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科学技術振興調整費による研究
2.生活・社会基盤研究
(1)スギ花粉症克服に向けた総合研究
1)スギ花粉症の発症・増悪メカニズムの解明に関する研究
@修飾因子の疫学的解析
〔担当者〕
〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕
スギ花粉症の発症・増悪にスギ花粉自身が最も大きな役割を果たしていることは明白であるが,スギ花粉以外にスギ花粉症の発症・増悪にいかなる因子が関与しているかについては不明な点が多い。年齢についてはこれまで30歳代が最も有病率が高いとする報告が多かったが,最近は若年層での有病率の増加を指摘するものも多い。有病率の年齢分布の違いは一般に感受性の違いと考えられるが,スギ花粉症の場合にはスギ花粉飛散数が増加し始めた時期と出生年代との関係やライフスタイルの変化などいくつかの解釈があり得る。修飾因子のひとつとして注目されている大気汚染,特にディーゼル排出粒子の及ぼす影響についても実験研究と疫学研究の結果は必ずしも一貫していない。アレルギー疾患については世界的に増加傾向にあるとされ,都市化や環境汚染との関連性が示唆されている。しかしながら,これらの因子の関与を明らかにするためには疫学方法上の問題点も多い。細菌,寄生虫感染との関連性,ダニなどの他のアレルゲンとの接触をはじめとする生活環境にかかわる諸因子など,スギ花粉症の発症・増悪を修飾する可能性がある因子は数多い。本研究はこれらの点を明らかにすることを目的とする。
〔内 容〕
感作状況を把握するために,一昨年度および昨年度に茨城県北部および東京都区内の各1小学校の学童約1000名について,花粉症,その他のアレルギー疾患の症状,既往歴等に関する質問票調査と特異IgE抗体検査(CAP
RAST法)を実施した。本年度はそれらのデータおよび過去に同地域で実施した調査データを加えてさらに詳細な解析を実施して,学童の花粉症の感作・発症にかかわるリスクファクターについて検討した。ダニおよびスギ特異IgE抗体陽性率では地域差,性差がみられた。ダニおよびスギIgE抗体の陽性率をみると両者ともに陽性である割合は茨城,東京ともに男子が女子よりも高い傾向がみられた。東京ではスギのみ陽性である割合は小さいが,茨城では1割程度スギのみ陽性の者がおり,一方東京ではダニのみ陽性である割合が茨城よりも大きくなっていた。
スギアレルゲンへの感作に対するその他の生活環境の寄与を含めて検討するために多変量解析を行った。その結果,茨城地区では学年による増加傾向,出生年および出生月による違いが統計的に有意であったが,東京地区では出生年による違いのみが有意であった。出生年や出生月によって,スギアレルゲンへの感作状況に違いが存在することが示唆されたことは出生直後のスギ花粉への暴露回避が感作状況を変えうる可能性を示すものである。
〔発 表〕B-65,66,b-199,201〜207
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A修飾因子の実験的検証
〔担当者〕
〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕
スギ花粉症の発症・増悪,あるいは,抑制の機構は非常に複雑であり,大気汚染,感染,食事などの外的因子の影響が大きいと考えられている。しかしながら,スギ花粉症を発症した患者と健常人では,どのような修飾因子の違いにより発症が誘導されるのか明らかでない。そこで,スギ花粉症の発症に影響を及ぼす修飾因子を特定し,その機構を解明することは花粉症の予防・治療法の確立に寄与すると考えられる。数多くの生体外の因子の花粉症発症への影響を比較的簡便に評価するための実験系が求められている。本年度は,前年度に確立したTリンパ球のサブポプレーションにおけるサイトカイン産生バランスを評価するための実験系を用いてディーゼル排気ガス(DE)暴露マウスでの影響検索と花粉症増悪因子としてLPSを用いてスギ花粉点鼻マウスへの影響を検討した。
〔内 容〕
(1)マウスを卵白アルブミンで感作し,抗CD4,抗CD8抗体で処理して3mg/m3の粒子濃度のDE暴露を行った。暴露により,頚部リンパ節細胞数,肺胞洗浄液中の細胞数ともに有意な増加がみられたが,抗CD4抗体処理によりその増加が抑制された。しかしながら,抗CD8抗体処理では顕著な抑制はみられなかった。頚部リンパ節細胞を抗原の存在下で培養した上清中のサイトカイン産生においては,IL-4とIFN- 産生でDE暴露による有意な変化はみられなかった。しかしながら,IFN- 産生における抗CD8抗体処理した暴露群と対照群との比較では,暴露群における有意な低下がみられた。血中の抗原特異的IgE産生では,抗CD4抗体処理による顕著な低下がみられたが,DE暴露群と対照群とでは差はなかった。総IgE抗体価においてもDE暴露群と対照群とで差はみられなかったが,抗CD4抗体処理した暴露群と対照群との比較では,暴露群における有意な低下が認められた。
(2)BALB/cマウスに2週間間隔で11回1mg/mouseのスギ花粉を点鼻し,12回点鼻直後よりLPSの4日間連続投与を行って頚部リンパ節,血中のIgE抗体価の変動を測定した。その結果,スギ花粉特異的IgE抗体産生は点鼻7回後より上昇がみられ,LPS点鼻により,スギ花粉感作マウスの頚部リンパ節のB細胞の増加,特異抗体産生の顕著な活性化が認められた。
