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文部省・科学研究費補助金による研究


(1)水環境修復のための有用微生物の機能強化・製剤化と高機能浄化システムの技術開発

〔代表者〕
地域環境研究グループ 稲森悠平
〔分担者〕
地域環境研究グループ 水落元之
生物環境部 渡邉 信
東北大学 須藤隆一
東 京 農 業 大 学 高橋力也
東 京 農 業 大 学 藤本尚志
筑波大学 松村正利
千葉県立中央博物館 林 紀男
鞄本環境クリエイト 大内山高広
日 立 化 成 工 業 内田達也
〔期 間〕
 平成9〜12年度(1997〜2000年度)

〔目 的〕
 近年,汚濁した水域や排水処理施設に対して,浄化に貢献する細菌や原生動物,後生動物を大量培養し,添加する微生物製剤の活用が,環境浄化を図る上で極めて重要な位置づけにある。本研究ではこのような点を鑑み,浄化分解能の高い機能強化有用微生物の分離,検出・同定手法,窒素除去にかかわる硝化細菌・脱窒細菌,リン除去にかかわる脱リン菌,難分解性物質分解菌,汚泥の減量化・処理水の透明化に貢献する原生動物・後生動物の高密度培養法の確立,これらの細菌・微小動物を効果的に定着させ得る担体を活用した生物処理反応槽への高密度定着化ならびにのう子化,脱のう子化のための適正条件および増殖促進因子を固定化するための実用化研究を行い,高機能浄化システムの技術を開発することを目的として推進する。本年度は浄化分解能の高い原生動物,後生動物の大量培養技術の確立およびFISH法やELISA法を用いた生物膜中の硝化細菌の動態解析について検討を行った。

〔内 容〕
 これまでの研究により水の透明化および汚泥の減量化には原生動物や後生動物が大きく貢献していることが明らかにされているが,これらのうち原生動物縁毛類Vorticella convallariaおよびV. microstomaについて増殖特性に及ぼす温度,pH,塩濃度,食物源としての細菌の種類・濃度,撹拌強度等の環境因子の影響を明らかにし,製剤化を目指す上で必須となる基礎的知見を集積することができた。これらの有用微生物を製剤化する上で必要な低コスト,容易な大量培養技術の確立について検討を行い,10lスケール,50lスケールの培養槽で輪虫類Philodina erythrophthalmaを高密度に培養することが可能なこと,開放系においても輪虫類
P. erythrophthalmaの培養が可能であること,米糠が輪虫類P. erythrophthalmaの培養に適していること等を明らかにした。また,富栄養化の制限要因である窒素除去に貢献するアンモニア酸化細菌Nitrosomonas属および亜硝酸酸化細菌Nitrobacter属の活性汚泥や生物膜中における動態をFISH法やELISA法により解析し,生物膜内の硝化細菌の分布を明らかにすることができた。さらに,硝化細菌の占有率が硝化反応の進行に伴い上昇し,アンモニア酸化細菌で最大24%,亜硝酸酸化細菌で最大17%まで高まること,硝化反応が定常期に達してからの硝化細菌の占有率はそれぞれ,6.4%,5.4%程度に安定することが明らかとなった。以上の結果からこれらの有用硝化細菌を生物処理反応槽内に高密度に保持する上での適正な運転条件等を明らかにするための基盤を構築することができた。
〔発 表〕B-11,18,b-15,34,40,42,46,49,52,53,61,97,100



(2)大気汚染物質が鼻および眼アレルギーにおよぼす影響とその機構に関する研究

〔代表者〕

環境健康部 小林隆弘
〔分担者〕
星薬科大学 細川友和
〔期 間〕
 平成11〜14年度(1999〜2002年度)

〔目 的〕
 スギ花粉症が近年増加しており,国民の15〜30%が感作され,有症率が5〜10%に達すると推定されている。その原因として,スギ花粉飛散数の増加が第一義的な要因としてあげられる。同時に大気汚染物質が関与している可能性が指摘されている。ここでは,花粉症の増加に大気汚染物質,特にディーゼル排気,二酸化窒素,オゾンが関与している可能性があるかについての実験的研究を行うことを目的とし,これら大気汚染物質が @鼻および眼のアレルギー反応を増悪させるかどうか Aアレルギー反応を増悪する機構の解析 B閾値について検討を加える。@については鼻ではくしゃみと鼻汁分泌量,眼では症状と血漿の漏出を指標に検討する。Aについては鼻で鼻粘膜の反応性,抗体価,好酸球の浸潤,眼では結膜の反応性,抗体価,好酸球の浸潤を指標に検討する。

〔内 容〕
 1)ディーゼル排気暴露が鼻および眼アレルギー反応に及ぼす影響と閾値の推定
 ディーゼル排気暴露(粒子を0.1,0.3または1.0mg/m3の濃度含むディーゼル排気)が抗原の繰り返し点鼻または点眼投与による鼻および眼アレルギー反応に及ぼす影響について検討した。くしゃみおよび鼻汁分泌量または結膜における血管からの血漿の漏出を指標に検討した。濃度に依存して鼻および眼アレルギー反応を増悪させることを見いだした。鼻および眼アレルギー反応を増悪させるディーゼル排気の粒子濃度の閾値は,それぞれ0.1mg/m3,0.3mg/m3当たりと推定された。
 ディーゼル排気暴露が抗原の繰り返し投与による鼻および眼アレルギー反応を増悪させるかどうかを病理組織学的手法を用いて検討した。鼻粘膜上皮,上皮下および結膜への好酸球の浸潤がディーゼル排気粒子濃度に依存して増加することが見いだされた。
 2)ディーゼル排気暴露が鼻および眼アレルギー反応に及ぼす影響機構の解析
 ディーゼル排気暴露が鼻および眼アレルギー反応に及ぼす影響機構として鼻や結膜が過敏になるかどうかおよび抗原特異的抗体産生を増加させるかどうかを検討した。
ディーゼル排気暴露が鼻や結膜を過敏にさせ鼻および眼アレルギー反応を増悪していることが示唆された。
 ディーゼル排気暴露は抗原の繰り返し点鼻および点眼投与による抗原特異的抗体産生を増加させ,鼻および眼アレルギー反応を増悪することが示唆された。
〔発 表〕E-11,e-15


(3)古人骨の化学分析から見た水田稲作農耕による食生活,生業形態の変化
〔代表者〕

化学環境部 米田 穣
〔分担者〕
東京大学 吉永 淳
〔期 間〕
 平成11年度(1999年度)

〔目 的〕
 日本列島に居住した先史人類集団では約2500年前に弥生文化という水田稲作農耕を伴う新しい生業活動が開始されたと考えられている。それと同時に骨の形態も大きく変化することから大陸の人類集団が大規模に流入したと考えられ,現代人の遺伝情報もそれを裏付けている。実際に採集狩猟から農耕へと生業を劇的に変化させたのか,水稲が食生活でどのような役割を果たしていたかを骨の化学分析から検証する。

〔内 容〕
 弥生時代遺跡より出土する骨組織に残存するタンパク質を抽出して,その炭素・窒素安定同位体比を測定する。同時にハイドロキシアパタイトに含まれるストロンチウム,バリウム,亜鉛等の微量元素の含有量を測定し,その個体が生前に有していた食生活を復元する。東北地方・関東地方の弥生時代人骨を中心に分析を進めた結果,縄文時代とは異なるタンパク源が示唆され陸水魚類の可能性が考えられた。


(4)人工光環境とストレス関連ホルモン分泌動態にかかわる内分泌疫学研究

〔代表者〕

地域環境研究グループ 兜 真徳
〔期 間〕
 平成11〜14年度(1999〜2002年度)

〔目 的〕
 現代社会においては,体内時計を撹乱するような因子が数多く出現してきており,とくに本来休息すべき夜の時間帯に活動する機会も増加してきている。ヒトを含め生物の体内時計は,網膜で感受する光をその24時間リズムの同調因子として利用しているが,正確なリズムを刻む太陽光を自然に浴びて生活していた時代の人々とは異なり,著しい不規則性あるいは抑揚に乏しい規則性をもった人工光に,深夜帯まで長時間にわたり暴露されることが多くなっている。本研究では,ヒトにおいて,同様な睡眠・覚醒リズム習慣をもちながら光への暴露パターンが変化した場合に,内因性リズムや同リズムに大きく支配されている各種生理機能(ホルモン分泌,自律神経系機能など)がどのように変化するか,また,それらとその後の健康リスクについて疫学的に検討することを計画した。

〔内 容〕
 本年度は,フィールドにおいても簡便に評価できるようなヒトの体内時計(内因性概日リズム)の生理学的指標を新たに見いだすため,ヒトを対象とした生理実験を行った。実験は,強制的に睡眠覚醒リズムをシフトさせた条件で,メラトニン指標と一致するような,身体加速度及び心拍の両時系列から抽出するアルゴリズムを検討した。また,予備的調査として,携帯光センサーを一般人に装着することにより,日常生活上における1日の光暴露パターンを計測した。


(5)地球環境汚染のタイムカプセルによる汚染監視に関する研究

〔代表者〕

地球環境研究グループ 佐竹研一
〔期 間〕
 平成11〜13年度(1999〜2001年度)

〔目 的〕
 本研究では環境汚染のタイムカプセルとしての樹木入皮および湖底堆積物を用いて過去数百年から現代に至る地球環境の汚染の時系列変化を明らかにすることである。

〔内 容〕
 シェフィールド大学と共同研究を行い,樹齢約150年のブナに含まれる連続入皮に注目し,過去90年にわたる環境汚染の歴史をレーザーアブレーションICP-MS法を用いて解明した。その結果,重金属等による汚染は過去90年間のうちで特に第二次世界大戦中の汚染が最もはなはだしいことが明らかとなった。このような樹木入皮を用いた環境汚染のモニタリングは英国では高い評価を受け,1999年には英国Royal Societyで発表を行った。
〔発 表〕A-25,28


