコンの全面更新,情報通信ネットワークの整備,及び無停電電源設備の導入を行うとともに,東アジア酸性雨モニタリングネットワークにおける比較参照地点(ルーラルサイト)として参画することとなり,大気保全局が酸性雨自動捕集装置を整備した。
図3に波照間・落石岬両局で観測された二酸化炭素濃度の経時変化を示すが,植物の炭素固定能力の季節的変化の影響を受けながらも,確実に増加していることがわかる。
なお,地球環境モニタリングで得られたデータの公表に向けて進めてきているデータベース化作業の一環として,本年度には,地上モニタリングのデータをホームページから提供するシステムを構築し試行した。
E定期船舶を利用した南北太平洋上大気モニタリング
固定観測局のない海域で温室効果ガスなどの挙動を定期的・継続的に観測するために,定期航行する民間船舶の協力を得たモニタリングを現在2航路で推進している。その一つは,日本〜オーストラリア東海岸間を航行するコンテナ貨物船(さざんくろす丸;(株)商船三井,年間8往復)に大気の自動採取装置を設置し,西太平洋上の温室効果ガス(二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素)を約3度の緯度間隔で採取分析している。
本年度には,上記船舶に搭載している大気の自動採取装置について,より自動化に向けた更新を行うとともに,南北両半球の濃度の空間分布・時系列変化を継続して観測した。
また,後述する日本〜カナダ西海岸間を航行する民間船舶でも同様に大気試料を採取しており,この2隻の観測により,西太平洋海域の南緯20°〜北緯50°間の温室効果ガスの挙動の解析体制が構築できた。図4に緯度方向での温室効果ガスの濃度分布を示す。
F定期船舶を利用した北太平洋域大気海洋間ガス交換収支モニタリング
前述の日本〜カナダ西海岸間を航行する民間船舶(スカグラン号;ノルウェー船籍,年間8往復)には,カナダ海洋研究所の協力を得て,海水自動採取分析装置・コンテナ実験室などを設置し,北太平洋海域で大気と海水中の二酸化炭素濃度及び海水の水質を自動観測した。この観測は,生物生産の高い北太平洋海域が全球的な炭素循環に果たす役割を定量的に評価することを目的としている。
本観測は1999年9月をもって終了し,その後継として,同様な航路の貨物船(アリゲータホープ;(株)商船三井,年間10往復)に最新の観測設備を搭載し,1999年11月から観測を再開した。
一方,これまでの観測結果の解析を進め,同海域の二酸化炭素の収支特性について解析した。その結果,二酸化炭素の吸収・放出の季節変動,北太平洋中・高緯度の二酸化炭素吸収量の詳細が明らかになった。
Gシベリア上空における温室効果ガスに係る航空機モニタリング
全球的な炭素循環において,シベリア地域の森林・凍土の寄与の重要性が問われている。
本事業では,1992〜1994年に実施したシベリア上空の温室効果ガスの水平分布観測を踏まえて,1995年度から観測用航空機を借り上げて,高度別(〜7000m)に大気を定期採取し,温室効果ガスの鉛直分布の観測を開始した。
本年度には,ヤクーツク,スルグート,ノボシビルスクの3地点での鉛直分布を毎月定期観測するとともに,大気試料の安定同位体の分析を継続した。図5にスルグート上空での高度別の二酸化炭素濃度の経時変化を示す。
H北方林温室効果ガスフラックスモニタリング
1997年12月に策定された京都会議議定書において,温室効果ガスの削減に森林による二酸化炭素の吸収を勘案することとなり,森林生態系の二酸化炭素の吸収/排出量(フラックス)を定量的に評価することが国際的な緊急課題となっている。
これを受けて,東アジア北方に広く分布する落葉針葉樹林(カラマツ林)を対象に,森林のフラックス観測をはじめとする森林生態系の炭素循環機能について,総合的な観測研究を実施することとした。
本年度には,フラックス観測に適した林分として北海道苫小牧地方の国有林を選定するとともに,観測塔,電気設備,コンテナラボなど,観測のための拠点整備を実施した。
本事業は林野庁北海道森林管理局との共同事業体制を基盤として,大学,国立研究機関,地方公共団体などと連携・協力しながら観測研究を進めることとしており(図6),東アジア地域における観測地ネットワークづくりに向けて拠点的役割を果たすことを目指している。
<海洋環境に係るモニタリング>
I定期船舶を利用した東アジア海域海洋環境モニタリング
