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地球環境研究センター


2.地球環境研究の総合化



 地球環境問題は,発展途上国における人口増加や貧困,農業用地の乱開発,先進国の都市化,高度な生活の要求および急速な技術進歩等,人間活動が複雑に関連し合って生じている。地球環境研究の総合化においては,地球環境保全に向けて,各分野の研究者の総力を結集して効果的に研究を進めるため,研究の有機的連携を図るとともに,こうした社会現象や環境破壊に至る現象を総合的に把握し,相互作用を解明することにより,地球環境研究の方向づけを行うことを目的としている。

1 地球環境研究の方向づけ

(1)地球環境研究者交流会議
 地球環境研究センターでは,体系的,効率的,学術的かつ国際的な地球環境研究を推進するための一環として,地球環境研究に携わっている研究者を広く結集し,研究手法,成果等について総合的かつ分野横断的に検討するための交流会議を開催している。
 1)第12回地球環境研究者交流会議
 第12回地球環境研究者交流会議は,「海洋と二酸化炭素」というテーマで,1999年1月18〜22日にかけて科学技術庁つくば交流センターで開催した。発表課題は,基調講演として9件,口頭発表として67件及びポスターセッションとして32件となり,海外からは66件,国内からは42件であった。
 基調講演としては,(1)全海洋の海洋−大気CO2フラックス,pCO2差に基づく改良した推定値 (2)大気−海洋CO2フラックスを決定するための最近の進歩 (3)海洋のCO2吸収について,大気中の酸素濃度測定が意味するもの (4)米国による南北太平洋における地球規模CO2観測研究 (5)地球規模大気−海洋フラックス推定を大気CO2濃度とその同位体組成を制約条件として解析する (6)氷河期−間氷期の大気CO2濃度変化と大気中の鉄の関係 (7)亜熱帯太平洋における生物ポンプによる炭素吸収,栄養塩の制約とフラックス (8)大気−海洋海面でのCO2フラックスを測定する係留ブイ (9)化石燃料起源CO2の海洋隔離のテスト実験の9件があった。口頭発表としては,観測関連について22件,モデルについては15件,同位体を指標とした研究について2件,生物活動について16件,方法論・データ管理・サンゴ礁について10件,海洋炭素隔離について4件であった。以上,基調講演は40分,口頭発表は15分で5日間ぎっしり詰まったプログラム運営であった。世界各国の観測・研究はそれぞれ工夫した装置,方法で行われており科学論文には必ずしも方法の記載がないこともあ り,発表を通して観測・研究の方法を改良するための情報や研究全般についての情報交換の場となった。また,本シンポジウムには,国内外を含めて200余名が参加した。なお,本シンポジウムについては,第12回地球環境研究者交流会議報告書として平成11年度に出版する予定である。
 2)第13回地球環境研究者交流会議
 第13回地球環境研究者交流会議は,「二酸化炭素と植生−植生の吸収源評価と植生影響にかかわる最新の国際的アプローチ−」というテーマで,1999年3月18日に所内の大山記念ホールにおいて開催した。本シンポジウムでは,地球環境問題の中でも最も注目を集めている地球温暖化問題について,植生によるCO2の吸収源機能評価(SINK:CO2 absorption by vegetation)の課題,及び植生に及ぼすフリーエアー方式のCO2の濃度上昇影響実験(FACE:Responses of vegetation to CO2)の課題に関して,現在世界の第一線で活躍している国内外の研究者による講演があった。午前中はSINK関連の講演があり,(1)日本におけるCO2−SINK研究の現状 (2)“Ameri Flux”ネットワークによる陸域CO2−SINKの計測 (3)ヨーロッパ混交林の炭素固定の推定 (4)Eurofluxにおける北方林でのフラックス計測 (5)温帯落葉樹林と大気間のCO2交換の年変動 (6)地球規模純一次生産推定のための地球観測システムのアルゴリズム (7)北域森林生態系の炭素収支についての報告があった。午後は,FACE関連の講演があり,(1)生態系の純炭素フラックスの広域推定のための航空機利用法 (2)アメリカ合衆国におけるFACE研究と地中海型生態系に及ぼすCO2増加の影響 (3)CO2増加に対する作物,森林,草原,砂漠植生の反応実験のためのフリーエアー増加システム (4)イネFACEプロジェクトのための純粋CO2放出システム (5)実験的CO2増加のもとでの森林生態系に純一次生産 (6)FACTS2(ポプラ FACE)プロジェクト予備実験−CO2とO3増加の複合影響− (7)イネFACE98プロジェクトにおけるCO2増加に対するイネの反応 (8)アメリカアリゾナ州における小麦とトウモロコシに及ぼすFACE実験 (9)ニュージーランドにおけるFACE技術を用いた羊飼育のための永久草原へのCO2増加実験に関する報告があった 。最後に,活発な全体討論を行い終了した。また,本シンポジウムには国内外から約100名の参加者があった。なお,本シンポジウムについては,第13回地球環境研究者交流会議報告書として平成11年度に出版する予定である。