(6)対流圏におけるハロゲンの化学と循環に関する研究−揮発性ハロゲン炭化水素の動態

〔代表者〕

北海道大学 河村公隆
〔分担者〕
化学環境部 横内陽子
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 海洋・海氷中には藻類などによって生成されるブロモホルム,ジブロモメタン,ヨウ化メチルなどの有機ハロゲン化合物が存在している。これらは大気への反応性ハロゲン供給源として対流圏オゾンの変動に重要な意味を持っている。本研究では海洋起源有機ハロゲン化合物の大気・海洋中濃度分布からその発生量と影響評価を試みる。

〔内 容〕
 北半球高・中・低緯度(アラート/北西太平洋/波照間島)における大気中ヨウ化メチルの季節変動を観測して,地域ごとに特徴的な変化を明らかにした。北極域のアラートではヨウ化メチル濃度は年間を通して0.7pptv以下の低濃度であり,夏に特に低濃度であった。このようなヨウ化メチルの季節変化は,夏季にヨウ化メチルの光分解によるロスが最大になることで説明される。しかし,北西太平洋上では逆に8〜9月に最高1〜2pptv,3〜4月に最低(<0.5pptv)であった。その濃度変化は海水温と正の相関を示し,植物プランクトンのブルーミングや日射量との相関はあまり見られなかった。日射量のもっとも多くなる6〜7月にも大気中ヨウ化メチル濃度の低下は見られず,光分解による消失分を充分に補うだけのローカルな発生量のあることがわかった。また,亜熱帯の波照間島ではばらつきが大きいもののやはり夏に高濃度となる傾向が見られた。今後,ヨウ化メチル発生量に対する海水温の影響を解析するとともに,海水中濃度の観測を進めて,ヨウ化メチル発生量の地理的・時間的な変動を推定するための基礎データを得る。
〔発 表〕D-41


(7)ラン藻類の遷移に及ぼすキレート物質の影響に関する研究

〔代表者〕

地域環境研究グループ 矢木修身
〔分担者〕
地域環境研究グループ 岩崎一弘
〔期 間〕
 平成11〜13年度(1999〜2001年度)

〔目 的〕
 最近の霞ヶ浦においては,湖心ではMicrocystisやAnabaena等の発生が著しく減少し,代わりにOscillatoriaやPhormidium等のラン藻が異常に発生する現象が認められている。本研究においては,これらの4種のラン藻に関して,霞ヶ浦及び湖山池の現場調査を行うとともに,室内実験において4種の藻類の種の遷移に及ぼす因子を調べることにより,藻類の異常発生機構を明らかにすることを目的とする。

〔内 容〕
 富栄養化の著しい霞ケ浦及び鳥取県湖山池を対象に,Microcystis,Anabaena,Phormidium,Oscillatoria属ラン藻類を用いて藻類培養試験法による藻類増殖の制限物質の季節変動ならびに錯化容量の変動を調べた。さらに,各種ラン藻類の増殖に及ぼすキレート物質の影響を調べた。霞ケ浦では,年間を通してキレート物質が藻類増殖の制限物質となっており,従来よりもさらにMicrocystisに対して増殖しにくい水質となっていることが判明した。
〔発 表〕B-105,110,b-253


(8)マイクロ化学センサーを用いた乱流拡散係数の測定

〔代表者〕

大気圏環境部 内山政弘
〔分担者〕
大気圏環境部 福山 力
〔期 間〕
 平成11〜13年度(1999〜2001年度)

〔目 的〕
 大気中に排出された汚染物質は最終的には地表に沈着するが,降水以外の沈着過程(乾性沈着)は地表面の形態に強く依存する。したがって,乾性沈着の測定には空間・時間的に稠密な観測が必要が,現状の大気測定用機器はこのような高密度な測定には全く適さない。この技術的な困難を現在急速に発達しつつある化学マイクロセンサーにより克服することをを試みる。

〔内 容〕
 水蒸気濃度センサーを同時校正するためのチャンバーを制作し,センサー間の出力の器差を測定した。有為の差の見られなかったセンサーを用いて以下の2カ所で行ったフィールド調査時にに水蒸気鉛直濃度分布を測定し,既存の方法との比較を行った。@中国・北京市でのSO2流束観測 A長野県大柴高原でのO3流束観測。特に,SO2の鉛直分布と風速の鉛直分布が相似とならない例が多数観測された。この結果は都市域での大気汚染質の地表面への沈着は非定常状態で起こっていることを強く示唆する。


(9)遺伝子発現からみた粒子状物質の包括的毒性評価

〔代表者〕

地域環境研究グループ 平野靖史郎
〔期 間〕
 平成11〜12年度(1999〜2000年度)

〔目 的〕
 肺深部に沈着した粒子状物質は,主として肺胞マクロファージに取り込まれる。肺深部に沈着する粒子の直径は2.5ミクロン以下であるが,アスベストのような繊維状物質では10ミクロン以上の長さのものまで沈着することが知られている。近年ポストアスベスト材料としてチタンウィスカーなど様々な製品が使用されているが,その毒性についてははっきり調べられていない。本研究では,粒子状物質の形状の違いが,呼吸器に及ぼす影響について遺伝子発現レベルで明らかにすることを目的とする。

〔内 容〕
 気管支肺胞洗浄を行うことにより,Sprague-Dawley系ラットより肺胞マクロファージを回収した。RPMI1640培地で肺胞マクロファージの培養を行い,微小酸化チタン,維状物質研究協議会の作製したチタンウイスカー,ならびにUICCの標準アスベストであるクロシドライトを添加した。対照群および実験群の肺胞マクロファージからtotal RNAを抽出し,逆転写反応によりcDNAを作製した。アクリルアミドゲル電気泳動を用いて増幅された遺伝子を分離し,オートラジオグラフィー法にて発現に違いの見られる遺伝子を抽出した。抽出した遺伝子をTAクローニングし,シークエンサーを用いて遺伝子配列を決定したところkrox-20/egr-2と判明した。
〔発 表〕B-69〜71,74,b-211〜213,215,216


(10)メタン酸化細菌のシャペロニンと生物処理技術への応用

〔代表者〕

水土壌圏環境部 内山裕夫
〔分担者〕
水土壌圏環境部 冨岡典子
筑 波 大 学 野村暢彦
〔期 間〕
 平成11〜12年度(1999〜2000年度)

〔目 的〕
 バイオレメディエーション技術によるトリクロロエチレン浄化を行うため,トリクロロエチレン分解菌であるMethylocystis sp. strain M(M株)の分解酵素である可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)遺伝子上流域にコードされているシャペロニン様遺伝子に注目し,この構造解析及びメタンモノオキシゲナーゼとの関連性を明らかにする。また,トリクロロエチレン特異的なストレスタンパクも解析し,分解能の持続化を試みる。

〔内 容〕
 sMMO遺伝子群の上流域に2つのオープンリーディングフレームが認められ,その一方にはシャペロニンに特異的な構造が観察された。また,他菌株との相同性検索を行った結果,高い相同性が示され,さらに,発現ベクターと連結して大腸菌に導入することにより,活性検討に十分な量が得られた。
〔発 表〕g-16


(11)法医学的応用のための表面電離型有機マススペクトロメーター(SIOMS)の開発

〔代表者〕

浜松医科大学 鈴木 修
〔分担者〕
化学環境部 藤井敏博
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 使用が激増している乱用薬物,すなわちモルヒネ,ヘロイン,コカイン,覚醒剤,及びこれから使用が増加すると予想される幻覚剤等の研究のために,表面電離型有機マススペクトロメーター(SIOMS)のシステムを開発する。

〔内 容〕
 ガスクロマトグラフ(GC)とSIOMSとの接続のためのインターフェースの改良を行った。ヘロイン,コカイン等のドラッグ類のGC(SI)MSを行った。
〔発 表〕d-43


(12)環境汚染のタイムカプセル“入皮”による地域汚染時系列変化研究手法の開発と応用

〔代表者〕

地球環境研究グループ 佐竹研一
〔分担者〕
化 学 環 境 部 伊藤裕康・田中 敦
〔期 間〕
 平成9〜12年度(1997〜2000年度)

〔目 的〕
 本研究の目的は環境汚染のタイムカプセル樹木入皮についてそれぞれ産業化および環境汚染の歴史の異なる国で必要な研究試料を入手し,その汚染の状況を調査することである。

〔内 容〕
 本年度は入皮のそれぞれ異なる四通りの形成過程を分類整理し,またそれぞれの入皮の特色を生かしたサンプリング方法を検討しサイアス誌に「大気汚染の歴史を樹木の入皮が記録」として発表した。また,色彩色度計を導入し特に同一樹木の外樹皮の汚れを相対的に分類するモニタリング手法を開始した。また,本年度より足尾・日光地域を一つのフィールドとして選び,その汚染史の解明に取り組むこととした。
〔発 表〕A-26,28


(13)山岳(八方尾根)を利用した降水による大気汚染物質の除去率(洗浄係数)の測定

〔代表者〕

地球環境研究グループ 村野健太郎
〔期 間〕
 平成11年度(1999年度)

〔目 的〕
 標高1850mの八方尾根と標高800m付近の平地(白馬村)で降水,ガスおよびエアロゾルの観測を約10日間行うことにより,降水によるガス・エアロゾル等の大気汚染物質の洗浄係数を測定する。

