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経常研究


2.地域環境研究グループ


1)外因性内分泌撹乱物質に関する基礎的研究
〔担当者〕 森田昌敏
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 人間と外因性内分泌撹乱物質とのかかわりについて,社会地球科学的立場からの分析を試みる。
〔内 容〕 外因性内分泌撹乱物質が人口,食糧,資源,エネルギー,社会生活上の価値観等とどのようにかかわるかについての分析を加え,その持つ意味について考察する。
〔発 表〕 B−162

2)環境負荷低減のための都市規模と移動手段のあり方に関する研究
〔担当者〕 近藤美則
〔期 間〕 平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕 人が自動車等の交通手段を利用して移動することに伴って,地域規模および地球規模の環境に与えている負荷は非常に大きい。これら環境への負荷を低減するためには,移動目的を考慮しつつ現在の移動手段をその移動距離別に役割分担させ,効率的な利用を図る必要がある。そこで本研究では,経済的,社会的な障害を念頭に置きつつ地域の規模と利用目的に合致した移動手段およびその実現に必要な要件を見いだすことを目的とする。
〔内 容〕 研究の内容は,まず現在の移動手段の利用状況を移動目的とともに文献調査により収集・整理する。つぎに地域の規模別に必要な移動手段を提示するとともに,それの実現に当たっての問題点を整理する。そして移動手段の変更による環境負荷低減量について定量的評価を行うとともに,望ましい都市規模と都市のあり方についての検討を行う。
 本年度は,移動手段別の環境負荷原単位の推計および移動手段の利用状況について文献調査を行った。

3)都市域における大気汚染現象のモデル化に関する研究
〔担当者〕 若松伸司
〔期 間〕 平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔目 的〕 都市域における大気汚染と発生源の関連性を定量的に明らかにするために気象と反応を含んだモデルの構築を行う。これを基に大気汚染の経年変化や地域分布の特徴を把握することを研究の目的としている。
〔内 容〕 フィールド観測結果,大気汚染常時監視データ,発生源データ等を総合的に解析し,都市域における二酸化窒素汚染,光化学大気汚染,エアロゾル汚染などの二次生成大気汚染の特性を抽出するとともにこれらの特性を的確に予測・評価できるモデルを構築する。このモデルを用いて大都市地域における大気汚染の比較評価を行う。本年度はVOCの発生源モデルの検討,並びに東京首都圏地域とメキシコシティとの比較を行った。
〔発 表〕 B−191〜193, b−301〜305

4)沿道大気汚染の簡易予測手法に関する研究
〔担当者〕 上原 清
〔期 間〕 平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕 大都市における沿道大気汚染は,沿道周辺の建物が作り出す複雑な市街地気流の影響を受ける。本研究の目的は市街地気流分布とそれに及ぼす大気安定度の影響を温度成層風洞を用いた実験によって明らかにし,さらに汚染濃度分布との関連を調べることによって沿道大気汚染の簡易予測手法を検討することである。
〔内 容〕 沿道大気汚染濃度を交通量と風速データなどから簡易に予測する方法について検討する。
 本年度は温度成層風洞によってストリートキャニオン内部の流れ場と濃度場に及ぼす道路幅の影響を調べ,種々の形状のストリートキャニオン内の平均濃度や濃度分布を推定する方法を検討した。
〔発 表〕 B−41, b−119〜121

5)内湾域における底生生物の動態
〔担当者〕 中村泰男・木幡邦男
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 海底には様々な生物が生息している。富栄養化した内湾においては,底生生物の現存量が多く,水質や物質循環に大きな役割を果たしていると思われる。本研究では,底生生物の摂食・増殖を,水中の一次生産とあわせて解析することで,彼らが内湾での物質循環に果たす役割を定量的に明らかにする。
〔内 容〕 瀬戸内海において,夏季に海洋環境調査を行った。海水中で植物プランクトンにより生産される有機物が海底に移行するフラックスを求め,同時に,底生生物が水中から供給される有機物を摂食する速度を明らかにした。
〔発 表〕 B−88, b−209

6)自然水系中における溶存フミン物質に関する研究
〔担当者〕 今井章雄
〔期 間〕 平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕 溶存フミン物質は自然水中の溶存有機物の30〜80%を占める。フミン物質は鉄等の微量必須金属と安定な錯体を形成し,その存在状態に大きな影響を与える。金属の存在状態は生物利用可能性と密接に関係しているため,鉄等の金属とフミン物質との錯化反応を定量化する必要がある。本研究ではその手法の開発を目指す。
〔内 容〕 溶存フミン物質と鉄等の錯化反応における安定度定数と錯化容量を電気化学的手法(ボルタメトリー)により測定する手法を検討した。

7)室内環境における悪臭物質の発生機構の解明に関する研究
〔担当者〕 安原昭夫
〔期 間〕 平成9〜13年度(1997〜2001年度)
〔目 的〕 近年の悪臭苦情の多くが室内環境に由来する汚染物質から発生しており,加熱臭や腐敗臭が代表的なものである。この研究では加熱調理や台所での生ゴミの腐敗臭などに着目し,どのような物質が悪臭の原因であるかをGC/MSで分析し,またそれらの物質の生成機構を明らかにするとともに,脱臭対策の方法を検討する。また,代表的な悪臭成分については微量分析法を開発し,実際の汚染実態調査を行う。
〔内 容〕 野菜,魚,肉などを混合したものを腐らせ,悪臭成分の発生状況を調べた。最初は生臭い匂いが強く,1週間を過ぎる頃からぬかみそ様の悪臭に変わった。アルデヒド類は腐敗の進行とともに濃度が低下するのに対し,アンモニア,アミン類,イオウ化合物の濃度が大きく増加していった。しかし,これらの悪臭成分だけではぬかみそ様の臭気を説明することはできず,脂肪酸とそのエステルの生成状況を把握することが不可欠と判明した。
〔発 表〕 B−174〜176, b−281, 282

