ヘッダーユーティリティメニュー

イベント情報、交通案内、サイトマップ、関連リンク、お問い合わせ・ご意見

グローバルナビゲーション


ホーム > 刊行物 > 国立環境研究所年報 > 平成11年度 > 経常研究  2.地域環境研究グループ

ここからページ本文です

経常研究


2.地域環境研究グループ


研究課題 1) 外因性内分泌撹乱物質に関する基礎的研究
〔担当者〕 森田昌敏
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 人間と外因性内分泌撹乱物質とのかかわりについて,社会地球科学区的立場からの分析を試みる。
〔内 容〕 外因性内分泌撹乱物質が人口,食料,資源,エネルギー,社会生活上の価値観等とどのようにかかわるかについての分析を加え,その持つ意味について考察する。本年度は社会的関心がどのようにあらわれているかをインターネットホームページの解析から行った。
〔発 表〕 b-240,250

研究課題 2) 流域をユニットとした水生生物の生息環境と生態系保全に関する研究
〔担当者〕 福島路生・高村典子
〔期 間〕 平成11〜14年度(1999〜2002年度)
〔目 的〕 生態系を構成する最小単位として流域(集水域)を想定する必要性が指摘されている。特に日本のように地形が急峻なために分水嶺が明白で,かつ個々の流域面積が比較的小さな国では,流域ごとに生態系管理の手法を確立し,実行していくことが望ましい。本研究では特に,流域の地形と生物の生息環境の関係解明に着目した。
〔内 容〕 サケ科魚類イトウが,河道屈曲率1.6以上の極めて蛇行の激しい区間を産卵場所に選択していることを明らかにした。河川の河道形状と魚類の生息環境に密接な関係が存在するために,生息環境の単純化した改修河川からイトウが急速に姿を消しているというシナリオが示唆された。

研究課題 3) 霞ヶ浦の生物資源保護に果たす役割に関する研究
〔担当者〕 春日清一
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕 霞ヶ浦及びその周辺は水・陸両環境を利用する生物が生活し,多様な生態系を形成している。これら生物の存在や生活様式は知られていないことも多く,急激な環境変化により野生生物が気付かれずに消滅する危険性をはらんでいる。このような生物の生活を知り,できる限り記録に残し,保護することを目的とする。
〔内 容〕 @霞ヶ浦の湖沼調査時,また随時生物に注意を払い,多くの現象の発見に努力する。これら現象が重要なものであればこれを学会誌等に記録として残す。A霞ヶ浦に飛来するかも類は湖外の水田などで採食する種は増加しているが,湖内で採食する種キンクロハジロやホシハジロでは著しい減少が起きている。また底性生物であるユスリカや二枚貝類に極端な減少が起きている。
〔発 表〕 b-240,250

研究課題 4) 都市域における大気汚染現象のモデル化に関する研究
〔担当者〕 若松伸司
〔期 間〕 平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔目 的〕 都市域における大気汚染と発生源の関連性を定量的に明らかにするために気象と反応を含んだモデルの構築を行う。これを基に大気汚染の経年変化や地域分布の特徴を把握することが研究の目的である。
〔内 容〕 フィールド観測結果,大気汚染常時監視データ,発生源データ等を総合的に解析し,都市域における二酸化窒素汚染,光化学大気汚染,VOC汚染,PM2.5/DEP汚染などの特性を抽出するとともにこれらの特性を的確に予測・評価できるモデルを構築する。このモデルを用いて大都市地域における大気汚染の比較評価を行う。本年度はVOCの動態解明と長期間にわたる大気汚染トレンドの地域比較を行った。
〔発 表〕 B-126,127,b-290〜293

研究課題 5) 自然水系中における溶存フミン物質に関する研究
〔担当者〕 今井章雄
〔期 間〕 平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕 溶存フミン物質は自然水中の溶存有機物の30〜80%を占める。フミン物質は鉄等の微量必須金属と安定な錯体を形成し,その存在状態に大きな影響を与える。金属の存在状態は生物利用可能性と密接に関係しているため,鉄等の金属とフミン物質との錯化反応を定量化する必要がある。本研究ではその手法の開発を目指す。
〔内 容〕 溶存フミン物質と鉄等の錯化反応における安定度定数と錯化容量を電気化学的手法(ボルタメトリー)により測定する手法の検討を引き続き行った。

研究課題 6) 沿道大気汚染の簡易予測手法に関する研究
〔担当者〕 上原 清
〔期 間〕 平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕 大都市における沿道大気汚染は,沿道周辺の建物が作り出す複雑な市街地気流の影響を受ける。本研究の目的は市街地気流分布とそれに及ぼす大気安定度の影響を温度成層風洞を用いた実験によって明らかにし,さらに汚染濃度分布との関連を調べることによって沿道大気汚染の簡易予測手法を検討することである。
〔内 容〕 沿道大気汚染濃度を交通量と風速データなどから簡易に予測する方法について検討する。
 本年度は温度成層風洞によってストリートキャニオン内部の流れ場と濃度場に及ぼす沿道建物高さの影響を調べ,種々の形状のストリートキャニオン内の平均濃度や濃度分布を推定する方法を検討した。
〔発 表〕 B-27,b-118,119