(2)各種研究企画支援活動
 1)大気環境変動の植物影響に関する講演会
 1998年8月10日所内中会議室において大気環境変動の植物影響に関する講演会「Impacts of Rising CO2 and O3 on Vegetation」を開催した。講師は,英国ニューカッスル大学のJ.D. Barnes博士であり,大気環境変動の植物影響に関する欧州における最近の研究の現状等の情報も取得できた。なお,本講演会には約30名の研究者が参加した。
 2)環境変動と生物多様性に関するワークショップ
 本ワークショップは,1999年3月24日に所内の大山記念ホールで開催した。海外の4名の研究者から講演があった。各講演ごとに討議を行い,全講演終了後,総合ディスカッションを行った。講演としては,(1)生物多様性情報システムに関して,グローバルで有効な生物名登録の必要性 (2)陸域生態系と多様性に関して,森林及び高地生態系における多様性の表現−温室効果ガスの役割− (3)インドネシアの森林火災に関連にして,インドネシアの森林と土壌火災−生物多様性保全への脅威 (4)東カリマンタンでの自然火災−火災の原因と低地フタバガキ森林に対する火災撹乱の影響。以上のような内容の講演があった。本ワークショップには,国内外から約40〜50名の研究者が参加した。 3)砂漠化関連シンポジウム・ワークショップ
 1999年3月1日に砂漠化研究国際シンポジウム(荒れゆく大地の声に耳を傾けてみませんか)を,3月2日にアジアにおける砂漠化対処のための地域共同研究ワークショップを,笹川記念会館(東京都港区三田)において,環境庁と共催した。
 3月1日のシンポジウムは公開であり,(1)砂漠化防止条約に基づいた干ばつ・砂漠化対策研究の優先対処とその目標について,基調講演があったほか,(2)日本における砂漠化対策への取組 (3)日本における「砂漠化・土地荒廃研究の現状」,が発表された。日本における砂漠化研究として,(4)ランドサットデータを用いた中国内モンゴル自治区奈受畠での砂漠化モニタリング (5)鳥取大学乾燥地研究センターアリドドーム (6)西オーストラリア州カルグーリ地域植生回復研究,などの発表が,また海外における砂漠化研究として (7)中国の砂漠化防止への着手 (8)砂漠化の人間的側面:条約はどのような役に立つか?が発表された。このほか,(9)日本のNGOにおける砂漠化対策の試み (10)日本における砂漠化研究の展望,についての発表がなされた後,砂漠化研究の展望「新たなパラダイムを求めて」というテーマで,活発なパネルディスカッションが行われた。本シンポジウムには,外国人を含め,256名が参加した。
 3月2日のワークショップは,実際の地域共同研究の推進に向けた発表・討論が行われた。基調講演として,(1)砂漠化対処条約に基づく地域協力及び科学技術の役割 (2)アジア・太平洋地域における砂漠化制御に関する地域ネットワーク(DESCONAP)における活動,がなされた。アジアにおける地域的な砂漠化モニタリングと評価のネットワーク(TPN1)のセッションでは,(3)中国と日本の砂漠化に対処する共同研究に関する可能性 (4)アジアにおける砂漠化モニタリングと評価に関するTPNの設立 (5)我が国の関連分野の研究状況の報告,の発表がなされた。アグロフォレストリー及び土壌保全(TPN2)に関するセッションでは,(6)TPN2の検討状況の報告 (7)我が国の関連分野の研究状況の報告,について発表された。砂丘の固定化を含む放牧地管理(TPN3)のセッションでは,(8)TPN3の検討状況の報告 (9)我が国の関連分野の研究状況の報告,について発表された。最後に総合討論がなされ終了した。本シンポジウムには,外国人を含め,50名が参加した。
 4)地球環境保全と土地利用検討会(LU/GEC)
