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科学技術振興調整費による研究
9.重点基礎研究
(1)大気海洋結合モデルを用いた十年規模の自励的な気候変動の機構解明に関する研究
〔担当者〕
〔期 間〕
平成11年度(1999年度)
〔目 的〕
気候システムは,海洋大循環や高・低気圧波動,雲活動など,異なった時間・空間スケールを持つ様々なプロセスから構成されており,それらの間の相互作用が基本的に非線形であるため,システムとしては自励的かつカオス的な変動をすると考えられる。このような気候システムの非線形性に起因する変動の発生機構を解明することは,人為起源物質等による気候変動を考える上で重要である。現存する全球規模の気候データは,気候システムの内的要因による気候変動(自励的な気候変動)の解析にはまだまだ不十分であるため,気候モデルを長期積分する実験およびその結果の解析を行うことが有効である。近年の計算機技術の飛躍的な進歩により,比較的複雑な気候モデルを数百年間にわたって積分することが可能になってきた。本研究では,CCSR/NIES大気海洋結合モデルを用いた,10年以上の時間スケールを持つ全球規模の自励的な気候変動の機構解明を目的とする。
〔内 容〕
本研究では,CCSR/NIES大気海洋結合モデルを数百年間にわたって積分し,10年以上の時間スケールを持つ全球規模の自励的な気候変動について解析を行った。熱帯域における雲活動や,それに伴って励起される惑星規模の大気波動などを正しく再現するため,積雲対流や鉛直拡散のパラメタリゼーションを改良した。最近では,人為起源物質による気候影響が無視できないことがわかってきているため,硫酸,炭素性,海塩,ダストの各エアロゾルによる直接および間接的な放射効果を考慮した。過去数十年程度の気候再現実験を行うことにより,熱および水に関する大気海洋間のフラックス調節量を求め,モデルで再現される気候が現実からかけ離れないようにチューニングを行った。その後,人為起源物質や温室効果気体等の濃度が現在のまま増加しないという仮定のもとに数値積分を行い,モデルで出現した自励的な気候変動のメカニズムについて解析を行った。200年間にわたる数値積分の結果,8〜9年および12〜14年程度の周期を持つ10年規模変動が確認された。また,シグナルとしては若干弱いが,30年および53年程度の長周期振動も確認された。8〜9年周期の振動は主に北部太平洋域で顕著であり,北緯60度付近を節として南北でシーソーをするような空間パターンを持つ。また,12〜14年周期の振動は北緯60度線にほぼ沿うような波列的な空間パターンを持ち,北太平洋から北アメリカにかけての領域で振幅が大きい。一般的に気候モデルは常に不完全であるため,モデルで得られた結果には必然的に不確実さが伴う。このような欠点を補うため,可能な限りの観測データや客観解析データを用いて,モデルで見出された自励的な気候変動の検証を行う必要がある。
〔発 表〕f-82〜84
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(2)衛星データに基づく大気微量成分標準分布モデルに関する基礎的研究
〔担当者〕
| 地球環境研究グループ |
: |
中島英彰・杉田考史 |
| 大気圏環境部 |
: |
笹野泰弘 |
| 地球環境研究センター |
: |
横田達也 |
〔期 間〕
平成11年度(1999年度)
〔目 的〕
地球の温暖化,オゾン層の破壊等の地球規模の大気環境問題の解明研究において,標準と考えられる大気モデル(大気微量成分の月別・高度・緯度分布データセット)を用意することは,基礎的な情報として不可欠のものである。これまで,多くの研究に用いられてきた標準モデルである,CIRA86(COSPAR
InternationalReference Atmosphere 1986)は,主に衛星センサーによる大気微量成分観測データに基づいて構築されたもので,最近,改訂作業が進行中である。しかしながら,これまでの衛星観測データは中低緯度を測定対象としたものが多く,高緯度域,極域のデータが少ないため,この地域での信頼のおけるデータセットが用意されていない。
本研究では,環境庁が開発した改良型大気周縁赤外分光計(ILAS)で取得され,公開されている高緯度域成層圏のオゾンなどの高度分布データを用いて,CIRA86モデルで欠けている領域,季節の標準的な分布モデル(データセット)を構築することを目的とする。このため,既存のデータセットとの比較,その他の観測データとの比較などにより,ILASデータの地域,季節の代表性等について解析を行った上で,標準モデルの作成を行う。