〔内 容〕
 9月中,下旬に2週間ほど八方尾根(1850m)と平地の白馬村で,ガス・エアロゾル,降水のサンプリングを行う。降水は1降水ごとに降水サンプラーで採取し,ガス(二酸化イオウ,アンモニア,硝酸ガス),エアロゾル(硫酸イオン,硝酸イオン,アンモニウムイオン)は6時間ごとにガス・エアロゾルサンプラーで捕集した。この2週間の期間内の降雨の前後のガス,エアロゾルおよび降水中のイオン種濃度,降雨強度から洗浄係数を決定した。


(14)温度勾配ゲル電気泳動法を用いた微細藻群集の多様性解析

〔代表者〕

生物圏環境部 河地正伸
〔期 間〕
 平成11〜12年度(1999〜2000年度)

〔目 的〕
 本研究は,温度勾配ゲル電気泳動法(TGGE法)による微生物群集の多様性解析手法の開発を目的として計画した。TGGE法は自然界の生物群集をより反映した多様性解析を可能にする方法として最近注目されているが,これを微細藻類に適用するには,種間のDNA抽出効率の相違や細胞内における類似遺伝子の識別といった問題点を解決する必要がある。そこで,研究の第一段階として,試験材料に多種多様な微細藻保存株を用いて,TGGE法による多様性解析手法の確立を図る。そして第二段階として,自然界のサンプルを用いて微細藻群集へのTGGE法の適用の有用性を検証することにした。

〔内 容〕
 TGGE法を適用するための基礎データを得ることを目的として,実験材料に多様な微細藻類保存株を用いて,DNA抽出の条件検討を行った。材料には様々な分類群から異なるタイプの細胞外被構造(細胞壁,多糖質,珪酸質,炭酸カルシウムなど)をもつ種を選定した。DNA抽出液としてCTAB(Hexadecyltrimet hylammonium Bromide)及びSDSを用い,DNAの抽出が特に困難な種については,物理的な細胞破砕法として,ガラスビーズによる破砕,液体窒素による凍結破砕,そして超音波破砕を併用した。その結果,多糖質の外被構造で覆われる種については超音波処理がDNA抽出に有効であること,そして堅い細胞壁で覆われる種については液体窒素による凍結またはガラスビーズによる破砕が有効であった。また一部の種,例えばプラシノ藻のPrasinodermaや紅藻のGaldieriaでは凍結とガラスビーズによる破砕を繰り返し行うことでようやくDNAが抽出されてきた。このようなDNA抽出効率の差は,混合サンプルからDNAを抽出する際に問題となった。特に脆弱な細胞の種と堅い細胞壁の種の混合サンプルからDNAを抽出する場合,脆弱な細胞のDNAは断片化が進むことで検出すら困難になり,PCR反応にも影響した。すなわち野外試料からDNAを抽出する際には複数の細胞破砕法を併用する必要性が示唆された。


(15)アポトーシス制御系に基づく環境有害因子の人への健康影響評価に関する研究

〔代表者〕

地域環境研究グループ 石堂正美
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 今日の環境問題の中で極めて重要な課題になっているのが,環境有害因子に生体が暴露したときの,人の健康への影響を鋭敏にかつ感度よく評価できる手法の確立である。本研究の目的は,近年見いだした環境有害因子によるアポトーシスシグナルを人の健康影響の指標に応用することである。そのためには,@血中レベルでアポトーシスシグナルを同定できること A早期高感度健康影響評価法のための新しいアポトーシス制御系因子の同定 B環境の異なる地域住民の血液採集と本研究で確立した評価法を応用することである。

〔内 容〕
 昨年までの研究において,アポトーシスシグナルの一つであるDNAフラグメント化を血中で検出するには,従来の方法では検出不可能であったため,PCR法による検出方法を確立した。人工的に合成した12塩基よりなるオリゴDNAをいかなるDNAフラグメントに対しても結合することができるような少量のDNAフラグメントもPCRにより検出可能なところまで増幅可能となった。この方法では,50ngのDNAフラグメントがあれば検出可能であり,従来の100〜1,000倍感度が上昇した。また,環境の異なる地域住民として,東京都杉並区住民と茨城県高萩市住民を選択し,1〜2mlずつ各地域50人以上の血液が集まった。血液からDNAを抽出する回収率を予備実験で見積もると,1ml血中当たり3〜5ugDNAであった。したがって,本年度は @採集した2地域の血液すべてのDNAフラグメント化を調べる。また,同時に A血液からRNAを抽出し,新たに明らかになった生体防御因子やDNAフラグメント化酵素がどのように活性化しているかどうかを調べる。B本研究で確立した環境有害因子のアポトーシスシグナル検出系の人への健康影響評価法としての総合検討を行う。


(16)日本列島沿岸域における放射性炭素年代値の海洋リザーバー効果の評価

〔代表者〕

化学環境部 米田 穣
〔期 間〕
 平成11〜12年度(1999〜2000年度)

〔目 的〕
 表層海水中の炭素は大気に比べて14Cの存在比が小さい。本研究では,資料採集年および採取地点が明らかになっている海洋生物資料に関して14C存在比を測定することによって「海洋リザーバー効果」の見積もりを行う。それによって,日本沿岸における海洋リザーバー効果の14C年代への影響を検討することが可能となり,海底コアなどの絶対年代測定の精度が格段に向上することが期待される。

〔内 容〕
 資料採集年および採取地点が明らかになっている海洋生物資料に関して14C存在比を測定することによって「海洋リザーバー効果」の見積もりを行う。本研究では京都大学地質学教室に保管されている核実験以前に採取された貝殻資料から試料を採取し,日本沿岸における海洋リザーバー効果の14C年代への影響を検討した。その結果,西部北太平洋域では見かけの放射性炭素年代が見かけ上,4〜5百年古くなる可能性が明らかになった。


(17)有機スズ化合物の内分泌撹乱化学物質としての作用に関する研究

〔代表者〕

地域環境研究グループ 今井秀樹
〔期 間〕
 平成11〜12年度(1999〜2000年度)

〔目 的〕
 本研究では,神経毒性物質である有機スズ化合物の内分泌撹乱物質としての雄性生殖能への影響の有無とそのメカニズムを解析することを目的とする。ラットに中枢神経系に影響が生じることが明確である投与時期および用量を選択して各種有機スズ化合物(トリブチルスズ,トリメチルスズ,トリフェニルスズ)を投与し,中枢神経系の病理組織学的検索と合わせて甲状腺および雄性生殖能関連内分泌指標への影響を観察した。

〔内 容〕
 トリブチルスズ,トリフェニルスズおよびトリメチルスズのいずれを投与した場合にも血漿中のテストステロン,サイロキシンおよびトリヨードサイロニン濃度は対照群と比較して一過性に低下した。トリメチルスズに比較してトリブチルスズおよびトリフェニルスズの方がサイロキシンとトリヨードサイロニンの血漿中濃度の変化に対する効果は大きかった。上記の血漿中ホルモン濃度の低下は,有機スズ化合物が下垂体あるいは末梢器官のいずれかに影響を及ぼしたことを示唆している。
〔発 表〕b-105,106


(18)窒素・リン負荷削減と下水処理水の有効活用のための干潟ビオトープの創出手法開発

〔代表者〕

東北大学 西村 修
〔分担者〕
東北大学 須藤隆一・山田一裕・金 主鉉
地域環境研究グループ 稲森悠平・水落元之
水土壌圏環境部 徐 開欽
〔期 間〕
 平成10〜13年度(1998〜2001年度)

〔目 的〕
 本研究ではエコトーンとしての干潟のもつ自然浄化機能に着目し,省エネルギー,省資源および省メンテナンスにて下水処理水中の窒素・リン負荷を削減し,かつ下水処理水を活用して健全な干潟ビオトープを創出する方法を検討すると同時に,現場に設置する干潟モデルプラントによる実験,およびそれらの結果を踏まえた干潟生態系モデルによる評価解析から,環境保全型ビオトープの創出にあたっての設計,運転・管理の合理的システムを構築するための解析評価を目的とする。

〔内 容〕
 干潟の浄化機能強化のための自然,人工干潟の既往の研究の整理,設計パラメータの評価解析既往の研究成果ならびに先行して準備した生態系モデルを用いて干潟の設計に関するパラメータを整理した。また,干潟浄化機能強化型モデルシステムの解析結果を基に臨海部に位置する下水処理場隣接地に実証プラントを設置し,その予備実験を行い,干潟生態系に生息する微小動物が下水処理水の水質浄化効果に大きく寄与することが明らかになった。干潟浄化機能強化型現場プラントを用いた生物・物理・化学的因子の定量解析現場に建設したモデルプラントの運転,管理を行い,干潟構造の変化に応答する生態系,水質浄化機能の変化に関するデータ収集ができた。
〔発 表〕B-12,13,G-7,13,b-16,18,65,78,96


(19)種子を介した植物と動物の個体群間相互作用

〔代表者〕

地球環境研究グループ 星崎和彦
〔期 間〕
 平成11〜12年度(1999〜2000年度)

〔目 的〕
 生態系・生物多様性の理解にとって種間相互作用が重要であるという認識が近年定着しつつある。森林の更新の場合,動物による樹木の食害はときに大きな更新阻害要因となる。本研究は,冷温帯の堅果型樹木ギルド(落葉広葉樹3種)と食植者ギルド(野ネズミ3種)との間の複雑な相互作用を明らかにし,結実量と捕食者個体数の年変動を基に,捕食の年変動メカニズムと複数種の共存条件(多様性の維持機構)を解明することを目指す。

