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科学技術振興調整費による研究


5.国際共同研究(二国間型)


(1)大気環境変動が作物および野生植物に及ぼす影響に関する研究

〔担当者〕

地球環境研究センター 清水英幸・鄭 有斌

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
地球規模の環境変動の中でも,近年観測されている大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の増加は,世界各地で気温上昇・降水量変化・O3濃度増加等の気象・大気環境の変動を引き起こすことが予測されている。これら一次的・二次的な環境変動は農作物や野生植物の生長や生理活性へ多大な影響を与えると考えられ,地球・自然環境の保全上極めて重要である。
 本研究では,これら近未来の大気環境の変動が作物や野生植物に及ぼす影響を,主として生理生態学的に解析するとともに,影響評価手法の開発を検討する。このため,日英両国で,共通な植物種(樹木を含む)を選定し,その光合成初期過程の酵素活性や,同化された糖の代謝・転流を定量する手法を確立し,環境変動の影響について実験的な検討を行う。また,同種の最適な栽培条件を検討し,想定される大気環境変動下における植物の生長や生理生態的反応について比較検討を行う。

〔内 容〕
本年度は,野草であるオオバコ(Plantago major L.)を実験材料植物種として使用した。O3暴露による植物葉の純光合成への影響の制限要因として,気孔・carboxylation速度・ribulose 1,5−bisphosphate(RuBP)再生・triose phosphate利用(TPU)等について定量的に検討した。光化学系II(PSII)の最大光量子収率への影響を明らかにするためにクロロフィル蛍光を計測し,また,ガス交換データを実証するためにRubiscoの活性変化を測定した。O3濃度は夜間の15ppbから日中最高75ppbまで変化を付けながら連続的に暴露し,暴露直後に出現した葉(葉位7)とその後に出現した葉(葉位10)の比較検討を行った。
 実験結果より以下のことが判明した。
(1)O3によるCO2同化(光合成)の減少の初期要因はRubisco活性の低下であることが判明し,これがカルビン回路の他の酵素活性の低下を引き起こし,また,フリーなリンを不足させることが示唆された。
(2)PSII の光量子収率の変化は,O3によるCO2同化阻害と関係しなかった。
(3)O3処理された植物において,気孔コンダクタンスはCO2同化と同様に減少したが,計測された光合成の減少を説明するには至らなかった。
(4)O3による気孔コンダクタンスの変化は,葉面積当たりの気孔数への影響というより,気孔開度の減少によることが判明し,これはO3の気孔複合体への直接的影響や,O3による光合成代謝への影響結果として増加した葉内CO2濃度の影響によることが示唆された。
(5)O3暴露初期に出現した葉(葉位7)ではO3による影響が顕著であったが,暴露後半に出現した葉(葉位10)ではその影響が軽微であるなど,一つの植物個体においても,葉によってO3に対する抵抗性は著しく異なった。
〔発 表〕i−6


(2)衛星からのオゾン層の観測に関する共同研究

〔担当者〕

地域環境研究グループ 笹野泰弘

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
フロン等による成層圏オゾン層破壊は依然として進行しており,今後の変動を監視・研究していくことが重要である。本研究では,フランスで精力的に行ってきた衛星センサーデータの検証のための気球観測実験,オゾン等の大気成分導出に必要な分光パラメータの改良研究の成果を導入し,本研究所で進めている衛星センサーによる成層圏オゾン層の観測を,我が国と仏国との共同でより効果的に推進することを目的とする。このため,本研究所で進めている衛星利用の成層圏オゾン層観測に関連して,フランス側の共同研究機関が実施する地上からの同期観測等による検証及び相補的観測実験データ,オゾン等の分光パラメータの改良のための実験データを入手し,衛星センサーデータの信頼性を評価し,データの科学研究への利用を促進するとともに成層圏オゾン層観測を推進する。

〔内 容〕
ILAS(改良型大気周縁赤外分光計)プロジェクトの一環として,フランス側と共同で実施した検証実験データの解析,ILASデータとの比較解析を行い,ILASデータ質の評価を行った。また,その他の観測データと合わせて,北半球極域でのオゾン層内の窒素酸化物の挙動の解析を行った。
 これらの実施にあたり,フランス側研究者を招へいし共同討議を行った。また,日本側からフランスを訪問し,ILAS検証実験解析評価に関する共同ワークショップを開催した。この結果,ILASデータ質に係る共通認識を持つことができた。また,今後のデータ質改良のためのアルゴリズム改訂に係る指針を得ることができた。
〔発 表〕A−14,20, 21, 46, a−24, 27, f−12, 19


(3)大気環境汚染物質による肺傷害評価

〔担当者〕

地域環境研究グループ 平野靖史郎
環境健康部 野原恵子

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
大気汚染物質に暴露した肺における細胞を用いて,特異的に発現する遺伝子マーカーを探索することを目的とする。日本とフランス両国の研究チームは,肺胞マクロファージや肺胞上皮細胞において発現する遺伝子をクローニングしている。これらの基礎的知見を基に,国際共同研究を通じて大気汚染物質に暴露した肺の遺伝子マーカーを調べることは有意義であると考られる。フランス側では新たに作製した肺上皮細胞を用いて細胞周期に関する遺伝子の発現を調べ,日本側では,肺胞マクロファージと肺上皮細胞の共同培養系において,粒子状物質に暴露した肺胞マクロファージにおける接着遺伝子発現について調べることを目的とする。

