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経常研究


6.大気圏環境部


1)光イオン化質量分析法によるクラスター分子及びフリーラジカルの研究
〔担当者〕 鷲田伸明
〔期 間〕 昭和60年度〜平成10年度(1985〜1998年度)
〔目 的〕 光イオン化質量分析法はフリーラジカルの直接検出や,クラスターの分子内イオン反応の研究に適している。本研究は光イオン化質量分析法を用いて,大気中の光化学反応かかわりの深いフリーラジカル反応の速度・機構の研究を行う。
〔内 容〕 光イオン化質量分析計の検出感度を従来の常識の100倍に向上することに成功した。そのために,フリーラジカル反応研究に新しい展開が可能となった。本年度はNOxソースの一つであるアンモニアの酸化反応や大気中の硫黄化合物の代表であるH2Sの酸化反応速度と反応機構に関する研究を行った。
〔発 表〕 F−52〜54,f−109, 112

2)極渦の変動に関する基礎的研究
〔担当者〕 中根英昭
〔期 間〕 平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕 モントリオール議定書とその改訂を中心とした国際的な取り決めに基づく協力によって,フロン等から放出される塩素の成層圏濃度は2000年頃をピークとして徐々に減少することが見込まれるに至った。成層圏オゾン層が成層圏塩素濃度に追随して回復するか否かを決定する大きな要因の一つに極渦の強度がある。この数十年間の極渦の変動を解明することが本研究の目的である。
〔内 容〕 NCEP等の三次元気象データなどから,極渦の強度を記述する手法を開発し,極渦の強度がこの数十年間に系統的に変化するか,どのような年々変動が見られるかについて検討する。本年度は,NCEP再解析データから渦位を計算するとともに,年ごとの極渦の特徴を抽出する手法の開発を開始した。
〔発 表〕 f−62,67

3)大気中における物質輸送・循環の研究
〔担当者〕 神沢 博
〔期 間〕 平成10〜19年度(1998〜2007年度)
〔目 的〕 地球大気中における物質の輸送および物質循環の研究を行う。温室効果気体,オゾンおよびオゾン破壊関連気体,エアロゾル等の大気微量成分の物質循環は,気候変動,地球環境にとって重要な要素である。
〔内 容〕 温室効果気体であり,かつ,オゾンおよびオゾン破壊関連気体である亜酸化窒素,メタン,水蒸気等の長寿命の大気微量成分につき,主に極域成層圏を対象として,人工衛星,地上観測等によって得られたデータを解析し,また,全球気象データを解析し,これらの物質循環の様相を明らかにしうるデータ質をそれらのデータが備えているかどうかの検討を行った。
〔発 表〕 F−4,7, 9, 12, 14, 17, f−13, 17, 23, 24

4)熱帯積雲対流活動の地球規模効果についての基礎的研究
〔担当者〕 高薮 縁
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 熱帯域積雲対流活動は,エネルギー・水の輸送過程を介して地球規模の大気循環及び放射過程に影響を及ぼす。本研究では,個々には小スケールである積雲対流活動と,グローバルスケールの現象とが,いかなる機構で結合するかを解明することを目的とする。
〔内 容〕 熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載降雨レーダーデータを処理し,熱帯域全域における降雨特性の解析を行うことができるようになった。初期解析の結果,陸域においては,大規模の擾乱の通過には比較的影響されない対流性の日変化降雨が卓越するのに対し,海洋上では,対流性降雨と層状性降雨が組織化された,数千km・数日〜数十日のスケールの大規模降雨システムに伴う降水が圧倒的に多いことが示された。
〔発 表〕 F−28,f−48, 51〜53, 55