〔内 容〕
 @共通の餌となる樹種が共存する環境下では,堅果ギルドと種子食者ギルドとの相互作用を考慮に入れる必要がある。Aトチノキの更新には,他種堅果の豊凶がネズミの個体数変動を介して間接的に影響した。Bギルドを構成する同じネズミ類の中で,機能的反応(種子捕食vs実生捕食)が種ごとに異なっていた。
 この結果から,樹木の結実の年変動に関する議論に,結実の種間同調や餌の質という新しい視点の導入に成功した。
〔発 表〕A-53


(20)高速有機分子の表面電離法をイオン源とするガスクロマトグラフ質量分析計の試作研究

〔代表者〕

小山工業高等専門学校 岸  浩
〔分担者〕
化学環境部 藤井敏博
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 超音速分子加速法により高速化した有機・無機化合物は加熱固体表面上で効率よく正イオン化または負イオン化される。この原理を利用した高感度に有機・無機化合物を検出できる特異な分析機器GC/MSの開発を行う。

〔内 容〕
 Clイオン源用の大容量(150l/sec)ターボ分子ポンプ付きGC/MS装置の新システムが組み上がった。本年度は超音速自由噴流ビームの電子衝撃法によるマススペクトルを測定,強い分子イオン強度が確認できた。
〔発 表〕d-43


(21)干潟浅海域のベントス生殖・定着技術導入によるエコエンジニアリング修復システム開発

〔代表者〕

地域環境研究グループ 稲森悠平
〔分担者〕
生物圏環境部 渡邉 信
水 土 壌 圏 環 境 部 徐 開欽
地域環境研究グループ 水落元之
東北大学 須藤隆一
〔期 間〕
 平成10〜13年度(1998〜2001年度)

〔目 的〕
 干潟における共存と安定のシステムを構築する上で,生態学,生態工学,水理学,分析化学的側面に立ち,干潟生態系の浄化機能と密接に関連する食物連鎖を構成する各種生物間の捕食被食関係を含めた相互作用,重要なマクロベントスの生殖・生産・定着化技術,水質浄化と生物間相互作用にかかわる各種パラメーターに着目した研究を進め,人工干潟を構築する上での設計緒元,現状の干潟を修復する上での発生源対策のあり方を明らかにし,エコエンジニアリングとリンクした水質浄化システムを提案することを目的とする。

〔内 容〕
 本年度は,浄化機能を持続させる上で重要な因子となる底生動物であるゴカイ(Neanthes japonica)の生殖と産卵,ふ化の安定化にかかわる生活史の解明と応用化技術について検討した結果,ゴカイは通常の干潟で観測される環境要因の変動範囲で十分に適応でき,定着化の可能性の高いことが示唆された。また,二枚貝のイソシジミ(Nuttallia olivacea)をプラント実験装置内で飼育したところ,海水中における一次生産活性を高めることより,高次捕食者の導入により生態系の活性を高め,有機物の過剰な蓄積を防止できることが示唆された。
〔発 表〕B-8,b-16,45,65,94


(22)環境ストレスが微細藻類の遺伝的変異に与える影響

〔代表者〕

生物圏環境部 笠井文絵
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 集団中の遺伝的変異は,その集団が環境の変化,すなわち人為的環境ストレスにどれだけ適応できるかを決める要因となり,生態系に対する環境ストレスの影響を評価する上で考慮しなければならない重要な要素である。本研究では人為的環境ストレスが,水界生態系の一次生産者としてまたそれ自体が貴重な遺伝子資源である微細藻類の集団にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的とする。

〔内 容〕
 アロザイムの遺伝解析を3酵素について行ったところ,アスパラギン酸アミノ基転移酵素のみが明瞭なメンデル遺伝を示し,他の酵素の遺伝解析はできなかった。そこで,より多くの遺伝的変異を見つけるためにマイクロサテライトに注目し,その解析法の確立を試みた。2塩基の繰り返し配列及び3塩基中2塩基が同じ繰り返し配列の存在が確認されたが,プライマー配列の決定は今後の問題として残った。


(23)生物の相互作用と場の利用を考慮した貧栄養な湖の総合的な保全のための基礎的研究

〔代表者〕

地域環境研究グループ 高村典子
〔分担者〕
地球環境研究グループ 高村健二
生物圏環境部 上野隆平
青森県環境保健センター 三上 一
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 湖沼に生息する生物の場の利用や相互の関係を明らかにし,貧栄養湖沼の生態系保全のための基礎的研究を行う。

〔内 容〕
 これまでの研究で,十和田湖の底生動物群集の分布が明らかになった。そこで,その分布を決める要因について検討した結果,種類組成を決定するのは底質や波が重要であることがわかった。量については,環境要因や有機物量でなく,底生魚類の分布が重要であると考えられた。これらを実証するための実験を行い,沿岸浅瀬では,ヌマチチブによるトウヨウモンカゲロウ,ホソバトビケラなどの大型底生動物の選択的な摂食が底生動物群集の現存量を低下させることが示唆された。十和田湖のイトヨから8種類のマイクロサテライト遺伝子を分析して他の水系のイトヨと比較したところ,十和田市の県水産試験場近くのイトヨと遺伝的に類似していること,またさらに広い地理区分で見ると太平洋側のイトヨ群に似ていることがわかった。
〔発 表〕K-8〜31,B-49,50,52,b-165,166


(24)都市域における大気環境モニタリングシステムの新構築に関する研究

〔代表者〕

地域環境研究グループ 若松伸司
〔期 間〕
 平成9〜12年度(1997〜2000年度)

〔目 的〕
 都市域における大気環境質の経年変化や地域分布の特徴を的確に把握することができる大気環境モニタリングシステムの開発を目的とする。このような都市大気環境モニタリングシステムの新構築に必要な測定技術,データ収集・解析に関する基礎的な検討を行うとともに,実データに基づいたシステム評価を行う。

〔内 容〕
 これまでデータが得られていなかったVOC成分に関する発生源評価,環境データ解析を重点的に行った。
 発生源モニタリングとしてはトンネル調査による自動車からのVOC発生量や組成の推計を行った。また,環境中のVOC濃度の動態を把握するために航空機を用いた立体分布観測データの解析を行い,主に,関東地域における広域分布の特徴を把握した。これとともに,風洞実験の結果を用いて沿道大気汚染モニタリングシステムの検討を行った。
〔発 表〕B-27,127,b-118,119,136,137,290〜293


(25)DOC分画手法を用いた溶存有機物のトリハロメタン生成能評価

〔代表者〕

地域環境研究グループ 今井章雄
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 浄水過程の塩素処理により有機物から発ガン物質であるトリハロメタンが生成される。トリハロメタン前駆物質は主に溶存有機物に起因し,代表的物質としてフミン物質が良く知られている。本研究は,トリハロメタン前駆物質の適正な定量的分離手法を開発し,トリハロメタン生成原因物質の存在濃度およびトリハロメタン生成特性を明確に評価することを目的とする。

〔内 容〕
 霞ヶ浦湖水および流入河川水のろ過水,フミン物質および親水性画分(非フミン物質画分)のトリハロメタン(THM)生成能をヘッドスペースGC/MSにより測定した。存在濃度を考慮したTHMFPの測定結果より,河川水では既報のようにフミン物質も代表的なTHM前駆物質と言えるが,湖水では親水性画分がフミン物質よりも重要なTHM前駆物質であることが明白に結論された。
〔発 表〕b-101,103


(26)ダイオキシン類の毒性発現に係る新規の転写調節因子の同定

〔代表者〕

環境健康部 青木康展
〔分担者〕
環境健康部 松本 理
大阪大学 今川正良
〔期 間〕
 平成10〜11年度(1998〜1999年度)

〔目 的〕
 2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(以下,ダイオキシン)およびその関連化合物(以下,ダイオキシン類)は,催奇形性や細胞増殖作用に伴った発ガンプロモーター作用など多様な毒性を持っており,これらの毒性発現に係る遺伝子発現のメカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。

〔内 容〕
 GPEI領域に結合するタンパク質の同定を,GSTP1遺伝子が常時発現している不死化ラット肝実質細胞の核抽出液を出発材料として進めた。32P標識したGPEIオリゴマーとこれに結合する核タンパク質を紫外線照射により結合し,タンパク質を2次元電気泳動により分離した後,GPEIに結合したタンパク質をオートラジオグラムで検出し単離した。
〔発 表〕E-1,e-4,64,65


(27)熱帯降雨衛星観測とライダー雲観測とを用いた雲の放射効果の定量的評価に関する研究

〔代表者〕

大気圏環境部 高薮 縁
〔分担者〕
大気圏環境部 杉本伸夫・松井一郎
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 雲システムによる放射効果の定量的評価研究のため,熱帯域における大規模雲システムの活動と雲の鉛直構造との関係を調べる。解析には,インドネシア・ジャカルタ近郊に設置された小型ミーライダー等による地上からの連続雲観測およびGMS(ひまわり),TRMM(熱帯降雨観測衛星)等の衛星観測を用いる。また解析結果を放射伝達モデルを介した雲の放射効果の見積もりにつなげる手法を検討する。

〔内 容〕
 ジャカルタの雲底高度データを1998年1月〜99年3月中の5期間に得た。降雨量の多いPR2(1998年6〜7月)とPR4(1998年12月〜99年3月)期に高度約5km付近の雲底高度ピークを観測した。TRMM降雨データ解析の結果,インドネシア域で降雨量の多い時期には,積雲対流活動に伴う層状雲(アンビル雲)からの降雨が約半分を占めた。高度5kmの雲底ピークはこのアンビル雲に対応すると推測される。
〔発 表〕F-35,44,f-43,46