〔発 表〕E-6,25〜29,e-57〜60
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2)スギ花粉の生産と飛散予報法の高度化に関する研究
@花粉飛散量の計測に関する研究
〔担当者〕
〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕
従来,スギ花粉飛散の予報はダーラム型花粉捕集器によるデータに基づいて実施されてきた。しかしながら,この方式は測定のための労力が多大であり,また時間分解能についても不十分である。本研究では,花粉飛散の予報法の向上に寄与するとともに,従来は人手に頼っていた花粉観測にかかわる労力を軽減し,リアルタイムな花粉観測値の情報伝達を可能とするためにスギ花粉数の自動計測装置を開発することを目指す。
〔内 容〕
これまでの検討に基づき試作器を作成して,フィールド試験を実施してその性能評価を実施した。試作したスギ花粉自動測定装置は花粉捕集部,花粉認識部,画像データ処理部に分けられ,大気を20l/分の流量で吸引し,捕集大気中のスギ花粉をその自家蛍光画像をコンピュータにより処理し,蛍光スペクトルや形態情報によって同定・計数するものである。フィールド試験では花粉認識部の後段にバックアップフィルターを設置して,フィルター上のスギ花粉を光学顕微鏡下で同定・計数した数値と比較した。その結果,スギ花粉自動測定装置による測定値とバックアップフィルター上のスギ花粉数とは良好な一致を見た。本装置はスギ花粉飛散予報の高度化のために有用な情報を与えるものと考えられる。
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(2)高齢社会に向けた食品機能の総合的解析とその利用に関する研究
@臓器内生物ラジカル計測と食品成分による消去作用の解析
〔担当者〕
〔期 間〕
平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕
ヒトの病気の約90%は活性酸素・フリーラジカルが関与していると言われている。本研究では,加齢に伴い臓器内フリーラジカルが増加するモデル動物を作成し,この動物に抗酸化性食品を与え,臓器内生物ラジカルの発生低減効果を,ラットを用いて実験し,これら抗酸化性食品がLDL-コレステロールの低下やHDL-コレステロールの上昇等,生活習慣病の改善に有効かどうかを調べる。また,脳障害によるカタレプシー現象や心電図測定による心機能改善効果等も測定し,抗酸化性食品の臓器内ラジカル消去能を評価することを目的とした。
〔内 容〕
(1)老化動物の生活習慣病指標の変化と抗酸化性食品による改善効果について
本実験のWistar系ラットは,加齢につれて血清中の過酸化脂質,総コレステロール,LDL-コレステロールなどが増加し,HDL-コレステロール値は低下する傾向が認められ,ヒトの生活習慣病指標の悪化が認められた。これに対して,タマネギ粉末を与えた群のラットの過酸化脂質,LDL-コレステロール値,8-OHdG値はタマネギ粉末を与えていないラットに比べて有意に低下し,逆にHDL-コレステロール値は増加し,タマネギ粉末には生活習慣病を改善する効果が認められた。しかし,イチョウ葉エキスとケルセチン(タマネギ粉末やイチョウ葉エキスの主成分)には有意な効果は認められなかった。
(2)MPTPによる脳の酸化的障害とイチョウ葉エキス(GBE)による抑制
ラットにMPTPを投与すると,カタレプシーを起こしている時間は未処理動物の28倍に増加し,脳内の過酸化脂質,DNA損傷(8-OHdG生成)も増加した。この動物にGBEを投与すると,カタレプシー時間はMTPT投与群の半分以下に短縮され,また脳内の過酸化脂質とDNA損傷も増加した。GBE投与群ではその増加が抑制されていた。このことから,イチョウ葉エキス(GBE)中の成分が脳の酸化的傷害を抑制する作用を持っていることが示唆された。
(3)AZTによる心電図上の心機能異常とタマネギ粉末による異常の抑制
高脂肪食投与ラットにAZTを2週間にわたって投与したところ,心電図のPQR波に顕著な除脈現象が観察された。この除脈はタマネギ粉末投与群では検出されなくなった。また,心臓中の過酸化脂質値は増加傾向が認められた。DNA損傷は現在検討中である。これらのことから,タマネギ粉末には心臓の機能異常を予防する効果があることが推測された。現在,ニンニクについても上記のことを検討中である。
〔発 表〕b-151,152
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(3)内分泌撹乱物質による生殖への影響とその作用機構に関する研究
1)内分泌撹乱化学物質の計測手法及び評価手法の開発
@内分泌撹乱物質の高感度分析手法の開発と環境中濃度の把握
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
分泌系撹乱が危惧されている物質のリスト化を行い,物質の性状に応じて分類した後,水,底質および水生生物を対象とした包括的な測定法を確立する。GC/MSよる一斉分析法や,界面活性剤の代謝物など揮発性が少なく測定が困難な物質の分法としてLC/MSを分析法の中心に据え,高感度,高選択性が要求される物質に対しは,GC-AEDによる元素選択的分析法(有機金属化合物など),負イオン化学イオ化GC/MSによる分析法(有機塩素系化合物)などを補足的に用いる。この分析を用いて,下水処理場周辺など発生源の調査や都市河川,湖沼,内湾などにおける上記物質の環境濃度や分布状況の把握を行う。人畜由来の物質であるエストラジオールのように,非常に微量でもその影響が現れると考えられる物質の分析には,他の物質と比較して更なる高感度化が求められているため,負イオン化学イオン化(NCI)GC/MSによる分析法やグルクロン酸や硫酸抱合体のHPLC/MS/MSによる分析法等を優先的に開発する。
