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研究施設・設備


2.大型研究施設



1 大気化学実験棟(光化学チャンバー)

 本施設は,大気中の一次汚染物質が光化学的に二次汚染物質に変質するメカニズムを実験的に研究し,都市域における光化学スモッグ,対流圏バックグラウンド・成層圏等の大気光化学反応を解明することを主目的としている。そのための大型実験装置として光化学チャンバーが設置されている。
 平成10年度は,地球環境研究および経常研究等が行われた。

2 大気拡散実験棟(風洞)

 本施設は,工場や自動車から排出される大気汚染の移流,拡散現象をできるだけ現実に即してシミュレートするための施設である。本施設は従来の流体力学用風洞の仕様条件に加えて,温度,速度成層装置,加熱冷却床パネルを備えている点に特徴がある。これらの組み合わせにより種々の気象条件が再現でき,移流,拡散に最も重要なパラメータである大気の安定度を調節して自然大気と相似の条件で大気汚染をシミュレートすることが可能である。そのための大型施設として大型・中型の風洞が設置されている。
 平成10年度は,特別研究,地球環境研究および経常研究等が行われた。

3 大気汚染質実験棟(エアロドーム)

 本施設は,環境大気の遠隔計測並びに粒子状大気汚染質の大気中の挙動を研究する施設である。最上部(7・8階)に設置されている大型レーザーレーダーは大気汚染質の空間分布を短時間に広範囲にわたって観測するための装置で,コンピュータによって操作,データ処理を行う。3階には,粒子状汚染質および酸性・酸化性物質の生成,拡散,消滅の諸過程を研究するエアロゾルチャンバー装置が設置されている。
 平成10年度は,地球環境研究および経常研究等が行われた。

4 大気共同実験棟(大気フリースペース)

 本施設は,室内実験,フィールド調査などに使用される各種計測器の校正試験,および既設の各施設では対応できない大気関係の研究のために,その必要性に応じ一定期間の使用に供することを目的とした施設で,各種の機器の校正に利用された。また,対流圏および成層圏のオゾン濃度分布の測定を行い,オゾン濃度の変動現象の解明および長期的な変化を研究するオゾンレーザーレーダーが設置されている。
「オゾンレーザーレーダー」
 オゾン観測室に設置されているオゾンレーザーレーダーは3台のレーザーと口径100cmおよび56cmの2台の望遠鏡を備えており,高度45kmまでのオゾンの高度分布を高い精度で観測することができる。
 平成10年度は,地球環境研究および経常研究等が行われるとともに,地球環境研究センターによる成層圏モニタリングが行われた。
5 大気モニター棟
 本施設は,大気質の自動測定装置等の精度や安定性のチェックあるいは相互比較,さらに妨害因子の検討などを行うための施設である。本施設には,国設大気測定所などで実際に使用されている機器を中心として7種類の自動測定器(NOx,SO2,O3,非メタン,SPM,ガス状Hg,酸性雨化学成分に関する各測定機器)が設置されている。機器の性能を維持するために,専門技術者が精度管理を厳しく行っている。また,所内外の研究者に対して,気象要素(風向,風速,雨量,気圧,日射量,紫外線放射量,地表温度)や大気質の測定結果の公開なども行っている。
 平成10年度は,半年以上にわたる長期テストを必要とする研究課題を含み5研究課題の利用申込みがあったほか,データの閲覧申込みも15件あった。

6 ラジオアイソトープ実験棟(RI棟)

 本施設は,放射性同位元素を利用することにより環境中の汚染物質の挙動や,生態系への影響,物質循環の解明,生物を用いた汚染物質の除去技術の開発等を行っている。
 科学技術庁より使用承認を受けている核種は23核種である。平成10年度には放射線業務従事者は職員,客員,共同研究員,研究生合わせて35人であった。平成9年度には本施設を利用して特別研究4課題,地球環境研究総合推進費による研究5課題,開発途上国環境技術共同研究1課題,原子力利用研究5課題,奨励研究1課題,文部省科学研究費補助金による研究1課題,経常研究10課題が行われた。