5)低気圧性渦におけるラグランジュ的流体運動の数値的研究
〔担当者〕 菅田誠治
〔期 間〕 平成8〜11年度(1996〜1999年度)
〔目 的〕 対流圏中緯度における大気塊の南北運動を調べると,多くの南北運動は数日以下の短い時間スケールを持つ単振動的運動であり,より長い時間スケールで見て実質的な南北物質輸送が活発に起きるのは限られた経度帯であり,かつその位置は大陸性気団の位置と強い関係があることがわかっている。本研究では,低気圧のライフサイクルおよび大陸性気団と活発な経度帯との関係を調べることを目的とする。
〔内 容〕 中緯度域での高低気圧周辺でのトレーサー輸送を調べた。日本域冬季の南北輸送と東西輸送の関係について調べたところ,冬型の気圧配置が強い時期は実質的南北輸送が強いが東西輸送は弱い。一方移動性高低気圧が活発な時期には東西輸送が強いが南北輸送が弱い。実際のトレーサー輸送はこの東西南北の両者の輸送を交互に受けているイメージで起きていることがわかった。
〔発 表〕 F−17

6)陸面大気間の水循環的相互作用の研究
〔担当者〕 江守正多
〔期 間〕 平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕 陸上の降水がどのような条件により規定されているかを明らかにすることは,気候変動における降水量予測などと密接に関連しており重要である。この問題には,陸面の状態が降水により変化し,逆に降水過程が陸面の状態に依存するという相互作用が重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では,陸上の乾湿の状態と降水過程との相互作用が陸上の降水量をいかに規定しているかを解明することを目的とする。
〔内 容〕 様々な空間スケールと複雑さを持つ大気陸面システムの数値モデルを用いた実験を行い,土壌水分量とその空間分布が陸上の降水過程に及ぼす影響,降水過程による土壌水分の変動,およびその結果として形成される相互作用について解析した。これに伴い,陸面の乾湿の状態を適切に表現しうる陸面過程の数値モデルの構築,大気モデルによる降水過程の再現性の検証とモデルの改良などを行った。
〔発 表〕 F−2,3, f−7〜11

7)大気・海洋の大規模運動の乱流的性質に関する研究
〔担当者〕 野沢 徹
〔期 間〕 平成10〜13年度(1998〜2001年度)
〔目 的〕 大気・海洋の大規模運動は本来3次元空間内の運動であるが,地球が自転していることと流体が安定成層していることにより,近似的に水平2次元の乱流運動とみなすことができる。本研究では,大気・海洋の大規模運動が本質的に持つ2次元乱流的な特徴を調べ,それらが気候システムにおいて果たしている役割について解明する。
〔内 容〕 全球3次元の大気大循環モデルを様々な解像度で数値積分し,モデル大気中の大規模場に見られる2次元乱流的な構造について解析を行った。得られた結果を水平2次元の球面非発散モデルによる結果と比較し,両者の差異について考察を加えた。
〔発 表〕 f−7

8)エアロゾルの気候影響評価に関する研究
〔担当者〕 日暮明子
〔期 間〕 平成10〜14年度(1998〜2002年)
〔目 的〕 エアロゾルの気候影響の重要性が認識されはじめてきている。しかし,その気候影響評価に十分な全球でのエアロゾル特性は明らかになっていないのが実状である。本研究では,衛星データを利用し,全球でのエアロゾル光学特性の把握を行うとともに,得られた結果からエアロゾルの気候影響評価を試みる。
〔内 容〕 衛星搭載放射計の可視・近赤外データによるエアロゾルの光学的厚さと粒径分布指標の推定アルゴリズムを,NOAA/AVHRRセンサーに適用し,1989年から1993年までの期間の全球解析を行った。光学的厚さ,粒径分布指数ともに全球規模でピナツボ火山起源エアロゾルの影響を強く受け,その影響はおよそ2年におよんでいた。しかし,対流圏エアロゾルに関しては,センサー劣化の影響がみられ,センサーの検定定数の検討の必要性が示された。
〔発 表〕 F−42〜44,f−90〜95

