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環境研究総合推進費による研究(地球環境研究)


11.先駆的地球環境研究


〔担当者〕

社会環境システム部 田村正行・清水 明・山形与志樹・趙 文経
   下線は研究代表者を示す

〔目 的〕
 植生の種組成分布やバイオマス分布など陸域生態系の空間構造は,地球規模での環境の状態を評価する上で最も基本的なパラメータの一つである。その変化は,熱帯林の減少や砂漠化,生物多様性の減少など地表面の変動に直接的にかかわる問題においてはもちろんのこと,地球温暖化などのより広域的な地球規模での環境変動に対しても地表面での物質,エネルギー収支の変化を通じて大きな影響を及ぼす。このため,生態系の空間構造とその変化を全地球レベルで計測,評価することが地球環境問題に取り組む上での最も重要な課題の一つとなっている。しかしながら,局所レベルから全地球レベルまでを対象として,生態系の構造を計測し,その動態を評価することは現時点では極めて難しく,いまだに十分なデータ,知見が得られていないのが実状である。本研究は,陸域生態系の最も基本的な構成要素である植生に焦点を合わせ,その三次元構造とその変動を計測するための観測システムを構築することを目的とする。一本の樹木のレベルから全地球レベルでの植生分布までを対象とするため,地上調査による方法から航空機,人工衛星を利用したリモートセンシング手法までの多段階観測手法 を開発し,さらに,その動態を評価するための構造変動モデルを開発する。

〔内 容〕
 
陸域生態系の変化を把握しその地球環境における役割を解明する上で,リモートセンシング画像データ,特に人工衛星データは強力な武器である。人工衛星を利用することにより広域の地表面を定期的に観測し,現在起こりつつある変化を実証することが可能である。また,地球環境を駆動する生物地球化学的プロセスをモデル化する際に,衛星データを入力データあるいは検証データとして用いることにより,精度の高いモデル開発が可能になる。さらに,大陸レベルで二酸化炭素など温暖化ガスの収支を推定する上で,陸域生態系の分布や変動に関する衛星データは不可欠である。
 本研究では,種々の衛星センサを用いて植生の種類,分布,バイオマス,及び季節・経年変化等を計測する手法の開発を行う。本年度は,リモートセンシング画像データの画像要素(ピクセル)から地上分解能以下の情報の抽出を行うサブピクセルカテゴリ検出手法についての検討,レーザープロファイラを用いた樹高計測実験,及び地上検証データ取得のためのイメージングスペクトロメータの開発を行った。

〔成 果〕
(1)人工衛星データを利用した陸域生態系の三次元構造の計測とその動態評価に関する研究
 1)リモートセンシング画像データにおけるサブピクセルカテゴリの検出方法の検討
 リモートセンシングで得られる多重分光画像を利用した土地被覆分類を行う際,これまでは最尤法,最短距離法などによる教師付き分類手法が一般的に用いられてきた。これらの分類手法は,個々のピクセルに対して特定のカテゴリーを一意的に割り当てるため,ピクセルサイズ以上の空間的な広がりを持つカテゴリを判別する上では有効である。しかし,ピクセル内に不特定多数のカテゴリが混在し,かつそれらの存在比が空間的に連続して変化しているような場合,観測データの各ピクセルは,そこに含まれる複数のカテゴリの分光特性が合成されたミクセルとなっているため,これらを特定のカテゴリに対応付けることは困難である。
 そこで,本研究では,不特定多数のカテゴリがサブピクセルカテゴリとして混在する多重分光画像において,着目する一つのカテゴリ(解析対象カテゴリ)のトレーニングデータのみを用いて,その他のカテゴリーの分光特性は未知としたまま,画像中の各ピクセルから解析対象カテゴリを自動的に検出し,その存在比を推定する手法について検討を行った。用いた画像データは航空機搭載センサCASI(Compact Airborne Spectral Imager)によって釧路湿原で取得したデータである。ハンノキを解析対象カテゴリとし,サブピクセルカテゴリ検出手法によって各ピクセル内の存在比を推定した結果,ピクセル内に存在する他のカテゴリの種類が少ない場合には,良好な検出精度を持つことが確かめられた。
 2)レーザープロファイラを用いた樹高計測実験
 リモートセンシングを用いて森林のバイオマスを推定する際に,最も基本的な構造パラメータは樹高である。そこで本研究では,航空機搭載のレーザープロファイラを用いて樹高の面的分布を計測する手法について検討を行った。レーザプロファイラとは,航空機搭載のスキャン型レーザ測距儀である。ディファレンシャルGSPとINSにより航空機の位置と姿勢を測定し,それとレーザによる測距結果を統合して,地表面の形状や森林の樹高を測定するものである。測定に際してのレーザ光のビーム幅は距離1,000mでも約30cmと非常に狭いため,森林では樹冠の形状とともに樹冠を通して地表面の形状も計測することができる。テストサイトとしては北海道大学苫小牧演習林を選定し,平成10年11月6日に計測実験を実施した。レーザープロファイラの測定データを処理した結果,2mのメッシュサイズで樹高及び地表面の形状の分布図を得た。この結果を,地上でゴンドラを用いて測定した樹高データ,及び50mメッシュのディジタル標高データと比較した結果,良好な測定値が得られていることが確かめられた。今後は樹高データからバイオマス分布の推定を行う予定である。
 3)地上検証用イメージングスペクトロメータの開発
 イメージングスペクトロメータとは,観測対象の画像を多数のスペクトルバンドに分けて取得することのできる装置のことである。リモートセンシングの地上検証に用いられる一般のスペクトロメータは,観測視野内の平均的なスペクトル特性が得られるのみであるが,イメージングスペクトロメータを用いると,観測視野内のスペクトル特性の空間分布や,個々の構成要素のスペクトル特性を詳細に調べることができる。本研究では,音響光学素子であるAOTF(Acousto−Optic Tunable Filter)
とCCDカメラを組み合わせることにより二次元イメージングスペクトロメータを開発した。本装置を用いて植生の反射率を測定し,リモートセンシングの地上検証データ取得に有効であることを確かめた。ただし,本装置は試作の段階であり,迷光,色収差,波長による画像位置のずれ等,改善すべき点があることも明らかになった。
〔発 表〕C−21,22, c−20




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