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人間活動の急速な拡大が種々の地球規模での環境問題を生起している。その原因,影響,対処についての要因はきわめて輻輳しており,研究には既存学問分野を組み合わせての問題指向型取り組みが必須である。当研究グループは,1990年の発足時より,地球環境の諸問題ごとにチームを結成し,中核の研究を自ら推進するとともに,地球環境研究総合推進費を中心として,内外の研究を組織化しながら,環境保全に有効な科学的知見の集積と利用に努めている。
温暖化影響対策研究チームでは,1997年に合意された京都議定書の早期発効に向けて,数値目標を達成するための具体的方策と費用,国際協力による費用削減の方策,対策の経済的影響等について「気候変動に関する統合評価モデルAIM」を用いて分析した。二酸化炭素の削減手段に吸収源が含まれたことから,炭素サイクルの研究が重視されるようになった。
温暖化現象解明研究チームでは,海洋や陸上植物による二酸化炭素吸収量の変動の観測やシベリアでの二酸化炭素等の観測を継続し,エルニーニョに伴って変動する炭素収支に関する知見を得た。また当グループでは森林の二酸化炭素吸収評価手法確立のための大気・森林相互作用に関する研究に着手した。
衛星観測研究チームでは,地球観測衛星「みどり」が太陽電池系統の故障で機能を停止した1997年6月までの8カ月間に,オゾン層観測センサーILASによって6700地点以上の観測データを蓄積した。これらの観測データは極域高層大気の変動状況を極めて明瞭に示しており,本年度もなお解析アルゴリズムの改訂研究を行って,より精度の高いデータの導出を行い,世界の研究者に提供を行っている。
これと並行してオゾン層研究チームは,1990年代に入って顕著化した北極域オゾン層の減少に着目した地上観測,モデリングを強化しており,本年度は1999〜2000年のヨーロッパ成層圏集中観測に参加し,2000年春季の北極域,特に高度18km領域では60%にも達するオゾン破壊が進行している事を観測した。一方,温室効果気体の増加をはじめ人間活動に伴う大気組成・気候の変動に対するオゾン層の応答を確かめるために,成層圏エアロゾル上での不均一反応の評価にかかわる実験的研究や大循環モデル(GCM)に成層圏プロセスを取り込んだ3次元モデルの開発など,オゾン層の将来予測に向けた研究も行われた。
西暦2000年の酸性雨国際学会つくば開催ならびに東アジア酸性雨観測ネットワークの構築の決定に対応し,酸性雨研究チームは,航空機観測・地上観測・大気移流モデル・生態系影響評価等の研究を強化している。
海洋研究チームでは,商船利用の観測により,アジア海域の海洋生態系変動や微量有害化学物質分布の状況および海域におけるシリカ欠損の問題に関する研究を続けているほか,サンゴ礁海域における水中画像アーカイビングによりサンゴ生態系変質状況の解析を行っている。
森林減少・砂漠化研究チームでは,熱帯林の保全・研究管理を目指して,択伐などが森林の機能にどのような影響を与えるかについて調査を行っている。本年度は森林伐採が森林の構造,種組成や炭素循環系及び林冠構成種の遺伝的多様性に与える影響等について,マレーシア半島部にあるパソ保護林及びその周辺域で調査を行った。また熱帯林の社会的評価の経済価値をとらえることを目的として,マレーシアにおいて仮想評価手法に基いた調査を行った。
野生生物保全研究チームでは,地理的スケールで地理情報システムを活用しながら具体的に野生生物の動態を把握し,それをモデル化することを目指している。調査地を特定の水系単位で設定して,その中で土地利用から様々な生物の分布・生態までの情報を空間的に,かつ経時的に調査し,生物多様性の保全に寄与する知見の集積に努めている。
地域環境研究グループは“保全対策”と“リスク評価”の2分野について7課題の特別研究を12チームによって実施した。また,2課題の“開発途上国環境技術共同研究”を4チームによって実施した。それら成果の要点を研究チームごとにまとめると以下のようである。