〔内 容〕
オゾン層観測センサーILAS(改良型大気周縁赤外分光計)が,宇宙開発事業団が平成8年に打ち上げた地球観測衛星「みどり」に搭載され,平成8年11月から平成9年6月までの8カ月間の観測を行った。取得されたデータのうち,検証作業を終えて公開されたオゾン濃度等の高度分布データ(Version
3.10),及び未検証の最新のプロダクトデータ(Version
3.47,Version 4.20)を用いて,CIRA86標準大気成分分布モデルの欠如部分を補完するためのデータセットを作成した。このため,既にCIRA86モデルとして整備されている期間,領域について,ILASデータとの比較を行うとともに,その他の観測データとの比較作業により,ILASデータの地域,季節代表性の評価を行った。次に,CIRA86モデルで欠落している緯度帯,季節(月)について,ILASデータをもとに標準分布モデルを作成した。
作成されたデータセットについて,CIRA86モデルとの整合性について評価を行った。また,その他の衛星観測による結果と比較することにより,その妥当性を評価した。
〔発 表〕A-49,I-22,f-32
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(3)対流圏大気の流跡線解析システムの開発に関する研究
〔担当者〕
| 化学環境部 |
: |
横内陽子 |
| 大気圏環境部 |
: |
酒巻史郎 |
| 地球環境研究センター |
: |
藤沼康実・勝本正之*・橋本正雄**
(*特別流動研究員,**重点研究支援協力員) |
〔期 間〕
平成11年度(1999年度)
〔目 的〕
対流圏で生じる大気の動態把握・解明にかかわる観測研究では,研究対象である観測大気(エアーマス)の挙動の把握が必要となることが多い。特に,温室効果ガス観測におけるベースラインの挙動解析や酸性雨観測における大気汚染質の発生源の推定などのためには,エアーマスがたどってきた,あるいは今後たどりうる経路(流跡線)を解析することが不可欠である。
その流跡線解析の手法は,全球的気象客観解析データを用いた気象学的・大気物理学的なもので,手法の開発・利用には,高度な専門知識・技術が要求される上,解析システムの操作性の難度が,対流圏大気の観測研究を円滑に推進する上で,大きな障害の一つとなっている。
本研究は,対流圏の大気観測研究において不可欠なエアーマスの流跡線解析を,簡単な操作で実行できる自動解析システムを開発し,広く大気観測研究の研究支援システムとして実用化することを目的とした。
〔内 容〕
対流圏の大気観測研究の支援システムの一つとして,ワークステーションを用いたエアーマスの流跡線解析システムを以下のとおり開発・改良した。
(1)汎用流跡線解析システムの改良開発:全球,あるいは東アジア地域の客観気象解析データを用いて,任意の時間・地点における等圧/等温面での流跡線(後方/前方)を3次元に表示する汎用解析システムを,既存の専門性が強い解析システムをもとに改良開発した。
(2)解析システムの操作性の向上:開発した解析システムの操作性を目指し,ワークステーション操作の専門的知識を必要とせず,メニューモード画面の指示に従い解析条件を指定することによって,操作が可能なシステムに改良した。
(3)解析システムの高度化の検討:取り扱える気象データの多種化を図るとともに,表示方法の立体化・動画像化を検討した。
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(4)流出原油の光分解と分解産物の毒性スクリーニング最適化に関する研究
〔担当者〕
| 水土壌圏環境部 |
: |
牧 秀明 |
| 地域環境研究グループ |
: |
木幡邦男・樋渡武彦*
(*特別流動研究員) |
〔期 間〕
平成11年度(1999年度)
〔目 的〕
1997年に我が国でも二件の大きなタンカー事故に見舞われたように,海洋への石油流出事故はしばしば発生している。また人間活動に伴う陸起源の石油の海洋への流入は慢性的なものとなっている。海洋に流出した石油は,風化(蒸発)・微生物分解・太陽光照射等により,その組成を大幅に変化させていく。このうち,太陽光照射による酸化・分解過程では,流出油の一部が新たに海水中に可溶性成分となって溶解することが知られている。本研究では,海水に懸濁させた重油を,太陽光に暴露することにより生成される光酸化物質の毒性を評価することを目的として,海産ヨコエビ類の一種フサゲモクズHyale
