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国立機関公害防止等試験研究
2.生物間相互作用と湖沼の持続的利用を考慮した適切な湖沼保全のための基礎的研究
〔担当者〕
| 地域環境研究グループ |
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高村典子・加藤秀男* |
| 生 物 圏 環 境 部 |
: |
野原精一・上野隆平 |
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(*科学技術特別研究員) |
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
湖沼の水質は窒素とリンの現存量や負荷量との関連で議論されてきた。一方で,魚類群集が食物連鎖の下位の動植物プランクトンの量や質を左右し,水質を変化させる事実も報告されている。しかし,日本の湖沼では,まだその実態は全く明らかにされていない。十和田湖は,近年COD値が環境基準値の1ppmを越え透明度が確実に減少し,ウログレナによる赤潮が発生している。また,名物であるヒメマスの漁獲量が著しく落ちこみ,ワカサギが増え,これが本湖の生態系を大きく変化させている。本研究では,十和田湖を日本の貧栄養湖沼の一つのモデルケースと考え,貧栄養湖沼の様々な利用を考慮した総合的な湖沼環境保全のあり方を提示するために,沖と沿岸域,各々の場での生物群集の相互の関係を解明し,生態系構造およびその機能を明らかにする。
〔内 容〕
十和田湖では本格的な底生動物群集の調査が今回初めてなされ,沿岸部の水生昆虫を除き53分類群の底生動物が確認された。これには,未記載種と思われる1種(貧毛類のTubificinae
sp.)と日本新記録種2種(貧毛類のPristinella
amphibioticaとRhyacodrilus sp.)が含まれていた。十和田湖の湖盆は,底生動物群集の構成の違いから沿岸部,亜沿岸部,深底部,中湖深底部の4つに区分できた。出現分類群数はそれぞれ,44,22,8,9taxaで,深度とともに減少した。特に深底部の底生動物相は独特で,これまで知られている湖沼のファウナと異なっていた。深底部の底生動物群集は,広深度分布種と真性の深底種からなる。後者にはイトミミズ科の2種と文献上からキタシロカズメウズムシが該当し,本来地下水や河川源頭部に生息する低温狭温性の種類が深底部に定着したものである可能性が高い。
沿岸域の底生動物群集の分布は,汀線付近の礫底とそれ以外の地点で大きく異なった。汀線付近の礫底では剥離食者に属するコエグリトビケラ属の一種(Apatania
sp.)及びニンギョウトビケラの2taxaが底生動物の総現存量の78〜91%を占めた。一方,それ以外の地点では,ユスリカ科と貧毛類が全現存量の52〜100%を占め,その割合は沖に向かうにつれて増加した。現存量のピークは春から秋は水深12〜15mの泥底で見られたが,2月には少し浅い地点に移動した。こうした底生動物の現存量の分布は,湖底の環境要因や餌条件により左右されているのではなく,捕食者である魚の影響を受けることが示唆された。水界を隔離する実験により魚の捕食が無い条件下にすると,トウヨウモンカゲロウ,ホソバトビケラなどの大型底生動物が増え,生物多様性が増加した。
〔発 表〕K-8〜31,B-49,50,52,b-165,166
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