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環境研究総合推進費による研究(地球環境研究)
13.課題検討調査研究
(1)大流域における洪水氾濫減少の予測手法に関する予備的研究
〔担当者〕
| 水土壌圏環境部 |
: |
村上正吾・林 誠二 |
| 東 北 大 学 |
: |
今村文彦 |
〔目 的〕
長江流域では1998,99年と2年連続して大規模な洪水に見舞われた。全世界的に見ても,大流域における洪水氾濫が頻発している。大規模流域における100〜1000年に一度の異常な確率の洪水流出は,長期間にわたって全流域に蓄積された汚濁負荷を一気にフラッシュすることにより,下流域,沿岸域,海域へ膨大な汚濁負荷を流送する。一方,治水事業の進展に伴う冠水頻度の極端な減少に対応,変質した氾濫域における人間の社会生産活動システム,さらにこれを支える水・土壌環境,生態系は,こうした異常な外力に対して意外なほど脆弱なシステムとなっている。したがって,単に治水の観点からではなく,環境保全の観点から洪水氾濫現象をとらえることが重要となっている。このため洪水氾濫現象と土壌環境,陸上生態系とのかかわりを表現できる洪水氾濫解析モデルの開発が求められている。
本研究の目的は,大規模流域に適用可能な洪水氾濫現象の数理モデルの基本を構築,特に流域内での土地利用別の土砂発生・輸送に伴う汚濁負荷の拡散に関する応用への展開を計ることである。
〔内 容〕
本研究では,以下に示す内容について検討を行った。
1)流域内土砂動態モデルの構成
地形特性,土壌特性,土地利用状況といった流出過程に及ぼす様々な要因の空間分布の取り込みやすさの観点から,河川水系網を合流・分流を端点とする河道区間への集水域を単位流域としてモデル化し,これらを多数接続させることで流域全体を表現するベクター型のモデルを開発した。この降雨流出モデルを前提として,流域内の土壌輸送の動態モデルを @降雨流出モデル A土砂生産場から河道への土砂輸送モデル B水系網河道流モデル C河道での流砂モデルの4つのサブモデルより構成した。
2)水系網河道流モデル
長江中流域での洪水記録を解析した結果,洪水時の水位(あるいは流量)の時間変化率が非常に大きく,極端な緩勾配による拡散効果と相殺することで,水理学的取り扱いのレベルとしては河道内流れはDiffusion
wave modelで記述可能であることを示すとともに,河川水系網全体をこのレベルでモデル化を行った。
3)洪水氾濫流の平面2次元モデルの開発
東北大学工学研究科と共同で堤内地への氾濫流の平面2次元モデルの開発を行った。特に極端な低平地への適用を考慮,氾濫流の先端条件についての検討を進めた結果,安定な数値計算が可能となった。
4)農地からの土砂生産・輸送モデルの開発
短期間および非定常性の強い降雨に対する農地からの土砂生産・輸送量の評価のため新たに土砂動態モデルを開発した。本モデルは,農作物の成長に伴う雨滴被覆および流水抵抗増加効果の力学モデルを含み,年間を通じての適用が可能である特徴を有している。
5)モデルの現地流域への適用
本研究で構成したトータルシステムモデルを釧路川流域久著呂川での1995年春の融雪出水に適用した結果,土砂生産量の推定,河道網内での計算水位,氾濫水の拡散状況とも十分に再現でき,その適用性が確認された。
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(2)環境負荷低減型産業社会への転換手法の確立に関する研究(FS)
〔担当者〕
| 社会環境システム部 |
: |
後藤典弘・原沢英夫・森口祐一・森 保文・寺園 淳・青柳みどり・日引 聡 |
〔目 的〕
環境負荷の少ない持続可能な産業社会への構造的転換を引き出す方策を考えるには,次の3つの研究分野における科学的知見の総合化が必須である。1)産業社会における環境負荷活動の原因となっている国内・国際マテリアルフローのマクロ分析に基づく各種の低負荷化施策の評価 2)産業界が従来の規制を超えて企業レベルで自主的にとりつつある各種の環境負荷低減の取組に関するミクロ分析および評価,及び 3)消費者(消費主体としての企業も含む)の物品等の購入・使用・廃棄等の環境負荷低減に結びつく諸行動のミクロ分析及び評価。本課題検討調査研究では,近年の産業経済活動のグローバル化に鑑み,上の3研究分野の最新の研究情報を収集し,当面の緊急性の高い重点研究課題を明らかにし,研究プロジェクトの具体的な可能性を探ることを目的とする。
〔内 容〕
産業転換を促進すると考えられる手法として,1)環境マネジメントシステムなど自主的管理 2)未利用エネルギー供給技術に対する補助金など経済的誘導 3)容器包装リサイクル法など法律,制度,条例,指導など法制度的な手法が,地球温暖化など深刻化する環境問題の解決に重要と考えられ,それぞれの環境負荷低減の面から利点と限界を知ることが緊急に必要との結論に達した。これらの中で,企業自らが自主的に環境管理を行うことで産業活動による環境負荷を削減する環境マネジメントシステムに注目した。
環境マネジメントシステムの代表的な例であるISO14001の認証取得が企業の環境負荷制御に与える影響を調査するために,アンケート調査を実施した。大部分の企業はISO14001の認証取得にあたって新たに方針や組織を作成したが,環境行動はあまり変えていなかった。PRTRとLCAを導入している企業は少なかった。多くの企業が環境マネジメントシステムに関する情報を一般にではなく社内にのみ公開していた。ISO14001は環境行動に正の関係を持ち,環境負荷管理と先進的制度に負の関係を持っていた。先進的制度は環境負荷管理と正の関係にあった。環境保全コストの公開は先進的制度と正の関係にあり,内部監査結果の公開とも正の関係にあった。このように現時点では,方針レベルであるISO14001は,実行レベルである環境負荷管理を変化させるには至っていなかった。環境保全コストと内部監査結果の公開が環境負荷管理を前進させる可能性が示された。これらから環境マネジメントシステムには一定の効果が認められるものの改良の余地があると考えられた。
環境マネジメントシステムが企業の自主的環境管理を促進するポテンシャルは大きいと考えられるが,それが優れた手法であるか否かは現時点では明らかでなく,改良点を含めさらに調査が必要と考えられた。
〔発 表〕c-36,38
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