barbicornis幼体を用いて急性毒性試験を実施した。併せて機器分析による幾つかの重油由来光酸化物質の同定を試み,急性毒性の原因化合物を検索することを目的とした。
〔内 容〕
2本の10l容ガラス瓶に,黒潮海水10lとC重油10gを入れ懸濁させた後,研究所屋上にて太陽光を照射させた。このうちの1本は,光を遮蔽するためにアルミ箔で全面を覆い対照区とした。太陽光照射試験は秋季に約一カ月間行い,浮遊している重油塊部下方の水相部を約1週間ごとに採取した。急性毒性試験はヨコエビ幼体(体長約2mm)を1バッチ当たり10個体入れたものを三連用意し,20℃で96時間放置した後の生残個体数を計数した。光を遮蔽した対照区ではいずれの採水時においても,死亡率は10%前後と大きな変化はみられなかったが,光照射区では照射日数の経過とともに死亡率の明確な上昇がみられ,7日目には50%,15日目には80%,21日目と28日目には100%に達した。光照射区の水相部の吸収スペクトルをみると紫外部に吸収極大を呈しており,紫外線における吸光度は照射日数に伴い直線的に増加し,最終的には約2に達していた。これに対し対照区では,水相部の吸収スペクトルはやはり紫外部付近に吸収極大を呈していたが,その増加の程度は光照射区に比べて小さく,最終的には吸光度が0.37に達するのに止まった。同様に水相部の溶存有機性炭素濃度を測定したところ,対照区では4〜6mg/lの間で推移していたのに対し,照射区ではやはり照射日数に伴い直線的に増加し,最終的には約30mg/lに達していた。また水相部を固相抽出したものを質量分析器付きガスクロマトグラフで分析したところ,光照射区では対照区には見られない芳香族アルデヒド類が生成していることがわかった。以上の結果から,太陽光照射に伴い生成される重油由来の含酸素化合物の増加により,毒性が上昇するものと考えられた。
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(5)加速器質量分析法による14Cの高頻度測定のための試料前処理システムに関する基礎研究
〔担当者〕
| 地球環境研究グループ |
: |
向井人史 |
| 化学環境部 |
: |
柴田康行・田中 敦・米田 穣 |
〔期 間〕
平成11年度(1999年度)
〔目 的〕
今後の地球環境変動・気候変動の予測のために,最終氷期以降,現在までに至る地球環境変動の詳細な解析が重要な研究課題となっている。そのためには,海洋や湖の堆積物コアあるいは,湿地の堆積物コアなど連続的な時系列データを保存する試料を年代ごとに解析する必要がある。加速器質量分析法(AMS)を用いた14Cの測定は,上記試料の年代測定に利用されている。AMS測定を要する試料量は増えており,数百から数千もの膨大な試料数を測定するケースがある。AMS測定自体はほぼ自動化されており,数十試料を連続的に測定できるが,試料調製に関しては,手作業で行うため,1日10個程度の処理量しかない。元素分析計での燃焼,分離過程は真空ラインでの精製と類似しており,サンプル処理量は10分に1試料程度である。これがAMSに適用できれば,飛躍的に処理量が増えることが期待される。元素分析計をベースにした省力化システムの開発を目指し,そのためのモデルシステムを作製して基礎的な研究を行う。
〔内 容〕
元素分析計を燃焼・二酸化炭素精製システムとして用いる新たな装置の開発を目指し,基礎的な検討を行った。市販の元素分析計のうち異なる原理に基づく2つの方法について検討した。固体試料を元素分析計で燃焼して生成する二酸化炭素を,窒素などのAMS測定に不要な成分をガスクロマトグラフにより分離して逐次検出する形式と,吸着管を利用して二酸化炭素のみを吸着し,後に脱着して検出する形式が利用できる。いずれの場合もヘリウムキャリアガスにのって元素分析計から二酸化炭素が排出される。排出ガスのトラップを作成し,グラファイト化した後AMS測定した。各手法の評価のために現代炭素の14C標準物質と14Cを含まない標準物質を用いて,元素分析計内でのフラクショネーションとバックグラウンドについて検討した。元素分析計での燃焼やカラム分離操作にくらべ,二酸化炭素をトラップ・封入する時間の方が長いため,並列する多数の吸着管を切り替えて利用する形態が,将来的な自動化にとっては適していた。
〔発 表〕d-35
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(6)遺伝子発現から見た包括的毒性評価に関する基礎研究
〔担当者〕
| 地域環境研究グループ |