海域保全研究チームは,水産資源や自然環境の保護にとって重要な浅海域における,物質循環や生態系の機能に関する研究を行い,浅海域生態系の特徴や底生生物による水質浄化能などを明らかにした。播磨灘での調査・実験から,微小生物食物連鎖や原生動物・原索動物による食物連鎖を介した物質循環についての解明が進んだ。
湖沼保全研究チームは,湖水中の有機物の特性・起源を適切に把握する手法を確立し,湖水中での難分解性有機物濃度上昇の原因を検討し,さらに湖水有機物の質的・量的変化が湖沼環境・水道水源としての湖沼水質に及ぼす影響を評価した。霞ヶ浦を調査した結果,トリハロメタン前駆物質として,フミン物質よりも親水性成分の重要性が認められた。
都市大気保全研究チーム及び交通公害防止研究チームは,VOCによる大気汚染および光化学スモック等の二次的汚染の解明のために,走行中の自動車からの排出量調査や広域立体分布観測などを行って発生状況や環境動態の把握に努めるとともに,データ解析プラットフォームとしてのGISシステムの開発を行った。また,公共交通,自動車交通,電気自動車等の次世代交通システムのLCA等による比較評価を行い,今後の交通システムのあり方に関する検討を進めた。
有害廃棄物対策研究チームは,廃棄物中に含まれる有害物質の環境に対する影響を評価する上で不可決な化学物質の埋立地内挙動を解明するために,廃棄物分析手法の開発を行うとともに,埋立処分における化学物質の生成・分解・溶出挙動を明らかにし,侵出水の毒性検査法を提示した。
水改善手法研究チームは,輸送・循環システムにかかわる環境負荷の定量化手法および環境影響の総合評価手法に関する研究の取りまとめを行うとともに,環境ホルモン等の多様な環境リスクの評価と管理を目的として,リスク要因についての発生源・環境の状況・影響等にかかわる情報とこれらの相互関係を記述するモデルを地理情報を核として統合した情報システムの構築を進めた。
環境リスク評価を対象としている分野では,4つの特別研究が行われた。研究内容は,健康リスク評価と生態系リスク評価とに大別できる。
新生生物評価研究チームは,汚染土壌・地下水の浄化に有用な浄化微生物を探索し,その浄化機構を解明するとともに,土壌・地下水環境中において浄化能を発揮できる微生物を創生した。さらに,各種浄化微生物の検出法並びに汚染土壌・地下水の浄化効果の試験方法及び本技術のリスク評価手法を開発した。また,オゾン層破壊による紫外線増加の遺伝子への影響や遺伝子組換え植物が生態系に与える影響を調べるための指標となる植物を開発した。
化学物質健康リスク評価研究チームは,環境中のホルモン様化学物質としてダイオキシンをとりあげ,子(次世代)への影響,とりわけ生殖機能,内分泌機能,免疫機能への影響について実験動物を用いて検討を行い,リスク評価のための基礎データを得た。
都市環境影響評価研究チームは,人間個体レベルのリスクを評価するため,ヒトを対象とした低レベル電磁界暴露実験動物及び培養細胞系を用いた,低〜高レベル電磁界暴露実験を行った。またヒト集団における暴露レベルを6世帯における1年間の長期連続測定や送電線近接の20世帯の測定により解析した。
大気影響評価研究チームは,浮遊粒子状物質の中の大部分を占めるディーゼル排気微粒子(DEP,PM2.5粒子)を対象物質として,ディーゼル排気(DE)の暴露実験と組織培養等を含むin
vitroの実験を組み合わせることにより,その中のどのような物質がどのような機序で心血管系に傷害を及ぼしているかを検索している。本年度は,DE暴露動物が異常心電図を発現すること,およびDEP中に血管を収縮させたり,弛緩させたりする物質が混在することを発見した。さらに,DEPが動物の流産を誘発したり内分泌系に影響する可能性を示した。
化学物質生態影響評価研究チームは,内分泌撹乱物質の生態影響を明らかにするために魚類及び無脊椎動物を用いた試験法の開発を行っている。これと併行して農薬汚染河川における内分泌撹乱作用の有無を確認するためヒメダカを用いた暴露試験を行っている。