8)水生生物の内分泌撹乱並びに生殖機能障害に関する研究
〔担当者〕 堀口敏宏
〔期 間〕 平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕 いくつかの化学物質により生物の内分泌及び生殖の撹乱が引き起こされることが知られており,一部の野生生物においてはすでに異常が顕在化している。しかし,国内の生物における内分泌撹乱や生殖機能障害及びそれに起因する個体数減少については不明な部分が多い。ここでは外因性内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の影響を最も受けやすい生物群と考えられる水生生物を対象に内分泌撹乱の実態把握と原因究明及び機構解明を行う。
〔内 容〕 イボニシを対象に全国調査と定期野外調査を実施し,個体群動態の解析,産卵生態の観察,インポセックス症状の調査及び体内有機スズ含有量の測定を行った。美保湾を除く日本海側や茨城,外房域などでは正常な雌が採集されるようになったものの,インポセックスの出現率は全国的になお高率であり,輸卵管の閉塞した産卵不能個体もなお全国的に分布し,体内有機スズ濃度の比較的高い海域が依然認められるなど,改善は不十分であった。
〔発 表〕 B−119〜124, 126〜138, b−220〜226,228〜232

9)有機微量汚染物質の環境中動態の解析
〔担当者〕 桜井健郎
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 環境に放出され,また人間や生物に摂取されている数多くの人為起源の化学物質の健康リスクに対処する上で,発生源から暴露に至る環境中での動態の情報は有用である。本研究では,環境中動態の把握が不十分であるような有機微量汚染物質について,数理モデル等による環境動態解析によって新たな情報を得るための手法の検討と,その適用を行うことを目的とする。
〔内 容〕 関東地方の水系を対象とし,環境中(主に水域底質および土壌)に存在するダイオキシン類の,主要な起源の推定と起源からの寄与率の推算とを試みた。ダイオキシン類の異性体分析データに,多変量解析手法を適用した。さらに,この結果に基づき,ダイオキシン類の発生推定量と環境中存在推定量の比較を,起源ごとに行った。その結果,地域や起源によって水域底質への流達率が異なることが示唆された。
〔発 表〕 B−70, b−160〜163

10)飲料水の含有成分と関連の示唆される健康像の地域差に関する予備的研究
〔担当者〕 兜 真徳・今井秀樹・新田裕史
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔目 的〕 日常的に摂取している飲料水の含有成分(各種金属や有害物質)は,疾病発生の地域差をもたらす可能性のある最も大きな環境因子の1つと考えられる。本研究では,飲料水中の各種重金属,トリハロメタン等と胃がん及びその前駆状態である慢性萎縮性胃炎,膀胱がん,直腸がん等との関連性について,別途進行中の厚生科学(指定)多目的コホート研究の一部として検討する。
〔内 容〕 国内11保健所管内地域において飲料水を系統的にサンプリング,各種含有成分を測定し,各種がん死亡率との生態相関について検討する。平成10年度は,新たにトリハロメタンの測定機器の導入,測定法についての基礎的検討を行った。

11)ダイオキシン,環境ホルモン等の健康影響評価に係わる疫学研究の方法論に関する基礎研究
〔担当者〕 兜 真徳・曽根秀子・米元純三
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 ダイオキシンや環境ホルモン等による高濃度汚染地域では健康影響に関する不安が増大しており,予想される健康影響の直接的な評価が望まれている。しかし,暴露評価にとって測定感度(したがって測定誤差)や複合影響評価の問題が大きな障害となっている。したがって,超低濃度暴露による生体側の反応指標(バイオマーカー)の疫学への応用に関する研究が必須であり,本研究ではそのための基礎的研究を行う。
〔内 容〕 上記汚染物質にはその作用メカニズムを示唆するAhレセプターやp450−1A1(CYP1A1)などのmRNA発現,新生児の甲状腺ホルモン,エストロジェンの尿中代謝物への影響などが動物実験によって示されている。平成10年度は,協力の得られる住民を対象とした調査,あるいは新生児スクリーニングの情報調査を行うなど,これらバイオマーカー候補の応用可能性について基礎的検討を開始した。

12)人,家畜と野生動物の共生,生存に関すする基礎的研究
〔担当者〕 鈴木 明・高橋慎司*1
(*1地域環境研究グループ)
〔期 間〕 平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕 発展途上国においては,放牧地が広域化し,野生動物の保護地区の近辺まで及んでいる。そこでは,人が持ち込んだ家畜と野生動物が混在している。家畜と野生動物の混在は共通伝染病を広げ,経済的損失を起こすことから,世界的に重要な問題となっている。そこで,本研究の目的は,人,家畜及び野生動物が共生,共存できる基礎的条件を検索することにあり,この基礎資料は開発途上国の家畜および野生動物のリソースの保持に必要である。
〔内 容〕 前年度に引き続き,ザンビア大学獣医学部はレーチェ(大型のカモシカの仲間:K.k.Lechwe)と国立公園近在の牛から採血し,ブルセラ症の血清学診断と国立公園のアンケート調査を行った。本年度は特に,そのリスクの主たる要因について考察した。その結果,(1)貧困のため柵が作れない。(2)乾季に水と牧草を確保できないなど,家畜と野性動物の共存形態を取らざるを得ない開発途上国に共通の問題が指摘された。

13)有害大気汚染物質と心・循環機能について
〔担当者〕 鈴木 明
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔目 的〕 近年,疫学的調査から大気浮遊微粒子(PM2.5)が心・循環・血管系に影響を及ぼすことが推測されている。このことは,有害大気汚染物質は心臓機能を低下させ,心,循環機能障害を引き起こすことを推測させる。そこで,本研究は,これらの心,循環機能への影響を解明するための基礎的資料を提供することを目的とする。
〔内 容〕 前年度までに,NO2吸入ラットで,心拍数の変動を分析し,NO2暴露は,暴露初期に一時的な交感神経緊張後,副交感神経優位を示し,A−Vブロックの異常心電図を発現することが判明した。そこで,本年度では,NOx,SOx,CO2等の混合ガスを含むディーゼル排気ガス(DE)と心循環機能について,電気生理学的に検索した。DEP投与により,一時的な房室ブロックまたは断続的な心室性早期興奮が出現し,これらの異常心電図は,アトロピンの投与により消失した。その作用機序には,心臓,血管への直接作用および自律神経反射を介した間接作用があることが示唆され,副交感神経系の関与が重要であると推測された。
〔発 表〕 b−166