9)反応性大気微量成分の動態に係わる生成・変換過程の研究
〔担当者〕 酒巻史郎
〔期 間〕 平成5〜11年度(1993〜1999年度)
〔目 的〕 対流圏大気中に存在する様々な微量成分のうちで炭化水素や窒素酸化物は,太陽光の作用によって一連の光化学反応を引き起こし,対流圏オゾンや酸性雨原因物質の生成に密接に関係する。本研究ではこれら反応性気体である炭化水素や窒素酸化物の動態解明の基礎的知見を得るために,これらの大気中での分布を調査し,その生成・変換過程について検討する。
〔内 容〕 バックグランド地域での炭化水素や窒素酸化物の測定を行い,それらの濃度分布とその変動についての基礎的知見を蓄積した。また,それらの濃度変動の原因を解明するために,大気の動態や発生源地域との関係について検討した。
〔発 表〕 f−26〜28

10)FTIRを用いたラジカルの反応機構に関する研究
〔担当者〕 猪俣 敏
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 大気中においてラジカルは極めて反応性が高いために様々な反応に関与しており,このラジカル反応の機構を明らかにすることは,大気中での様々な現象を理解するうえで必要となる。本研究においては,光化学チャンバーを用い,検出にFTIRを用いてラジカル反応の機構を解明することを目的とする。
〔内 容〕 炭化水素/NOx/空気+hν系において温度変化がオゾン生成にもたらす影響に注目した。炭化水素としてプロピレン,トルエン,α−ピネンを用い,温度を30度,70度と変化させたところ,三者で顕著な違いが見られた。温度が上昇するにしたがって,オゾン生成の速度が速くなる点は共通であったが,生成するオゾンの最大濃度はプロピレンではほぼ変化しないのに対して,トルエンでは温度が上昇すると減少し,α−ピネンでは増加する傾向があることがわかった。
〔発 表〕 F−50,f−1, 2, 110, 111

11)レーザー分光法や質量分析法による大気化学に関わるラジカル反応の研究
〔担当者〕 古林 仁
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔目 的〕 大気中で起こる様々な化学反応においては,種々のラジカル化学種が反応機構・速度を支配している場合が多い。本研究では,酸素原子+フッ素置換エチレン反応系等で見出されたレーザー誘起蛍光スペクトルの発光種帰属に関する問題(CH2CFOか,あるいはFCOか)に決着をつけることを目的とした。
〔内 容〕 酸素原子+フッ素置換エチレン反応系と同じレーザー誘起蛍光スペクトルを与えるCH3CFOの光分解を利用し,重水素化したCD3CFOを用いてスペクトルの測定を行った。その結果,スペクトルにH/D同位体シフトが明瞭に観測されたこと,基準振動数に対するH/D同位体効果が理論計算から予想される程度のものであったことから,発光種がCH2CFO/CD2CFOであると結論できた。
〔発 表〕 F−47,f−109, 112

12)静止軌道衛星を利用したレーザー長光路大気微量分子監視システムのための狭帯域赤外波長可変レーザーの基礎的研究
〔担当者〕 杉本伸夫
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔目 的〕 人工衛星に搭載した分光計と地上から発射するレーザー光を用いた長光路吸収法による大気観測システムは,対流圏の種々の大気微量分子の観測に有効である。本研究では,このシステムを実現するために必要となる分光手法と狭帯域赤外波長可変レーザー手法について理論的および実験的検討を行う。
〔内 容〕 計測システムの実現のための課題を明確にするため,分光計測手法と必要なレーザーの仕様,技術的な可能性,達成される測定感度等の性能,科学的な要求について評価した。技術的な検討の結果,新しい赤外波長光源として半導体レーザーの一種である量子カスケードレーザーの利用の可能性が最も注目されることがわかった。
〔発 表〕 f−32