〔内 容〕
フェノール基を有する内分泌撹乱物質の高感度検出法をガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)と高速液体クロマトグラフ法(HPLC)を用いて検討した。GC/MSでは誘導体化試薬で反応後,負イオンを検出する測定法によりpgレベルのエストラジオールやビスフェノールAの検出が可能となり,HPLCでは電気化学検出器を使用することでppbレベルの水の直接測定が可能となった。電気化学検出のための固相カラムを用いる前処理法を検討し,実サンプルに応用できることを確認した。エストラジオールのペンタフルオロベンジル誘導体化によるGC/NCI-MSによる測定法を開発した。この方法は,パーフルオロアシル誘導体より若干複雑な手順を必要するが,より安定な化合物を生成し,分析上妨害となる夾雑物との分離にカラムクロマトグラフィーなどの前処理を組み合わせることができることや,そのトリメチルシリル誘導体がエストラジオールに由来する負イオンを主イオンに生成するため,より高感度な測定が可能となった。本方法の応用として,霞ヶ浦の土浦入りから湖心にいたる4地点での湖水の測定を毎月行った結果,エストラジオールの濃度は,すべての測定において緊急調査結果の1/10以下の1ng/l未満であった。また,明確な季節変動は認められなかった。湖水を用いた安定性試験からエストラジオールは,環境中の微生物により容易に分解され,水温の高い夏季には速やかに湖水中で分解されること示された。エストラジオールの一部は,エストロンに代謝されたが,この水中濃度も速やかに減少することが示された。
〔発 表〕D-16,17,d-21〜23,25,26
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A魚等の生物に対する内分泌撹乱作用の生物検定法の開発
〔担当者〕
| 化学環境部 |
: |
白石寛明 |
| 生物圏環境部 |
: |
畠山成久 |
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
内分泌撹乱作用の検定生物として魚類などの水生生物を選び,内分泌撹乱物質により誘導されるバイオマーカーの高感度計測,魚類の形態や行動への影響,各種ライフサイクル試験などによる新しい生物検定法を作成し,内分泌系撹乱物質の水生生物への影響を高感度に計測する手法や慢性影響を評価する手法を確立することを目的とする。バイオマーカーの高感度計測では,薬物代謝酵素であるP450や雌に特異的なタンパク質であるビテロゲニンやコリオゲニンに焦点を当て,指標タンパク質のELISA測定法やリアルタイムRT-PCRによるmRNAの高感度な定量法を開発し,魚類,特に,メダカの内分泌撹乱物質の暴露によるコリオゲニンやビテロゲニンmRNAの発現を指標とした試験系を作成する。また,水生生物の生殖・繁殖影響を評価するライフサイクル試験法や魚の生殖に関係した行動などを指標とした検定方法を作成する。水生生物の繁殖に及ぼす内分泌撹乱物質の試験法,及びその評価法を,環境ホルモン物質,ビスフェノールA,ノニルフェノールなどを用いて検討する。底生生物としては,ユスリカなどの繁殖障害に着目した試験法の開発を行う。
〔内 容〕
ビスフェノールA(3.2ppb〜2ppm,6区画)にふ化後140日まで暴露したメダカの肝臓中のコリオゲニンHとβ-アクチンmRNAの測定(オス,メス各3匹)を前年度に開発したリアルタイムRT-PCR法で行った。β-アクチン発現量に対するコリオゲニンHの発現量が最も多かった個体のコリオゲニンH/β-アクチン比を100としたときの各個体のコリオゲニンH/β-アクチン比をで評価すると,ビスフェノールAの影響は,オス,メスともに見られた。対照区では,すべてのメスに最も高い発現が見られているが,高濃度区になるに従い発現量が減少する傾向があった。一方,オスでは,対照区でメスの1/1000程度の発現しか見られず,中間の濃度区(3.2ppb,16ppb)では,発現がほとんど観測されないものの,高濃度区で正常メスの1/10程度のコリオゲニンを発現する個体が出現するようになった。エストラジオールの短期暴露で同様の検討を行い,ビテロゲニンタンパクの誘導とともにコリオゲニンHのmRNAの発現が見られることを示した。塩基配列が未知で定量が不可能であったメダカビテロゲニンmRNAの塩基配列の解読を進めた結果,同様のRT-PCR法で定量できるようになった。また,メダカエストロゲンレセプターやコリオゲニンLの定量をするためのRT-PCR条件の最適化を行い,異なる蛍光色素を用いることによりβ-アクチンmRNAとの同時測定(Multiplex RT-PCR)が可能となった。
ユスリカの繁殖影響試験法を,半止水式ガラス水槽の上にケージを設置した容器に霞ヶ浦の底泥,ガラスビーズなど入れたものを用いて検討した。セスジユスリカ(感受性系統)の受精卵1卵塊(400から500個の卵を含む)を各水槽に入れ,通気して羽化・雌雄比(脱皮殻による),産卵率・受精率など全生活史にかかわる基本的なデータを収集した。その結果,湖沼の底質を用いる限り,2世代に及ぶ繁殖影響試験法が実施可能であることが示された。