研究課題 7) 室内環境における悪臭物質の発生機構の解明に関する研究
〔担当者〕 安原昭夫
〔期 間〕 平成9〜14年度(1997〜2002年度)
〔目 的〕 近年の悪臭苦情の多くが室内環境に由来する化学物質から発生しており,加熱臭や腐敗臭,建材臭が代表的なものである。この研究では,台所で発生する臭気に着目し,どのような物質が悪臭の原因であるかを化学分析で明らかにし,それらの物質の生成機構を解明するとともに,脱臭対策の方法を検討する。また,代表的な悪臭成分については微量分析法を開発し,実際の汚染実態調査を行う。
〔内 容〕 ホルムアルデヒドを中心に,PFBOA誘導体化で微量分析する方法を開発した。検出下限は数μg/lであった。この方法で飲料水や酒類中に含まれるホルムアルデヒドを定量した。飲料水は概して10μg/l程度の濃度であったが,日本酒で数10μg/l,ワインなどでは数100μg/lと高い濃度であった。魚類・肉類などに含まれるホルムアルデヒドは回収率が低く,分析できなかった。

研究課題 8) 有機微量汚染物質の環境中動態の解析
〔担当者〕 桜井健郎
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 環境に放出され,また人間や生物に摂取されている数多くの人為起源の化学物質の健康リスクに対処する上で,発生源から暴露に至る環境中での動態の情報は有用である。本研究では,環境中動態の把握が不十分であるような有機微量汚染物質について,数理モデル等による環境動態解析によって新たな情報を得るための手法の検討と,その適用を行うことを目的とする。
〔内 容〕 関東地方のいくつかの水域で採取された水圏底質柱状試料中の,層ごとのダイオキシン類測定結果について,ダイオキシン類の由来についての知見を得るための,予備的な解析を行った。主成分分析法を適用した結果,PCDDsとPCDFs,およびCo-PCBsのいずれについても,化合物組成には水域ごとの特徴があることが示された。また,PCDDsとPCDFsの経年的な組成変化は水域ごとに異なった。

研究課題 9) 環境データ解析のための統計的手法に関する研究
〔担当者〕 松本幸雄
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 環境データから構造的情報を抽出するには,偶然要因の効果を分離する統計解析手法が必要であると同時に,分離が可能なデータの取得がなされていなければならない。
 本研究は,@環境データ解析のための統計的手法の開発,および A解析の基礎となるモニタリングや調査などのデータ取得の方法論について情報理論的見地から検討することが目的である。主な対象は,大気汚染に関する環境データと生体影響データとする。
〔内 容〕 @ベイズ型季節変動調節モデル用い,東京周辺の地点におけるオゾン濃度の経年データを年次変化,季節変動,偶然変動の各成分に分け,成分の経年変化を比較分析した。また,成層圏オゾン濃度の季節変動との関連性が地点により異なることも検討した。A環境データの分布における極値(高い値)の出現確率と平均値の関係をモデル化した。B臭気データの計量処理における統計的方法について検討した。
〔発 表〕 B-77,b-223,c-42

研究課題 10) 環境負荷低減のための都市規模と移動手段のあり方に関する研究
〔担当者〕 近藤美則
〔期 間〕 平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕 人が自動車等の交通手段を利用して移動することに伴って,地域規模および地球規模の環境に与えている負荷は非常に大きい。これら環境への負荷を低減するためには,移動目的を考慮しつつ現在の移動手段をその移動距離別に役割分担させ,効率的な利用を図る必要がある。そこで本研究では,経済的,社会的な障害を念頭に置きつつ地域の規模と利用目的に合致した移動手段およびその実現に必要な要件を見いだすことを目的とする。
〔内 容〕 現在の移動手段の利用状況を移動目的とともに文献調査により収集・整理する。つぎに地域の規模別に必要な移動手段を提示するとともに,それの実現に当たっての問題点を整理する。そして移動手段の変更による環境負荷低減量について定量的評価を行うとともに,望ましい都市規模と都市のあり方についての検討を行う。
 本年度は,乗用車を対象としてその利用実態を把握するために必要な計測項目および計測システムの検討を行うとともに簡単な測定を行った。

研究課題 11) 植物の気孔開度に及ぼす環境要因の受容と伝達に関する研究
〔担当者〕 中嶋信美
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕 植物は乾燥ストレスにさらされると,それに対抗するため様々な代謝変化が起こることが知られている。本研究ではソラマメ孔辺細胞に浸透圧ストレスを与えるとリンゴ酸の蓄積が見られることを明らかにした。本年度は孔辺細胞でのリンゴ酸の合成経路と蓄積したリンゴ酸の役割について検討した。
〔内 容〕 ソラマメの葉から表皮をはく離し,0.4Mマンニトール水溶液に表皮を浸し浸透圧処理とした。PEP carboxylase(PEPC)の阻害剤を処理すると,リンゴ酸の蓄積が抑えられ,気孔開度も低下した。また,PEPCのタンパク量が浸透圧ストレスによって上昇した。以上の結果から,浸透圧ストレスによるリンゴ酸の蓄積はPEPCタンパク量の上昇に由来し,リンゴ酸が孔辺細胞内浸透圧の上昇に作用していると考えられる。