7 水生生物実験棟(アクアトロン)

 本施設は,水界における汚濁物質の挙動および影響を生態学,微生物学,水質工学等の見地から解明することを目的とした施設である。大型施設として,アオコ等の微生物の挙動および水質改善効果等を研究する目的で淡水マイクロコズム装置が設置され,微量の重金属,農薬等の汚染物質が,どのように魚類や甲殻類等の水生生物に影響するかを研究する目的で毒性試験装置が設置されている。
 また,水生生物の飼育培養および系統保存のための設備が設置されている。屋外には自然条件下における生態系の遷移現象や水質変化に伴う生態系としての反応を,生物群集の面から解析するための実験施設として生物生態実験池が設けられている。
 平成10年度に供試された実験水生生物は,グッピー,メダカ,タマミジンコ,オオミジンコ,ヌカエビ等を中心におよそ50種・系統に及んだ。
 平成10年度は,特別研究,地球環境研究および経常研究等が行われた。

8 水理実験棟

 本施設は,水土壌圏の水理現象と水質に関与する物理・化学・生物学的な諸現象を実験的に解明することを目的とした施設であり,海洋への炭酸ガス吸収とその循環機構の解明を目的として海産藻類の無菌的純粋培養を行う海洋マイクロコズム,地下水汚染研究のための諸モデル測定装置,物質循環速度・経路を解明するための安定同位体比質量分析計と前処理装置が設置されている。
 平成10年度は,地球環境研究,原子力利用研究,重点共同研究,経常研究が行われた。

9 土壌環境実験棟(ペドトロン)

 本施設は,土壌・底質環境の保全並びに汚染土壌の浄化に関する研究を行うことを目的とした施設であり,環境制御下で土壌−植物系における汚染物質の挙動を調べるための地温制御大型ライシメーター,グロースチャンバー,地温制御チャンバー,化学物質研究のための実験室などの装置が設置されている。
 平成10年度は,本施設を利用して,特別研究,地球環境研究,経常研究などが実施された。

10 動物実験棟(ズートロン)

 本施設は,環境汚染物質が人の健康に及ぼす影響を,Biomedial Scienceの立場から,動物を用いて実験的に研究することを目的とした研究施設である。
 本施設を使用して実施された平成10年度の試験研究は,特別研究((1)超低周波電磁界による健康リスク評価 (2)環境中の「ホルモン様化学物質」の生殖・発生影響 (3)環境中の化学物質総リスク評価のための毒性試験系の開発に関する研究)の3課題と開発途上国関係(開発途上国における石炭燃焼に伴う大気汚染による健康影響と疾病予防に関する研究)1課題,奨励研究B1課題,さらに経常研究19課題であった。これらの内容として,大気汚染物質,重金属およびその他の環境汚染物質の生体影響の解明に関する基礎的研究・リスク評価研究に加えて,地球規模の環境変化としての地球温暖化やオゾン層の破壊に伴う紫外線の健康影響に関する研究が含まれている。
「生体用NMR装置」
 本装置はヒトや実験動物を生きた状態でNMR計測を行い,その代謝機能や体内イメージを解析する装置である。経常研究,科学研究費補助金による研究などに使用された。

11 植物実験棟(ファイトトロン)

 本施設は,地球環境問題や自然保護などに関連して,植物および陸上生態系に及ぼす種々の環境ストレスの影響について,制御された環境下で研究をすることを目的とした試験研究施設である。このために,植物群落を対象とした自然環境シミュレータを始めとして,クリーン実験室・培養室等からなるバイオテクノロジー施設,種々の型式・性能の環境調節装置が植物実験棟T及びUに設置されている。また,砂漠化や熱帯林の研究のための低温低湿,高温高湿の設定のできるグロースチャンバーも設置されている。
 平成10年度は本施設を利用して,地球環境研究,特別研究,科学技術振興調整費による研究,経常研究などが実施された。

