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特別研究
7.廃棄物埋立処分における有害物質の挙動解明に関する研究(初年度)
〔担当者〕
| 地球環境研究グループ |
: |
森田昌敏・安原昭夫・堀口敏宏
吉永 淳・西川雅高 |
| 化学環境部 |
: |
中杉修身・白石寛明・山本貴士
白石不二雄 |
| 客員研究員 |
: |
21名 |
| 下線は研究代表者を示す |
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
廃棄物は人間活動の増大・物質文明の発達に伴い,発生量が増大するとともにそこに含まれている化学物質についても多様な広がりを見せており,今後の人間活動の根幹に係る緊急かつ重大な環境問題となっている。廃棄物の焼却処理については,対策技術の進歩により解決の糸口が見えつつある。一方,廃棄物の埋立処分については浸出水中に含まれる化学物質や大気中に揮散していく化学物質についての実態は明らかにされたが,それらの化学物質がどのような機構で溶出あるいは生成しているのか,生物への影響がどの程度であるのか,という点についてはほとんど不明である。本特別研究では埋立処分に的を絞り,埋立廃棄物に含有される化学物質と浸出水に溶出してくる化学物質を調べて,埋立地での化学物質の挙動を解明するとともに,埋立地からの浸出水が生物に与える影響を明らかにするための手法を開発する。
〔内 容〕
廃棄物埋立地での化学物質の挙動解明と生物への影響評価手法の開発を目指し,次の各サブテーマを研究対象とした。
課題1 埋立廃棄物中の有害化学物質の簡易モニタリング法の開発
有機成分を対象として,(1)廃棄物から加熱気化する物質をGC/MSで分析し,同定・簡易定量できるシステムを構築する。(2)廃棄物から溶出する成分を迅速に同定・定量できるシステムを構築する。
課題2 埋立地における有害化学物質の挙動解明に関する研究
現在までの研究で,埋立地浸出水中から高濃度あるいは高頻度で検出された化学物質を中心に研究を進める。(1)ホウ素の起源を探るとともに,モデル実験ならびに実地調査の結果から,ホウ素の排出・溶出に影響する因子を明らかにする。(2)有機リン酸トリエステルなどのプラスチック添加物,1,4−ジオキサン(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の指定化学物質),アルキルフェノールやビスフェノールAなどのフェノール類を中心に,これらの起源・生成機構・溶出挙動を明らかにする。
課題3 埋立処分に起因する有害化学物質の生物影響評価に関する研究
化学分析で検出できるのは含有成分のごく一部であり,大半の有機成分については不明のままである。このような状態で浸出水の生物影響を予測するためにはバイオアッセイモニタリングが有効である。浸出水の簡易スクリーニングのために,細胞毒性と遺伝毒性を中心とした生物影響評価システムの構築を目指す。
〔成 果〕
課題1における成果を(1)と(2)で,課題2における成果を(3)と(4)で,課題3における成果を(5)で記載する。
(1)廃棄物中に含まれる化学物質の簡易分析法の開発
廃棄物を小片に破砕してステンレス管(5mmφ×65mm)に充てんし,90度で10分間加熱し,発生する揮発性成分をGC/MSに導入して分析するシステムを作り上げた。まず有効性を調べるために,廃プラスチック類を試料として分析した結果,芳香族炭化水素類,石油系炭化水素類,フタル酸エステル類,有機リン酸エステル類,ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエンが検出されてきた。今後はサンプルを他の種類に拡げて,浸出水中の化学物質との関係を調べていくとともに,定量性についての検討を行う。
(2)浸出水中の化学物質の分析法に関する検討
従来は液々抽出で浸出水中の化学物質を抽出していたが,有機溶剤の使用量を減らし,操作を簡便化することを目的として,固相抽出による検討を行った。有機リン酸エステル類について回収率を調べた結果では,ほぼ定量的な回収を実現できた。
フェノール類については,液々抽出法と誘導体化法を組み合わせて分析する方法を検討した。回収率,感度とも浸出水に適用するには十分満足できる結果であったが,液々抽出操作に時間がかかることとジクロロメタンの使用を避ける観点から,今後は固相抽出を利用する方向で分析法の再検討を行う必要がある。
(3)浸出水中のホウ素の起源に関する研究