研究課題 12) 神経毒性指標としての脳アンキリンの分子生物学的解析に関する研究
〔担当者〕 国本 学・石堂正美・足立達美
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 細胞膜裏打ち構造を構成するタンパク質の一つ脳アンキリン(ankyrin B)にはオルターナティブスプライシングによって生ずる分子量440kDと220kDの少なくとも2種類のイソ型が存在する。特に,胎児・新生児期に発現のピークを迎える440kD ankyrin Bは,神経突起の伸展,ミエリン膜の形成等への関与のほか,神経細胞傷害の高感度マーカーとしての利用の可能性も明らかになりつつある。本研究では,このankyrin Bの脳神経系における生理学的意義を分子生物学的手法を用いてさらに解析する。
〔内 容〕 ankyrin Bの生理的意義を明らかにするため,培養神経細胞,あるいは実験動物(ラット,マウス)の脳神経系を対象として,ankyrin Bの発現を分子生物学的手法を用いて人為的に変化させることにより引き起こされる神経細胞あるいは脳神経系の機能的・形態的変化を解析した。
 本年度は,神経細胞に特異的なイソ型である440kD ankyrin Bの培養神経細胞(NB-1)における発現を指標として環境化学物質の毒性影響のスクリーニングを行い,同時に行った神経突起伸展への影響と比較を行った。その結果,両指標の間にある程度の相関があることが明らかになった。

研究課題 13) ダイオキシン,環境ホルモン等の健康影響評価に係わる疫学研究の方法論に関する基礎研究
〔担当者〕 兜 真徳・曽根秀子・米元純三
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 ダイオキシンや環境ホルモンへの微量慢性影響として,可能性が示唆されている性ホルモンや甲状腺ホルモンへの影響について疫学的に検討する。関連ホルモン分泌・代謝系やAhレセプター,p450-1A1などの遺伝子発現,新生児の甲状腺ホルモン,エストロジェンの尿中代謝物等の利用可能性について,協力の得られる住民を対象とした調査,あるいは新生児甲状腺機能異常スクリーニングの情報等の基礎的な検討を行う。
〔内 容〕 大阪および埼玉で高度ダイオキシン汚染が示されている,それぞれ職域と1地域の作業査及び地域住民の血液サンプルや母乳中ダイオキシン検査結果と,性ホルモン,甲状腺ホルモン,リンパ球のCYP1a1,1a2および1b1のmRNAのgene expressionにつき測定し,関連性について検討中である。

研究課題 14) 飲料水の含有成分と関連の示唆される健康像の地域差に関する予備的研究
〔担当者〕 兜 真徳・今井秀樹・新田裕史
〔期 間〕 平成8〜11年度(1996〜1999年度)
〔目 的〕 日常的に摂取している飲料水の含有成分(各種金属や有害物質)は,疾病発生の地域差をもたらす可能性のある最も大きな要因の1つと考えられる。本研究では,飲料水中の各種重金属,トリハロメタン等と胃がん及びその前駆状態である慢性萎縮性胃炎,膀胱がん,直腸がん等との関連性について,別途進行中のガンの疫学調査の一部として検討する。
〔内 容〕 国内5保健所管内地域において飲料水を系統的にサンプリングし,各種重金属を定量した結果,水質基準を超える濃度は見いだされなかったが,基準外項目であるバナジウム濃度が比較的高い地域が見られている。本年度は,沖縄と東京の2保健所管内の飲料水について,トリハロメタンはじめVOC測定についての予備的検討を行った。研究が若干遅れ気味であることから,次年度も継続予定である。

研究課題 15) 環境化学物質の精子運動能におよぼす影響に関する基礎的研究
〔担当者〕 米元純三
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 環境化学物質の雄性生殖機能,特に精子運動能への影響をCASA(Computer Assisted Semen Analyser)を用いて評価するための基礎的検討を行い,内分泌撹乱作用のある化学物質について精子運動能への影響を検討する。
〔内 容〕 妊娠15日のHoltzmanラットに50,200,800ng/kg体重のTCDDを投与し,生まれてきた雄について生後,120日齢に解剖し,精巣上体精子の運動能を調べた。精子運動能に関する各パラメータにTCDD投与量に関連した変化は見いだせなかった。

研究課題 16) 人,家畜と野生動物の共生,生存に関する基礎的研究
〔担当者〕 鈴木 明・高橋慎司
〔期 間〕 平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕 発展途上国においては,放牧地が広域化し,野生動物の保護地区の近辺まで及んでいる。そこでは,人が持ち込んだ家畜と野生動物が混在している。家畜と野生動物の混在は共通伝染病を広げ,経済的損失を起こすことから,世界的に重要な問題となっている。そこで,本研究の目的は,人,家畜及び野生動物が共生,共存できる基礎的条件を検索することにあり,この基礎資料は開発途上国の家畜および野生動物のリソースの保持に必要である。
〔内 容〕 前年度に引き続き,ザンビア大学獣医学部はカフエ・レーチェ(大型のアンテロープの仲間:Kobus. k.Lechwe)と国立公園近在の牛から採血し,ブルセラ症の血清学診断と国立公園のアンケート調査を行い,牛の中で,2/15の割合でブルセラ症陽性および擬陽性反応を見つけた。さらに,そのリスクの主たる要因について考察し,その結果,@貧困のため柵が作れない。A乾季に水と牧草を確保できないなど経済問題と深いかかわりがあることが判明した。
〔発 表〕 B-38