〔発 表〕d-24
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B内分泌撹乱物質の情報科学的研究
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
文献学的に報告されている内分泌撹乱物質を拾い出し,その物質についての国内外の情報を収集整理する。このための情報データベース化のためのフォーマットを確定し,また本研究で実施する各研究からの研究成果情報のフィードバックを可能とする。
アルキルフェノール類及び塩素化フェノール類をモデル物質群とし,魚の生物試験系を用いてその内分泌撹乱作用を定量的に測定する。また,これらの物質群におけるエストロジェン分子との分子構造類似性を指数化する方法を検討し,内分泌撹乱作用との最適合性を調べる。
〔内 容〕
情報データベースについては,物質の物理化学的性状,生産量用途,環境ホルモン作用,一般的な毒性,法律的規制等の項目について情報を収集整理することとし,そのフォーマットを確立した。本年度から,約40物質について試験的な入力を行った。
in vitroのハイスループットアッセイ系として蛍光偏光度を用いたスクリーニング法を用いて内分泌撹乱作用の指数化を行った。
バキュロウィルスにより作製した組換えヒトER-αと蛍光標識したガンド(ES1)が複合体を形成すると,分子運動が緩慢になる結果,蛍光偏光度が大きくなる原理を用いて測定する。いくつかの芳香性化合物について競合結合性試験を行った。その結果ほとんどすべてのフェノール性化合物は弱いながらエストラジオールと結合競合することが明らかとなった。
他のin vitroのアッセイ系との比較を行った。いくつかのアッセイ系はほぼ同じような化学特性を示しており,これらの結果とin
vivoの結果とを結びつけて考える上で,代謝の役割を考慮することが重要と思われた。
〔発 表〕B-93,96,b-240
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2)内分泌撹乱の発現メカニズムの解明に関する研究
@性ホルモンレセプターと結合する化学物質の内分泌撹乱のメカニズム
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
内分泌撹乱物質がいかなる作用機序でほ乳類の生殖機能に異常を発生させるのかを明らかにするために,精子形成にかかわる遺伝子の発現変化を検索する。とくに性ホルモンレセプター(ER・AR)を介した影響がどのように精子形成に影響を及ぼすのかその機構を解明する。
前年度に続き性ホルモン受容体への結合および内分泌撹乱作用の報告されている物質であるBisphenol-A(BPA,エストロゲン作用あるいは抗エストロゲン作用)およびVinclozolin(VCZ,抗アンドロゲン作用)を成熟雄ラットに投与し,精子・精巣・副生殖腺への影響を解析した。本年度は特にBPAの低用量影響に焦点を当てた。
〔内 容〕
(1)低用量BPAの精巣への影響
BPAを成熟雄ラット(13週齢)に6日間経口投与し生後36日目(D36)に解剖した。投与量は実験1で,20μg,200μg,2mg,20mg,200mg/kg
bw(n=5)。
実験2で,2ng,20ng,200ng,2μg,20μg,200μg,
2mg/kg bw(n=8)である。その結果,実験1では全群において対照群に対して,精巣重量・DSP・精子産生効率(DSP/gt)ともに小さい値を示した。実験2でも対照群に比べ,投与群は3つの指標で小さい傾向を示したが,統計学的有意差が生じたのは,DSP・DSP/gtで,20μg/kg以上であった。13週齢の精巣は18週齢に達するまでにさらに成長を続けるが,影響の確認されたすべての群の18週齢におけるレベルは,13週齢の精巣のレベルと同一であり,BPAは13週齢の精巣の成長,特に精子産生効率の増加を抑制したと言える。
(2)VCZの精巣内遺伝子発現への影響
VCZを成熟雄ラットに6日間連続で投与,D8,D36に解剖,精巣を摘出し,トータルRNA回収し,アンドロゲン依存性に発現が抑制されることが知られている低親和性NGF受容体(LNGFR)遺伝子の発現を,半定量的RT-PCRにより解析した。その結果,予想に反し,D8において,LNGFR
mRNAはVCZ投与でわずかながら減少していた。このことから,VCZは精巣に対して直接的に抗アンドロゲン作用を示さないと考えられたため,下垂体ホルモンのLHにより発現の亢進するP450scc遺伝子の発現を解析したところ,VCZ投与による亢進が確認された。したがってVCZは精巣ではなく,視床下部・下垂体系に作用し,精巣アンドロゲンのネガティブフィードバックを抑制したと考えられる。
〔発 表〕E-5
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A内分泌撹乱物質による器官形成不全の解明
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
生殖系・内分泌系臓器においては,細胞の分化・増殖を性ホルモンが制御している。
胎生期のホルモン変化が発生・発達過程における器官形成に影響を及ぼす。本研究は,生殖系・内分泌系臓器の機能維持にエンドクリン撹乱物質がどのような悪影響を及ぼすかをヒト・ほ乳類組織等を用いて,分子メカニズムの基盤を明らかにする。そのために,性ホルモン受容体に応答して特異的に発現するような遺伝子を検出し,単離した遺伝子の器官形成にかかわる機能を調べる。