一般廃棄物の埋立処分場(管理型)2カ所で定期的に浸出水をサンプリングし,ホウ素濃度の経時変化を調べた。
同時に,雨水,処分場脇の沢水,処理水などもサンプリングして分析した。どちらの浸出水とも高濃度(0.63〜4.4mg/lと0.64〜1.6mg/l)のホウ素を含んでおり,雨水(ホウ素濃度0.0002〜0.0053mg/l)が埋立層を通過する間にホウ素濃度が1000倍程度に上昇することがわかった。また,現行の水処理ではホウ素を除去できないことも判明した。次に,浸出水中のホウ素が埋立廃棄物中のどの成分と関係しているのかを,重回帰分析で調べた。廃棄物をプラスチック,ゴム,金属,ガラス,建築廃材,燃え殻(焼却灰),汚泥,紙・木,繊維,鉱滓,ばいじん,残土に分類して,重回帰分析を行った結果,有意な変数は燃え殻とプラスチックであった。前年度の解析では燃え殻がホウ素の重回帰式に選択されており,今回の結果と類似していることから,焼却灰がホウ素の起源である可能性が高い。焼却灰やプラスチック類などからのホウ素の溶出を調べたところ,いくつかの焼却灰試料から高濃度のホウ素の溶出が観察された。
(4)モデル埋立実験における有機リン酸エステル類とフェノール類の溶出挙動
一般廃棄物焼却炉から採取した焼却灰71.6kgと産業廃棄物処理場で採取した廃プラスチックを細断したもの(7741g)を混合してガラス製円筒(直径30cm,高さ90cm)に充てんした。埋立実験のコントロールは前述の焼却灰(74.3kg)とテフロンチップ(8056g)を混合して同様のガラス円筒に充てんしたものを用いた。毎週2回,1500mlの蒸留水をゆっくりと円筒上部に注いだ。円筒の下部から滴下してくる浸出水をガラスビーカーで集め,化学分析を行って有害化学物質の溶出挙動を解析した。浸出水のpHに関しては,廃プラ埋立とコントロール埋立では大きな差が観察された。コントロール埋立での浸出水のpHは焼却灰の溶出液のpHと似た値(11.5付近)であったのに対し,廃プラ埋立ではpHが9〜10と低くなっていた。
有機リン酸エステル類については,リン酸トリス(2−クロロプロピル)とリン酸トリス(2−ブトキシエチル)がかなり高濃度で溶出してきた。リン酸トリス(2−ブトキシエチル)では積算溶出量が直線的に近い形で増加しており,長期にわたって溶出する可能性が高い。これらの有機リン酸エステル類は埋立地浸出水中から高濃度・高頻度で検出されており,今回の実験結果とよく一致していることから,埋立地浸出水中の有機リン酸エステルの多くは廃プラスチックから溶けだしてきたものと思われる。フェノール類ではフェノール,クレゾール,ビスフェノールAの溶出が顕著であった。フェノール類の溶出挙動はリン酸エステルのそれとは少し違っており,概ね200日前後で溶出が低下する傾向であった。埋立実験に使用した廃プラスチックに含まれていたTCEP,TCPP,TBEPおよびビスフェノールAのそれぞれ1.4%,4.6%,0.8%,1.5%が溶出した。
(5)廃棄物埋立地浸出水及び放流水の毒性モニタリング
一般廃棄物埋立処分場(一廃処分場)1カ所と産業廃棄物埋立処分場(産廃処分場)2カ所の浸出水と放流水を定期的に採水して,マイクロトックス試験と改良発光細菌遺伝毒性試験(GABB)で毒性を調べた。細胞毒性の指標であるマイクロトックス試験では,すべての試料で抑制作用の量−反応関係が見られた。一廃処分場の浸出水は産廃処分場の浸出水よりも弱い細胞毒性を示したが,塩素処理を行うと有機塩素化合物が生成するために細胞毒性が強くなった。産廃処分場の浸出水の細胞毒性は強いが,ばっ気処理で毒性が減少した。一方,遺伝毒性を調べるGABBでは次のような結果が得られた。一廃処分場の浸出水では多くの場合,弱い遺伝毒性が観察されたが,塩素処理では遺伝毒性が増加する傾向を示した。産廃処分場の浸出水では強い遺伝毒性が観察されることが多かったが,ばっ気処理をほどこした放流水では遺伝毒性が弱まる傾向にあった。季節的に見ると,微生物活動が活発になる夏季では遺伝毒性が高くなる傾向を示した。
マイクロトックス試験による細胞毒性の結果とGABBによる遺伝毒性の結果の間に相関性は認められなかった。また,塩素処理が毒性を増加させ,ばっ気処理は毒性を低減させることが認められた。
〔発 表〕B−171〜173,177, 178, 180, D−18〜20,
24,b−279, 280, 283, 284, 286〜292, d−11,
17, 18, 41, 42
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