研究課題 17) 環境健康リスク評価のための呼吸器系生体影響指標の開発
〔担当者〕 平野靖史郎・山元昭二・安藤 満
〔期 間〕 平成6〜11年度(1994〜1999年度)
〔目 的〕 開発途上国においては,化石燃料の燃焼に伴い,大気汚染物質の呼吸器への影響が深刻化しつつある。本研究では,肺胞腔内に沈着した粒子状物質を貪食していると考えられている肺胞マクロファージや,肺の炎症時に肺胞腔内に浸潤してくる好中球の細胞機能の変化に関する研究を行い,大気汚染物質の呼吸器に及ぼす健康影響評価を行うための指標を開発することを目的とする。
〔内 容〕 呼吸器内に吸入された粒子状物質に対する肺胞マクロファージの貪食作用を解明するため,マクロファージのプラスチック表面への非特異的接着機構を調べた。Sykキナーゼのインヒビターであるピセタノールによりマクロファージの接着が阻害され,また接着に伴い発現する遺伝子が転写レベルで抑制されることがわかった。マクロファージの粒子状物質への接着にSykキナーゼが重要な働きをしているものと考えられる。
〔発 表〕 B-71

研究課題 18) 淡水無脊椎動物の繁殖に及ぼす内分泌撹乱化学物質の影響
〔担当者〕 多田 満
〔期 間〕 平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕 陸水域は多種多様な化学物質で汚染されているが,これまでの研究から化学物質は致死濃度以下のレベルでも生物相互作用系を撹乱し,生態系に予測し難い間接的影響を及ぼすことが明らかになってきた。最近では内分泌撹乱化学物質によるとみられる魚類等淡水生物に対する生殖異常が確認されている。本研究ではこれまでに知見のほとんどない淡水無脊椎動物を対象にその生殖に対する内分泌撹乱化学物質の影響を調べることを目的とする。
〔内 容〕 淡水無脊椎動物チカイエカの卵塊から幼虫に内分泌撹乱化学物質(ビスフェノールA,ノニルフェノール)を1〜1000μg/lの濃度で暴露した結果,ビスフェノールAでは2世代連続暴露で羽化直後のオスの死亡が37〜63%に高まった。そのため生きた成虫の性比(メス/オス)は,1.7〜3.1と対照(1.0〜1.1)に比べ高まった。また,産卵塊の受精率も対照に比べ半分程度に低下した。
〔発 表〕 B-53,b-170,172

研究課題 19) セスジユスリカを用いた底質試験法の検討
〔担当者〕 菅谷芳雄
〔期 間〕 平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕 OECDで検討されている底質試験法は,日本特産のセスジユスリカも試験生物として認められた。ところが本種を使っての底質試験の研究例は多くなく問題点の把握が十分でない。同ガイドラインに沿って実用試験に入る前に他の推奨種との比較検討を行う必要がある。本研究では,ガイドラインに沿って底質中の化学物質の毒性評価を行う際の問題点を検討すると同時に,セスジユスリカの生物特性に合った試験法の開発を行う。
〔内 容〕 OECDの底質試験法は数次の検討の結果,現案では2つの別個のガイドラインとなった。1つは底質に試験対象物質を添加する手法であり,もう1つは底質含む系の上層水に添加するものである。両案とも人工底質を用いしかも止水法となっており,米国EPA法とは異なる。本年度はOECD提案の手法に沿ってセスジユスリカ感受性系統を用いたテストを実行すべく人工底質の混合割合等,試験系の検討を行った。

研究課題 20) 暑熱とオゾンの複合暴露が感染防御能に及ぼす影響に関する研究
〔担当者〕 山元昭二・安藤 満
〔期 間〕 平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕 オゾン(O3)による健康影響を考える場合,夏季の暑熱は,O3の生体影響を修飾する重要な要素の一つとなることが予想される。しかしながら,暑熱とO3を組み合わせた生体影響に関する検討は十分でない。本研究では,暑熱に着目し,暑熱とO3の複合暴露が生体の感染防御能に及ぼす影響について検討する。
〔内 容〕 暑熱とO3の複合影響を明らかにするために,本年度は,マウスを環境境制御飼育装置内で暑熱暴露後,吸入チャンバーでO3暴露し,日和見細菌に対する肺の抗細菌防御能や気管肺胞洗浄(BAL)液中の細胞・液性成分への影響について検討した。その結果,暑熱とO3の複合暴露によって肺の抗細菌防御能への相加的な抑制影響が認められた。しかしながら,BAL液中の細胞・液性成分への相加的な影響は認められなかった。
〔発 表〕 B-119,120,b-276,277