12 微生物系統保存棟

 本施設は,微生物が関与する環境汚染・環境浄化の研究を推進させるために必要な環境微生物培養株を収集,確保して系統的に保存すること及び研究者の要請に応じて保存株を株データとともに提供することを目的とした施設である。
 平成10年度の保存株の分譲は,赤潮・水の華形成藻類,汚染指標藻類,AGP供試藻類,有毒藻類,炭酸カルシウムの鱗片を有する藻類等多種にわたり,水環境保全研究および地球環境保全研究に利用された。
 平成10年度は,寄託株30種を含めた微細藻類と原生動物870株について,それらの種名,履歴(産地,採集者,分離者,採集月日等),株の状態(無菌,単藻等),培地,培養条件等をパーソナルコンピュータで整理した。本施設の保存株を利用して実施された試験研究は,特別研究5課題,経常研究12課題,地球環境研究総合推進費2課題,科学技術振興調整費5課題であった。

13 騒音・保健研究棟

 本施設は,環境因子の人体への影響に関して,人を対象として研究することを目的とした施設である。本施設を利用し,主として,環境健康部・病態機構研究室および環境疫学研究室,地域環境研究グループ・都市環境影響評価研究チームが以下の研究を実施している。病態機構研究室は環境汚染物質の毒性発現機構に関する実験的研究,および健康影響のモニタリング手法の開発に関する基礎的研究を,環境疫学研究室は各種疫学調査の準備並びに現地調査の実施,調査試料の分析,収集資料の整理とデータベースの作成,を行うとともに,各種計算機システムを活用したデータ解析を行っている。都市環境影響評価研究チームは人を対象とした生理実験室を利用した騒音,超低周波電磁場等の環境ストレスの健康影響に関する研究を実施するとともに,各種疫学調査の準備・解析に利用している。

14 環境遺伝子工学実験棟

 本施設は,組換えDNA技術を環境保全に利用するための手法の開発や,遺伝子を組換えた生物の環境中での挙動や生態系への影響を解明するための基礎的知見を収集することを目的とした施設である。
 平成10年度に承認された本研究所における組換えDNA実験は27課題,登録された組換えDNA実験従事者は103人であり,従事者数は前年度より増加した。遺伝子組換えによる環境ストレス耐性の植物の作成,組換え微生物の水中及び土壌中での挙動の解明,動物遺伝子のクローニングなどの実験が本施設内で実施された。
 また,管理区域外の分析機器室にはペプチドシークエンサーやDNAシークエンサー等の分析機器が設置されており,極めて活発に使用された。

15 共通機器

 本研究所では,大型で高価な分析機器等を共通機器として管理・運営し,広く研究者が利用できるようになっている。現在,共通機器として登録されている機器は,表6.1のとおりである。どの機器も性能を維持するために専門技術者による維持管理業務が行われている。その中でも,(1)ガスクロマトグラフ質量分析装置 (2)走査型電子顕微鏡 (3)透過型電子顕微鏡 (4)プラズマ発光分光分析装置(2機種) (5)核磁気共鳴装置 (6)元素分析計は,特に分析希望が多い装置である。分析希望試料も難度の高い前処理や分析技術を必要とするものが多いため,この7装置については,専門技術者による依頼分析業務を行っている。
 平成10年度に依頼分析を行った研究テーマは,約30課題,約10,000検体の分析希望があった。このようにして,所内約4割の研究者が共通機器を毎年利用しており,環境にかかわる分野の応用研究や基礎研究に役立つデータを提供している。
 なお,平成10年度にICP質量分析計が新たに導入された。