バイオアッセイ環境リスク評価研究チームは,環境中の化学物質の総リスク評価のために,各種のバイアッセイを組み合わせ環境試料への適用性を含めて,有害性総合指標を目指して,その評価と標準化を行っている。
開発途上国健康影響研究チームは,中国における大気汚染による健康影響について,日中共同の解析を行うとともに,当研究所の暴露チャンバーを用いて,浮遊粉塵による生体影響の実験を行い,健康影響の予測と健康被害の予防のための手法を確立した。
開発途上国環境改善(水質)研究チームは,開発途上国における生活排水等の処理方法として,多大な施設とエネルギー消費を伴う処理ではなく,有用生物を活用することによって,自然の浄化能力を強化し,効率化した水処理技術の開発を行った。また同時にその技術を我が国における水質改善手法の多様化を計る際においての基礎となるような適正手法の開発を行った。
開発途上国生態系管理研究チームは,揚子江流域という特有の地域を事例として,浅い富栄養化した湖沼の生態系管理手法としての汎用性のある施策の提唱を目的とし,中国での調査を実施した。また国内において霞ヶ浦に設置した隔離水界を用いて,生物間相互作用と水質の関係について検討した。
開発途上国環境改善(大気)研究チームは,大きさの異なる人為由来の大気エアロゾルと土壌起源系(黄砂)エアロゾルとの通年同時観測を中国各地で行い,中国の大気環境保全に寄与するため,多試料の環境化学的解析を行った。
環境問題は,人間活動が引き起こし,人の自然外囲である大気,水,土,生物等の環境を介して,ふたたび人間の生存,生活,社会経済活動等に回帰してくる問題であるといえる。それゆえ,環境問題は一面すぐれて社会的な問題でもある。社会環境システム部では,こうした問題意識のもとに,システム分析等の手法により環境保全に関する政策科学的及び情報科学的な基礎研究を行うことにしている。
本年度は,上席研究官及び環境経済,資源管理,環境計画及び情報解析の4研究室,及び主任研究官が,それぞれ基幹となる合計9の広範な経常研究課題を選定し実施した。
上席研究官を中心として環境の認識構造に関する基礎的研究課題を実施した。この中で,瀬戸大橋の接岸地域住民に対して自由記述法と選択肢法による環境意識調査を実施し,その結果から,地域ごとに固有の環境認識と政策ニーズを明らかにした。
環境経済研究室で行う経常研究課題の1つは,引き続き,経済モデルの改良を進め,炭素税の導入に伴う日本のマクロ経済に及ぼす影響を分析した。また,気候変動枠組条約に関する国際交渉をとりあげ,2000年以降の締約国間の具体方策に関し,特に1998年のブエノスアイレス行動計画の分析,及び京都議定書のクリーン開発メカニズムの効果分析を実施した。
資源管理研究室で行う2つの経常研究課題では,前年度に引き続き,水資源と水環境との関係について調査及び検討を行った。また,廃棄物減量化とその影響に関連し,ライフサイクルによるトータルな環境負荷の算定に重要となるライフサイクル・アセスメント(LCA)手法の確立のため,前年度に引き続き事例研究を進めるとともに手法の簡略化やインパクトアセスメントについて検討した。
環境計画研究室では,国の環境基本法及びこれに基づく環境基本計画の策定や最近の地球温暖化防止対策推進法の成立を受け,自治体レベルでの計画策定が進んでいることを背景として,環境マネジメントシステムの認証制度の効果やその問題点,専門家の役割等について検討した。
情報解析研究室では2つの経常研究課題に取り組んでおり,一つが人工衛星,地図,写真等による地理・画像データの解析手法の開発であり,他の一つは種々の環境システムの評価に資するモデル化やシミュレーション手法の開発である。特に,本年度から様々な地理・画像情報を利用して環境を解析・評価するためのシステムの開発に着手するとともに,前年度に引き続き境界要素法による数値計算の精度改良に取り組んだ。
また,主任研究官により,環境計画との関連で,景観評価についての研究が進められている。特に,景観の価値がどのように決まるかを社会文化的及び歴史的背景に基づいて解明するため,南アルプスの登山者の景観体験や江戸時代に来訪した外国人の評価を基に分析した。