〔内 容〕
研究方法は,マウス胎児脳のゲノム中から,ゲノム−フィルター結合法を利用して,内分泌撹乱物質に特異的に応答する遺伝子の検索及び解析を行う。具体的には,@マウス胎児脳からのゲノム抽出と至適制限酵素によるゲノム・フラグメントプールの作成 ADNA結合領域を含むエストロゲン受容体タンパク質断片の大腸菌による生合成及びそのタンパク質の精製,ニトロセルロースフィルター上でのDNA結合領域に対する遺伝子のスクリーニング Bエストロゲン受容体との結合領域を含むフラグメントを有するプラスミドの構築及び標的遺伝子の解析と遺伝子の選択を行う。C国立がんセンター研究所で確立された新規アッセイ系を用いて,器官形成に影響する内分泌撹乱物質の検索を行う。DPhlPあるいはフタル酸エステルを妊娠ラットあるいはマウスに経口投与し,器官形成過程における胎児の脳及び生殖器系への影響を解析する。本年度はA,Bについて行ったところ,中胚葉誘導物質であるアクチビン受容体Uが検索できた。
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B巻貝の性転換の機構の解明
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
船底塗料などとして使用されてきた有機スズ化合物により,ごく低濃度でも特異的にインポセックスと呼ばれる生殖器異常/生殖機能障害が巻貝類に引き起こされることが明らかにされてきた。しかしその詳細な誘導・発現機構は明らかでない。これは巻貝類におけるステロイドホルモンやその代謝経路,性分化や性成熟及び外部生殖器の発達等への影響などの生殖生理に関する基礎的な知見が不足しているためである。本研究では,こうした基礎的知見の獲得に努め,インポセックスと呼ばれる巻貝類の性転換(雌の雄性化)の機構解明に資することを目的として,巻貝類のステロイドホルモンとその代謝経路や機能を明らかにし,比較内分泌学的に巻貝類の特殊性を検討することを目標とする。また内分泌撹乱化学物質がステロイドホルモンやインポセックスに及ぼす影響をin
vivo試験により観察する。さらに雌へのペニス形成に深くかかわるとされる脳−側神経節や足神経節の構造や機能についても検討を試みる。本年度は,巻貝類のステロイドホルモンの測定手法について引き続き検討し,また巻貝類の中枢神経系(神経節)及びペニス形成部位の器官培養を実施した。
〔内 容〕
イボニシなどの消化腺/生殖巣部分を雌雄別にホモジェナイズし,そのメタノール抽出液をメタノール/ヘキサン(1:1)で分配して固相抽出(C8-SPC)により極性及び非極性画分に分け,非極性画分についてアルカリ分解の後,水相に1M
HClを加えてエーテルで抽出し,NH2-SPCで濃縮,乾固した。また有機相をSi-SPCに通して溶出液を濃縮,乾固した。これらをクロロホルムで溶かしてシリル化した後,HR/GC/MSで測定した。またホモジェナイズされた雌雄別の消化腺/生殖巣部分のメタノール抽出液をメタノール/ヘキサン(1:1)で分配してメタノール層を分取,濃縮後,ジクロルメタンで1:1分配した。ジクロルメタン層を分取して内標を添加し,フロリジルカラムで精製してベンジル化した後アルカリ分解し,ヘキサン抽出,シリル化の後,シリカゲルカラムで精製してGC/NCI-MSで測定した。また市販のEIAキットを用いて巻貝類のステロイドホルモンの測定を行った。これにより,HR/GC/MSやGC/NCI-MSによる巻貝類のステロイドホルモン測定手法がほぼ確立され,高等動物と同一もしくは類似のステロイドホルモンがイボニシやレイシガイにも存在することが示唆された。なお,その化学構造が全く同一か,などについて,引き続き検討する必要がある。またEIAによる測定値はHR/GC/MSやGC/NCI-MSによる測定値よりも一桁ほど高かった。その原因について検討中である。
アメフラシ神経細胞培養のための液体培地,半固体培地などを用いて,イボニシの神経節及びペニス形成部位の器官培養を実施した。このうちペニス形成部位は,アメフラシ神経細胞培養用液体培地により3週間の生存が可能と考えられた。神経節は半固体培地を用いて培養を実施し,その生死について,組織標本の観察により検討中である。
〔発 表〕D-34,40,d-45
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3)生物界における内分泌撹乱物質の実態の解明に関する研究
@淡水水生生物における内分泌撹乱の実態の解明
〔担当者〕
| 地域環境研究グループ |
: |
森田昌敏 |
| 横浜市立大学 |
: |
井口泰泉 |
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
水系環境におけるエストロゲンの影響を調べるため,海産メダカであるマミチョグ(Fundulus
heteroclitus)を用い,受精卵からエストロゲン暴露を行った。その結果,形態異常,骨形成異常,性分化率の変化及び生殖腺の異常が引き起こされた。以上のことより,エストロゲンが初期発生段階のどの時期から影響を及ぼすのかを調べるためエストロゲン受容体(ER)のクローニング及び,発生段階と,初期発生でのエストロゲン処理によるERmRNAの発現変化の解析を行った。
その結果,アミノ酸の比較より,alpha型に近くメダカ(Oryzias