研究課題 21) 有機錫化合物の中枢神経毒性に関する免疫神経内分泌学的研究
〔担当者〕 今井秀樹・兜 真徳
〔期 間〕 平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕 いくつかの有機スズ化合物は中枢神経系を傷害し,さらに免疫系および内分泌系に影響を及ぼす。有機スズ化合物による脳・神経傷害のメカニズムは詳細にはわかっていない。本年度は,有機スズ化合物投与によって引き起こされる脳内海馬領域における神経細胞死について解析した。
〔内 容〕 Sprague‐Dawley系雄ラット(6週齢)にトリメチルスズを一回投与し,投与後5日目に脳を採取し,海馬領域におけるプログラム細胞死(アポトーシス)をTUNEL法観察した。その結果トリメチルスズ投与ラットの海馬領域ではアポトーシス陽性細胞が観察されたが,特に歯状回下部錐体細胞葉においてその頻度は顕著であった。一方対照ラットにおいてはアポトーシス陽性細胞は全く観察されなかった。

研究課題 22) 水中微量化学物質の分析方法に関する研究
〔担当者〕 高木博夫
〔期 間〕 平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕 現在の湖沼,河川水中の微量化学物質の分析法では,化学物質濃度は採水時の瞬時値しか得ることができないため,流出した総量を求めることは簡単ではない。本研究では,吸着剤の一定時間暴露による化学物質の積算吸着量から総流出量を求める方法について検討する。
〔内 容〕 本年度は,河川水の有機物除去に用いている活性炭フィルターを用いた評価手法について検討する。活性炭フィルターにおける農薬等の除去率の変動とその要因を検討する。また,活性炭からの化学物質の回収方法について検討する。

研究課題 23) 環境科学研究用に開発した実験動物の有用性に関する研究
〔担当者〕 高橋慎司
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 国立環境研究所実験動物開発では,環境汚染物質の生体影響研究用実験動物としてウズラ及びハムスターを用いて開発してきたが,本年度は実験動物としての有用性についてさらに検討する。
〔内 容〕 @ニューカッスル病ウイルス不活化ワクチンに対する抗体産生能(NDV-HI抗体産生能と略)の高及び低系ウズラの選抜を53世代へと進め,両系ウズラを遺伝的に純化することができた。また,ハムスターでは兄妹交配による近交化を行い,これまでに2家系を22世代まで継代した。ANDV-HI抗体産生能の低系に出現した羽装突然変異を固定することができた。また,低系の繁殖能力は高系と比較して良好な成績を示し,絶滅の危機を回避できることがわかった。Bウズラ卵形を用いて近交退化の診断手法を開発した。

研究課題 24) シロイヌナズナのアスコルビン酸合成遺伝子の環境ストレス下における発現に関する研究
〔担当者〕 玉置雅紀
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 種々の環境ストレスにより引き起こされる植物への被害は,ストレスにより生じる活性酸素によって引き起こされている。アスコルビン酸はその抗酸化作用により活性酸素の消去に重要な働きを持つと考えられるが,植物においてはその合成過程及び合成に関与する遺伝子の発現についてはほとんど研究が行われていない。本研究ではモデル植物として頻繁に研究に用いられているシロイヌナズナよりアスコルビン酸合成酵素をコードしている遺伝子を単離し,大気汚染ガス下での発現解析を行う。また,この遺伝子を導入しアスコルビン酸含量を改変した組換え植物を作製し,その大気汚染ガスストレス耐性を検討する。
〔内 容〕 前年度単離したシロイヌナズナのアスコルビン酸合成酵素をコードする遺伝子のcDNAをプローブとしてシロイヌナズナのゲノムライブラリーをスクリーニングした。その結果,約10kbのAtGLD1ゲノムを単離することができた。AtGLD1は6つのエキソンから構成され,そのプロモーター領域にはストレス誘導性遺伝子の転写を制御するホメオボックス遺伝子Athb-1の結合領域が存在した。このことからAtGLD1はストレスにより誘導される可能性が示唆された。0.25Mアスコルビン酸を添加した植物におけるAtGLD1の発現を検討したところ,この遺伝子は添加後1時間で発現が誘導された。この酵素の基質を同じ濃度で添加したところ,AtGLD1の発現誘導は3時間後にみられた。基質の添加による内生のアスコルビン酸含量の増加は3時間後に検出されたことから,AtGLD1の発現はアスコルビン酸含量により正の制御を受けていることが明らかになった。ところが,アスコルビン酸の添加により植物中のアスコルビン酸含量は増加し続けるにもかかわらず,AtGLD1の発現は3時間後には対照区に比べ減少していた。このことからAtGLD1の発現はある濃度のアスコルビン酸含量(しきい値)になるまでは正の制御を受け,そのしきい値を越えると負の制御を受ける可能性が考えられた。

