| 研究課題 |
16) 微細藻類の集団解析に必要な遺伝的マーカーの検索(奨励研究A) |
| 〔担当者〕 |
笠井文絵 |
| 〔期 間〕 |
平成11年度(1999年度) |
| 〔目 的〕 |
藻類は非常に多様でこれからの進化の基盤となる多くの生物群を含んでいるため,生物多様性を考える場合に重要な生物群といえる。その中で,緑藻ミカヅキモは最近脚光を浴びている里山と呼ばれる二次的自然の一部をなす水田を主たる生息場とし,一次生産者として里山の豊かな生態系の底辺をなす存在として重要である。ミカヅキモをはじめとする微細藻類がどのように維持されているかを知るためには集団間の遺伝子交流の程度など集団の遺伝的変異を調べる必要がある。最近の分子分類学的技術の進歩・普及により,微細藻類においても系統進化学的な側面から遺伝的マーカーが検索され利用されてきたが,種以下の遺伝的変異を調べるマーカーは確立されていないため集団解析のためのマーカーを検索しなければならない。この遺伝的マーカーの検索を,緑藻ミカヅキモ(Closterium
ehrenbergii)を用いて,アロザイム変異の検索と遺伝解析,及びマイクロサテライト変異の解析法の検索という2つの方法で行い,集団の遺伝的変異を調べる方法の確立をめざした。 |
| 〔内 容〕 |
アロザイムのバンドパターンから変異のあることがわかっているホスホグルコムターゼ(PGM),ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI),アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AAT)について,遺伝解析を行ったところ,AATのみが明瞭なメンデル遺伝を示し,他の酵素の遺伝解析はできなかった。また,従来アロザイムには変異が少ないことがわかっていたため,より多くの変異を検出する方法としてマイクロサテライト配列に着目した。ミカヅキモのゲノムDNAを抽出し,制限酵素(Tsp
509Iと Sau 3A)で断片化し(平均256bp),アダプターの付加を行い,PCRで増幅した。植物(ミカヅキモは藻類であるが系統的には高等植物に近い)は脊椎動物に比べてマイクロサテライトの数が少ないという報告があるため,PCRで増幅したDNA断片をナイロン膜に固定したマイクロサテライト配列(11種の想定した配列)に交雑させ,マイクサテライト配列を含んだDNA断片の割合を特異的に増した(エンリッチメント)。このDNA断片をpUC118ベクターにつなぎ,エレクトロポーレーション法で大腸菌に入れトランスフォーメーションを行った。DNA断片が入ったベクターをもった大腸菌のコロニーが多数見られたため,これをゲノムライブラリーとした。ゲノムライブラリーからベクターのDNAを抽出・精製し,ベクター中の配列および想定したマイクロサテライト配列をプライマーにしてPCRを行った。その結果,(TCC)7,(CAA)7,(GAA)7などで特異的に増幅されたバンドが得られ,これらの繰り返しを含むマイクロサテライト配列が存在することが確認された。 |