16 情報関連施設

(1)コンピュータシステム
 平成9年3月に行われたシステム更改では,計算需要の増大及び処理形態の多様化に対処するため,大型電子計算機システムとスーパーコンピュータシステムを統合したシステムとしてとらえ,比較的大規模のスーパーコンピュータシステムを中核に,複数の各種サブシステムを加えた分散型のシステムを導入した。
 本システムは,オペレーティングシステム(OS)としてUNIX系OSに統一されるとともに,地球環境問題を扱う大規模なFORTRANプログラムを効率よく作成・実行するための多様な機能を持つFORTRANコンパイラ及び各種支援ツールを備えている。
 また,演算処理を超高速に行うベクトル計算機本体を中心としてフロントエンドシステムや地球環境研究では,計算結果を可視化することが現象解明,影響評価及び予測を行う上で重要な役割を果たすため,計算結果を適切に表示するグラフィックスサブシステム,さらに,科学技術計算の多くの数値シミュレーションについては,計算アルゴリズム(算法)及びプログラムに適したスカラー計算サーバも導入した。
 このほか,基礎データ,共用データ及び計算結果等の大量のデータを格納する大容量磁気ディスク装置,各構成要素を構成するコンピュータが扱うファイル(データ等)の高速バックアップ及びマイグレーションが可能な大容量磁気テープ装置を備えたファイルサブシステム,並びにデータベースサーバ(統計解析システムソフトウェアを含む。),当研究所の情報を所内外へ発信するWWWサーバ,イントラネットサーバ等から構成されている。
 さらに平成10年度は,補正予算により,大容量超高速磁気ディスク装置(約500GB,3台)を含むグローバル・ファイル・システム(GFS)を導入し,高速かつ効率的なデータの入出力が可能な運用環境を構築した。
(2)国立環境研究所ネットワーク
 本システムは,研究所内に相当台数導入されているコンピュータ資源を相互接続することにより,これらの資源の有効利活用を図り,併せて国外を含む所外のネットワークに接続されたコンピュータとの間で電子メールの授受等を行うことを目的として,スーパーコンピュータシステムの新規導入に伴い,FDDIを基幹ネットワークとして,平成3年度に構築されたものである。
 その後,平成7年度に,研究本館III の増設に伴い,新たに2つのFDDIサブネットを構築するため,ATMスイッチを導入し,既設のFDDI基幹ネットワーク等を統合した。また,平成7年度末には,ネットワークの強化に係る基盤整備の一環として,本館及び実験棟の間に光ファイバケーブルを敷設するほか,研究室等にツイステッドペアケーブル(UTP,カテゴリ5)の配線及び情報コンセントの取り付けを行っている。
 平成8年度には,新コンピュータシステムの処理能力の向上及びデータ格納領域の拡充に合わせ,特に大容量データの高速伝送に適したIPスイッチ(2台)及びIPスイッチ・ゲートウェイ(11台)を導入し,既設FDDI基幹ネットワークのイーサーネットセグメントをこれらのゲートウェイに収容するほか,同ゲートウェイに情報コンセント配線を接続するなど,LAN構成の変更を行った。なお,一般の利用者においても,これらの情報コンセントを使用し,より高速なネットワーク(100BASE−TX)の利用が可能となった。
 平成10年度は,IPスイッチ・ゲートウェイの無停電電源装置を導入し,安定稼働を実現するとともに,ネットワーク整備・強化の一環として,高速化未対応の研究室等にUTPの配線のほか,一部情報コンセントの増設を行った。

17 実験ほ場

 本施設は,植物および土壌生態系の環境保全機能に関する野外実験や所内の各生物環境調節施設で得られた研究成果を野外条件下での応用試験,並びに実験植物の系統保存,供給を行うことを目的とした生物系野外実験施設である。施設は,所内にある構内実験ほ場と当研究所の西方約4kmに所在する別団地実験ほ場(つくば市八幡台3)の2施設より構成される。
 平成10年度には,特別研究,地球環境研究総合推進費による研究などによる野外実験が実施された。また,熱帯の樹木類や砂漠植物などの実験植物を系統保存するとともに,それらを植物実験棟などで実施される研究に供給した。