(28)微小な反応速度差の精密測定法の開発と同位体間の反応速度差の決定−大気化学への貢献

〔代表者〕

地球環境研究グループ 鷲田伸明
〔分担者〕
大気圏環境部 猪俣 敏・古林 仁
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 近年,地球環境研究において種々の元素の循環機構(いわゆる炭素,イオウ,窒素などの循環)を明らかにするために同位対比測定が行われている。循環機構における同位体濃縮の一つとして大気中での化学反応における反応速度の同位体間の差異の評価が重要視されている。本研究では気相ラジカル反応における安定同位体間の微小な反応速度の差異を精密測定し,問題解決に貢献するもので,本年度は以下の研究がなされた。

〔内 容〕
 @メチルラジカルと酸素原子,分子の反応速度の同位体効果:CH3とCD3,12CH3と13CH3のメチルラジカルとO(3P),O2の反応速度の比の測定を行った。系の中にあらかじめ濃度既知のO(3P)またはO2を混入しておき,反応によるシグナルの減衰を測定し同位体間での反応速度の差異を決定した。ACH2CFO,CD2CFOラジカルのレーザー誘起ケイ光の研究:反応速度研究の準備として,CH2CFOとCD2CFOラジカルのレーザー誘起ケイ光測定を行い,分光学的情報の中の同位体効果を決定した。
〔発 表〕A-62,63,a-68,f-1〜3


(29)深刻な森林被害の見られる亜高山域でのオゾン観測

〔代表者〕

大気圏環境部 畠山史郎
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 奥日光の白根山周辺においては深刻な森林衰退が見られる。枯れている樹木は特定の樹種に限らず,広葉樹も,針葉樹も広範囲に枯損を受けている。関東平野内で生成する光化学オゾンや,この光化学オゾンと植物が放出するテルペン類等の天然炭化水素との反応で生成する過酸化物が原因の一つではないかと考えられる。このため,実際に深刻な森林衰退の見られる高山,亜高山地域でのオゾン濃度の測定を本研究の目的とする。

〔内 容〕
 電池で駆動できる小型のオゾンセンサーと小型のデータロガーにより,平成11年7月31日〜8月8日に,奥日光前白根山頂上直下の鞍部稜線上においてオゾン,気温,風向風速,湿度の測定を行った。最高オゾン濃度は1時間平均値で約90ppbであった。快晴下で午前中に最高濃度が見られたことが特徴である。本観測の結果から,好天が持続し,南ないし南東の首都圏の方向から風が吹くときに高濃度が観測されることが明らかになった。
〔発 表〕F-54,f-95


(30)河川生態系を健全に維持するための瀬と淵のあり方に関する研究

〔代表者〕

水土壌圏環境部 徐 開欽
〔分担者〕
地域環境研究グループ 稲森悠平
東北大学 須藤隆一・西村 修・山田一裕
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 本研究では,近自然工法によって河川内における生物多様性の確保を実現させるために,生物の生息環境として重要な淵を対象として,河川水質に応じた瀬と淵の構造の最適化を図ることを目的とする。この目的を達成するために,河川水質の中で特に有機物・窒素化合物濃度と淵の構造とを変数として作成したモデルにより,淵底部における溶存酸素濃度を予測し,底生生物の生息可能な溶存酸素濃度を確保しうる瀬と淵の設計因子を検討する。

〔内 容〕
 河川生態系復元のためのビオトープの創出,河川のビオトープや多自然型川づくりに有効となる河床構造と浄化能との関係,瀬と淵と水質浄化機能との関係の検討を行った。得られた結果は次のとおりである。@健全な河川生態系を維持するためには,ビオトープ創出による水辺浄化機能の向上や多自然型川づくりの導入,生態工学を活用した自然浄化強化手法の開発が重要であることがわかった。A水生生物の生息環境の創出にあたっては,瀬や淵を形成させるなど流路の変化と,植生の確保や礫を充てんするなどの多孔空間の確保が有効であることがわかった。B流路における有機物除去能は,効率的な接触効率が確保されながら適切な生物膜量が保持されることで生物膜接触酸化効効果が向上することがわかった。C淵・よどみや植生の繁茂によって流速が低下することで生物膜量が高まるために嫌気的領域の存在する割合が多くなり,それが脱窒作用を向上させ窒素除去効果が高まることが明らかになった。D浄化ブロック,浄化ネットの適用はビオトープと同調して自然浄化機能を持続的に維持しながら強化する上で有効で,浄化ブロックは低水路の瀬や淵の創出を通じて,浄化ネットは植生の補助材として有機物および窒素除去能が期待できるものと考えられた。
〔発 表〕B-12,13,G-1,7,13,b-22,35,71,73,85


(31)湖沼における車軸藻類の消滅機構の解明と生息域外保全に関する研究

〔代表者〕

生物圏環境部 渡邉 信
〔分担者〕
生物圏環境部 野原精一
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 湖沼において激しく消滅している車軸藻類について,その分布と生息状況を水環境を含めて調査し,それらの消滅要因を明らかにするとともに,車軸藻類の培養を行い,増殖条件や生活環制御条件を検討し,個体での保存,卵胞子,精子,受精卵での保存技術を確立することを目的とする。

〔内 容〕
 3年間の研究により,加崎(1964)により行われた調査で31種類が確認された北海道〜九州における40湖沼を調査した結果,@28湖沼で車軸藻類は消滅し,残りの12湖沼でもわずかに1〜3種類が確認されただけであり,A種数は1964年当時の31種類から6種類に激減していたこと,B5種類の車軸藻が絶滅,1種が野生絶滅,24種が絶滅危惧T類種とランク付けされたこと,及び C絶滅の危機に瀕する4種類の車軸藻の培養及び保存に成功することができた。
〔発 表〕h-24


(32)河川の底生動物の成長と行動に対する化学物質の長期低濃度暴露影響

〔代表者〕

地域環境研究グループ 多田 満
〔期 間〕
 平成10〜11年度(1998〜1999年度)

〔目 的〕
 流水式水路を用いて河川に普通に見られる殺虫剤感受性種であるヒラタカゲロウ類(エルモンヒラタカゲロウ,シロハラコカゲロウ)とウルマーシマトビケラを用いて野外で長期間低濃度で検出されるカーバメイト系殺虫剤,フェノブカルブを低濃度(1〜16μg/l)で長期間(2カ月程度)暴露し,その成長(幼虫の生死や羽化)と行動(ウルマーシマトビケラの場合は,営巣行動)に及ぼす影響を調べる。

〔内 容〕
 ウルマーシマトビケラ幼虫を用いてフェノブカルブの営巣行動,成長と羽化に対する影響を調べた。4μg/l以上の濃度では営巣しない個体が見られ16μg/lの濃度ではすべての個体が営巣しなかった。4,8μg/lの濃度では蛹化できず幼虫のまま死亡した個体が全体の30〜50%を占めた。16μg/lの濃度ではすべての個体で実験開始2週間以内に死亡が確認された。
〔発 表〕B-54,b-171


(33)集水域の栄養塩負荷が湿原生態系に及ぼす影響評価に関する研究

〔代表者〕

生物圏環境部 野原精一
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 本研究では,人間活動や開発行為等に影響されやすい移行帯としての湿地生態系を対象とし,人間活動により激しく撹乱された赤井谷地(高層湿原)・釧路湿原(低層湿原)における集水域からの栄養塩類の流入量評価とその生態系影響,並びに緩衝機能を調査・解析し,湿地生態系管理のためのガイドラインを作成するための科学的知見を得ることを目的とする。

〔内 容〕
 1999年8月9日に釧路湿原の3カ所のハンノキ林で調査を行った。pHはA,AC区(河川流入区)で中性に近い値を示し,C,CC区(湿原中央区)は中間,B,BC区(湿原縁区)で最も酸性でおよそ5.5であった。表層水の電気伝導度はC区で最も高く0.14mS/cmで,A区やB区では0.08mS/cmであった。A水路の水温がA区と同様であったことから流入水の影響で水温が低いものと考えられる。NH4-NはA,AC区では低いが,B,BC,C,CC区では1ppmを越える濃度であった。これは,A,AC区では河川からの流入が多いのに対して,B,BC,C,CC区では水が停滞しており嫌気的になっているためと考えられた。河川の影響は溶存態有機炭素(DOC)にも見られ,B,BC,C,CC区ではDOCが非常に高かった。


(34)富栄養化湖沼における藍藻溶解性細菌類の検出手法の開発

〔代表者〕

生物圏環境部 広木幹也
〔分担者〕
生物圏環境部 渡邉 信・河地正伸
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 富栄養化湖沼で夏季に大量発生するアオコの発生メカニズムについては主としてラン藻類の増殖の栄養学的条件などを中心に解析が進められてきたが,環境中にはこれらの藻類を分解する各種の微生物群が存在し,ラン藻類の増殖を抑えあるいは増殖した藻類の減少過程で重要な働きをしているという指摘もなされている。本研究においては,これら藻類溶解細菌類の自然界における動態を解析するための手法を開発することを目的とする。

〔内 容〕
 前年度単離したラン藻(Microcystis aeruginosa)分解性細菌株からDNAを抽出し,16S rDNAの部分塩基配列を調べ,これを,NCBIデータベースで類似のものを検索して分類学的検討を行った。その結果,これらの細菌類の16S rDNA塩基配列はXanthomonas 属あるいはPseudomonas属の細菌との相同性が高かったが,形態学的形質では,これらの属の細菌と一致しない形質もあった。分離された藻類分解細菌類の分類については,さらに詳細な検討が必要と思われた。


(35)気候変動と大気エアロゾル中のメタンスルホン酸の変動

〔代表者〕

地球環境研究グループ 向井人史
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 大気中のメタンスルホン酸(MSA)は海洋の植物プランクトンから放出されるジメチルサルファイド(DMS)の二次生成物であることから,DMSの発生量の良い指標になっている。ここでは長期的に大気粉じんを採取しMSAを分析しながら,長期的な気候変動とその濃度がどのように対応するのかを明らかにする。植物プランクトンが作り出すDMSが地球温暖化に対して負のフィードバック効果を持っているという仮説があるが,ここではその仮説を検証する。

