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経常研究


1.地球環境研究グループ


1)野生動物の個体群構造に関する基礎的研究
〔担当者〕 椿 宜高・高村健二・永田尚志
〔期 間〕 平成3〜10年度(1991〜1998年度)
〔目 的〕 野生動物の年齢構成,性比,密度,個体変異などの個体群構造と生息環境との関連を把握し,個体群の遺伝的多様性がどのように維持されているかを明らかにし,野生動物保全に役立てることを目的とする。鳥類および昆虫類の自然個体群を選び,各個体群ごとの個体群密度,生存率,性比,産卵数などを測定し,繁殖成功度を比較することにより個体群内の形質変異および遺伝的多様性の維持機構を解析した。
〔内 容〕 霞ヶ浦の9ヵ所のヨシ原で繁殖するオオヨシキリを調査し,ヨシ原の面積および昆虫密度が繁殖成功に与える影響を解析した。ヨシ原の面積と餌密度は相関しなかったが,小さいヨシ原では繁殖成功率が低く,ほとんど雛を巣立たせることはできなかった。また,翌年の成鳥の帰還率も小さいヨシ原では低く繁殖分散を行っていた。3つのマイクロサテライト遺伝子座を調べた結果,小さいヨシ原では連鎖平衡が成立しておらず,シンクハビタットであることが明らかになった。
〔発 表〕 a−38, 50〜52, h−21, 22

2)ADEOS-II衛星搭載大気センサー(ILAS-II)の開発に関する基礎的研究
〔担当者〕 笹野泰弘・鈴木 睦・中島英彰・横田達也*1・神沢 博*2
(*1地球環境研究センター,*2大気圏環境部)
〔期 間〕 平成8〜10年度(1996〜1998年度)
〔目 的〕 環境庁が開発を進めているオゾン層観測センサーILAS−II は,成層圏オゾン及びオゾン層破壊関連物質等の観測を行うよう設計されている。本研究ではILAS−II で取得されるデータについて,データ処理アルゴリズムの検討を行い,データ処理運用システムの開発に反映させる。また,地上検証実験・データ利用等の予備調査を行い,本格運用に備える。
〔内 容〕 〔内 容〕ILAS−II の機器特性をもとに,特に太陽面掃引測定データ,中間赤外領域データの利用について,データ処理アルゴリズムの検討を行った。ILASデータ処理での経験を踏まえた改良を検討した。地上検証実験については,ILASでの地上実験の実績の評価に基づいて,ILAS−II への基本的な考え方を整理し,基本計画を策定した。
〔発 表〕 K−20, A−18〜26, 46, a−24, 31〜37, 46

3)衛星搭載大気計測用センサーの精度評価手法高度化の研究
〔担当者〕 鈴木 睦
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔目 的〕 ILAS及びILAS−II はともに,大気吸収のスペクトル線幅に比較して,低い分解能の分光計を用いる。このような低分解能測定では,分光器の装置関数,特に中心波長位置の決定が,正確かつ高精度のデータ処理に欠かせない。本研究では,分光器の波動光学的数値計算による手法と,実データを説明する探索的手法により,装置関数を高精度決定し,ILAS及びILAS−II データ処理の定量的精度を実現することを目的とする。
〔内 容〕 可視分光器の装置関数決定の検討を行った。光学理論に基づき計算された装置関数の中心波長と半値半幅をもとに,実際にILASによって観測された大気透過率と理論計算による透過率との残差二乗平方和が最小になるように装置関数を決めた。このとき,単一の層の残差のみを最小化するのではなく,多層における残差を最小化する方法を開発し,これを用いた。また,装置関数決定において,異なる2つの酸素Aバンドの吸収線データベースを利用した。それらを用いて気温高度分布導出を行った結果は,以前のデータベース値を用いた場合は,これまでと同様に15〜20度ほど気温が高めに導出された。一方最新の値を用いたとき,参照とした英国気象局の客観解析データの気温高度分布によく一致することが示された。
〔発 表〕 K−20, A−18, 36, 48, a−34, 48

4)ADEOS−II 衛星搭載大気センサー(ILAS−II)の観測データの地上分光(FTIR)データを用いた検証解析に関する基礎的研究
〔担当者〕 中島英彰
〔期 間〕 平成9〜11年度(1997〜1999年度)
〔目 的〕 環境庁では,2000年度にADEOS−II 衛星に搭載予定の大気センサーILAS−II の開発を行っている。このILAS−II は,オゾン層破壊に関連したO3,HNO3,NO2,ClONO2などの微量気体成分を観測する大気センサーである。衛星データを科学的な解析に用いるためには,地上からの衛星データの検証が不可欠である。当研究では,地上フーリエ変換赤外分光器(FTIR)
を用いてILASデータの検証を行うことをその目的とする。
〔内 容〕 FTIRは,太陽を光源に用い,地球大気による赤外線の吸収スペクトルを高分解能で測定する観測器である。その吸収線の形から,非線型逆変換繰返最少二乗法を用いることにより,各種微量気体成分の鉛直カラム量及び高度分布を導出することが可能となる。本研究では,スウェーデン・キルナで得られたFTIRスペクトルの解析を行い,O3の高度分布を導出しILASデータと比較し,良好な一致を見た。また,O3,HNO3,NO2については気柱全量の導出も行い,ILASデータとの比較検討を行った。今回確立した手法は,ILAS−II の検証解析にも使用する予定である。
〔発 表〕 A−18, 20, 21, 41, 43〜45, a−45〜47