14)環境化学物質の精子運動能におよぼす影響に関する基礎的研究
〔担当者〕 米元純三
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 環境化学物質の雄性生殖機能,特に精子運動能への影響をCASA(Computer Assisted Semem Analyser)を用いて評価するための基礎的検討を行い,内分泌撹乱作用のある化学物質について精子運動能への影響を検討する。
〔内 容〕 ラット精巣上体からの精子のサンプリング方法,培養条件の検討を行った。この検討の結果得られた条件を用いて,妊娠期ラットにTCDDを投与し,生まれてきた雄について生後,63日齢,120日齢に精巣上体精子の運動能を調べた。その結果,いずれのステージでも精子の直進性に用量に依存した減少傾向が認められた。他のパラメータへの影響は認められなかった。
〔発 表〕 b−300

15)水中微量化学物質の分析方法に関する研究
〔担当者〕 高木博夫
〔期 間〕 平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕 現在の湖沼,河川水中の微量化学物質の分析法では,化学物質濃度は採水時の瞬時値しか得ることができないため,流出した総量を求めることは簡単ではない。本研究では,吸着剤の一定時間暴露による化学物質の積算吸着量から総流出量を求める方法について検討する。
〔内 容〕 本年度は,河川等に流出する農薬等の総量を評価する手法として,フィルター型固相吸着剤を用いた方法について検討する。河川水が一定流量で流れている水槽に,フィルター型固相を水の流れと平行に設置し,流速,付着生物量などの影響を検討する。

16)動物の遺伝的背景の特徴をいかした毒性機構の解析に関する研究
〔担当者〕 曽根秀子
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 実験動物に投与される化学物質の量は実際のヒト暴露量に比較し一万倍から百万倍と高い。生体影響の動物からヒトへの外挿をより精度の高いものにするためには,実際のヒト暴露量により近いレベルでの研究が望まれる。そのため,遺伝的背景の特徴を持った動物や遺伝子導入動物を健康リスク評価に利用するため,これら特殊動物の遺伝的背景とそれに伴う生理作用を明らかにすることを目的とする。
〔内 容〕 本年度はLECラットにリポーター遺伝子であるlaclを導入した遺伝子改変動物におけるゲノム不安定性と化学物質感受性の関連を調べた。その結果,肝炎の発症とともにリポーター遺伝子であるlacl遺伝子の変異率が増加した。このラットは肝発がん物質に対して通常より10倍高い感受性を示すことから,肝炎による遺伝子の不安定性が感受性を修飾していることが示唆された。

17)バイオモニタリングに効果的な水生生物の開発に関する研究
〔担当者〕 畠山成久
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 バイオモニタリングに用いる試験生物としては,室内で繁殖が可能なこと,生態系での機能がわかっていること,環境水(あるいは,底質)に連続暴露できることが重要である。これまで,数種の水草,ヌカエビ,魚(2種)などを,バイオモニタリング施設内で河川水に連続暴露し,その生物反応をモニターしてきた。水生生物実験棟において,短期間で繁殖への影響が評価できる試験生物をさらに開発・検索することとした。
〔内 容〕 ヨコエビ2種(つくば市採集)の数種殺虫剤に対する感受性と試験生物化の検討を行った。これら2種は欧米で試験生物化されているヨコエビ,オオミジンコよりも数種殺虫剤に高い感受性を示した。しかし,長期間の飼育が可能であったが,室内繁殖できるには至っていない。短期間(2週間)で繁殖への影響評価が可能であるチカイエカは,生長が早く狭い空間でも羽化・産卵するため河川水連続暴露によるバイオモニタリングの試験生物として有効と考えられた。

18)セスジユスリカを用いた底質試験法の検討
〔担当者〕 菅谷芳雄
〔期 間〕 平成10〜14年度(1998〜2002年度)
〔目 的〕 OECDで検討されている底質試験法では,日本特産のセスジユスリカも試験生物として認められた。ところが,本種を使っての底質試験の研究例は多くなく問題点の把握が十分でない。同ガイドラインに沿って実用試験に入る前に他の推奨種との比較検討を行う必要がある。本研究では,ガイドラインに沿って底質中の化学物質の毒性評価を行う際の問題点を検討すると同時に,セスジユスリカの生物特性に合った試験法の開発を行う。
〔内 容〕 新たに制定されようとしているユスリカを用いたOECDガイドライン(底質への添加試験と上層水への添加試験の2規格)においては日本特産種のセスジユスリカも使用生物として認められようとしている。本年度は,生物学的な基礎データを過去の飼育実績からとりまとめた(当該委員会に送付)。また,殺虫剤による試験を再検討し本種抵抗性系統と感受性系統の組み合わせによる試験が有効であることが示された。

19)藻類群集におよぼす紫外線の影響
〔担当者〕 笠井文絵
〔期 間〕 平成10〜13年度(1998〜2001年度)
〔目 的〕 オゾン層の減少による有害な紫外線の増加は,極地方ばかりでなく温帯域でも大きな問題になりつつある。紫外線は,例えば現在のレベルでも植物プランクトン群集に対して,生産量の抑制,種組成の変化,生化学的構成成分の変化を起こし,食物網の初期段階に大きな影響を及ぼすと考えられている。本研究では,紫外線の藻類群集に及ぼす影響を,それを餌とする動物プランクトンとの関係からとらえる。
〔内 容〕 湖の表層と5m層から採取した植物プランクトン群集を,すべての太陽光,UV−B除去,UV−BとUV−A除去の3条件下で培養し,光合成速度に及ぼす紫外線の影響を調べた。10μm以下のサイズ分画とそれ以上の分画を比較したところ,表層および5m層とも紫外線を除去した場合の光合成速度の増加がサイズの小さい分画でより顕著であった。また,表層より5m層の群集の方が紫外線に感受性が高かった。
〔発 表〕 b−122