〔内 容〕
 1983年から1999年までの16年間の隠岐島での大気中メタンスルホン酸濃度の季節変化と長期変化を明らかにした。環境のパラメータとして海洋の表層100mでの温度,プランクトンデータ,Southern Oscillation Index(SOI),隠岐島での気温,降水量を調査しそれらのと相関関係を調べた。その結果,SOIによる温度上昇は大気中MSA濃度を減少させることがわかった。


(36)肺胞モデル培養系を用いた環境汚染物質の影響評価法の検討

〔代表者〕

環境健康部 古山昭子
〔期 間〕
 平成10〜11年度(1998〜1999年度)

〔目 的〕
 種々の化学物質を含む環境汚染物質の吸入暴露による呼吸器への影響評価のために,生体肺組織から採取した構成細胞を適切な細胞外基質とを組み合わせて培養することにより基底膜を含む肺組織を模した肺胞モデル培養系を作成し,より生体に近い培養系での,毒性評価のための鋭敏なマーカーについて検討する。

〔内 容〕
 ラット肺胞上皮細胞と共培養した線維芽細胞はマトリックスプロテアーゼの分泌が抑制されていたが,オゾンの作用形態である過酸化水素を肺胞上皮細胞および肺胞上皮細胞と線維芽細胞の共培養系に暴露したところ両細胞ともにマトリックスプロテアーゼの分泌が亢進することが明らかになった。さらに暴露により肺胞上皮細胞と線維芽細胞は細胞収縮を起こし,基底膜を含む組織構造を一部破壊されることが明らかになった。
〔発 表〕E-30,31,e-61,63


(37)領域大気モデルを用いた降水過程と陸面水文過程の相互作用に関する研究

〔代表者〕

大気圏環境部 江守正多
〔期 間〕
 平成10〜11年度(1998〜1999年度)

〔目 的〕
 陸上の降水量は,そこでの土壌水分量に大きく依存することが近年指摘されている。すなわち,土壌水分と降水は相互に影響を及ぼしてフィードバックループを形成するが,その性質については未だ明らかにされていない。本研究では,現実的な境界条件を用いて3次元の領域モデル計算を高分解能で行うことにより,現実的な状況における降水過程と陸面水文過程との相互作用を明らかにすることを目的とする。

〔内 容〕
 領域大気モデリングシステムCSU-RAMSを用いて,レナ川流域を含むシベリア領域の降水イベントのシミュレーションを行った。特に,現実に強い雷雨が観測された領域に2kmの高分解能の計算領域をネスティングし,対流性降雨が分解できるスケールでの実験を行った。これにより,現在の積雲対流スキームには問題があり,非現実的に早く対流が生じて大気を安定化させてしまうことが示された。
〔発 表〕F-2,f-14,16


(38)懸濁態リンの藻類利用可能性測定のための環境水中懸濁物質の分離手法の開発と応用

〔代表者〕

水土壌圏環境部 井上隆信
〔期 間〕
 平成10〜11年度(1998〜1999年度)

〔目 的〕
 河川や湖沼水中の懸濁物質・底泥は大きく分けると無機物質と有機物質の混合物であるが,好気的条件下においては懸濁態無機物質中のリンを藻類が利用することは難しいと考えられ,有機物質中のリンが藻類増殖に利用されている可能性が高いと推察される。このことを,密度差を利用して懸濁物質を無機物質と有機物質に分離する新たな手法を確立する。

〔内 容〕
 河川・湖沼水中の懸濁物質を密度の違いをもとに分離する手法について検討を行った塩化セシウム65%溶液(密度,1.9g/cm3)とThoulet液(密度,2.4g/cm3)を用いた密度勾配遠心分離法で,密度1.9以下の有機物質,密度1.9から2.4のケイ藻及びその殻,2.4以上の粘土等の無機物質の3つに分離することができた。密度2.4以上の物質の中には,多少ケイ藻の殻が含まれるが,懸濁物質や底泥を大きく3つのグループに分離することが可能になった。


(39)南極での自然界超長期保存を中心とした生物・地球環境試料保存国際ネットワークの構築

〔代表者〕

化学環境部 柴田康行
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 人類活動による環境破壊,自然破壊の進行に伴い,生物種の絶滅や地球環境の悪化が懸念されている。新しい世紀並びに千年紀の始まりである21世紀初頭に,20世紀の人類の歩みを振り返ってその評価,反省を踏まえ,将来の子孫のために現在の地球・生物に関する情報,試料を取捨選択しつつ残していくことを目的とし,試料の超長期保存システムに関する検討,保存状態情報の記録,試料の取捨選択や保存性の検討,情報そのものの保存の問題など様々な角度から専門家の意見を集約し,具体化を目指す。

〔内 容〕
 本年度には,海外のスペシメンバンクの活動で前年度に訪問したドイツに並んで世界をリードしている米国の機関を訪問し,施設見学,研究の進行状況把握,並びに担当研究者との意見・情報交換を行った。メリーランド州ゲイザースブルグにある米国NISTの本部を訪問し,担当研究者と研究推進状況について議論を行った。また,サウスカロライナ州チャールストンに建設中の新しい海洋生物健康研究所に設置される予定の,海洋生物を対象とした大がかりなスペシメンバンクについて,建設現場を見学するとともに,近くに設置されているNISTの施設で担当責任者から将来計画を含めた話を聞いた。年度末の3月には,ドイツ,米国双方の研究者を含めて東京で国際会議を開催し,今後の研究推進に関する討議を行うとともに,研究協力についても議論を行い,共同アピールを採択した。また,米国担当者を国立環境研究所に招へいして,米国のスペシメンバンキング事業の現状と将来像についての講演会を開催した。


(40)インドネシア域における生物マス燃焼が及ぼす気候学的影響に関する調査的研究

〔代表者〕

東京大学気候システム研究センター 中島映至
〔分担者〕
大気圏環境部 日暮明子
〔期 間〕
 平成11〜13年度(1999〜2001年度)

〔目 的〕
 アジア域最大の燃焼域であるインドネシア域の生物マス燃焼現象を扱った総合的な研究は,これまでほとんど行われていなかった。そこで本研究では,気象力学,大気物理,大気化学,リモートセンシングからの多面的なアプローチにより,同現象の発生メカニズムと気候影響評価を現地調査を通して明らかにする。

〔内 容〕
 エアロゾル種別分類アルゴリズムをSea WiFSデータに適用し,1997年にインドネシアで発生した大森林火災の解析を行った。インドネシアの火災が,植生だけでなく地表に堆積した泥炭層まで燃焼したことを反映し,「炭素系」とともに「硫酸塩」が検出された。また,これらのエアロゾルは,中心付近に炭素系,その周辺部に硫酸塩という特徴的な分布を示し,輸送過程におけるエアロゾルの変質を意味する可能性も示唆された。
〔発 表〕F-60〜64,66,f-100,101


(41)人工衛星の利用と現地植生調査による日韓中の環境測定と検討

〔代表者〕

金沢大学工学部 村本健一郎
〔分担者〕
水土壌圏環境部 徐 開欽
金沢大学工学部 平井英二・藤田政之
中国科学院地理科学与資源研究所
劉 紀遠
韓国仁荷大学校 李 茎成
〔期 間〕
 平成11〜13年度(1999〜2001年度)

〔目 的〕
 森林は,地球上の生物の生存環境を保つ上で重要な役割を演じている。最近,東アジアでは,森林が人為的や環境変化などの理由により年々減少していると言われているが,その定量的な解析は十分に行われていない。本研究では,東アジア地域における植生について,現地調査ならびに人工衛星によるリモートセンシングを行うことにより,リモートセンシングのグラウンド・トルース(Ground truth)を確立し,東アジア地域の植生の広範囲な時空間解析を行うことを目的とする。

〔内 容〕
 環境問題は,一国や限定された地域だけの問題にとどまらず,全地球的課題と考えられるため,東アジアの研究者が共同で,現地調査と討論を行い,将来に向けての対策の提言を行うことが必要である。植生のリモートセンシングのグラウンド・トルースを確立するために,東アジア地域,特に中国と韓国の植生分布の資料収集および情報交換を行い,植生の分布ごとのスペクトル特性を検討した。次年度以降のリモートセンシングによる現地調査のための基礎づくりができた。


(42)地理情報システムを応用した熱帯自然環境の変容と昆虫媒介感染症の動向に関する研究

〔代表者〕

神戸大学医学部国際交流センター 川端眞人
〔分担者〕
環境健康部 小野雅司
〔期 間〕
 平成9〜12年度(1997〜2000年度)

〔目 的〕
 動物媒介性の熱帯感染症は熱帯・亜熱帯地方の開発途上国に広く分布し,感染者の個人的損失のみでなく地域社会に大きな影響を与えており,温暖化,森林焼失や都市化など地球環境の変容に伴い流行地は拡張すると予測されている。本研究ではマラリア(農村部)とデング熱(都市部)を対象に,リモートセンシングや地理情報システムを応用し,伝播動態の解析から今後の動向予測と対策法を構築する。

〔内 容〕
 地理環境の異なる中国南部熱帯・亜熱帯地域及びタイ国東北山岳地帯を対象に,リモートセンシング画像のほか,地形図,植生図,水系図等の資料の収集を行った。さらに,それぞれの調査対象地域について媒介蚊の発生源の同定,住民の土地利用と行動域などのデータ収集を行った。これらの情報を,地理情報システム上で統合し,感染危険要因を定量的に解明するための解析に用いるデータベースの構築を行った。