18 霞ヶ浦臨湖実験施設

 霞ヶ浦臨湖実験施設は本研究所の研究者の共同利用施設として利用されている。日本の中でも水質汚濁の進行している霞ヶ浦の湖畔に位置するところから,霞ヶ浦を対象とした調査や,霞ヶ浦の湖水や生物を利用した各種の実験研究を行うことにより,湖の汚濁機構の解明,汚濁した湖の水質回復に関する研究,湖の生態等や物質循環などを明らかにすることを目的として研究が行われている。
 平成10年度は,特別研究「湖沼において増大する難分解性有機物の発生原因と影響評価に関する研究」,開発途上国環境技術共同研究,「開発途上国における自然利用強化型適正水質改善技術の共同開発に関する研究」,「富栄養湖沼群の生物群集の変化と生態系管理に関する研究」,地球環境モニタリング経費によるGEMS/Water支援事業で「霞ヶ浦トレンドモニタリング」,科学技術振興調整費による「市民参加による流域管理システムの活用と改善効果に関する研究」,「霞ヶ浦における南米産ペヘレイの侵入による湖内生態系撹乱に関する研究」,文部省科学研究費「DOC分画手法を用いた溶存有機物のトリハロメタン生成能評価」,経常研究「霞ヶ浦の生物資源保護に果たす役割に関する研究」等,総合研究グループおよび基盤研究部で多くの研究テーマが施設を利用して行われた。

19 奥日光環境観測所

 本施設は,森林生態系に及ぼす環境汚染の影響および環境汚染に対する非汚染地でのバックグラウンド値を長期にわたって観測することを目的とした実験・観測施設である。
 施設は,日光国立公園内の栃木県日光市奥日光に所在し,観測所と管理棟の2施設により構成されている。
 平成10年度は,生物圏環境部と地球環境研究グループにおいて下記の研究テーマについて実施された。
 干潟・湿地等の保全に資する知見を得ることを目的とした重点国際共同研究の一部を戦場ヶ原で実施した。湿地生態系の参照基準地として戦場ヶ原の2ヵ所から土壌・植物・間隙水を採取し,管理棟でサンプル処理及びインキュベーション実験を行った。湿地生態系の持つ栄養塩保持機能等のパラメータを収集できた。
 酸性雨関連課題としては森林被害地におけるオゾン濃度との比較のため,本観測所で測定したオゾン濃度を解析し,過酸化水素,有機過酸化物を測定して森林被害に関する大気汚染のかかわりに関する知見を得た。

20 地球環境モニタリングステ−ション

 地球環境変化を監視する一環として,人為的な発生源
の直接影響を受けることが少ない沖縄県竹富町波照間島と北海道根室市落石岬に無人の自動観測ステーションを設置して,大気中の温室効果ガス等を高精度自動測定し,ベースライン大気(大気汚染の影響をほとんど無視できる十分に清浄な空気)の長期的変化を観測することとしている。
 各ステーションの観測項目は表6.2のとおりである。
(1)地球環境モニタリングステーション−波照間
 本施設は,沖縄県八重山郡竹富町にあり,西表島の南方約20kmの有人島としては日本最南端である波照間島の東端に所在している。
 本施設では,ベースライン大気中の温室効果ガスなどの長期的な変化を観測するために,39mの観測塔上で大気を採取して,温室効果ガスのほか,採気する気団の起源を推定するための指標因子として,オゾン・粒子状物質・ラドン・気象要素などを1993年秋より観測している。
 1998年度には,制御・記録用パソコンの全面更新,情報通信ネットワークの整備,及び自家発電設備の導入を実施した。
(2)地球環境モニタリングステーション−落石岬
 本施設は,波照間ステーションに続く第二のステーションとして根室半島の付け根にある落石岬の先端部(海抜50m)に建設された。
 本施設は,50mの観測塔上で大気を採取して,波照間ステーションと同様に温室効果ガス・指標性ガス・気象要素を1995年秋より観測している。
 1998年度には,観測を継続するとともに,東アジア酸性雨モニタリングネットワークの観測拠点としての可能性について検討した。