sp,Oryzias latipes)のERと81%の相同性を持つ約2Kbの配列を得た。この配列を基に初期発生の経時的なERの発現変化について解析を行ったところ,発生段階により発現が異なり,また,エストロゲン処理により初期神経胚での発現の増加が認められた。以上の結果より,発生初期におけるエストロゲンの影響が,エストロゲン受容体を介して起こることが示唆された。
コイ稚魚の体腔上皮の肥厚,繊毛化現象と生殖腺に及ぼす影響について調べた。
実験では,全長が最大6cm程度の稚魚を使用した。この段階の稚魚では肥厚や繊毛化は全く見られないが,女性ホルモンである17β-エストラジオール(E2)で処理ををすると体腔上皮の肥厚していた。また男性ホルモンであるメチルテストステロンで処理をした場合,肥厚は全く見られなかった。次に,実際にノニルフェノールを経口投与し,体腔上皮と生殖腺への影響を組織学的に観察した。実験条件はガラス製の水槽に汲み置きした水を22〜25℃に設定し,性の分化後の全長が3〜6cm程度のコイ稚魚を,一群当たり22尾程度ずつ飼育し,ノニルフェノールを10,100,1000mg/gとなるようにエタノールに溶解させた後,餌に混合し投与した。その結果,処理開始3週目程度で体腔上皮の肥厚が最も多く観察され,100mg/g処理群で,最も体腔上皮が発達した個体が多く,繊毛の発生も見られた。しかし,1000mg/g処理群では100mg/g処理群ほど肥厚は見られず,処理濃度による肥厚の比例関係は見られなかった。また,処理による生殖腺への影響も見られなかったが,ノニルフェノール処理によって体腔上皮が肥厚することより,コイ稚魚の体腔上皮が内分泌撹乱化学物質を調査する上でのバイオマーカーになり得ると考えられる。
また,金魚を用い,雄魚の血中ビテロジェニンを調査することで水環境中の内分泌撹乱化学物質の存在および影響をモニタリングする試みを行った。
試験魚は熊本県内の養魚業者から購入した金魚(Carassius
auratus)を使用し,実験前約1週間地下水にて予備飼育を行い実験に供した。飼育水温はすべてを通して維持した。その結果,金魚のE2暴露1ppbの濃度区において雄魚は1週間でビテロジェニンは誘導されなかったが,雌魚では1週間で数mg/ml程度誘導された。1カ月暴露では雄魚にビテロジェニンの誘導が認められ雌魚は1週間暴露よりも高めに誘導されていた。また100ppbの濃度区においては雌雄ともに1週間暴露で数百mg/mlレベルまでビテロジェニンが誘導された。濃度100ppbから純水に戻して1カ月間飼育した群のビテロジェニン濃度は100ppbに1週間暴露していた群より少し低くなっていただけであった。また,移植実験も行ったが,河川10カ所中2カ所は全個体死亡していた。河川に1カ月間暴露した雄魚では8カ所中2カ所でビテロジェニンを発現する個体が存在した。雌魚においては8カ所すべてでビテロジェニンを発現する個体が存在した。
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A巻貝等における内分泌撹乱の実態の解明
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
本研究では,国内の巻貝類を中心とする水生生物における内分泌撹乱の実態の解明を目標とする。巻貝類のうち,インポセックスが観察されている種(新腹足類および中腹足類)とそれ以外の種(原始腹足類)を対象に,内分泌撹乱や個体群減少の実態を解剖学的手法,病理組織学的手法並びに水産資源学的手法を用いて明らかにする。またステロイドホルモンの測定手法が確立されれば,それの応用による性成熟周期の評価についても試みる。明らかな内分泌撹乱もしくは個体群減少が認められる場合には,周辺の環境中における内分泌撹乱物質の有無について水・底質試料に対する生物検定や各種環境試料の化学分析を通じて検討する。また環境中の内分泌撹乱物質による暴露量評価も試みる。またその種の内分泌撹乱や個体群減少の主因が内分泌撹乱物質であると考えられるかどうかについて,他の潜在的要因(生物的並びに非生物的環境要因)の影響も含めて,相関性や寄与率などの検討を行う。さらに,必要に応じて,因果関係を明らかにするための実験を実施する。
〔内 容〕
イボニシに関して,定点観測(神奈川・油壷及び城ヶ島と茨城・平磯)と全国的なサンプリング調査(宮城,千葉,静岡,三重,兵庫,岡山,広島,香川,徳島,高知,愛媛,福岡,長崎,鹿児島,沖縄)を実施した。各地の産卵期における産卵の有無を観察するとともに,殻高組成解析,解剖によるインポセックスの判定と症状の観察,体内有機スズ含有量の分析・測定を,既報に準じて,実施中である。
バイに関して,漁獲量が増加しつつある対照海域となお低迷が続いている被影響(汚染)海域から,それぞれ約50個体及び約30個体の試料を毎月購入し,解剖によるインポセックス症状の観察と生殖巣組織標本の作製及び観察,体内有機スズ濃度の測定などを既報に準じて実施した。現在,処理中であるが,対照海域のバイではインポセックス出現率が低く,一方,被影響(汚染)海域のバイではインポセックス出現率が高いものの,そのペニス長は1991年データに比べて短くなっていた。