(43)エアロゾルキャラクタリゼーション実験(ACE-Asia)計画の推進と国際対応

〔代表者〕

北海道大学 河村公隆
〔分担者〕
地球環境研究グループ 向井人史
化学環境部 横内陽子
大気圏環境部 畠山史郎
〔期 間〕
 平成11年度(1999年度)

〔目 的〕
 エアロゾルは温暖化に関連して冷却効果を持つ重要な要素である。一方アジア域のエアロゾルの寄与量は小さいものではなく,森林燃焼なども含め大きな発生源となっている。これに鑑み,国際共同研究計画(ACE-Asia: Aerosol Characterization Experiment in Asian Region)が進行しつつある。これは,アジアのエアロゾルの特性を立体的に共同観測する計画である。この計画を推進するために日本及び海外での会議などに出席し実験計画を練る。

〔内 容〕
 北海道大学での会合を行い,分担者からこれまでのエアロゾル研究の経過と今後の実験観測計画を検討した。多くは,船舶および航空機を用いた大気のサンプリング計画と離島での定点観測を主体としながら,モデル計算によるシミュレーションを行っていく必要性が議論された。


(44)マラリア制圧の総合戦略

〔代表者〕

大阪工業大学 田辺和裄
〔分担者〕
環境健康部 小野雅司
〔期 間〕
 平成11年度(1999年度)

〔目 的〕
 熱帯・亜熱帯地方の開発途上国に広く分布する動物媒介性の熱帯感染症については,様々な対策がなされているにもかかわらず,十分な成果をあげているとは言えない状況にある。本研究では,臨床,疫学,分子生物学,生態学,昆虫学等のマラリア流行にかかわる様々な分野の研究者を結集することにより,総合的な制圧戦略を構築する。

〔内 容〕
 これまで我が国を初め多くの研究者が実施してきたマラリア研究,マラリア制圧対策について総括するとともに,今後の新たな戦略について検討した。
 マラリア制圧が奇跡的に成功した沖縄県の教訓,一方,度重なる対策にもかかわらず再び流行の勢いを増しつつあるマラリア(Roll Back Malaria)の現状,問題点,国外の流行地域で実施されているマラリア対策等について,再検討するとともに,今後の総合的な戦略の樹立へ向けての検討を行った。


(45)成層圏力学過程とオゾンの変動およびその気候への影響

〔代表者〕

九州大学 宮原三郎
〔分担者〕
大気圏環境部 神沢 博
〔期 間〕
 平成11〜14年度(1999〜2002年度)

〔目 的〕
 極域オゾン減少や成層圏寒冷化,温暖化気体の増加など地球環境変動の科学的解明が強く要請されている。本研究では,我が国の中層大気研究者集団を強力に編成して,成層圏域を中心とするオゾンなどの微量成分の動態を力学過程と物質輸送の視点から明らかにし,グローバルな気候・環境変動問題の解明をめざす。研究手段ごとに,衛星データ解析,大気大循環モデル実験,力学基礎過程の3グループを構成し集中的に研究を行う。

〔内 容〕
 本研究,特定領域研究(B)の研究全体を総括する総括班の一員として参加している。本研究と地球環境研究総合推進費による関連研究との連携を計ること,ILASデータおよびその解析結果に関する情報を提供すること,研究全体の進行に関する議論に参加することを主たる役割としており,総括班会議,シンポジウム等で,自分自身のものを含む推進費による研究成果を紹介し,本研究の推進に寄与した。


(46)高分解能大気大循環化学モデルの開発と成層圏物質循環の研究

〔代表者〕

東京大学気候システム研究センター 高橋正明
〔分担者〕
東京大学気候システム研究センター 中島映至
国立極地研究所 佐藤 薫
地球環境研究グループ 秋吉英治
〔期 間〕
 平成11〜14年度(1999〜2002年度)

〔目 的〕
 複雑な化学過程もあらわに含めた大気大循環モデルは日本では皆無である。CCSR/NIES大気大循環モデルに,複雑な化学反応系を組み込み,成層圏オゾン変動を調べること,また,高分解能モデルにおいて輸送過程と化学課程の関係性を調べることを目的とする。

〔内 容〕
 これまで,Ox,HOx,NOx,ClOx,炭化水素系物質を導入してきたCCSR/NIES大気大循環化学モデルに,新たに,Br,BrO,HOBr,HBr,BrCl,BrONO2,Br2,ハロン,臭化メチルなどの物質と,これらの物質に関連する気相化学反応を導入した。また,高分解能モデルにより,赤道圏界面付近で起こっている,オゾンの成層圏からの流入のメカニズムを明らかにした。
〔発 表〕A-4,5,a-2,4


(47)シベリア雪氷圏エネルギー・水循環過程

〔代表者〕

北海道大学 大畑哲夫
〔分担者〕
大気圏環境部 江守正多
〔期 間〕
 平成11〜13年度(1999〜2001年度)

〔目 的〕
 近年の気温上昇が最も激しい地域であるシベリアにおいて,特徴的な陸域の水・エネルギー循環の季節的推移の実態とそれに関与する物理過程を,雪氷,水文,気象状態の観測を通して総合的に把握するとともにモデル化し,またその変動性を解明する。

〔内 容〕
 領域大気モデルCSU-RAMSを用いてシベリア集中観測領域の大気循環の再現の予備的実験を行った。これを基にして,2000年度に行われる集中観測と同期した領域大気モデル研究のデザインを行った。
〔発 表〕F-4,f-12,14


(48)臨界事故の環境影響に関する学術調査研究

〔代表者〕

金沢大学理学部附属低レベル放射線実験施設 小村和久
〔分担者〕
水土壌圏環境部 土井妙子
化学環境部 田中 敦
国際室 植弘崇嗣
〔期 間〕
 平成11〜12年度(1999〜2000年度)

〔目 的〕
 東海村の東海事業所転換試験棟(JCO)で起こった臨界事故による被ばくは施設内従業員だけでなく周辺地域の住民にも及ぶところとなり,健康影響という多くの人命にもかかわる重大事故であった。なかでも中性子線量については,転換試験棟周辺で一時4.5mSvを記録した。施設から半径350m以内の住民(約85名)には避難要請が,また半径10km(約31万人)には退避要請が出されたが,これら住民に与える健康影響を学術的に正確に評価する必要がある。また核反応生成物とその挙動,放射化生成核種とその挙動,中性子の人体影響,低レベル放射能の健康影響などについては未解明の部分の多い重要な課題であり,全体像の学術的解明は極めて緊急かつ重要な問題である。本研究は臨界事故の及ぼす環境影響,人体影響評価の全容を学術的に解明する。研究目的は以下にあげる3項目に分類される。
 1)線源・中性子束・エネルギーの推定
 2)環境放射能とその動態
 3)染色体分析による人体影響評価
 上記計画のうち,2)について実施した。

〔内 容〕
 事故後,東海村の事故地点中心より南南東約2.4kmと西約7kmの那珂町においてハイボリウム・エアサンプラーにより大気粉じんを採取した。また比較のために東海村南西約60kmのつくば市に位置する当研究所において事故時と事故後にわたり大気粉じんを採取した。いずれの地点においても放射性核分裂生成物は検出されなかった。しかし,東海村において大気粉じんと同時に活性炭に吸着した試料からは大気中に痕跡量のヨウ素-131(半減期8日)が検出された。この濃度は国により定められた大気中のヨウ素-131の3カ月平均濃度限度より低い濃度であった。
 上記の東海村と那珂町において畑地土壌と田圃土壌についてはいずれも放射性核分裂生成物は検出されなかった。しかし,JCO西側敷地境界付近の土壌からは中性子による誘導放射性核種であるNa-24(半減期15時間)が微量検出された。
 転換試験棟からの距離と方向の異なる地点で採取した土壌試料と植物試料中のU-235/U-238比を測定した。酸可溶態のU-235/U-238比は,天然の値よりも高くなっており,ケイ酸塩鉱物中のU-235/U-238比は天然と等しかった。U-235/U-238比の異常は転換棟との距離に依存しており,放出源は敷地内と推定された。U-235/U-238比とウラン濃度から,濃縮ウランの付加した率を計算によって求めた。


(49)ダイオキシン類化合物の生体毒性機構に関する研究

〔代表者〕

東北大学 菊池英明
〔分担者〕
環境健康部 青木康展
〔期 間〕
 平成11年度(1999年度)

〔目 的〕
 ダイオキシン類は発ガン性ばかりでなく催奇形性,発生毒性,免疫毒性など多様な毒作用を持つ。本研究では各々の研究者が相互に協力して,ダイオキシン類の毒性発現機構の総合的理解をめざす。

〔内 容〕
 ダイオキシン類によるプロテインキナーゼの活性化など,細胞内シグナル伝達系活性化機構の解明を進めた。特に,ダイオキシンを投与した動物の肝臓における変化に注目した。
〔発 表〕E-1


(50)ストレスと栄養が脳機能に及ぼす影響:作用機序にもとづいた複合要因リスク評価の試み

〔代表者〕

東京大学 渡辺知保
〔分担者〕
地域環境研究グループ 今井秀樹
〔期 間〕
 平成11〜13年度(1999〜2001年度)