研究課題 25) 環境中における微生物遺伝子の挙動に関する研究
〔担当者〕 岩崎一弘
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 これまで環境微生物の研究対象は,分離・培養が可能な株に限られていた。近年,こうした欠点を補うため,分子生物学的な手法により微生物生態の構造を解明する試みがなされてきている。本研究は環境中の特定微生物の遺伝子を解析するために,PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)法によるトリクロロエチレン(TCE)分解遺伝子の環境試料中からの検出・定量法の開発を試みた。
〔内 容〕 TCEを好気的に分解するメタン資化性菌M株の酸素添加酵素メタンモノオキシゲナーゼ(MMO)は,TCE分解のキーエンザイムである。そこで,このMMO遺伝子の一部をPCRで増幅することによるM株の検出を試みた。PCR産物を定量できるPRISM7700を用いた検出法を検討した。プライマー,プローブ濃度等のPCR条件の検討を行い反応を最適化した結果,PCR反応液あたり1〜5細胞まで検出することが可能となった。
〔発 表〕 b-114,117

研究課題 26) 内湾域における底生生物の動態
〔担当者〕 中村泰男・木幡邦男
〔期 間〕 平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕 海底には,様々な底生生物が生息している。富栄養化した内湾において,特に底生生物の生物量が多く,水質や物質循環に大きく影響している。本研究では,底生生物の現場における摂食・増殖を水柱の一次生産と合わせて解析することで,底生生物らが内湾の物質循環にいかに寄与するかを明らかにすることを目的とする。
〔内 容〕 瀬戸内海播磨灘にある家島諸島において,海洋環境調査を行った結果,泥食性のウニであるオカメブンブクや小型ナマコの一種のイカリナマコといった棘皮動物が広い範囲で卓越し,中でも前者はマクロベントス群集のバイオマスの50%以上を占めることが明らかになった。また,オカメブンブクの殻の成長線解析からこの生物の増殖速度を推定し,1年でバイオマスが2倍になることや,2年で成熟し,3〜4年は生きることなどが明らかとなった。

研究課題 27) 瀬戸内海播磨灘における夏季連続環境モニタリング
〔担当者〕 中村泰男
〔期 間〕 平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕 内湾域の富栄養化およびその対策(例えばリンの排出規制)が,長期的に見て,プランクトン群集にどのような影響を及ぼすのかを知ることが本研究の第一の目的である。具体的には,@「富栄養化に伴い窒素あるいはリンとケイ素の比が増加することで,ケイ藻からベン毛藻へといった植物プランクトン構成種のシフトをもたらす」A「ケイ藻からベン毛藻へのシフトがゼラチン質動物プランクトン(クラゲなど)の卓越を誘起する」といった仮説の検証を試みる。
 一方,内湾域における物質循環の解明は今後とも海域保全チームが取り組まなければならないテーマであると考える。このような立場からの研究を実りあるものとするためには,現場環境のモニタリング,とくに有機物の鉛直フラックスや底層での酸素消費測度を細かいサンプリング間隔で測定することが必要となる。そこで,本研究は底泥をめぐる物質循環の解明のための基礎的モニタリングデータを供給することを第二の目的としている。
〔内 容〕 播磨灘,家島諸島の西島付近の定点(水深21m)において,1999年7月半ばから8月半ばにかけて,連日環境モニタリングを行った。モニタリング項目は次のとおり。
@物理的環境因子:水温,塩分,透明度
A化学的環境因子:栄養塩類(NO3,NO2,NH4,PO4,SiO3),溶存酸素色素量
B生物的環境因子:バクテリア・ピコプランクトン,植物プランクトン,微小動物プランクトン,ネット動物プランクトン
 「弱い」熱帯低気圧の度重なる襲来により,本年度は温度成層が発達せず,従来の夏の環境変動パターンとは全く異なった様相を呈した。とくにベン毛藻の発生が例年になく少なかった。水塊が上下に十分に混合されている際には,ケイ藻がベン毛藻を圧倒するという従来からの予想が現場で示された。また,1984年から1999年までのデータのうち,透明度,水温,栄養塩,クロロフィル(植物プランクトン量の目安)の経年変動を調べたが,明瞭な傾向は見いだされなかった。

研究課題 28) 微生物分解機能を活用した環境汚染研究課題の評価に関する研究
〔担当者〕 矢木修身・岩崎一弘
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕 テトラクロロエチレン(PCE),トリクロロエチレン(TCE),トリクロロエタン(TCA)等の揮発性有機塩素化合物による土壌汚染が問題となっている。汚染環境における,汚染物質濃度,汚染物質分解微生物の種類,数,分解能の関係を調べ,汚染状況と分解微生物の関連を明らかにすることにより,汚染程度を評価する手法を開発する。
〔内 容〕 各地の汚染土壌等を用いて,PCE,TCE及びTCAの分解微生物のスクリーニングを実施した。好気的にPCEを分解できる微生物を見いだすことができなかったが,プロパンを唯一の炭素源として増殖し,同時にTCEを分解するMycobacterium TCE28株を分離した。TCE28株は,ブタノールを炭素源として培養したときに,良好な増殖を示し,1mg/lのTCEを4日間で80%以上分解できた。

