6.国際共同研究(多国間型)
(1)アジア地域の微生物研究ネットワークに関する研究
1)環境保全微生物の機能開発と育種に関する研究
(1)有毒微細藻類の増殖制御と毒素分解微生物の機能制御技術の開発
〔担当者〕
| 化学環境部 |
: |
彼谷邦光・佐野友春 |
| 生物圏環境部 |
: |
渡邉 信・広木幹也 |
〔期 間〕
平成10〜11年度(1998〜1999年度)
〔目 的〕
本年度は,1)中国およびタイで採取した藍藻類の無菌株を培養し,それらの生産する毒素の化学構造を解析し,中国およびタイの藍藻毒の特徴を明らかにすること。2)有毒藍藻類を捕食する原生動物の捕食能を調べること。3)有毒藍藻類を分解するバクテリアのスクリーニングを行うこと。4)酵母から単離した有毒藍藻Microcystisの増殖を特異的に阻害する物質が他の有毒藍藻,Anabaena,Oscillatoria等に対しても同様に作用するか否かを調べることを目標とした。
〔内 容〕
中国雲南省で採取したMicrocystis viridisの毒素生産に及ぼす環境要因の解析を行った。本株の主要毒素は[Dha7]microcystin
RRで,全ミクロシスチンに占める割合は70〜80%であった。ミクロシスチン生産に及ぼす光強度,栄養塩,温度,pHおよび成育過程の影響を調べた。これらの要因の中で,光強度とpHが最もミクロシスチン生産に影響を与えた。25℃,15μE/s,pH7.0または9.2の条件で細胞が対数増殖期の中間のときに[Dha7]microcystin
RRの生産量が最大となった。温度はミクロシスチンの生産量にほとんど影響しなかった。窒素欠乏培地で成育させた本株をMA培地に移した場合,細胞の形態変化とミクロシスチン生産量との間に関連があるようにみえた。
〔発 表〕D−3,5〜8
2)微生物の種の多様性及び系統保存ネットワークの構築に関する研究
(1)微細藻類の系統分類学的研究及び種の多様性の解析
〔担当者〕
| 生物圏環境部 |
: |
渡邉 信・広木幹也・河地正伸 |
| 化学環境部 |
: |
彼谷邦光 |
〔期 間〕
平成10〜11年度(1998〜1999年度)
〔目 的〕
本研究では熱帯域及び亜熱帯域における微細藻類の分布及び多様性を把握するとともに,分離培養及び分類同定された各藻類株について各種遺伝子塩基配列情報解析を行い,分子系統学的解析に基づく分類システムを構築するとともに,各種特性の生物学的意味あるいは系統学的意味を明らかにすることを目的とする。
〔内 容〕
遺伝的形質として,16S rDNA(16S リボゾームRNA遺伝子)塩基配列の相同性とそれに基づく系統解析,並びにDNA−DNAハイブリダイゼーションに基づく分類学的解析を行った。16S
rDNA塩基配列は,Microcystisの5種すべてを同一種とみなせるほど高い相同性をもち,そこから導かれた系統樹にもまた,種の区別に対応するクラスターは現れなかった。これらの結果は,さらにDNA−DNAハイブリダイゼーションによっても支持された。すなわち,Microcystis属5種は,異なる種間で最低74%ものDNA−DNA相同性を持ち,その値は高いものでは90%にも及ぶことが判明した。以上の結果と,バクテリアの分類における国際的な合意に基づいて,Microcystis属5種を単一の種に統合するのが適当であると考えられた。
伝統的に分類指標とされてきたコロニーの形態的多様性は一体なんなのかを改めて検討した結果,単一の株であっても,さまざまなコロニー形態を持ち得ることが示され,その一部の株は,複数の種に相当するコロニー形態の変化を示した。
遺伝的形質及びコロニー形態観察の結果と,今まで得られた生理学的・生化学的形質の解析結果から,Microcystis属5種は単一の種として扱うべきであると結論される。
〔発 表〕H−23〜25,28, 30〜32, 37〜40, h−31〜37,
39,40, 42, 43
(2)微細藻類の系統保存とデータベースの構築
〔担当者〕
| 生物圏環境部 |
: |
広木幹也・河地正伸・渡邉 信 |
| 社会環境システム部 |
: |
清水 明 |
〔期 間〕
平成10〜11年度(1998〜1999年度)
〔目 的〕
微細藻類は酸素発生型の光合成を行う微生物で,水界生態系の第一生産者として,農水産業や工業にも利用されている反面,赤潮やアオコのように水環境汚染に深く関連し,人間生活に著しい影響を与えている。特に,アジア地域では微細藻類の利用あるいは微細藻類による環境汚染問題解決に対するニーズは非常に高い。以上のことから,微細藻類のカルチャーコレクションの構築および整備は非常に重要視されている。しかし,微細藻類の保存はほとんどの場合に継代培養法に依存しており,また,分類とリンクさせずに系統保存されている例も多く,付随する情報も未整備のままであるものが多い。
本研究では,分離・培養された微細藻類の適切な長期保存法の開発,微細藻類培養株のデータベースの構築とその管理法の開発および微細藻類の特定データ解析システムの構築を行うことを目的とし,本年は特に,緑藻類の系統保存株の長期保存法の開発を行った。
〔内 容〕
予備実験(凍結融解後の増殖の有無を目視で確認)の結果,増殖が認められた緑藻類について二段階凍結/急速融解法により凍結解凍した後の生存率をFDA法により求めた。
その結果,Pediastrum属では,FDA法により20%以上の生存率が認められた株のほとんどで増殖が認められ,FDA法によりエステラーゼ活性が認められた細胞の多くが増殖能を保持していることが示唆された。また,供試したすべてのPediastrumの株でDMSOを5%添加したときが最も生存率は高く,最も高いものは生存率は90%に達した。一方,DMSOを10%添加したときは5%添加した条件に比較すると生存率は低く,最高でも55%であったが,いずれもDMSOを添加しない条件よりも高い生存率であった。Coelastrumもほとんどの株でDMSO添加することにより無添加よりも生存率は顕著に高くなった。また,ScenedesmusおよびS.acutusではDMSOを5%添加によりFDA法による生存率は80%に達したが,S.
serratusでは10%添加でも生存率は13%で,株によって大きな差があったが,DMSO添加濃度間の差はPediastrumに比較して小さく,DMSOを添加しない条件でも生存率の高い株もあった。一方,Closteriumはほとんどの株でDMSOを添加しても凍結融解後には増殖が認められなかったが,増殖が認められた株についてFDA法で生存率を求めると,供試した他の属とは異なり,DMSOを添加しない条件で非常に高い生存率を示した。しかし,これらの株も予備実験においてDMSOを添加しない条件では,凍結融解後には増殖は認められなかった。このようにClosteriumではFDA法により高い生存率が認められた条件で必ずしも増殖能が認められなかったことから,属によっては凍結融解後もFDA法により検出されるエステラーゼ活性を維持していても,増殖能を失う場合があることが示唆された。
〔発 表〕H−21,29, 33〜35, h−28, 38