21 黒島NOAA受信施設

 本施設は,米国の地球観測衛星NOAAから送られてくる観測データを受信,処理するためのシステムである。平成5年度の補正予算により日本国内に2セットの設置が認められ,一方を沖縄県八重山郡黒島の(財)海中公園センター八重山研究所内に,他方を茨城県つくば市の本研究所内に設置することとなった。平成7年1月より黒島受信施設が,平成7年9月よりつくば受信施設が稼働を開始した。
 NOAAは高度約850kmで地球を南北に周回する人工衛星で,搭載されたリモートセンサーAVHRRからは約2700qという広い幅(範囲)を,地上での分解能1km(地上1km四方が一点)で,毎日2回観測することができる。AVHRRは,地上で反射された太陽光や地表面から放射される熱赤外線などの電磁波(光と熱)を検知して画像化し,この電磁波信号を解析することにより,地上の植生分布や海面の水温分布,また雲の分布に関する情報を得ることができる。広い範囲を高頻度で観測できるというAVHRRの特徴は熱帯林の減少や砂漠化など地球的規模で進行しつつある環境の変化を正確にとらえるうえで非常に有効な手段となる。
 黒島,つくばの両受信局でカムチャッカ半島からマレー半島までの東アジア地域をカバーしており,現在NOAA12号,14号および15号の3つの衛星からこの範囲の画像を毎日20シーン程度受信処理している。平成10年度は,これらの画像をもとに東アジア衛星モザイク画像の作成,地表面の植生指数分布図,植生生産量分布図を作成するためのプログラム開発を行った。

22 研究本館I(計測棟)

 環境中の有害物質を高感度,高選択的に検出したり,環境試料中での有害物質の分布を局所分析などにより調べること,あるいは,地球温暖化の現象解明や汚染物質の起源解明などのための元素(炭素,鉛など)の同位体比を精密に測定することは,環境汚染の状況を把握し汚染機構を解明したり,環境リスク評価を行う上で重要かつ基本的なことである。研究本館I(計測棟)は,このような分析・測定を行うための装置(高度な分析機器など)およびそれらを有効に使用するための施設(クリーンルームなど)を維持・管理し,必要に応じて高精度の測定データを提供している。また,一部の機器については,新しい分析法を研究・開発するための装置としても利用されている。
(1)主要機器
 1)高速液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)
 2)誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)
 3)二次イオン質量分析装置(SIMS)
 4)高分解能質量分析装置(HRMS)
 5)ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)
 6)原子吸光光度計(AAS)
 7)表面電離型質量分析装置(IDMS)
 8)大気圧イオン化質量分析装置(API/MS)
 9)ガスクロマトグラフ四重極質量分析装置(GC/QMS)
 10)X線回析装置(XRD)
 11)レーザーラマン分光分析装置(RAMAN)
(2)主要設備
 1)クリーンルーム
 2)純水製造装置

23 研究本館II(共同利用棟及び共同研究棟)

(1)人間環境評価実験施設(ELMES:Evaluation Laboratory of Man−Environmental Systems)及び環境総合評価のための情報システム(SAPIENS:Systems Analysis and Planning in Intelligent Environmental Information System)
 ELMESは環境評価にかかわる人間集団の反応測定や,意志決定プロセスにおける情報伝達効果の有効性の確認等,環境と人間行動に関する実験を行うための施設であり,中会議室と兼用の一集団実験室,ゲーミングシミュレーションのための多集団実験室および情報伝達に用いるオーディオ・ビジュアル機器,実験制御装置(サーバー,ワークステーション)等から構成されている。
 SAPIENSはELMESでの環境情報提示や,地域環境情報システムの開発研究を進めるためのコンピュータおよび画像処理・表示システムと環境データベースよりなる。
(2)試料庫
 環境試料の長期保存並びに試料の保存性に関する研究のために設立されたものであり,低温室,ディープフリーザー室,恒温室,試料準備室,記録室から成り立っている。低温室は−20℃の3低温室からなり,大量の試料の保存が可能である。ディープフリーザー室には3基の超低温槽と3台の液体窒素ジャーを設置し,超低温保存(−85℃,−110℃,−196℃)の必要な少量の試料の保存が可能である。+4℃,+20℃の恒温室は,それぞれ凍結しない方法による保存に用いる。保存する試料の前処理は試料準備室で行い,記録室には各室の温度が表示記録されるとともに,保存試料の情報が記録されている。
 平成8年度からは,研究所の試料に加え,環境庁化学物質モニタリング試料のうち昭和59年度〜平成4年度分が追加搬入され,長期保存を開始した。

