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国立機関原子力試験研究費による研究(原子力利用研究)
1.環境化学物質に対するバイオエフェクトセンサーの開発
〔担当者〕
| 環境健康部 |
: |
持立克身・古山昭子 |
| 化学環境部 |
: |
仲間純子 |
〔期 間〕
平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕
これまで,化学物質の環境汚染による生体影響の評価は,個々の毒性が危惧される物質について,主として動物実験あるいは培養細胞による毒性試験,および環境中における存在量の調査の手順を踏んで行われてきた。しかし,多くの化学物質が環境中に拡散しその複合汚染が進行している状況では,動物実験の信頼性の高さは認めつつも,迅速性の向上や複合暴露に要する時間や労力等の軽減を考慮に入れた新しい毒性評価系の開発が望まれている。これに対処するには,動物実験と培養細胞の中間に位置する組織同等体を用いた毒性評価系が適当と考えられる。組織同等体とは,生体組織から個別に取り出した各種構成細胞と細胞外基質を組み合わせ,組織と同等の形質を有する細胞培養系に構築したもので,従来の培養細胞の簡便さと迅速性を備えながら,他方生体組織と類似することから局所的な動物実験の特徴も備わっている。本研究では,両者の長所を兼ね備えた組織同等体を,環境化学物質の毒性評価に適した形に構築することを目指す。
〔内 容〕
前年度に引き続き,ブレオマイシン(bleo)による基底膜の崩壊を,肺線維芽細胞(F)を包埋したコラーゲンゲル上にU型肺胞上皮細胞(T2)を播種した細胞培養系(T2-Fgel)を用いて検討した。方法としては,基底膜を形成したT2-Fgelに,0.1unit/ml
bleoを3日間処理し,その後2週間培養を継続して基底膜の損傷と肺胞上皮細胞の傷害を観察した。その結果bleo処理後4日目には,基底膜緻密板(LD)は,T2の基底面から乖離するとともに,至る個所で断片化しその大半は失われた。しかし7日目には,基底膜の崩壊が進行する一方で,新たな基底膜が短いながらT2基底面直下に構築され,14日目には新生基底膜がほぼ完成した。
bleoによる基底膜崩壊と再生の機構を解析するため,コラーゲン線維上に播種したT2を,肺線維芽細胞の順化培地共存下(T2-fib-Fcm),またはマトリゲル存在下(T2-fib-MG)で培養し基底膜を構築させた後,bleo処理による基底膜の崩壊と再生を調べた。T2-fib-Fcmにおいて,Fのみが傷害を受けた場合(T2は正常)は,基底膜は一過性に損傷を示したが,その後回復した。しかしT2が傷害を受けた場合(Fは正常)は,Fのみが傷害を受けた場合と途中までは同じだった。しかし,その後も損傷の程度は拡大し,最終的に基底膜は崩壊した。両者が傷害を受けた場合,速やかに基底膜は崩壊した。T2-fib-MG
においても,bleoによる基底膜の崩壊と再生が再現された。また,bleo処理後にマトリゲルを除き,代わりにラミニンを添加した場合においても,基底膜はほぼ再生された。このことから,基底膜の損傷にはT2細胞の傷害が深く関与していること,及び再生には基底膜成分の供給が重要であることが明らかになった。
本プロジェクトにおける肺胞上皮モデルの構築とこのモデルを用いた一連の毒性試験から,肺胞上皮組織,特に基底膜構造体の構築あるいは崩壊と再生において,肺胞上皮細胞と線維芽細胞の役割を明らかにすることができた。また,今回の毒性試験で観察された現象がin
vivoでの結果と極めて類似していたことから,極めて信頼性の高いin
vivo代替実験方法になると考えられる。
〔発 表〕E-30,31,e-61〜63
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