アワビ類に関して,マダカアワビとメガイアワビを対象に,前年度同様,対照海域と被影響(汚染)海域からそれぞれ毎月サンプリングを行い,解剖所見を得るとともに,生殖巣組織標本の作製及び観察,体内有機スズ濃度の測定などを既報に準じて実施している。また,これまでに得られた知見(マダカアワビについて両海域間で生殖周期に著しい差(雌雄間での性成熟盛期の一致,不一致)が見られるとともに被影響(汚染)海域産マダカアワビでは得られた雌の標本54検体中11検体(20.4%)で精子形成などの雄性化現象が観察された。筋肉中の有機スズ濃度にも有意な差が見られ,対照海域産メガイアワビを被影響(汚染)海域の造船所近傍に移植した結果,7カ月後に,雌の約90%で精子形成などの雄性化が起きた,などの知見)に基づき,対照海域産マダカアワビを用いてトリブチルスズ(TBT)の流水式暴露試験を実施中である。
〔発 表〕D-32〜34,36〜40,d-46〜54
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B長寿命生物における内分泌撹乱の実態の解明
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
環境中に放出された内分泌撹乱物質による野生生物の生殖影響が懸念されている。中でも鳥類は寿命が長く,また生態系の上位に位置し食物連鎖過程で各種有機汚染物質を高濃度に蓄積しやすいため,影響を受けやすいと考えられ,実際に欧米を中心として多くの報告が出されている。本研究では鳥類に対する各種内分泌撹乱物質の汚染実態を明らかにし,その生体影響を探ることを目的として,各地の営巣地の実態調査,特定の営巣地における詳細な生態調査,有機塩素系化合物,有機スズ,鉛,プラスチック添加剤等の内分泌撹乱物質の汚染実態などの解明に関する研究を行う。
〔内 容〕
本年度は北海道利尻島での有害鳥獣駆除事業を利用してウミネコの成体,卵等の試料入手を継続し,有機スズ化合物,多環芳香族炭化水素(PAHs)等の分析を継続した。また,異なる生態を有する水鳥として遠洋性のハシボソミズナギドリ,ハイイロミズナギドリ,カモ類,ウトウ等の試料を入手し,分析のための前処理作業を進めた。ウミネコ成鳥中のPAH濃度の個体ごとの変動幅は有機スズよりはるかに大きく,桁違いの変動が認められた。利尻のウミネコは繁殖期以外は日本の周辺諸国の沿岸に広がって生息していると考えられており,この変動の大きさは,これらの鳥の普段の生息環境の違いを反映しているものと考えられ,一ヵ所の繁殖地でのモニタリングでも周辺の広い範囲の汚染状況が把握できることを示したデータと考えられる。一方,ウミネコ卵中の有機スズ濃度は親鳥に比較して低く,母胎から次世代への汚染の伝搬は重要ではないことが示された。
〔発 表〕D-13,d-15
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C性腺・精巣組織における内分泌撹乱の実態の解明
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
精巣中に残留する各種内分泌撹乱物質の測定を高分解能質量分析法を用いた分析法を確立し,それを用いて,その濃度についての予備的な知見を得る。また脂肪組織に残留する内分泌撹乱物質についても高分解能質量分析法を用いて分析する手法を確立し,その濃度についての予備的な知見を得る。
一方で,環境ホルモンの影響により発生しうると考えられる精子数の減少,精巣の組織学的変化,子宮内膜症等について実態を明らかとするとともに内分泌撹乱物質との関連を明らかとする。
〔内 容〕
脂肪組織中の内分泌撹乱物質濃度の測定法について検討を行った。代表的な物質として,ビスフェノールA,ノニルフェノールがあるが,これらの物質の脂肪からの分離精製は困難であり,アルカリ分解法等,新たな精製法を行った。また有機塩素化合物に関する測定値を求めた。
精巣中の有機スズをスズに特異的に応答する検出原子発光検出器を用いて測定する手法を確立した。本法はスズに特異的であり,そのガスクロマトグラフ上の応答はほとんどスズ化合物であることが明らかとなった。予備的な測定では,魚介類に蓄積して生殖阻害を引き起こすとされるトリブチルスズ及びトリフェニルスズは検出されなかったが,その代謝物と考えられるジブチルスズが数ppbのレベルで存在することが示された。これの持つ意味は現在の段階では不明である。また昨年未知のピークが見られ別種の有機スズの汚染を暗示する結果となったが,ジオクチルスズと推定された。
〔発 表〕B-44,b-239,251
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(4)環境と資源の持続的利用に資する資源循環型エコシステムの構築に関する研究
1)家庭排水由来の有機物資源の有効利用等による流域負荷低減技術に関する研究
@窒素・リン・COD等の簡易モニタリングと資源リサイクル高度処理システムの開発に関する研究
〔担当者〕
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
生活排水,廃棄物等による水質汚濁を防止し閉鎖性水域を持つ地域を中心とした環境保全と資源の持続的利用に資する汎用的な地域エコシステムを構築するため,生活排水等における窒素,リン等の除去技術の高度・簡易化手法の開発および開発された技術の技術面,効果面,コスト面での評価手法の開発を目的として研究を行う。具体的には,し尿排水を含有する液状廃棄物の窒素,リン,有機物等の高度除去を目指し,蛍光遺伝子プローブを用いた迅速な検出・定量化手法を活用し硝化細菌等の有用細菌を高度に保持しうる最適操作条件を検討する。また,生活排水の処理水の資源化再利用システムを開発すると同時に窒素,リン,COD等の簡易モニタリングシステムの開発を行い,水処理施設等の排出口におけるBOD10mg/l,T-N10mg/l,T-P1mg/lの目標水質の確保の有無の評価および維持管理の適正化のための開発研究を目標とし,推進することとする。