新たな汚染が顕在化するたびに,環境汚染は複雑化,多様化しており,高感度で信頼性のある環境計測法を開発して,その実態や汚染機構を解明し,新たなリスク管理手法を確立することが求められている。このような課題を解決するため,化学環境部では,各種環境汚染物質の計測・監視や毒性評価方法の開発と汚染物質の環境動態の解明に関する研究を実施している。
本年度は,内分泌撹乱化学物質とダイオキシン類に力点をおいて研究を進めた。
内分泌撹乱化学物質については,分析法と評価法に関する研究を進めた。GC/MSやLC/MS等を用いた分析法の確立とともに,極低濃度の化学物質を濃縮するため,選択的に分子を認識・捕そくする樹脂を開発した。また,内分泌撹乱作用のin
vitroの検出方法として各種生物検定法を検討し,ルーチン的な試験系を確立するとともに,巻貝の雄性化を指標とした系,ヒメダカのライフサイクル試験法など,in
vivoの検出系を開発した。
測定値の信頼性が問題となっているダイオキシン類については,フライアッシュや土壌の標準試料を作成し,他機関とのクロスチェック等により,精度管理上の問題点を明らかにした。
その他の汚染物質を対象とした多くの研究課題も同時に実施した。
大気中の有害化学物質の自動連続多成分同時計測センサーの開発では,手分析法との並行測定を行い,良好な一致が得られることを確認するとともに,自動的なデータのチェック・管理を行うシステムを開発した。
タンデム加速器質量分析システムの開発では,14C測定の新たな試料前処理ラインの性能試験を始めるとともに,他核種の分析に応用する際の問題点の検討を行った。
環境中での元素の挙動に関しては,ヒ素について形態変化を含めた動態解明を進めるとともに,本年度はウラン加工工場での事故に関連し,敷地内外での土壌,植物試料中のウラン同位体の分析を行った。また,環境動態の解明を目指しホウ素の同位体分析法の開発を行った。
バイカル湖の底泥を用い地球環境の変動を解析する研究では,採取した試料の分析を進め,過去1000万年の気候変動を解析できるデータを蓄積し,その特徴を明らかにした。また,クロロフィル分解物の解析から過去の植物プランクトンの分布を推定した。
このほか,発光細菌を利用した遺伝毒性試験法,低沸点化合物の吸着捕集/GC/MS分析法など,新たなモニタリング手法を検討するとともに,スペシメンバンキングの新たな試料の収集・保存と分析作業を進めた。
環境健康部においては,環境有害因子(窒素酸化物・ディーゼル排気ガス等の大気汚染物質,ダイオキシンや環境ホルモンなどの有害化学物質,重金属,花粉,紫外線等)がいかにヒトの健康に影響を及ぼすかに関する実験的・疫学的研究を行っている。これらの基礎研究は,健康リスクアセスメントを行うための要素となるものである。これら環境有害因子の空間的広がりにより,地域規模での環境問題と地球規模の環境問題に分けられるが,それぞれ総合研究部門の地球環境研究グループ及び地域環境研究グループの研究チームと連携をとりながら,「地球環境研究総合推進費」,「特別研究」,「特別経常研究」の研究も行われた。さらに,環境リスク評価のために,重金属,大気汚染物質,紫外線,ダイオキシン・環境ホルモンなどの文献レビューも行った。本年度は,経常研究9課題,奨励研究1課題が行われた。
大気汚染物質(ディーゼル排ガス粒子,オゾン,花粉など)が免疫系など生体防御機能に与える影響を解明するために,実験動物や培養細胞を暴露環境下で育て,肺を構成している細胞やアレルギー・炎症に関与する細胞への影響を検討に関する基礎的研究を行った。気道への影響のメカニズムの解明のため,炎症細胞の遊走・活性化,T細胞の増殖分化についての検討を開発等の検討を行った。
環境有害因子の毒性には酸化的ストレスが関与する場合が多いが,そのメカニズムの解明のためにノックアウトマウスを用いた皮膚がんに関する研究が行われた。また,遺伝子改変したゼブラフィッシュを作成することによる,環境水中の変異原の検出のための研究を行った。
さらに,メチル水銀投与ラットにおけるin
vivo状態でのNMRによる機能測定法,及び環境ホルモンによる次世代影響について行動毒性による検出法に関する研究も行った。毛髪中ダイオキシンの暴露の指標としての有用性についての研究もなされた。