20)セイヨウオオマルハナバチの野生化による在来種の遺伝子汚染モニタリングに関する研究
〔担当者〕 五箇公一
〔期 間〕 平成10年度(1998年度)
〔目 的〕 ハウストマトの花粉媒介昆虫として導入されているセイヨウオオマルハナバチの野生化に伴う日本在来マルハナバチの遺伝子汚染モニタリングのためのマーカー及び,在来種の増殖・販売に伴う在来種の乱獲と放飼が各地域個体群の遺伝子組成に及ぼす影響を評価するための遺伝的マーカーを開発し,野外におけるマルハナバチの遺伝的変異および遺伝子汚染の実態をとらえることを目的とする。
〔内 容〕 マルハナバチを野外より採集してアロザイムおよびDNAを抽出して変異を解析した。
(1)種間差を識別するためのマーカーとしてアロザイム変異を電気泳動法により検出する方法の確立 (2)種内変異を解析するためのマーカーとしてDNAのマイクロサテライト領域の分析方法の確立 (3)野外より採集した個体の上記マーカーの変異検出。

21)微生物分解機能を活用した環境汚染の評価に関する研究
〔担当者〕 矢木修身・岩崎一弘
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕 テトラクロロエチレン(PCE),トリクロロエチレン(TCE),トリクロロエタン(TCA)等の揮発性有機塩素化合物による土壌汚染が問題となっている。汚染環境における,汚染物質濃度,汚染物質分解微生物の種類,数,分解能の関係を調べ,汚染状況と分解微生物の関連を明らかにすることにより,汚染程度を評価する手法を開発する。
〔内 容〕 各地の汚染土壌等を用いて,PCE,TCE及びTCAの分解微生物のスクリーニングを実施した。好気的にPCEを分解できる微生物を見いだすことができなかったが,プロパンを唯一の炭素源として増殖し,同時にTCEを分解するMycobacterium TCE28株を分離した。TCE28株はプロパン以外にメタン,エタン,ブタン,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等の種々の炭素源を資化でき,同時にTCEを分解した。

22)植物の気孔開度に及ぼす環境要因の受容と伝達に関する研究
〔担当者〕 中嶋信美・佐治 光
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕 植物は乾燥ストレスにさらされると,それに対抗するため様々な代謝変化が起こることが知られている。本研究ではソラマメ孔辺細胞に浸透圧ストレスを与えるとリンゴ酸の蓄積が見られることを明らかにした。本年度は浸透圧ストレスの応答して孔辺細胞内のリンゴ酸の濃度にどのような変化が起こるかを検討することを目的として研究を行った。
〔内 容〕 ソラマメの気孔孔辺細胞の浸透圧ストレス(乾燥)に対する応答を調べるため,ソラマメの葉から表皮をはく離し,0.4Mマンニトール溶液に表皮を浸し処理を行った。その結果,浸透圧ストレスによって気孔が閉鎖すること,孔辺細胞にリンゴ酸,スクロースが蓄積すること,呼吸活性が低下すること等が明らかになった。ソラマメ孔辺細胞が浸透圧ストレス(乾燥)に応答してリンゴ酸を蓄積する代謝経路を明らかにするため,14C・NaHCO3をソラマメの葉のはく離表皮に与えた。その結果,浸透圧ストレスによってリンゴ酸へのラベルの取り込みが上昇したことから,浸透圧ストレスによってホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼとマレートデヒドロゲナーゼによるリンゴ酸合成経路が活性化された可能性が高いことが示唆された。

23)環境中における微生物遺伝子の挙動に関する研究
〔担当者〕 岩崎一弘
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 これまで環境微生物の研究対象は,分離・培養が可能な株に限られていた。近年,こうした欠点を補うため,分子生物的な手法により微生物生態を解明する試みがなされてきている。本研究は環境中の特定微生物の遺伝子を解析するために,PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)法によるトリクロロエチレン(TCE)分解遺伝子の環境試料中からの検出・定量法の開発を試みた。
〔内 容〕 TCEを好気的に分解するメタン資化性菌M株のTCE分解遺伝子の一部を特異的にPCR法で増幅するプライマーを設計し,合成DNAを作成した。このプライマーを用いてM株のみを検出できることが確認できた。さらに定量的(最確値)PCR法を応用し,M株の高感度迅速計数法を開発した。さらに地下水試料中からのM株検出を試みたところ,試料中の揮発性有機塩素化合物が計数を阻害することが示唆された。

24)シロイヌナズナのアスコルビン酸合成遺伝子の環境ストレス下における発現に関する研究
〔担当者〕 玉置雅紀
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 種々の環境ストレスにより引き起こされる植物への被害は,ストレスにより生じる活性酸素によって引き起こされている。アスコルビン酸はその抗酸化作用により活性酸素の消去に重要な働きを持つと考えられるが,植物におけるその合成過程及び合成に関与する遺伝子の発現についてはほとんど研究が行われていない。本研究ではモデル植物として頻繁に研究に用いられているシロイヌナズナよりアスコルビン酸合成酵素をコードしている遺伝子を単離し,大気汚染ストレス下での発現解析を行う。
〔内 容〕 シロイヌナズナよりアスコルビン酸合成経路の最終ステップを触媒する酵素をコードする遺伝子のcDNA,L−Galactono−Lactone Dehydrogenase(GLDH)
を得るため,既に単離されているカリフラワーのGLDH遺伝子のcDNAをRT−PCRにより単離し,これをプローブとしてシロイヌナズナの実生cDNAライブラリーをスクリーニングした。その結果,GLDH遺伝子のcDNAクローン,AtGLD1を単離することができた。AtGLD1はカリフラワーのGLDHのアミノ酸配列と90%の相同性が見られたことからシロイヌナズナのGLDHをコードするcDNAであると考えられた。この遺伝子の葉における発現量を3時間おきに24時間解析したところ,AtGLD1の発現量は午前中は変化せず,12:00から18:00にかけて上昇し,その後減少することが明らかになった。さらに,植物中のアスコルビン酸含量も同様な変動パターンを示した。以上の結果から,AtGLD1の発現がアスコルビン酸の合成の律速になっていること,また,午後におけるAtGLD1の発現量の上昇が光合成による光酸素傷害の軽減に関与している可能性が示唆された。