 本検討会は,当センターデータベース部門の土地利用に関するデジタルマップ整備事業と平成10年度開始の推進費研究プロジェクト「中国における土地利用長期変化のメカニズムとその影響に関する研究(LU/GEC−II)」との連携,整合性を図り,両者の効率的推進を目指して設置された。数回にわたる検討会を行い,「東アジアにおける土地利用変化研究のための基礎的情報とモデルに関する国際ワークショップ」(1999 NIES Workshop on Information Bases and Modeling for LUCC Studies in East Asia)を1999年1月25〜27日に所内大山記念ホールにおいて開催した。本ワークショップは,東アジアにおける土地利用・被覆変化に関する予測とその影響評価を目指し,重要研究項目のレビューを通じて研究の方向性を明らかにすることであった。
 土地利用・被覆変化にかかわる農業・環境影響等について,研究に必要なデータの所在や共同研究を通じた可能性について新たな情報も得られ,有意義なワークショップとなった。また,本シンポジウムには国内外から約80名の参加者があった。なお,今回のワークショップにおいて報告された内容は英文のWorkshop Proceedingsとして1999年8月頃に出版する予定である。
 5)地球環境研究総合推進費関連研究
 地球環境研究センターでは,地球環境研究総合推進費の各分野ごとの研究代表者が集まり,課題ごとの連絡を密に取り合うことにより,各分野の効率的な推進を図ること,また,各課題の進捗状況を把握し,地球環境研究等企画委員会に報告することを目的に,研究連絡会議を毎年開いている。本年度も7〜8月にかけて開催し,各分野の課題代表者や環境庁地球環境部の担当者とともに,今後の研究の方向性を含め,活発な議論が行われた。
 6)その他
 (1)IGBP活動支援
 日本学術会議地球環境連絡委員会IGBP専門委員会LUCC小委員会幹事として活動を行った。JAPAN−
LUCCのニュースレターや国内ワークショップの開催を通じて,日本でのLUCC関連の研究の現状把握や国外機関との意見交換会を通じての連絡調整等を行っている。また,地球変動の解析・解釈・モデリング(GAIM)
小委員会に参画し,その企画運営,日本でのGAIM関連の研究現状把握,調整等を行っている。
 (2)WCRP/SPARC水蒸気アセスメント参加
 SPARC Water Vapor Assessment(WAVAS)報告書を1999年中にまとめるべく,SPARCの活動が進行中である。このアセスメントは,地球大気にとって最も重要な温室効果ガスである水蒸気を対象とし,上部対流圏(UT=Upper Troposphere)と下部成層圏(LS=Lower Stratosphere)を対象領域としている。
 UT/LSの水蒸気の挙動は,気候変動に密接な関連があり,2001年に出版される第3次IPCC報告書(TAR=Third Assessment Report)への全球分布の定量的な情報を提供することを目指してWCRP/SPARCとしての活動を支援した。
 (3)IHDP活動支援
 ・産業転換に関する東アジアワークショップの開催
 IHDPの3つのコアプロジェクトのひとつである産業転換については,1998年7月に北九州市において開催された東アジアワークショップを支援し,東アジア地域における産業転換の研究課題をまとめた。世界各地で開催されたワークショップの成果を踏まえ,1999年2月にオランダにおいて産業転換に関する国際的な公開科学会合が開催され,産業転換研究で進めるべき研究課題について審議され,転換プロセス,分析の方法とツール,管理・責任・制度要因,都市と産業転換,エネルギー,食料,情報と通信が決定した。
 ・第三回HDP公開会合の準備
 1999年6月に開催される第三回HDP公開会合の公開会合の企画,論文募集などの支援を行った。また,日本学術会議HDP専門委員会に参画し,各分野の学会によってバックアップされた小委員会の設置や活動を支援するとともに1998年12月には,日本学術会議においてISPCの委員や各小委員会の関連研究者を一堂に会した国際ワークショップを開催して,今後の内外のHDP研究の動向について討議した。