本来の目的である人間集団を対象とした研究として,幹線道路沿いの大気汚染と個人暴露量との関係,国保レセプト及び人口動態統計などによる環境保健指標の開発,ダイオキシン類に関して地理情報システムを用いた研究が行われた。
大気圏環境部では,地球温暖化,成層圏オゾン層破壊,酸性雨といった地球規模の環境問題や,都市の二酸化窒素大気汚染問題に代表されるような地域的な環境問題を解決するための基礎となる研究を推進している。本年度は,15課題の経常研究,1課題の奨励研究が行われたほか,地球環境研究グループ(温暖化現象解明,オゾン層,酸性雨,衛星観測各チーム),地域環境研究グループ(都市大気保全チーム)の準構成員として,さらには地球環境研究センターの併任または協力研究者としてプロジェクト研究推進等への協力も行われた。
大気物理研究室では,気象学を基礎とした大気循環および物質循環の研究が行われた。大気海洋結合気候モデルを用いた温室効果ガスおよびエアロゾルの増減に伴う気候変化のシミュレーション,エアロゾルの全球分布導出,積雲対流活動の解析,大気−陸面間での熱・水蒸気輸送過程のモデル化,地域スケールの大気循環と物質循環のシミュレーション,極中心をとりまく大気の渦運動に関する研究等が行われた。
大気反応研究室では,気相の化学反応と大気中の反応性微量成分の研究が行われた。レーザー誘起蛍光法を用いて酸素原子と環状オレフィンやハロゲン化オレフィンとの反応による置換ビノキシ型ラジカルの検出を行った。また光化学チャンバーを用いて,多メチル置換エチレンとオゾンとの反応による過酢酸の収率を求め,その反応機構を推定した。島嶼における炭化水素やNOyの野外観測に関する研究も進められた。
高層大気研究室では,レーザーレーダー(ライダー)手法の開発とこれを用いた観測研究が行われた。小型ライダーによるつくばにおけるエアロゾルと雲の連続観測や,海洋地球研究船「みらい」に搭載したライダーによる海洋上のエアロゾル分布と光学特性の観測を実施した。また,将来の衛星搭載ライダーによる全球的観測のためのデータ解析アルゴリズムおよびデータ利用手法の研究を行った。
大気動態研究室では,温室効果気体および関連物質の動態を調べるため,濃度の長期観測や同位体比の測定を行っている。本年度には,落石岬で亜酸化窒素,波照間島で一酸化炭素の連続測定を開始した。また,日本及びシベリア上空で採取した二酸化炭素について炭素安定同位体比を測定した。これらに加えて,廃坑を利用した人工雲実験を行い,雲粒の生成機構や霧粒の沈着速度に関するデータを得た。
水土壌圏環境部では自然資源劣化,酸性雨,海洋汚染,砂漠化といった地球環境問題及び,湖沼・海域の水環境保全やバイオテクノロジーを用いた水質改善などの地域環境問題に関して現象解明,影響評価,予測手法,環境改善手法等の基礎的研究を行っている。本年度は地球環境研究5課題,重点共同研究1課題,経常研究8課題,環境修復技術開発研究1課題,科学技術振興調整費による,総合研究1課題,重点基礎研究1課題,重点研究支援協力員制度1課題,文部省・科学研究費補助金による研究5課題を行った。
水環境質研究室では,漂着重油,石油系炭化水素,有機塩素化合物,リグニン酸,フミン酸,重金属,富栄養化原因物質等の環境汚濁物質の動態に関与する生物の同定およびそれらの代謝・変換量等について研究を行った。
水環境工学研究室では,流域環境管理モデルの一つの重要なサブモデルとして,河川流出に関する水理モデルと確率モデルの融合を図りそれを,中国長江流域及び釧路川流域久著呂川に適用し,モデル妥当性を検証した。
土壌環境研究室では,土壌中での無機汚染物質,有機汚染物質,及び微生物の挙動についての基礎的研究を行った。また,酸性雨の土壌影響についても調査,研究を行った。
地下環境研究室では,粘性土の圧縮性状,地盤沈下観測システムの開発と観測,湖底の堆積速度についての研究を行った。