5)成層圏光化学−放射−力学結合過程の基礎的研究
〔担当者〕 秋吉英治
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔目 的〕 成層圏オゾン層破壊は,成層圏の温度分布を変えて気候に影響を及ぼし,一方地球温暖化はオゾン層に影響を及ぼす。本研究では,上記のような相互作用を含めた成層圏のモデル化を行う。
〔内 容〕 Ox,HOx,NOx,CHOx,ClOx,BrOx,の気相反応及びN2O5,ClONO2,BrONO2の硫酸エアロゾル上での不均一反応を導入した鉛直1次元光化学−放射結合モデルで,ピナツボ火山爆発起源の成層圏エアロゾルの増加とオゾン減少の関係を調べた。オゾン全量の変動に関しては,エアロゾル層の気温の影響がかなり大きいことが,また,エアロゾル層増加による紫外線変動の影響は一般に小さいことがわかった。
〔発 表〕 a−2

6)植物群落内の光環境の時空的不均質性に関する研究
〔担当者〕 唐 艶鴻・奥田敏統
〔期 間〕 平成6〜10年度(1994〜1998年度)
〔目 的〕 赤道に近い熱帯地域では太陽からの放射量は年間を通じてあまり変化がない。しかし,雲量や他の大気要因の影響によって植物群落上層部に到達する光合成光量子密度は「季節」によってかわる可能性がある。一方,植物群落の下層部,とくに林床では,上層部の葉量の変化によって変化することもあり得る。そこで,本研究は熱帯林林内の光環境と林冠に到達する光合成光量子密度を測定し,その年内変動について検討した。
〔内 容〕 52メートルのタワー,およびギャップと林床で光合成光量子密度を1分間間隔で一年以上にわたって測定した。その結果:(1)タワー最頂部で測定した日積算光合成光量子密度は年間を通してわずかながら二つのピークをもつ変動パターンを示した。また,この変動パターンは日射時間と関係していることがわかった。(2)林床における日積算光合成光量子密度の「季節」変化は明瞭ではなかった。林床の光合成光量子密度は林冠のそれと比べ約1%であった。一方,ギャップの光量子密度は明らかな「季節」変動を示した。
〔発 表〕 A−5, 6, a−7〜10

7)大気化学に係わる気相化学反応の速度論的研究
〔担当者〕 今村隆史
〔期 間〕 平成9〜12年度(1997〜2000年度)
〔目 的〕 下部成層圏/上部対流圏での重要なHOxラジカル源と考えられているアセトンの消失過程に対する不均一反応の寄与の見積もりを行う。
〔内 容〕 可能な濡れ壁反応管を用いてアセトンの硫酸溶液への取り込み過程を測定した結果,取り込みは可逆的な溶解が支配的で,反応性取り込みの寄与は小さいこと,溶解度は温度及び酸濃度に強く依存することがわかった。
〔発 表〕 A−2, 3, F−1, a−5, 6, f−3

8)植物の光をめぐる競争関係および群落の動態の解析
〔担当者〕 竹中明夫
〔期 間〕 平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕 植物にとって光は生存・成長する上で必須のエネルギー源である。植物群落のなかでの個々の植物の生活を理解するためにも,また,個体間の相互作用の結果として現れる群落の動態を理解するためにも,光をめぐる個体間の競争関係を理解することが必要となる。本課題の目的は,個体間の地上部の相互作用を光の奪い合いのプロセスに注目して解析すること,個体間の相互作用に基づいて群落の動態を再構成するシミュレーションモデルを構築することの2点である。
〔内 容〕 森林動態の個体ベースモデルを構築した。このモデルは,森林内のすべての樹木のサイズと位置を明示的に扱う。個々の木のサイズと,木の間の位置関係から,それぞれの木が周囲の木によってどれだけ光を遮られるかを計算することができる。これに基づいて各個体の成長量,種子生産量,死亡確率を決める。このモデルにより,高木の死亡によって林内の光環境が改善し,若齢個体の成長が促進されて高木の死んだあとを埋めていくなど,現実的な森林のダイナミクスが再現できた。
〔発 表〕 A−38〜40, a−39

9)衛星センサー(ILAS)データ処理におけるエアロゾル及び非ガス成分の寄与評価に関する研究
〔担当者〕 中島英彰・笹野泰弘
〔期 間〕 平成10〜11年度(1998〜1999年度)
〔目 的〕 人工衛星ILASのデータ処理による正しいガス濃度の導出のためには,ガス以外の成分の寄与である「非ガス成分補正」が非常に重要である。この非ガス成分補正の中には,オフセット分,およびエアロゾルタイプそれぞれに特徴的なスペクトルをもった消散係数に比例した分とが含まれる。本研究では,これら非ガス成分補正の手法について詳細に検討を行い,ILASデータからのより正確なガス濃度の導出を行うことを目的とする。
〔内 容〕 本年度は,ILASのデータ処理で重要となってくる,非ガス成分補正のために必要なパラメータの導出に必要な検討を行った。具体的には,実験室におけるいくつかの特徴的なエアロゾル及びPSCの消散係数スペクトルと,実際にILASによって観測された窓チャンネルにおける赤外消散係数スペクトルとの比較を行った。その結果,冬季低温下の極域における,PSCのものと思われる赤外消散係数スペクトルの特徴を同定することに成功した。今後は,ILASデータにこれら非ガス成分補正をもっとも効率よく行なえる手法を考案し,ILASデータからのガス濃度のより正確な導出へと応用していく予定である。
〔発 表〕 K−20, A−18, 24, 46, a−41〜43

 


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