: |
平野靖史郎 |
| 環境健康部 |
: |
青木康展 |
〔期 間〕
平成11年度(1999年度)
〔目 的〕
生体や細胞の反応として最も感度良く検出することができるメッセンジャーRNA(mRNA)の発現に注目し,近年分子生物学領域で開発されつつある新しい技法を用いてダイオキシン類などの環境ホルモン,重金属や粒子状物質に暴露した動物の臓器や培養細胞中で起こる遺伝子発現の全体像を明らかにするための基礎研究を行う。
〔内 容〕
環境ホルモン作用のあるダイオキシン類や重金属,粒子状物質を肝細胞,肺胞上皮細胞あるいはマクロファージなどの免疫担当細胞に暴露し,変化のあった遺伝子をmRNAあるいはその相補的核酸であるcDNAレベルでスクリーニングした。環境ホルモンの一種であるPCBを肝細胞に暴露させcDNAアレーを用いて発現する遺伝子をスクリーニングしたところ増殖細胞核抗原(PCNA)が高いレベルで発現していることがわかった。また,サブトラクション−PCR法でカドミウムに暴露した肺上皮細胞にヘムオキシゲナーゼの遺伝子発現量が上昇していることを見いだした。
〔発 表〕B-73,b-214
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(7)円石藻の生理・生態学的研究
〔担当者〕
〔期 間〕
平成11年度(1999年度)
〔目 的〕
円石藻は外洋域の主要な植物プランクトンの一群であり,円石と呼ばれるCaCO3の細胞外被構造をもつことで特徴づけられる。全地球的な炭素サイクルとイオウサイクルに関連する生物であり,地球の気候変動にも深くかかわる生物として認識されている。また外洋で大規模なブルームを形成することで知られている。最近では,EC諸国の研究者を主体とする円石藻の国際プロジェクト(GEM:Global
Emiliania huxlleyi Modeling)が発足するなど,円石藻への関心が急速に高まっている。しかし,研究対象とされた円石藻は,Emiliania
huxleyiなどごくわずかの種類に過ぎず,200種を超える大部分の円石藻の生態に関する知見は限られたものである。円石藻に関する研究の遅滞の原因の一つは,外洋性円石藻は培養・維持が困難であり,保存株が世界的にも少ないことが挙げられる。従って,本研究では,円石藻保存株を拡充すること,そして培養株を用いて環境変動に対する増殖比較実験を行い,外洋環境における円石藻の分布特性にかかわる生理・生態的性質を明らかにすることを目的とした。
〔内 容〕
日本近海及び沿岸域で採集活動を実施した結果,黒潮海流の影響下にある沿岸域で,これまでに12種類(未同定種1種を含む)の外洋性円石藻の存在を確認した。特に三宅島及び八丈島では,外洋性円石藻を豊富に含む海水サンプルが安定して得られたことから,両島において円石藻の分布と多様性調査を行うとともに,培養株確立のための分離・培養作業を行った。その結果,これまでにEmiliania
huxleyiを5株,Gephyrocapsa oceanicaを3株,Umbilicosphaera
sibogae var. foliosaを4株,Oolithotus fragilisを1株,未同定のholococcolithophoridを1株の合計5種14株の円石藻保存株を確立した。この中でOolithotus
fragilisは世界的にも初めて株にされた外洋性円石藻である。これらの種のほかに,Helicosphaera,Scyphosphaera,Algirosphaera,Discosphaeraといった種が,天然海水サンプル中に多数確認され,分離後,人工培養条件下で数回の分裂を行うのを確認した。残念ながら,培養株として維持できるまでには至らなかったが,今後,培養条件を検討することで,こうした種についても保存株の確立と詳細な研究を実施することが期待できる。
さらに,保存株として確立した円石藻のうち,Emiliania
huxleyi,および2種の外洋性円石藻,Umbilicosphaera
sibogae var. foliosaそしてOolithotus fragilisの保存株について,各種培養条件下における増殖比較実験を実施した。Emiliania
huxleyiは世界各地の海域で大量増殖を行い,培養が比較的容易であることから,最も盛んに研究材料として用いられている円石藻である。これを比較対象として用いた。その結果得られた知見は以下のとおりである。
@10〜30℃の温度範囲で増殖可能な温度条件を調べたところ,Emiliania株が15〜27℃と最も温度範囲が広く,次いでUmbilicosphaera株が18〜25℃,Oolithotus株が20〜25℃の温度範囲で増殖した。