人間活動が顕在化しやすい縁辺海域を対象とし,大阪〜別府航路のフェリー「さんふらわああいぼり」(関西汽船(株))の協力を得て,センサー計測(水温・塩分・pH・クロロフィル蛍光)および自動ろ過サンプリング・分析(植物プランクトン色素量,溶存態栄養塩)を継続した。また,センサー計測値の一部を衛星回線を利用して海洋環境を常時オンライン監視する試みを行った。さらに,より広域の東アジア海域への展開として,香港往復のコンテナ貨物船「アリゲータホープ」((株)商船三井)により,栄養塩および植物プランクトン分類群別炭素バイオマス量を計測した。
本年度には,これまでのデータを解析し,その結果,人為影響により海域の窒素およびリンに対してシリカ(溶存ケイ素)が欠損している海域を明らかにすることができた。
Jイカを指標生物とした海洋環境モニタリング
有害化学物質の全球的な海洋汚染の実態を把握することを目的に,広範囲に生息するアカイカ科のイカを指標生物として,肝臓中に高濃度に蓄積された有害化学物質を分析し,結果の解析を継続した。
いわゆるダイオキシン類のうち,塩素化ダイオキシン,フランは北半球で高く南半球で低い傾向を示し,他の汚染物質と共通した分布を示したほか,陸域近くで高く,遠ざかると急減する傾向を示した。また,アイソマーの組成は北太平洋各地点で採取したものが相互に類似していたのに対して,南太平洋,南北大西洋の試料はそれぞれ互いに大きく異なる傾向を示し,海域による主な発生源の違いを強く示唆する結果となった。
一方,ダイオキシン類と共通の毒性を示すコプラナーPCBについては,同じく北半球で高く南では低いものの,北太平洋では陸地からの距離にはあまり依存せずPCB総濃度の分布パターンに比較的似た傾向を示した。これらの結果は,揮発性が少なく主に粒子状物質に吸着して移動するダイオキシン,フラン類と,揮発性が比較的高くて気相で移動する傾向の強いPCB類との化学的性質の違い,あるいは汚染が始まって以来の歴史的経過の違いを反映しているものと考えられる。その他,インド洋の各地点で入手したイカ試料について有機スズ濃度などを測定し,分布パターンを明らかにした。
<陸域生態系に係るモニタリング>
Kリモートセンシングによるアジア地域の植生指数分布モニタリング
東アジア地域の植生・土地被覆状況の変化を把握するために,NOAA衛星のAVHRR(Advanced
Very High Resolution Radiometer)センサ画像を用いて,植生指数モザイク画像を作成している。
本年度には,本研究所の二つの受信局(茨城県つくば市の研究所構内と沖縄県黒島の海中公園センター内に設置)で受信したAVHRRデータから,1998年の各月の植生指数モザイク画像を作成した。また,その結果を用いて年間累積植生指数値を計算し,植生の純一次生産量の推定を行った。
<国際協力・支援事業(GEMS/Water支援事業)>
UNEPとWHOが協力して,1977年からGEMS(地球環境監視システム)の下に,陸水の汚染などの監視情報を収集・統合化するプロジェクト(GEMS/Water)が推進されており,地球環境研究センターは,東アジア・太平洋域の中核として事業を支援・参画している。
Lリファレンス ラボラトリー
1993年度より分析精度管理のための標準試料作成及び内外関係機関への配布などを行う「リファレンス・ラボラトリー(参照研究室)」業務を実施している。
本年度には,これまでに引き続き水質・底質の標準試料を作成するともに,国内の観測機関における水質測定の精度管理のために,各機関に標準試料を配布し,分析結果を評価した。
Mナショナルセンター
1994年度より,我が国の地方公共団体などの河川・湖沼における観測点(21地点)のデータを取りまとめるとともに,GEMS本部との連絡・調整を行う「ナショナル・センター」業務を担当しており,本年度も本業務を引き続き実施した。
N摩周湖ベースラインモニタリング
1994年度より,人為的汚染の影響の少ない北海道摩周湖を陸水のベースライン観測点として位置づけ,北見工業大学の協力を得て定期観測を年1回実施している。
本年度には,9月に採水調査を行った。その結果,摩周湖の透明度は近年は20〜30m前後で推移し,汚濁の進行は認められなかった。
O霞ヶ浦トレンドステーションモニタリング
従来,特別研究・特別経常研究の一環として実施してきた,霞ヶ浦全域調査を,1996年度より,GEMS/Waterトレンドステーションとして継続することとし,霞ヶ浦10地点で月1回の頻度で採水・調査を行っている。
本年度には,1997年度から実施している過去20年間の霞ヶ浦調査結果のデータベース化作業の最終取りまとめを行った。 |
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