2 地球環境研究の国際的な組織化


(1)東アジア地域における地球変動研究の地域ネットワーク計画委員会(TEACOM)
 IGBP/STARTにおいて,地球規模の変動に関する地域研究所のネットワークづくりを行うため,TEACOMが創設された。平成10年度も,APNと解析・研究・研修システム(START)本部から支援を受けて,土地利用・被覆変化研究の研究ネットワーク(LUTEA)のもとでの土地被覆マップに関するトレーニングワークショップがモンゴルで,アジア大陸スケールの気候変動モデル研究のネットワークのための公開の国際会合が北京で開催され,前者に関しては当センターも企画の段階から参画した。平成10年度はTEACOM会合は開催されなかったが,平成11年度は神戸で第8回会合と国際シンポジウムを開催することになった。
(2)アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)
 APNは,世界を三つの地域に分けて,それぞれの地域の中で地球環境変動研究のネットワーク化を図る構想の一環である。1996年3月から本格的に活動を開始し,複数の研究ネットワークの立ち上げのためのワークショップを支援し,アジアモンスーンエネルギー水循環観測研究計画(GAME)の活動も支援している。1999年1月にはジャカルタでAPN科学計画委員会会合,3月には神戸で第4回政府間会合が開催された。政府間会合には当センターからも参加した。政府間会合では,平成11年度の活動方針・内容が承認された。その中にはTEACOMからの提案も含まれている。当センターはAPN国内委員として,APN事務局を補佐する立場で基本方針や平成11年度の活動方針案の作成に協力した。
 なお,APN事業には兵庫県も積極的に取り組むこととなり,APN事務局が今秋から神戸に移され活動が強化される。
(3)インドネシア森林火災に関する研究者ネットワーク(SNIFF)
 平成9年度,インドネシアのスマトラおよびカリマンタン島で発生した森林火災は,大規模,長期間であり,多量のばい煙が国境を越え,インドネシアのみならず隣国にも健康被害や産業活動への影響等を引き起こし,大きな社会問題となった。一方,地球環境保全の観点からすれば,この森林火災は大気化学,気象,地球温暖化,熱帯林保全,生物多様性等の分野に多大な影響を与えると考えられ,地球規模の視点から監視・研究する戦略について検討する必要が生じた。このため,関連研究者,関係省庁等の情報交換,意見交換を継続することが重要であるとの認識から,環境庁地球環境部と協議し,当センターが事務局となり,メーリングリストを作成した。本ネットワークではインドネシアを中心に,森林火災の状況や研究関連情報ばかりでなく,社会情勢等を含め,関連研究者が実際に研究を行う上で有用な情報交換がなされている。

3 IPCCへの貢献
 IPCCでは,現在第3次評価報告書と特別報告書が進んでおり,地球環境研究センターの研究者も執筆者(リードオーサー)に選出され,関連分野において作業を分担し,貢献した。
(1)第3次評価報告書
 IPCCでは2001年2月をめどに第3次評価報告書の作成にとりかかった。1998年7月のスコーピング会合(ドイツ,バドミュンステライル)で目次案と執筆者を決定し,各国政府のコメントを受けて修正を加えた後,同年10月の第14回全体会合(スイス,ジュネーブ)において,目次案と執筆者を決定した。日本から選出された執筆者は第一作業部会6名,第二作業部会7名,第三作業部会11名の計24名である。国立環境研究所からは,第二作業部会に2名,第三作業部会に1名の執筆者(うち2名は執筆責任者)選出された。1998年12月から1999年1月にかけて,3つの作業部会ごとに全執筆者を一堂に会したリードオーサ会合が各地で開催された。その後,各リードオーサは来年度内をめどに報告書の原稿(0次原稿)を作成した。次年度以降,専門家や政府のレビューを行いながら,報告書案が作成される予定である。
(2)特別報告書
 1997年12月に開催された温暖化防止会議においては,各国の温室効果ガスの削減量に森林の吸収量を含めるかが議論となり,森林の吸収量についてはIPCCに科学的知見をまとめることを要請した。これを受けてIPCCは,森林吸収源と土地利用に関する特別報告書を作成することとし,第3次報告書とほぼ時期を同じくして,報告書目次の決定執筆者の選出が行われた。年度内をめどに報告書原稿が作成され,次年度以降専門家や政府のレビューを受けたのち,2000年5月のIPCC全体会合で採択される予定である。排出量シナリオに関する特別報告書の作成も進捗しており,統合評価モデル(AIM)が排出量シナリオ作成と評価のためのモデルの一つとして選定された。排出シナリオの特別報告書については,専門家や政府のレビューを経て,2000年3月の関連作業部会会合で審議,採択される予定である。

4 総合化研究
 地球環境研究総合推進費の中の「総合化研究」については,当センターが中心となって推進しており,平成10年度は,「持続可能な国際社会に向けた環境経済統合分析手法の開発に関する研究」,「地球温暖化問題にかかわる気候数値モデルと影響・対策モデルの統合化に関する予備的研究」及び「インドネシア森林火災の地球環境に与える影響及び生態系修復のための予備的研究」を実施した(詳細については,2.3.10,2.3.12参照)。


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