A0.1×1015〜5×1015quanta/sec/cm2の光強度条件下で,Emiliania株は設定したすべての光強度条件下で増殖,Umbilicosphaera株とOolithotus株は,0.5×1015〜1×1015quanta/sec/cm2の比較的弱い光条件下でのみ増殖した。また完全な暗条件下で3種とも少なくとも3週間は生存することを確認した。
Bアンモニアは,いずれの種に対しても低濃度で増殖阻害を引き起こすことから,窒素源として不適当であることが判明した。
C窒素とリンの量比を変えた培地で増殖速度比較実験を行った結果,Emiliania株はN/P比が4〜20の条件下で増殖(最大分裂速度は約2division/day),Umbilicosphaera株はN/P比が4〜10の条件下で増殖(最大分裂速度は約1division/day),Oolithotus株はN/P比が4〜6の条件下で増殖(最大分裂速度は約0.5division/day)するのを確認した。
Emilianiaは光,温度,栄養塩条件ともに,非常に広い適応性を示したのに対して,Oolithotusは固有の培養条件を要求し,培養条件を厳密に設定・管理する必要があった。Umbilicosphaeraは両種の中間的な培養特性を示した。円石藻は種によって異なる多様な培養特性を示すことが示唆された。特にN/P比に関して,Oolithotusは4〜6の比較的低い値が最適濃度であったが,これは本研究で初めて得られた新しい知見であり,今後,他の円石藻種の分離・培養を行う上でも有用な情報と言える。
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(8)GISによる地域住民コミュニケーションのための総合環境情報システムの開発と適用に関する研究
〔担当者〕
〔期 間〕
平成11年度(1999年度)
〔目 的〕
国民の関心は公害の未然防止から,緑の多い景観づくりや身近な地域の生物保護,地域の自然環境の保全,さらに最近では地球環境の保全に向けられている。一方,こうした国民のニーズに答えるために情報公開が進むとともに,例えば,通信ネットワークやパーソナルコンピューターの進歩により,迅速に大量の情報が提供できるメディアが普及したことでより情報の提供や交換が容易に行える状況になった。しかし,身近な生活情報や行政情報,さらに地域〜地球環境の広範囲にわたる様々な情報はこれまで断片的,かつ一方的に提供されるのみで,情報のニーズを踏まえた上で体系的な情報の組み合わせとして提供されてこなかったことから,安全で快適な生活環境を地域住民の視点から構築すると言う点では問題が残されていた。本研究は,地理情報システム(GIS)を活用することにより,生活環境から地域〜地球環境にかかわる情報を体系的に整理し,地図ベースの総合的な環境情報システムを構築するための手法のあり方の検討を行うものである。そして,本システムを用いた地域住民への情報提供の効果(生活環境などに対する意識の向上や教育効果)等も視野に入れ,生活環境を改善するための総合的な情報提供システムのあり方について検討することを目的とする。
〔内 容〕
(1)生活環境関連情報のニーズ把握と地理情報システム(GIS)
従来生活環境情報は,数値,図表,主題図など種々の形式で,かつ生活環境から地球環境までの情報が断片的に提供されてきた。こうした情報のニーズを踏まえて階層的な環境情報を整理し,地理情報システム(GIS)により統一的に扱う方法を検討した。様々な地図情報が地方自治体が進める環境基本計画などで生活環境を表示するために活用されており,茅ヶ崎市,逗子市などの先進的事例をサーベイすることにより,生活環境を把握・解析・評価する地理情報システムのあり方について検討した。
(2)生活環境向上のためのGISを活用した情報提供システムのあり方の検討
上記の検討を踏まえ,生活環境〜地球環境までの階層的情報を処理・解析できる地理情報システムのプロトタイプを検討した。住民・企業・行政が情報を共有し,生活環境向上に関する住民参加や合意形成を進めるための地理情報を活用したわかりやすい情報提供,解析システムの条件を検討するとともに,生活環境向上のための総合的な情報提供システムを活用するため,従来利用されてきた数値情報に加えて,地理情報の提供がもたらす効果等について検討した。
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