研究課題 29) 沿岸域環境修復技術の生態系に与える影響及び修復効果に関する研究(奨励研究B)
〔担当者〕 木幡邦男・中村泰男・井上隆信*1・須賀伸介*2
(*1水土壌圏環境部,*2社会環境システム部)
〔期 間〕 平成11年度(1999年度)
〔目 的〕 失われた自然海岸の機能の回復を目的として,また,新たな沿岸開発による環境影響を軽減する措置として,環境修復技術が盛んに開発されている。しかし,これらの技術を実際に適用する際には,これらの技術が環境へ与える影響評価を行う必要がある。すなわち,修復技術を適用することが,環境因子にどのように作用するかを見積もらなければならず,この影響は,最終的には生態系(生物種,群集)を通して評価を行うことが最良である。
 そこで,本研究では,平成12年度開始予定の同名の特別研究の準備研究として,沿岸域生態系の中で重要と思われる水界生態系と底生生態系との相互関係や,底生生態系において代表的な生物種を用いて,現在行われつつある環境修復技術について評価されるべき点を抽出したり,問題点を指摘することを目的とした。予定される特別研究では,水界生態系における一次生産で生産された有機物が,どのような経路で底生生態系に供給されるかについて明らかにすることを,さらに,底生生物とその生息環境との関連を解析することを目的としている。本研究では,その準備研究として,現場にて底生生物の活性や成長速度を調査するための実験手法を開発することを目的とした。
〔内 容〕 東京湾の奥部に残る浅海域である三番瀬で,アサリ,シオフキガイの個体群動態調査を行い,また,餌の大きさとろ過効率について検討した。三番瀬内に生息する二枚貝の餌は,隣接する三番瀬外の海域からも供給されており,三番瀬では有機物の生産より消費が上回っていることが推察された。また,三番瀬で,アサリとシオフキガイでは,生息場が異なることが明らかとなった。
 環境修復技術による効果を評価するためには,現場を特徴付ける生物の行動,生態を研究するのが効果的である。特に,生物にとっての生息場環境の良否を見るために,現場における成長速度が測定されている。二枚貝の飼育実験は,すでに,幾例か報告されているが,これらの多くで,数カ月にわたる長期の実験では生存率が極めて低い。生存率が低いことの説明として,他生物による食害や,飼育枠に付いた藻類などにより通水性が悪くなったための死亡が挙げられている。予定されている特別研究では,食害・通水性の問題が少ないと考えられる,米国でアサリ養殖に用いられた網袋を基にした現場飼育実験を行うこととした。
 干潟・浅海域の重要な機能に水質浄化や物質循環がある。二枚貝などによる水質浄化や,海草・海藻による栄養塩の吸収を,現場にて測定するための装置を既報などを基に制作し,検討した。浅海域底泥では,付着藻の光合成により酸素が生産され,底生生物の呼吸,バクテリアによる有機物分解で酸素が消費される。このことから,底泥と海水との酸素の交換速度が,物質循環の良い指標と考えられるため,現場にて酸素収支を測定する装置を設計した。
 日本各地の海浜を調査した結果,特別研究で調査を行う対象として,自然に近い海浜では,我々の調査結果も含め近年の底生生物の調査事例が多い三番瀬を,また,人工海浜では,平成11年に造成されたばかりであり,その影響を調査しやすいことなどから,大井埠頭中央海浜公園内の人工干潟を第一候補とした。
〔発 表〕 B-34,36,b-135

研究課題 30) バイオ技術の環境適用における生態系影響評価に関する基礎的研究(特別奨励研究)
〔担当者〕 森田昌敏・兜 眞徳・矢木修身・中嶋信美・岩崎一弘・玉置雅紀・佐治 光*1・久保明弘*1・青野光子*1・大坪國順*2・内山裕夫*2・冨岡典子*2・向井 哲*2・大井 紘*3・須賀伸介*3
(*1生物圏環境部,*2水土壌圏環境部,*3社会環境システム部)
〔期 間〕 平成11年度(1999年度)
〔目 的〕 様々な産業分野において組換え生物が利用されつつあり,環境保全分野においても,大気浄化植物や有害物質分解微生物が開発され,これらの利用が期待されている。しかし一方では,生態系への影響も懸念されている。本研究では,環境保全を目的とするバイオ技術の活用ならびにその安全性を評価することを目的に,各種の環境浄化に関与する生物を開発するとともにバイオ技術の安全性評価手法について検討を行う。植物に関しては,大気汚染に関与していると考えられる遺伝子,ならびに,外来遺伝子の挙動の調査に適したマーカー遺伝子を導入した組換え植物の作成を試みる。微生物に関しては,重金属の分解除去ならびに揮発性有機塩素化合物分解酵素遺伝子を探索・分離・構造解析するとともにこれらの遺伝子を導入した組換え微生物の作成を試みる。
〔内 容〕 植物の大気汚染感受性に関与していると考えられる,エチレンの合成系酵素の一つであるアミノシクロプロパンカルボン酸合成酵素の遺伝子を,アンチセンス方向でタバコに導入した。得られた組換えタバコを育てて種子を得,導入した遺伝子のホモ系統を選抜したところ,7系統の組換え植物を得ることができた。7系統中3つの系統について非組換え体よりもエチレン生成が抑えられており,大気汚染耐性の組換え植物が作成できた可能性が示唆された。
 組換え植物のマーカー遺伝子としての利用可能性を検討するため,タバコのホメオティック遺伝子6種類(NTH1,NTH9,NTH15,NTH20,NTH22,NTH23)をVacuum Infiltration法によりシロイヌナズナ(エコタイプ,Col)に導入した。その結果,葉の形態が野生型の植物とはっきり区別できる組換え体が9系統得られた。本組換え植物は,挙動調査に適した材料として使用できる可能性が示唆された。
 各地の土壌・底泥中から高水銀耐性能を有する新規な水銀還元菌の検索を行った。底泥から水銀還元菌D5株を分離した。D5株の生理学的性質及び16S rRNA遺伝子の塩基配列を検討した結果,Bacillus sp.であることが判明した。グラム陽性菌の水銀還元酵素遺伝子の一部を増幅できるプライマーでPCRを行った。PCR産物の塩基配列は,Bacillus sp.RC607株と99%の相同性を示した。次いで,水銀除去バイオリアクターを用いて各種土壌からの水銀除去を試みた。土壌の種類により水銀除去能が異なり沖積土壌で最も高い除去率が得られた。
 1,1,1-トリクロロエタン及びトリクロロエチレン等の揮発性有機塩素化合物を好気的に分解するエタン資化性菌Mycobacterium sp.TA27株から分解に関与するエタン酸化酵素の単離を行った。その結果本酵素は,活性の発現にMonoQカラムにより分離された2つのフラクションが必要であるマルチコンポーネントエンザイムであることが明らかになった。アセチレンによる阻害実験から各フラクションにはそれぞれヒドロキシラーゼおよびレダクターゼが含まれていると考えられた。