〔目 的〕
 複数の環境要因が相加的に作用して単一の健康障害を引き起こす場合における,障害の発現メカニズムを理論的に評価するためのアプローチの開発。

〔内 容〕
 本年度は脳機能障害モデルとして,有機スズ(海馬障害)およびマンガン(線条体障害)投与動物を用い,機能障害指標の測定条件検討を行い,測定方法を確立することを目標とした。@動物にトリメチルスズを単回投与し,14日後に海馬傷害の程度をグリア繊維性酸性タンパク(GFAP)の免疫組織化学分析によって評価した。従来知られていた通り,トリメチルスズ化合物による海馬特異的な傷害を観察することができた。また,障害程度は副腎皮質切除によって増悪し,コルチコステロンあるいはデキサメサゾン慢性投与によって軽減するとの新たな知見も得られた。A片側線条体にマンガンを微量投与したマウスについて,14日および70日後にドパミン系の作動薬であるアポモルフィンを投与し,誘発される傷害反対側への回転行動をビデオに撮影して解析した。その結果,マンガン投与量に依存した回転行動が観察され,それは70日後により顕著であった。さらに,線条体の免疫組織化学によってドパミン含有細胞の特異的な傷害を観察した。オープンフィールド試験については,アポモルフィン投与条件を検討した。B線条体における細胞外グルタチオン(GSH)を微小透析で測定する方法について条件を確立し,細胞外成分を撹乱した場合の反応を観察,細胞外GSHが鉄によって消費されていること,また細胞外Ca2+の動向にも影響されることを示唆するデータを得た。Cストレスとの関連について注目されている脂肪で産生・分泌されるホルモンであるレプチンについて,その血清中濃度のELISAキットによる測定条件を検討した。
〔発 表〕b-104


(51)エアロゾル粒子の大気環境影響

〔代表者〕

京都大学 笠原三紀夫
〔分担者〕
大気圏環境部 畠山史郎
〔期 間〕
 平成11年度(1999年度)

〔目 的〕
 地球温暖化や酸性雨,オゾン層破壊などの地球環境問題が大きな関心を呼んでいる。エアロゾルは,地域環境問題においては,環境基準達成率が最も低く,大気環境改善が強く望まれ,その要因の解明が急務となっている。一方,地球規模の大気環境においてもエアロゾルが深く関与しているが,影響にかかわる知見は乏しく,その影響を定量的に評価することが急務となっており,エアロゾルの物理・化学的性状,大気中での動態を明らかにしなければならない。

〔内 容〕
 本研究課題は特定領域研究申請のための企画調査のための課題である。このため,「大気エアロゾルの空間分布と輸送・沈着」の研究班を組織した。この分野における研究動向や関連研究をサーベイし,今後進めるべき研究を班員と討議した。我々は中国におけるエアロゾルとその前駆体の空間分布について,航空機観測を提案することにした。
〔発 表〕F-59,f-91,92


(52)熱帯感染症対策へのリモートセンシングと地理情報システム技術の応用

〔代表者〕

神戸大学医学部国際交流センター 川端眞人
〔分担者〕
環境健康部 小野雅司
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 マラリアやデング熱など熱帯・亜熱帯地方の開発途上国に広く分布する動物媒介性感染症を対象に,衛星画像と多彩な空間データを機能的に解析する地理情報システムにより,伝搬動態や危険因子の推定を試みる。

〔内 容〕
 中国南部熱帯・亜熱帯地域及びタイ国東北山岳地帯を対象に,マラリア及びデング熱の流行にかかわるデータの収集及び媒介蚊の生息実態調査に関するデータを収集した。また,リモートセンシング画像のほか,地形図,植生図,水系図等の資料並びに社会経済的な情報の収集を行った。
 これらの情報に基づいて,各流行地域におけるマラリア,デング熱の伝搬動態や危険因子を推定するため,地理情報システムを使った解析を開始した。


(53)環境共生都市の計画のための熱環境解析システム開発

〔代表者〕

東京大学 花木啓祐
〔分担者〕
地球環境研究センター 一ノ瀬俊明
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 各種空間スケールを対象とした数値解析手法を背景とし,実用化を念頭において誤差評価・精度改善を行い,都市熱環境改善手法としての各種環境計画あるいは都市計画の定量的評価を行うことにより,環境共生都市の計画を評価する解析手法を提示する。また,実際の我が国各都市に適用することを想定して,入手可能な建物側及び人工排熱側の情報を入力して信頼度の高い結果を得るようにモデルを実用化する。

〔内 容〕
 都市気候数値モデルにおける人工排熱項の取り扱いについては,地表面熱収支式に加える方法が一般的であったが,実際の都市における人工排熱の挙動を表現してはおらず,大気へのインパクトの時間遅れが指摘されていた。本研究においては,顕熱として大気各層へ直接排出する複数のシナリオ(排出高度別)を用意し,従来の手法との間で計算結果を比較した。その結果,従来の手法では地中温度が高めに計算されることが明らかになった。
〔発 表〕I-3,4


(54)温室効果気体の変動と循環のダイナミックスに関する研究

〔代表者〕

東北大学 中澤高清
〔分担者〕
地球環境研究グループ 町田敏暢
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 大気中の二酸化炭素やメタン,亜酸化窒素の濃度と同位体比の高精度計測技術を利用し,広域にわたって各気体の濃度とその同位体比を測定することを通じてそれらの変動特性を明らかにする。また,得られた結果を大気輸送・循環モデルを用いて解析を行い,温室効果気体の循環を解明する。

〔内 容〕
 日本から熱帯域にかけての空域で行われた航空機観測において二酸化炭素濃度の連続測定を行った。熱帯域で得られた二酸化炭素濃度の鉛直分布はほぼ一定であった。これは観測域における陸上生態系の正味の二酸化炭素放出・吸収量がゼロに近いことや,活発な対流活動により大気が鉛直方向に混合しやすいことが原因として考えられる。上部対流圏における二酸化炭素濃度の緯度分布から,北半球性の空気と南半球性の空気の境界が北緯2°から北緯7°の間に存在することが確かめられ,それぞれの濃度が約365ppmvと366ppmvであることがわかった。


(55)温室効果気体と気候変動研究

〔代表者〕

東北大学 青木周司
〔分担者〕
地球環境研究グループ 町田敏暢
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 地球表層における温室効果気体の循環を解明するために,南極ドームふじ観測拠点で掘削された氷床コアを用いて過去2度にわたる氷期−間氷期変遷を含む気候変動と大気中の二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素,一酸化炭素の各濃度及び二酸化炭素の安定同位体比の変動との関係を明らかにする。また,ドームふじ観測拠点においてフィルン中空気を大量にサンプリングすることによってメタン,一酸化二窒素,一酸化炭素の安定同位の過去100年に及ぶ変動を明らかにし,これらの気体の発生源の特定を行う。

〔内 容〕
 南極ドームふじコアに含まれる気泡中空気の窒素同位体比の測定を行い,窒素同位体の時間的変動が過去の気温の変動と極めて良い相関を示すことがわかった。窒素同位体比の測定結果によってドームふじにおけるフィルン中の分子拡散が支配する層の厚さの時間変化を予想することができるので,気泡空気の年代決定を高い精度で行うことが可能となった。


(56)野外測定・シミュレーションによる樹体の3次元構造の発達過程の解析

〔代表者〕

北海道大学 隅田明洋
〔分担者〕
生物圏環境部 竹中明夫
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 森林を構成する樹木の3次元的葉群構造・分枝構造を非破壊的かつ簡便に調査する方法を確立するとともに,既存の樹冠動態の3次元シミュレーションモデルも活用して,樹木の3次元構造の形成要因や構造の生態学的な意義について明らかにすることを目的とする。その成果は,森林の全体構造の発展過程を解明するための重要な鍵となるものと期待される。

〔内 容〕
 樹冠構造の発達過程を再現するためのモデルの開発を行った。また,枝の成長・死亡の光環境依存性の調査を行った。個々の枝が置かれた光微環境だけでなく,個体全体が置かれた光環境にも依存して枝の挙動が決まること,特に,明るいところの枝の存在が,同じ個体内の日陰の枝の成長を抑制することを明らかにした。


(57)長大立坑を用いた雲の汚染・変質過程の実規模実験研究

〔代表者〕

北海道大学 太田幸雄
〔分担者〕
大気圏環境部 福山 力・内山政弘
〔期 間〕
 平成9〜11年度(1997〜1999年度)

〔目 的〕
 酸性雨生成の最も基本的な過程である大気汚染物質の取り込みと反応による雲粒の酸性化過程について,鉱山の立坑(高さ約430m)を用いて実規模での実験的な検証を行い,雲の汚染・酸性化予測モデルの構築に資することを目的とする。

〔内 容〕
 立坑を用いた人工雲実験の結果を整理し,@雲粒径の最頻値は雲底,雲頂いずれにおいてもほぼ等しく7μmである。A坑底でエアロゾル粒子を添加してもこの値はほとんど不変に保たれる。B風速,温湿度が安定しているにもかかわらず雲粒個数濃度や雲底高度は0.1Hz程度の時間スケールで変動するなどの特徴を明らかにし,これらを統一的に説明することを試みた。
〔発 表〕f-106


(58)デデリエ・ネアンデルタール人骨に関する総合的研究

〔代表者〕

国際日本文化研究センター 赤澤 威
〔分担者〕
化学環境部 米田 穣
〔期 間〕
 平成10〜12年度(1998〜2000年度)

〔目 的〕
 ネアンデルタール人類は約10万年前から3万年前に生息した。特に中近東では形態学的現代人と同時に生息したため,現代人の起源を探る上で非常に重要な位置を占める。本研究ではシリア共和国デデリエ洞窟遺跡から出土したネアンデルタール人骨の絶対年代を,国立環境研究所加速器分析施設(NIES-TERRA)を用いて決定することを目的とする。

〔内 容〕
 加速器質量分析法(AMS)による放射性炭素年代では,現在のところ概ね4.5万年程度が測定限界とされることが多い。NIES-TERRAでは通常よりもバックグランドが低い。この特徴をいかし,5万年を超える大過去試料の測定を目指す。また,100μg程度の微量試料の測定を実現化し,本年度に炉跡より土壌試料を得たのでその分析を実施する。


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