13)ミー散乱レーザーレーダーによるエアロゾルおよび雲の観測に関する研究
〔担当者〕 松井一郎
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 大気中エアロゾルの放射特性および雲の生成にかかわる二次的な効果に関する情報を得るためのレーザーレーダー(ライダー)観測手法および解析手法について研究する。
〔内 容〕 小型レーザーレーダーによるつくばにおける長期連続観測データを用いてエアロゾルの分布と雲の分布の関連について考察した。また,小型レーザーレーダーに偏光解消度測定チャンネルを増設し,偏光解消度も連続して観測できるよう改良した。多波長ライダーネフェロメーターによって,雲底付近の雲粒の径を遠隔計測する手法について,シミュレーション計算を行い有効であることを示した。
〔発 表〕 f−39, 44,103, 106

14)レーザー長光路吸収法によるフロン12の測定に関する研究
〔担当者〕 古閑信彦
〔期 間〕 平成10年度(1998年度)
〔目 的〕 地上の屋外の光路を用いたフロン12の長光路吸収測定について実験的研究を行い,測定感度を制限する雑音特性などを明らかにする。
〔内 容〕 炭酸ガスレーザーを光源として,約8km離れた地上のタワーに設置したレトロリフレクターを用いてフロン12の長光路吸収測定実験を行った。サンプルセルを用いてフロン12の有効差分吸収断面積を求め,信号の変動から測定限界を評価した。この結果,3分間の測定で10pptの測定感度を得た。また,長光路吸収法全般に共通するレーザービームの揺らぎや大気揺らぎなどの誤差要因を明らかにした。
〔発 表〕 f−37

15)大気中における微小粒子分散系の生成,時間発展および沈着に関する研究
〔担当者〕 福山 力
〔期 間〕 平成9〜14年度(1997〜2002年度)
〔目 的〕 微量大気成分から気相−凝縮相転移によりエアロゾル粒子や微小水滴が生成し,粒子−気体および粒子−粒子相互作用を経て沈着により除去される過程を調べ,多相系としての大気の物理・化学的特性を明らかにする。
〔内 容〕 深さ430mの立坑内に人工霧を発生させ,坑頂に連なる横坑に高分子吸水材の擬似葉を付けた模型樹木をおいて微小水滴沈着速度を測定したところ,約5cm/sという値が得られた。この値は重力沈降速度よりはるかに大きく,微小水滴沈着は慣性衝突によって支配されることが裏付けられた。
〔発 表〕 F−45,f−5, 96, 100

16)多相雲化学過程に関する基礎的研究
〔担当者〕 内山政弘
〔期 間〕 平成9〜14年度(1997〜2002年度)
〔目 的〕 雲の物理・化学特性および過程は大気中の様々な過程と深くかかわっている。例えば酸性物質の沈着,大気中の成分の酸化過程,大気放射過程などである。雲と大気中の他の成分(エアロゾルやガス)との相互作用を定量的に把握すること目的とする。
〔内 容〕 深度430mの立坑において上昇気流により人工雲を発生させ,坑底で凝結核を添加して雲生成の変化を観測した。本年度はとくに凝結核に界面活性剤を混入することにより微小水滴の表面張力を実質的に0としてその効果を調べた。その結果,界面活性剤は雲粒の濃度や大きさに顕著な影響を及ぼさないことがわかり,ラウール効果が雲生成過程においてあまり重要でないことが裏付けられた。
〔発 表〕 f−6, 99

17)モニタリングステーションにおける大気中のメタンと亜酸化窒素の連続観測
〔担当者〕 遠嶋康徳
〔期 間〕 平成9〜10年度(1997〜1998年度)
〔目 的〕 落石岬および波照間島にあるモニタリングステーションにおいて,温室効果気体であるメタンおよび亜酸化窒素の大気中濃度の長期連続観測を行う。得られた結果から,それらの大気中濃度の増加率や季節変動の様子を明らかにする。
〔内 容〕 波照間・落石におけるメタン濃度の1996年から1998年の間の平均増加率はそれぞれ年間5ppbと4ppbであった。一方,波照間の亜酸化窒素の平均増加率は同じ期間で年間0.66ppbであった。メタンの季節変動成分の振幅は波照間の方が落石に比べて大きかった。これは,波照間に流入する大気が冬季には大陸から夏季には太平洋からと明瞭に分かれることで説明できる。N2Oの変動には明瞭な季節変動が認められない。
〔発 表〕 f−56,58