25)環境科学研究用に開発した実験動物の有用性に関する研究
〔担当者〕 高橋慎司
〔期 間〕 平成10〜平成12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 国立環境研究所実験動物開発では,環境汚染物質の生体影響研究用実験動物としてウズラ及びハムスターを用いて開発してきたが,本年度は実験動物としての有用性についてさらに検討する。
〔内 容〕 (1)ニューカッスル病ウイルス不活化ワクチンに対する抗体産生能(NDV−HI抗体産生能と略)の高及び低系ウズラの選抜を53世代へと進め,両系ウズラを遺伝的に純化することができた。また,ハムスターでは兄妹交配による近交化を行い,これまでに2家系を19世代まで継代した。(2)NDV−HI抗体産生能の低系に出現した羽装突然変異を固定することができた。また,低系の繁殖能力は高系と比較して良好な成績を示し,絶滅の危機を回避できることがわかった。(3)ウズラ発育卵を用いて環境中残留化合物の毒性試験手法を開発した。
〔発 表〕 B−81〜83,b−169

26)有機スズの中枢神経毒性に関する神経内分泌免疫学的研究
〔担当者〕 今井秀樹・兜 真徳
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔目 的〕 トリメチルスズ(TMT)は脳内の海馬を特異的に傷害し,記憶障害やけいれんを引き起こすことが知られている。最近我々は,ラットにTMTを投与した後,亜急性的(投与3〜4日後)に血漿中コルチコステロン濃度が一過性上昇を示すこと,また,この上昇がインターロイキン−1受容体拮抗物質の前投与によって抑制されることを観察した。本年度は,トリブチルスズ(TBT),トリフェニルスズ(TPT)およびTMTによるラットの血漿中のテストステロン,サイロキシン(T4)およびトリヨードサイロニン(T3)濃度に及ぼす影響を経日的に観察した。
〔内 容〕 6週齢雄Sprague−DawleyラットにTBTおよびTPTは50mg/kg,TMTは8mg/kgの用量で1回経口投与し,投与直前と投与後1,3,4,5,7および14日目に断頭ト殺して血液を採取した。TBT投与群およびTPT投与群の対照群にはオリーブオイルを,TMT投与群の対照群には蒸留水を投与した。血漿中の総テストステロン,総T4および総T3濃度はRIA法により測定した。TBT,TPTおよびTMTのいずれを投与した場合にも血漿中のテストステロン,T4およびT3濃度は対照群と比較して一過性に低下した。TMTに比較してTBTおよびTPTの方がT4とT3濃度の変化に対する効果は大きかった。

27)神経毒性指標としての脳アンキリンの分子生物学的解析に関する研究
〔担当者〕 国本 学・石堂正美・足立達美
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 細胞膜裏打ち構造を構成するタンパク質の一つ脳アンキリン(ankyrinB)にはオルターナティブスプライシングによって生ずる分子量440kDと220kDの少なくとも2種類のイソ型が存在する。特に,胎児・新生児期に発現のピークを迎える440kD ankyrinBは,神経突起の伸展,ミエリン膜の形成等への関与のほか,神経細胞傷害の高感度マーカーとしての利用の可能性も明らかになりつつある。本研究では,このankyrinBの脳神経系における生理学的意義を分子生物学的手法を用いてさらに解析する。
〔内 容〕 培養神経細胞,あるいは実験動物(ラット,マウス)の脳神経系を対象として,ankyrinBの発現を分子生物学的手法を用いて人為的に変化させることにより引き起こされる神経細胞あるいは脳神経系の機能的・形態的変化を解析することにより,ankyrinBの生理的意義を明らかにする。具体的には,アンチセンスDNA,リボザイムの設計と培養神経細胞への導入,さらには遺伝子改変動物の作成などを試みる予定である。
 本年度は,ankyrinB結合タンパク質とされている神経接着分子L1の細胞質部分のみをコードした発現ベクターを培養神経細胞に導入し,細胞の形態及びankyrinBの発現様式に対する影響について解析した。
〔発 表〕 B−52,55

28)環境健康リスク評価のための呼吸器系生体影響指標の開発
〔担当者〕 平野靖史郎・山元昭二・安藤 満
〔期 間〕 平成6年度〜11年度(1994〜1999年度)
〔目 的〕 開発途上国においては,化石燃料の燃焼に伴い,大気汚染物質の呼吸器への影響が深刻化しつつある。本研究では,肺胞腔内に沈着した粒子状物質を貪食していると考えられている肺胞マクロファージや,肺の炎症時に肺胞腔内に浸潤してくる好中球の細胞機能の変化に関する研究を行い,大気汚染物質の呼吸器に及ぼす健康影響評価を行うための指標を開発することを目的とする。
〔内 容〕 呼吸器内に吸入された粒子状物質に対する肺胞マクロファージの貪食作用を解明するため,マクロファージのプラスチック表面への非特異的接着機構を調べた。免疫沈降法を用いて,接着に伴いSykキナーゼがチロシン燐酸化を受けていることを明らかにした。また,肺の炎症に伴い浸潤してくる好中球の動態について速度論的に解析するとともに,一酸化窒素を吸入したラットにおける好中球の肺浸潤過程についても調べた。
〔発 表〕 b−210,214

29)温熱と環境汚染物質の複合暴露が免疫系に及ぼす影響に関する研究
〔担当者〕 山元昭二・安藤 満
〔期 間〕 平成5〜10年度(1993〜1998年度)
〔目 的〕 環境汚染物質による健康影響を考える場合,気候因子の大きな変化は,環境汚染物質の生体影響を修飾する重要な要素の一つとなることが予想される。しかしながら,気候因子と環境汚染物質を組み合わせた生体影響に関する検討は十分でない。本研究では,環境温度に着目し,特に温熱と環境汚染物質の複合暴露が生体の感染防御能に及ぼす影響について検討する。
〔内 容〕 温熱とO3の複合影響を明らかにするために,本年度は,黄色ブドウ球菌に対するマウスの肺の殺菌活性と肺胞洗浄液中細胞成分等への影響について検討した。その結果,35度7日間+0.5ppm O 24時間暴露マウスの肺の殺菌活性(黄色ブドウ球菌使用)は,各々の単独暴露時の抑制的影響に比べてより一層抑制され,高温負荷による相加作用が認められた。
〔発 表〕 B−179,b−293