〔内 容〕
生物学的窒素除去プロセスの高度効率化を図る上で重要な硝化細菌の個体群動態の変遷を評価する手法の開発,適用を目的として,アンモニア酸化細菌,亜硝酸酸化細菌の16S
rRNAを特異的に検出することができる蛍光遺伝子プローブNSO190およびNIT3を用い,家庭排水処理を行っている高度合併処理浄化槽より採取した汚泥,生物膜内部の硝化細菌の検出・定量化を行った。その結果,浄化槽の立ち上げ時から硝化反応の進行に伴って硝化細菌の個体数は増加を示すことがわかった。また,蛍光遺伝子プローブを用い,経日的に硝化細菌の個体群の変遷を追跡した結果,硝化細菌の個体数は流入排水の負荷変動や季節変動による水温変化によって影響をうけることが明らかとなった。また,これまでに開発したモノクローナル抗体法と蛍光遺伝子プローブ法の検出特性の比較を行った結果,両手法の硝化細菌検出特性は浄化槽汚泥を用いた場合はほぼ等しくなることが明らかとなった。これらの結果から蛍光遺伝子プローブを用いた硝化細菌のモニタリング手法は反応槽内における硝化細菌の個体群動態の追跡による処理性能の維持管理へ十分適用可能なことが示唆された。簡易水質試験紙を用いた目標水質の確保の有無の評価に関しては,これまでに用いたNO2+3-N,NO2-N,PO4-Pに加え,NH4-N
についての試験紙を新たに用いて複数の試験者により処理水質の評価を行った。その結果,若干の個人差はでるものの実用的なモニタリング手法として実際の現場へ適用可能であることが明らかとなった。本手法は簡易かつ迅速な水質検査手法であることから個別家庭における高度合併処理浄化槽等の維持管理への適用においては非常に有用なツールになることが示唆され,さらに精度の向上を図ることにより極めて重要な維持管理における窒素,リンの濃度判定の簡易化,迅速化が可能になるものと考えられた。
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(5)生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関する研究
@電磁界及び交絡因子の暴露研究
〔担当者〕
〔期 間〕
平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕
本研究では,我が国における生活環境中の商用周波領域の電磁界と小児がん,とくに白血病と脳腫瘍について健康リスクとの関係を明らかにするための疫学研究において,対象者世帯の磁界レベルの測定,交絡因子の可能性がある大気汚染や室内汚染,自然放射線・ラドンなど測定を行う。
〔内 容〕
諸外国での調査研究のレビューおよび予備的調査を実施した結果に基づいて,生活環境中電磁界による小児の健康リスクに関する疫学研究の対象者の居住家屋内およびその周辺の環境測定の具体的な方法について検討を加えた。
磁界の測定については,対象者の寝室,居間における1週間連続測定を基本として,対象世帯の居住家屋内外におけるスポット測定,特に対象世帯が送電線近傍にあった場合の測定方法についてのプロトコルを定めた。また,送電線・配電線・変圧器と対象家屋との位置関係,配線経路に関する記録方法についても定めた。自然放射線レベルはスポット測定により行い,ラドン濃度の測定については6カ月間対象者の寝室にパッシブ型測定器を設置し,測定する方法を採用した。さらに,キャニスターを用いて対象者の寝室の空気を捕集し,ベンゼン等のVOC成分の分析を行うこととした。
本年度はこれらの方法に基づいて対象者世帯の環境測定を開始した。
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A総合解析・評価
〔担当者〕
〔期 間〕
平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕
日常生活中の0.2μT(2mG)以上の商用周波数域の磁界による小児白血病や職業暴露による成人白血病のリスクを巡る国際的な議論が続いている。これまでの疫学調査結果は全体としてリスクを示唆しているが,動物実験では発ガン性が認められないとの意見が強く,なお結論が得られていないのである。本研究は,WHOの国際電磁界プロジェクト(International
EMF Project)(1996〜2005)と共同して開始された,我が国で初めての小児がんの大規模な症例対照研究である。生活環境中の商用周波領域の電磁界暴露と小児の白血病と脳腫瘍との関係を,諸外国より高レベルの商用周波数磁界への暴露状況やこれまで考慮されていなかった高調波成分やトランジェント成分の評価を含め,明らかにすることを目的としている。本調査の結果は,国際的にもリスク評価の結論を得るために必須と位置づけられており,国際的関心が高まっている。
〔内 容〕
〔内 容〕本研究により作成されたデータを症例ごとに対応させ整理・統合し,総合的な解析・評価を行う。総合解析・評価にあたっては,疫学,暴露評価,ガン(白血病,脳腫瘍),大気汚染・放射線など各種交絡因子等を考慮して多方面から解析する必要があり,これら専門家からなる小委員会を設け,基礎検討を開始している。
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