24 研究本館V

(1)大型質量分析施設
「フーリエ変換質量分析装置(FT−MS)」

 本装置は,フーリエ変換方式によるイオンサイクロトロン共鳴を用いた質量分析装置で,イオントラップは3テスラの超伝導マグネットを用いている。測定できる質量範囲は12−16,000amuで,分解能はm/z=131で106以上の高精度・高分解能の質量分析装置である。イオン源はEI,CIレーザーイオン化が使用可能であり,またFT−MS本体のアナライザセル側にイオン加速レンズ系を介して接続されている外部イオン化室を有する。
 以上の機能を有した本装置は,質量数の大きいクラス
ターの測定,同位体の測定,ラジカルの反応測定,イオン反応の測定の研究に用いられる。
 平成10年度は,酸素原子とアルキル型ラジカルとの反応速度・機構の研究を行った。
「タンデム質量分析装置(タンデムMS)」
 本装置は,分解能65,000の二重収束型質量分析計(MS)を2台直列に組み合わせたもので,通常の高分解能質量分析に加え,第一MSで分離・選択されたイオンをさらに第二MSで質量分析することによって,正確かつ詳細な化学構造情報を調べることができる。
 平成10年度は,エレクトロスプレーイオン化法,大気圧化学イオン化法等の溶液導入法と組み合わせ,水溶性・熱分解性物質のLC/MS/MS分析法に関する各種基礎検討を行った。
「加速器分析施設」
 本施設は,最大加速電圧5百万ボルトの静電型タンデム加速器を擁する加速器質量分析装置(AMS),同百十万ボルトのPIXE/RBS分析装置,並びにAMS用試料調製クリーンルームから構成される。AMSは,質量分析の原理と高エネルギー粒子の弁別測定技術とを組み合わせて,極めて微量にしか存在しない(安定同位体の10−10以下)同位体を精度,感度良く測定するためのシステムで,特に炭素14等の,宇宙線起源の長寿命放射性同位体をトレーサーとする環境研究に用いられる。PIXE/RBSは表面分析,元素分析の手法であり,各種環境試料中元素の迅速分析や分布の詳細な解析等に威力を発揮する。AMSは放射線発生装置であり,放射線防護の観点から,放射線モニターと連動したインターロックシステムの設置など,様々な工夫が凝らされた施設になっている。
 平成10年度は,科学技術振興調整費「バイカル湖の湖底泥を用いる長期環境変動の解明に関する国際共同研究」や国立機関原子力試験研究費「GC−AMS:加速器による生体中,環境中微量成分の超高感度追跡手法の開発」等の研究課題に基づき,炭素14やベリリウム10,アルミニウム26の測定を継続した。また,1月には科学技術庁,JISTECの支援をうけて“International Workshop on Frontiers in Accelerator Mass Spectrometry”を開催し,国内外の関連研究者との交流を深めた。
(2)化学物質管理区域
 本施設は強い有害性を有するダイオキシン類などの特殊有害物質の分析,毒性評価を行うための実験施設である。
 安全な実験環境の確保,かつ区域外への有害物質の漏出を防ぐため,管理区域内の気圧を大気圧より低くし,実験用ドラフトや空調の排気口に焼却可能な活性炭フィルター等を設置してガス状,粒子状の有害物質が漏れ出ることを抑える工夫がなされている。実験排水も,活性炭処理されたあと,さらに研究所全体の化学排水処理施設で処理される二重構造になっている。
 さらに区域内で出る実験廃棄物,廃液,使用済み排気フィルターは,すべて区域内で処理して外部に持ち出さないよう区域内に焼却炉を設置している。
 また区域内利用者は登録制でカードキーで出入を記録している。
 実験室としてはGC/MS室,試料調整室,微生物実験室,物性実験室,低温室,水生生物実験室,細胞実験室,毒性実験室,動物飼育室,マイクロコズム,高温分解室がある。
 平成10年度は,特別研究「環境中の『ホルモン様化学物質』生殖・発生影響に関する研究」及び地公研の共同研究「環境中のダイオキシン類の分析法に関する研究」を中心に研究が進められた。
(3)ILAS・RIS衛星データ処理運用施設