30)埋立地浸出水の高度処理に関する研究
〔担当者〕 稲森悠平・水落元之
〔期 間〕 平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔目 的〕 埋立処分地から発生する浸出水には,微量でも毒性の高い様々な化学汚染物質が含有される。生物処理としての生物活性炭法,活性炭複合担体法に中間物理化学処理としてオゾン酸化法を組み込んだ微量化学汚染物質を高度処理するためのハイブリッド型処理プロセスを開発するとともに,毒性試験による処理性能評価を行うことを目的として推進する。
〔内 容〕 浸出水において高頻度,高濃度に検出され発がん性を有する1,4−ジオキサンは前段生物処理のみでは除去率50%であるが,ハイブリッド型処理プロセスすることにより99%以上除去可能であり,本プロセスは1,4−ジオキサンの処理に有効であることがわかった。また,Microtox試験による結果,浸出水は発光細菌に対する影響が認められ,その影響は窒素成分や重金属類ではなく,有機物によることが示唆され,生物活性炭処理で除去可能であることが明らかとなった。
〔発 表〕 b−42〜44,77, 96, 100

31)生物・物理・化学的手法を活用した汚水および汚泥処理に関する研究
〔担当者〕 稲森悠平・水落元之・松重一夫・徐 開欽*1
(*1水土壌圏環境部)
〔期 間〕 平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔目 的〕 有用微生物を活用した生物処理と物理化学処理との組み合わせにより汚濁の進行した湖沼,海域,内湾,河川,地下水等の汚濁水,生活排水,事業場排水,埋立地浸出水等の汚水およびこれらの処理過程で発生する汚泥を,生物・物理・化学的に効率よく分解・除去あるいは有用物質を回収する手法を集積培養,遺伝子操作等の技術と生態学的技術を活用して確立する検討を行うことを目的として推進する。
〔内 容〕 汚水からの生物学的窒素除去で極めて重要な役割を演ずる硝化細菌の,リアクターへの大量安定定着化と,活性向上のための検討を行った。その結果,硝化細菌の活性の維持・向上のためにはFeの存在が極めて重要であること,また厳寒期および高流入負荷時の硝化活性低下への対応が必要不可欠であることが明らかとなった。さらに,これらの窒素除去微生物の高密度培養時には,特に酸素供給の効率化が重要であることも明らかとなった。
〔発 表〕 B−15, 40, G−4, 5, 8, b−32,33, 79, 242

32)水質改善効果の評価手法に関する研究
〔担当者〕 稲森悠平・水落元之・徐 開欽*1
(*1水土壌圏環境部)
〔期 間〕 平成7〜12年度(1995〜2000年度)
〔目 的〕 汚濁水域の水質を改善するための生物・物理・化学的各種排水処理手法の導入が水域生態系の改善にいかなる効果を有するか,また,水域に流入した各種化学物質が水域生態系にいかなる影響を及ぼすかについて,生産者(藻類)・捕食者(微小動物)・分解者(細菌類)から構成されたマイクロコズムシステムで検討を行い,その有効性を検証するとともに,評価対象に適応したマイクロコズムシステムを構築するための検討を行うことを目的として推進する。
〔内 容〕 高次捕食者としての魚類(グッピー)を導入したマイクロコズムシステムの作成に成功した。また,このシステムを用いて化学物質としての3種(LAS,AE,NPE)の界面活性剤の生態影響を調べた結果,LAS1.0mg/l,AE3.0mg/l,NPE5.0mg/lの濃度でグッピーの捕食量が減少し,それ以上の濃度で死滅が確認された。生態系の捕食連鎖における高次捕食者への影響をみる上で魚類導入マイクロコズムシステムのさらなる解析が必要であることが明らかとなった。
〔発 表〕 B−37, 39, G−4, 5, 8, b−61〜63,70, 72, 73

33)湖沼沿岸域の生物多様性と生態系機能に関する基礎的研究
〔担当者〕 福島路生・高村典子・上野隆平*1・野原精一*1(*1生物圏環境部)
〔期 間〕 平成9〜10年度(1997〜1998年度)
〔目 的〕 貧栄養湖や富栄養湖の沿岸域での生物多様性と生態系機能の関係を明らかにするための基礎的研究を行う。また,生態系機能を評価するための方法論の検討を行う。
〔内 容〕 貧栄養湖のモデルとして十和田湖の沿岸域,富栄養湖のモデルとして霞ヶ浦や魚が生息しない国立環境研究所にある生物実験池を対象として,沿岸域の底生生物群集構造と環境(底質条件,波,沈殿物,水生植物量,捕食者)との関係を調べた。不安定な環境である波打ち際の底生生物群集の多様性は高く,沖に向かって,密度勾配があることがわかった。また,底生生物群集の分布が底生魚に大きく左右されていることがわかった。

34)流域をユニットとした水生生物の生息環境と生態系保全に関する研究
〔担当者〕 福島路生・高村典子
〔期 間〕 平成11〜15年度(1999〜2003年度)
〔目 的〕 生態系を構成する最小単位として流域(集水域)を想定する必要性が指摘されている。特に日本のように地形が急峻なために分水嶺が明白で,かつ各流域面積が比較的小さな国では,流域ごとに生態系管理を行うことが望ましいと考える。本研究では今まで別個に研究の対象とされてきた河川・湖沼の生物と,それらをとりまく流域の動植物との相互関係を定量的に把握し解明することを目的とする。
〔内 容〕 (1)河川に生息する水生生物(魚類や水生昆虫)の生息環境構築に果たす湖畔林の役割を定量的に把握する。(2)流域の植生(湖畔林),河川の地形,魚類の生息環境の相互関係を解明する。(3)昨今,建設省が押し進めている「多自然型川づくり」を生態学的に見直し,治水と生態系保全の両立をはかる代替策を模索する。