18)大気中の温室効果気体に関する基礎的研究
〔担当者〕 高橋善幸
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔目 的〕 大気中に存在する温室効果気体の挙動を知るためには,その発生源あるいは吸収源が何処にどのくらいの大きさで存在しているのかという点を十分に把握する必要がある。本研究では,二酸化炭素とメタンの高精度な分析方法を確立し,その同位体分析を行うための手法を確立することを目的とする。
〔内 容〕 前年度作成した,大気二酸化炭素精製装置を用い,実際に大気試料から二酸化炭素を抽出・精製し安定同位体比の分析を行った。その結果,各場所での大気中の二酸化炭素の安定同位体比に明瞭な季節変動が観察された。また,季節変動の振幅が,各場所によって異なることが観察された。

19)地域気候モデルにおける土壌水分量の推定とその降水シミュレーションへのインパクト(奨励研究A)
〔担当者〕 江守正多
〔期 間〕 平成10年度(1998年度)
〔目 的〕 気候モデリングにおいて土壌水分をいかに取り扱い,いかに結果を検証するかは困難な問題である。Bouttier et al.(1993)はシミュレーション中で土壌水分量を人為的に調節することにより地表付近の温度,湿度から土壌水分量を推定する方法を提案した。本研究では,上記の方法で土壌水分量を推定し,この推定値を用いて地域気候モデルにおける土壌水分が東アジア域の降水のシミュレーションに与えるインパクトを調べる。
〔内 容〕 地表気温と湿度の土壌水分量への感度を見積もり,地表気温と湿度のバイアスから土壌水分量を調節する簡便な実験式を作った。土壌水分の調節により,地表気温のバイアスは±2K程度以内に,相対湿度のバイアスは±10%程度以内に押えることができた。推定された土壌水分分布を用いた場合と,土壌を全体に湿潤,乾燥にした場合とで地域気候モデル計算を行い,降水量分布を比較した。その結果,平野部での対流性の降水に土壌水分が重要であること,気候的に乾燥地帯になっているところでは土壌を湿潤にしても降水は増加しにくいことが示された。
〔発 表〕 F−2,3, f−9〜11

20)積雲パラメタリゼーションの改良が気候モデルに与える効果に関する研究 (奨励研究A)
〔担当者〕 野沢 徹
〔期 間〕 平成10年度(1998年度)
〔目 的〕 人為起源物質の増加に伴う気候変動を高い信頼性で予測するためには,予測に用いる気候モデルの信頼性を向上させる必要がある。モデルに含まれる物理過程のなかでも,降水過程は気候変動を支配する最も重要な物理過程の一つである。降水過程に伴う潜熱の解放・吸収は,大気の熱力学的な構造を支配するだけでなく,大気中に波動を励起することにより,大気大循環の駆動源にも成り得る。本研究では,気候モデルにおける降水過程を担う積雲パラメタリゼーションの検証および改良を行い,モデルによる気候変動予測の信頼性を向上させることを目的とする。
〔内 容〕 大気大循環モデルに導入されているArakawa−Schubertの積雲パラメタリゼーションの診断テストを行い,モデルによる予測と客観解析データ・観測データとを比較・検討した結果,モデルによる降水量が過大評価となっている領域では,実際には対流圏中・上層における水蒸気量が少ないことがわかった。このような領域では,積雲が周囲の空気を取り込む効果(エントレインメント)がよく働き,背の高い積雲対流は発達しにくいことが予想されるため,対流圏中・上層の平均的な相対湿度に応じて積雲中の質量フラックスを調整するように変更を加えた。修正後の積雲パラメタリゼーションを導入した大気大循環モデルを用いて気候再現実験を行い,積雲パラメタリゼーションの改良に伴って再現された気候がどのように変化するかを調べた結果,特に夏季の東アジア域における降水量分布が改善されることがわかった。
〔発 表〕 f−69

 


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