 本施設は,ADEOS衛星搭載のILAS(改良型大気周縁赤外分光計)およびRIS(地上衛星間レーザー長光路吸収測定用リトロリフレクター)のデータを処理運用するための施設であり,データ処理運用のための装置(計算機システム)およびソフトウェアからなる。1996年11月より1997年6月までILASが観測したデータを最新のデータ処理アルゴリズムにより処理し,オゾン等の高度分布など地球物理パラメータの作成を行うとともに,外部へのデータ提供を行う。
 平成10年度は,ILASデータの再処理運用を本施設が実施し,所期の性能を発揮した。また,平成12年度に打ち上げ予定のILAS−Uのデータ処理運用に備え,装置の導入を完了した。
(4)ミリ波測定施設
 本施設は,ミリ波解析室,ミリ波分光器室,ミリ波分光観器室の3部屋からなっており,ミリ波分光計並びにミリ波オゾン分光観測システム等を使用し,成層圏・中間圏のオゾンが放出する電波(ミリ波)の回転スペクトルを高い分解能で分光し,40km以上の高度領域のオゾン鉛直分布を観測している。平成10年度は,ほぼ毎日(雨天等,厚い雲のある場合を除く),高度約38〜76kmのオゾンの鉛直分布を24時間連続的に観測し,良好なデータが得られている。
(5)エコオフィス
 本施設は,オフィスにおけるエネルギー消費の低減ならびに二酸化炭素排出量の削減を目的とした施設である。このエコオフィスの特徴は,1)断熱材の使用,ペアガラスの導入により,従来のオフィスに比べて断熱性能が大幅に向上していること 2)太陽光発電システムの導入してオフィス内の電力需要の一部をまかなうこと 3)太陽熱集熱器による温水を冷暖房に利用して冷暖房エネルギーの削減をはかること等である。なお,太陽光発電システムにおいては現在利用可能な単結晶,多結晶,アモルファスの3種類の太陽電池を用いた発電システムを併置し,同じ条件での各発電システムの性能評価が可能である。
 平成10年度は,各居室の瞬時電力を照明,コンセント別に計測システムに取り組むための施設の改修を行いデータ分析の制度を高めた。さらに昨年に引き続き,エコオフィスにおける一年間通した消費および供給エネルギーならびに,二酸化炭素排出削減量の解析を行い,エコオフィスとしての性能評価を行った。
(6)NOAA受信施設
 本施設は,米国の地球観測衛星NOAAに搭載されたAVHRRセンサーの衛星データの受信及び解析を行うために設置された施設である。NOAA/AVHRRは,可視域から赤外域に合計5バンドを受感する多重分光走査センサーである。AVHRRは広い地域を高頻度に観測することができるので地球全体を対象とするのに適している。本施設は,2つの受信局で構成されており,本研究所に1995年9月,沖縄県黒島に1995年1月に設置された。主な構成機器は,レドーム付き直径1.2mの受信パラボナアンテナ,アンテナ制御装置,受信機,GPS装置,制御及び解析用SUNワークステーションである。受信データの記録には,4mmDATテープ6本を格納できるスタッカー装置を装備している。つくば局と黒島局をあわせると,カムチャッカ半島から中国,さらにマレー半島付近まで観測が可能である。
 平成10年度は,衛星データの定常的な取得,植生指数分布図および東アジア衛星モザイク画像の作成を行った。
(7)GRID情報処理解析施設
 地球環境研究センターは,国連環境計画(UNEP)/地球資源情報データベース(GRID)の協力センター(GRID−つくば)になっている。本施設は,GRID情報処理解析システム(平成5年度導入)を中心とする計算機システムを設置しており,GRID−つくばのオリジナルデータの作成,データの加工・解析,データの提供等を行っている。平成10年度は,タイ・バンコクにある米国の気象衛星NOAAの受信施設から得られるデータを入手し,当センターで作成している東アジア地域における植生指数データと合成できるように整備した。また,京都議定書における温室効果ガスの吸収源研究の基礎データとして,世界日射量メッシュデータの整備を行った。


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