生物圏環境部では分子レベルから生態系レベルまでの生物にかかわる基礎・応用研究を推進している。本年度は奨励研究を含めて17課題の経常研究を行った。科学技術庁振興調整費による研究ではグローバルリサーチネットワーク等5課題,未来環境創造型基礎研究1課題が推進された。
環境植物研究室では,環境の変化が植物の生理と野外での生活に及ぼす影響を,実験室での栽培実験,フィールド調査,シミュレーションモデルを使った理論的解析などの各方面から研究している。特に,高地や乾燥地に生息する植物の生理生態学的な特性に関する研究や,森林における種の多様性や遺伝的多様性の維持機構に関する理論的な研究などを進めている。
環境微生物研究室では,水界生態系で重要な役割を果たしているシアノバクテリアの種レベルの分類学的解析をMicrocystis属やOscillatoria属について,生理生化学的及び遺伝学的手法をもちいて行った。また,土壌微生物の分解機能測定や,微細藻類の種組成の調査など,特定の環境(干潟・湿地など)をカテゴライズする要因を求めるための研究や,微細藻類の多様性維持機構を解明するための遺伝的マーカー開発に向けた研究も行われた。
生態機構研究室では,湿地生態系の構造と機能を解明する研究を行った。まず,尾瀬沼に侵入した帰化植物のコカナダモ群落の変動と在来水生植物の分布調査,尾瀬ヶ原のアカシボの分布調査と水の安定同位体比による水循環の解析を行った。また,底生動物の調査が行き届いてない島嶼地域の河川において底生動物群集の調査を行った。南北大東島での池沼沿岸帯の底生動物を調査し研究所内実験池の生物相と比較し,小笠原諸島の生活史が明らかになっていない淡水エビの数種について種の特徴について明らかにした。さらに,河川渓流における自然環境保全のための評価手法について検討した。また,沿岸にある干潟等の多様な立地において個体群を成立させている海草類を中心に,各個体群形成種のバイオマスや分布の変動を追跡した。
分子生物学研究室では,植物の環境ストレス耐性に関与する遺伝子の単離とその応用を目的に,オゾンに対する感受性を指標にシロイヌナズナの変異体を選抜し,約50系統のオゾン感受性変異体を得た。それらの変異体から遺伝子を同定・単離するための遺伝解析や条件検討を行うとともに,ストレスシグナルの指標としての活性酸素消去系酵素群の種々のストレス条件下での活性変化を調べ,明らかにした。
地球環境研究センターでは,地球環境研究総合推進費における総合化研究を推進している。総合化研究の研究領域は,分野別に実施されている個々の研究プロジェクトと異なり,@個々の研究プロジェクトの成果を集約しつつ,経済学,社会工学的手法を含む観点から総合的かつ体系的に検討を行い,政策の具体的な展開に資する知見を提供する「政策研究」 A「課題別研究」として分野ごとに研究プロジェクトが推進される地球環境研究に対し,これらの個々の分野にまたがる研究領域や共通する研究領域を体系的かつ集中的に解析する「横断的研究」 B個々の研究領域の重要性を地球環境問題の解決という観点から総合的に評価する「リサーチ・オン・リサーチ」の三つの役割を有している。本年度は,以下の3課題について研究を推進した。「持続的な国際経済社会に向けた環境経済統合分析手法の開発に関する研究」では,多国間経済モデルにおいて土地利用変化を分析するためのモジュールの開発,アジアの発展途上国における水質汚濁などと経済発展の相互作用のシミュレーション及びCVM手法を用いた国際公共財の評価の試行などを行った。「温室効果ガスインベントリーシステム構築の方法論に関する研究」では,現存温室効果ガス排出・吸収源データの分析や,エネルギー・農業などのマクロモデルを利用したマクロチェック方式の開発などを行い,温室効果ガスインベントリー精度の向上に取り組んだ。「地球環境研究推進のための総合化・体系化に関する研究」では,温暖化対策分野及び人間・社会的側面研究分野の専門家からなる検討会を組織し,これまでの研究のレビューや今後推進すべき研究課題等について検討した。いずれの研究も地球環境研究センターの併任研究員,客員研究員等の研究者の協力を得て遂行している。
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