35)霞ヶ浦の生物資源保護に果たす役割に関する研究
〔担当者〕 春日清一
〔期 間〕 平成8〜12年度(1996〜2000年度)
〔目 的〕 霞ヶ浦の生物学的,物理学的,また化学的現象を記録し,その経年変化を明らかにし,その変動要因を検討し,環境保全管理や資源管理のための基礎資料を得る。
〔内 容〕 霞ヶ浦湖岸植生帯の定期的写真撮影,魚類,昆虫類,鳥類調査等を定期的に行い,霞ヶ浦の物理化学的環境変化,また生物間の関係を検討した。霞ヶ浦の植生帯は水位上昇により退行速度を増した。霞ヶ浦に発生するユスリカは近年著しく減少し,それに伴い,これを餌とするユリカモメ,ムナグロ等の鳥類は影響を受けた。また霞ヶ浦に飛来するカモ類は,霞ヶ浦湖内で採食する海ガモ類が減少している。

36)環境データ解析のための統計的手法に関する研究
〔担当者〕 松本幸雄
〔期 間〕 平成7〜11年度(1995〜1999年度)
〔目 的〕 環境データから構造的情報を抽出するには,偶然要因の効果を分離する統計解析手法が必要であると同時に,分離が可能なデータの取得がなされていなければならない。
 本研究は,(1)環境データ解析のための統計的手法の開発,および(2)解析の基礎となるモニタリングや調査などのデータ取得の方法論について情報理論的見地から検討することが目的である。主な対象は,大気汚染に関する環境データと生体影響データである。
〔内 容〕 (1)長期的な時間的データをトレンド,季節変動,偶然変動の各成分にわける方法として赤池により提唱されたベイズ型季節変動調節モデルを用い,我が国の約25年間にわたる大気汚染常時監視データに適用を試みた。これにより,年次変化だけでなく,季節変動,偶然変動の成分の大きさの経年的な変化を定量的に評価できる。(2)環境データの分布における極値(高い値)の出現確率と平均値の関係をモデル化した。
〔発 表〕 B−140, 141, b−240, 241

37)空中浮遊微粒子(PM2.5)の心肺循環系に及ぼす傷害作用機序の解明に関する実験的研究(奨励研究B)
〔担当者〕 嵯峨井勝・鈴木 明・藤巻秀和*1・古山昭子*1(*1環境健康部)
〔期 間〕 平成10年度(1998年度)
〔目 的〕 今日,日本をはじめ世界中の大都市部の大気汚染は改善の兆しがみられず,特に,浮遊粒子状物質(SPM)の汚染は深刻である。このSPM中の大部分を占めるDEP(PM2.5粒子)が肺がんやアレルギー性鼻炎を起こすことはよく知られている。また,我々は先の特別研究で,DEPが実験動物の気管支にぜん息様病態を引き起こすことを明らかにした。一方,最近になって,粒径が2.5μm以下のSPM,すなわちPM2.5と心疾患による死亡率との間に非常に高い相関性が存在することがアメリカやイギリスの多くの疫学研究によって示され,その健康影響の重大性がにわかにクローズアップされてきた。しかし,この両者間の因果関係の実験的証明はまだなされておらず,その証明はこれからの研究にかかっている。
 そこで本研究では,平成11年度から開始予定の同タイトルの特別研究の一部として,日本の大都市部のPM2.5の大部分を占めるDEPを対象物質としてディーゼル排気の暴露実験と組織培養等を含むin vitroの実験を組み合わせることによりその中のどのような物質がどのような機序で心血管系に傷害を及ぼしているかを明らかにし,これまで疫学的研究によって得られている両者の間の関連を実験的に証明し,環境保全のドライビングホースとなることを目的とする。
〔内 容〕 課題1.空中浮遊微粒子(PM2.5)の吸入による心血管系機能に及ぼす影響の解明に関する研究:(1)心電図による心筋および循環機能異常に関する電気生理学的解析では,DEPの静脈内投与により,用量に依存した一過性の血圧下降が認められた。また,DEP投与により,一時的な房室ブロックまたは断続的な心室性早期興奮が出現し,これらの異常心電図は,副交感神経の遮断により消失した。よって,DEP作用は血圧下降を主徴とし,その作用機序には,血管への直接作用および自律神経反射を介した間接作用があることが示唆された。(2)心血管系の病理組織学的異常の解析では,静脈にDEPを投与したモルモットの肺では,肺胞の毛細血管内には,DEPが多量に認められたが,沈着は認められなかった。肺全体的に高度なうっ血があり,水腫はなかったことから,死因は心臓停止によると考えられた。
 課題2.PM2.5(DEP)の心血管系機能異常に及ぼす作用機序の解明に関する研究:(1)DEP(PM2.5)中の成分の過度の薬理学的作用による心血管系機能異常の解析では,DEPをモルモットに静脈内投与すると,完全房室ブロックの後に心停止を起こすことが判明した。その致死量はDEP132mg/kgであった。(2)培養細胞系による心筋および血管内皮細胞等に及ぼす傷害作用の解析では,培養した肺動脈血管内皮細胞数の増加は,DEPの用量に依存して減少した。SODおよびカタラーゼを単独あるいは複合して加えたDEPの細胞毒性はDEP単独よりも減少した。(3)免疫系を介した組織傷害作用の解析では,3mg/m3のDEPを7ヵ月暴露したマウスの肺胞マクロファージはサイトカイン産生,NO産生ともに低下し,DEPが感染抵抗性および免疫能を低下させ,感染による組織傷害を起こしやすくすることが判明した。
 課題3.ディーゼル排気微粒子(DEP,PM2.5)の心肺機能傷害の量−反応関係の解析に関する研究
 本課題は,特別研究の期間中に行う予定であるので,本年度は資料の収集を行った。
〔発 表〕 E−31〜43