研究課題 31) バイオ・エコエンジニアリングを活用した富栄養化抑制型適正水環境改善技術の共同開発に関する研究(特別奨励研究)
〔担当者〕 稲森悠平・水落元之
〔期 間〕 平成11年度(1999年度)
〔目 的〕 タイ王国,中国は産業活動の活性化,人口増加により各種排水による水域の汚濁が顕在化してきている代表的な国であるといえる。さらに,これらの国の富栄養化湖沼での水源において,従来の水質汚濁のみではなく,WHOの飲料水質ガイドラインに位置づけられる強い毒性を示すミクロキスチンを含有するアオコの異常増殖がみられるようになってきており,その緊急対策が重要と考えられる。
 それゆえ,水資源の保全のための有毒アオコの実態解明,対策の確立・強化はこれらの国の水環境を修復していく上で極めて重要な位置づけにある共通課題である。しかし,タイ王国および中国においては,国情に適した富栄養化対策は発生源対策・直接浄化対策ともに著しく遅れているのが現状であり,その対策技術の確立は緊急を要している。このような状況をかんがみ,本研究では微生物,水生植物などの有用生物の機能を最大限活用した生活排水等の小規模分散型の生物処理システムとしてのバイオエンジニアリングと自然生態系に工学の技術を導入した浄化システムとしてのエコエンジニアリングの組み合わせの最適化を図ることにより,亜熱帯地域および温帯地域における最適な水質改善システムの技術開発と,開発した技術を普及させる上で必要な制度づくりの支援化技術を確立することを目的として研究を推進することとしている。
〔内 容〕 本研究課題は5カ年の研究課題であるが,効率的に実行する上でのFSに位置付くものである。この予備的研究において (1)水質改善の高度システム開発のネットワークの構築 (2)有毒微細藻類の質・量・毒性に関する評価・解析 (3)土壌浄化活用型浄化槽システムの重要性の評価・解析 (4)水耕栽培浄化システムの重要性の評価・解析 (5)ローテク技術としてのラグーン処理の適用法の評価・解析 (6)派生廃棄物のリサイクルシステムの重要性の解析を実施し,以下の成果を得た。
 タイ王国,中国ともに大学や公的研究機関と共同研究を行える体制が検討され,バイオ・エコエンジニアリングを活用した富栄養化抑制型適正水環境改善技術を開発する上での基盤をかなりの程度整備することができた。また,タイ王国,中国ともにラン藻類の含有する有毒物質ミクロキスチンによる汚染が顕在化していることが明らかとなった。特に,中国の太湖,デンチ湖,アルハイ湖の集積域では毒性の強いミクロキスチン-LRの現存量が高く,それぞれ3,625,3,324,2,474μg/lと高濃度に検出されることがわかった。それと同時にタイ王国,中国にともに水耕性野菜が畑作性野菜より高価なことから水耕栽培浄化法において付加価値の高い植物の栽培が可能であり,食物生産と浄化が経済的に成立する可能性の高いことが示唆された。また,中国において汚濁負荷の原単位調査を行ったところ,日本式の浄化槽は都市部の下水道が普及していない部分では普及が可能であるが郊外においては経済性の面から現状においては最適とはいいがたい面もあるため,ラグーン等のローテク技術の最適化を含めたバイオ・エコエンジニアリングを活用した環境低負荷・資源循環型の処理システムの重要性が示唆された。これらの研究を踏まえ,さらに次年度以降の研究の重点化が図られた。
〔発 表〕 K- 6,B-18,19,b-21,27,43,44,70,73,78,98

フッターユーティリティメニュー