38)化学物質が生物の個体群動態および遺伝的変異に及ぼす影響評価のための基礎研究
〔担当者〕 五箇公一・菅谷芳雄・笠井文絵
〔期 間〕 平成10年度(1998年度)
〔目 的〕 これまでの化学物質の生態系影響評価はいく種かの標準生物による毒性試験結果の外挿であり,代表種の感受性のみに重きをおいた方法であった。しかし,これからは生物種の絶滅・存続への影響を視野に入れて議論する必要がある。生物種の絶滅とはすべての個体群の絶滅であり,その絶滅プロセスの重要な決定要因は個体群構造と遺伝的多様性である。遺伝子交流のある個体群の集まりであるメタ個体群の構造が健全に維持されているかどうか,遺伝的変異が豊富であるか否かによって絶滅速度は大きく変化する。
 したがって個体群という単位で種を考え,化学物質による個体群構造の撹乱や遺伝的変異の変動を定量的に予測することが重要であり,それにより,化学物質による種の絶滅への影響度を評価できると考えられる。そこで本研究では個体群レベルでの化学物質の影響評価方法の確立のため,実験個体群を用いて個体群動態および遺伝的変異を定量的に把握する技術の開発を目的とする。
〔内 容〕 これまでの生物種の絶滅に関する研究は,すでに個体数が減少した危惧種や希少種を扱ったものが多いが,本研究では短期でのデータの蓄積を優先し,世代期間が短く,飼育が容易な普通種のハダニ類,ユスリカ類,藻類を扱った。
(1)遺伝的マーカーの探索
 個体群の遺伝的構造および個体群間の遺伝子流動を定量的にとらえるためには遺伝的マーカーが必要となる。それぞれの実験材料種について,電気泳動法,PCR法などの遺伝学的手法を用いて,有効なマーカーの探索した結果,ハダニ,ユスリカ,藻類において有効なアロザイムマーカーの検出に成功した。
(2)薬剤抵抗性変異の調査
 個体群の適応形質変異として,化学物質に対する抵抗性(薬剤抵抗性)という形質に注目し,各実験材料種についてその変異を調査した。また,個体群実験のための抵抗性系統および感受性系統の選抜を試みた。その結果,ハダニ,ユスリカにおいて高度抵抗性系統を野外より見いだし,その遺伝的変異についても明らかにした。
(3)野外個体群の実態調査−実験フィールドの探索
 各実験材料種の野外個体群を採集し,遺伝的マーカー変異および薬剤抵抗性変異を調査した。個体群間の遺伝子流動を把握し,メタ個体群構造を解析した。各地域における化学物質の使用データから薬剤抵抗性の発達・分布拡大過程を解釈した。
(4)実験個体群の構築
 メタ個体群を実験的に再現し,遺伝的変異量および遺伝子流動を操作し,化学物質による局所個体群の絶滅とメタ個体群構造による個体群の回復プロセスを追跡調査できる系の設計を試みた。その結果,ハダニにおいて室内レベルでのメタ個体群の系をつくることに成功した。

39)地域住民の健康に関する1次情報収集のための調査研究の試み(特別経常研究)
〔担当者〕 新田裕史・黒河佳香・小野雅司*1・吉川麻衣子*1(*1環境健康部)
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔目 的〕 長期的な環境変化が人口集団の健康にどのような影響を与えるかを検討するためには,住民個人の健康に関する1次情報を収集するための具体的な手法を提示し,そのための場を環境の異なる地域に設定することが不可欠である。そこで,茨城県高萩市と東京都杉並区内の各一地域を選定し,地域内の学童を対象とした各種疾患への罹患状況の調査,血液生化学検査等の継続調査を実施するために,自治体関係部局,学校関係者,保護者との情報交換・調査内容の説明・協力依頼を行い,関係者の協力・承諾が得られ,実施可能な項目について,1次情報を収集した。
〔内 容〕 本年度はこれまで5年間の調査の結果を総合的に解析した。
 ぜん息様症状を有する者の割合は高萩では男女ともほとんど年次変化がみられないのに対して,杉並では男女ともやや増加傾向にあることが認められた。学年ごとの有症率の違いには一定の傾向は認められなかった。ぜん息様症状有症率は杉並の男子が他の3群(杉並・女,高萩・男女)に比べて高くなっていた。
 非特異的IgE高値群(250IU/ml以上)の割合については明確な年次傾向はみられず,杉並の男子でその割合が特に高い傾向もみられなかった。両地域ともIgE高値群のぜん息様症状有症率は低値群に比べて非常に高くなっているが,杉並・男子ではその傾向が顕著であった。平成10年度の成績をみると,杉並・男子のIgE低値群のぜん息有症率が1.0%に対して,IgE高値群では29.8%であった。杉並・女子ではIgE低値群のぜん息有症率は1.2%,IgE高値群は15.4%であり,高萩・男子ではそれぞれ0.7%,13.3%であり,高萩・女子ではそれぞれ2.0%,13.2%であった。他の年度についてもこの傾向はかわらず,杉並・男子のぜん息様症状有症率が高いことは非特異的IgE高値群での有症率が高いことが反映しているものと考えられた。
 ダニ特異IgE抗体陽性率の年次変化については両地域とも明確ではなかった。平成10年度のダニIgE陽性率は高萩・男子45.5%,高萩・女子33.2%,杉並・男子56.5%,杉並・女子36.4%であり,地域差,性差がみられた。
 次に,全対象者のうち4回以上調査を行った対象者について解析を行った。ぜん息様症状については1回でもぜん息様症状(現在)のカテゴリーに分類されたものはぜん息「あり」とし,全年度で症状なしのものはぜん息「なし」,それ以外の場合は変動群と分類した。その結果,昭和58〜63年生のぜん息「あり」群の割合は高萩では年次間で大きな違いはみられないが,杉並ではやや増加傾向がみられた。IgE抗体検査の結果,1回でも陽性であった者は陽性,すべて陰性であった者は陰性,その他を偽陽性として解析した。ダニIgE陽性率については両地域とも生年群間でほとんど差が見られなかった。
〔発 表〕 b−197〜200

 


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