〔内 容〕
肺胞腔内において,肺胞上皮細胞と肺胞マクロファージはともに大気汚染物質の直接的影響を受ける細胞であり,炎症的あるいは増殖シグナルを受けたこれらの細胞における遺伝子発現を調べることは,肺における粒子状物質の毒性影響を調べる上で重要である。本研究では,肺胞2型上皮細胞が増殖する際にインシュリン様増殖因子結合タンパク質の2型の遺伝子やタンパクの発現が著しくて低下し,本タンパク質が肺胞上皮細胞の増殖を制御する因子であることが示された。一方,肺胞マクロファージは様々な刺激に対し上皮細胞への接着性が上昇することが知られている。本研究において,セルサイクルにおけるG0−G1トランジションに発現することが知られているkrox−20遺伝子が,肺胞マクロファージの接着時や粒子状物質の貪食時に強く見られることが明らかとなった。さらに一過性ではあるがインターロイキン1遺伝子の発現も肺胞マクロファージの接着時に上昇していることを明らかにした。これらの遺伝子発現を肺における粒子状物質作用の指標として毒性評価を行い,粒子状物質の細胞傷害性krox−20遺伝子の発現間に関係が見られることが明らかとなった。
〔発 表〕B−115,b−211, 212


(4)遺伝子工学を用いた環境汚染物質の生体影響評価手法の開発に関する研究

〔担当者〕

環境健康部 佐藤雅彦・遠山千春・
青木康展・大迫誠一郎

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
様々な環境汚染物質の毒性のメカニズム解明や新たな診断への応用を可能にするためには,生体組織中における遺伝子発現の分析感度および特異性が高い技術を確立することが必要である。環境汚染物質が生体内に取り込まれると,この物質がストレスを引き起こす要因となり,細胞の機能変化,ひいては細胞死をもたらす。本研究では,この毒性発現の過程で生じるストレスタンパク質の中でメタロチオネイン(金属結合タンパク質)に着目して,遺伝子発現の高感度検出法を用いた環境汚染物質に対する生体影響のバイオイメージング技術の構築を図ることを目的とした。

〔内 容〕
重金属や紫外線に対する生体反応で,メタロチオネイン遺伝子の発現を可視化するイメージング技術の構築を図るために,まずメタロチオネインの特異的DNAプローブを作製し,重金属や紫外線を暴露したマウス組織中のメタロチオネインmRNAの発現量をRT−PCR法により測定し,続いて,メタロチオネインmRNAの組織中の局在部位をin situハイブリット形成法により分析した。
 その結果,塩化第二水銀を投与したマウスの腎臓(無機水銀毒性の標的組織)中でメタロチオネインmRNAレベルが無処置群に比べて有意に増加した。しかも,無機水銀毒性の標的部位である腎皮質の近位尿細管上皮細胞でメタロチオネインmRNAの顕著な発現が認められた。一方,塩化カドミウムやUV−Bをそれぞれマウスに暴露しても,カドミウムの標的組織である精巣やUV−Bの標的組織である皮膚でメタロチオネインmRNAレベルは有意な変化を示さなかった。しかしながら,それぞれの標的組織でのメタロチオネインmRNAの局在性を調べたところ,カドミウムの投与によって精巣の血管内皮細胞と間質のライディヒ細胞で,またUV−Bの照射によって皮膚表皮の基底細胞と真皮の繊維芽細胞でメタロチオネインmRNAの発現が認められた。
 以上の結果より,重金属や紫外線による毒性発現の初期の段階で,毒性の標的部位での顕著なメタロチオネインmRNAの発現が認められることが明らかとなった。従って,in situハイブリット形成法による局在部位でのメタロチオネインの遺伝子発現の検出は,環境汚染物質に対する生体影響を評価する際の有用な検出法であることが示唆された。
〔発 表〕E−19,e−39, 48


(5)超音速分子線の質量分析法に関する研究

〔担当者〕

化学環境部 藤井敏博

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
気体試料分子を超音速自由噴流法により,数度Kまで冷却(振動・回転モード的)した分子線(SMB)の特性の解明,電子衝撃イオン化過程の現象解明と,質量分析法への新しい応用開発を研究目的とする。

〔内 容〕
Clイオン源用の大容量(150l/sec)ターボ分子ポンプ付きGC/MS装置を用い,GCとMSとのインターフェース部に550l/secのターボ分子ポンプを付加した超音速自由噴流SMB−GC−MSシステムの設計を行った。
〔発 表〕D−36,37,d−38


(6)環境標準試料の作製と評価

〔担当者〕

地域環境研究グループ 森田昌敏・西川雅高

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
環境モニタリングにおける測定精度向上のために,標準試料を使用することが有効である。また,標準試料作製の過程を通して分析技術の向上や技術移転を計ることを目的とした。

〔内 容〕
中国から日本に飛来する黄砂エアロゾルに関する標準試料を作製した。原料は,バダイジャラン砂漠の東端から採取した800トンの表層土である。その表層土を風力分級のみによって40μm以下の粒子を約6kg集めた。最終的に集めた微細な土壌粒子を2gずつ3000本弱の硬質ガラス瓶に詰めた。コバルト60による滅菌処理後,保証値決定のための分析を協力機関に依頼した。採用された分析法は,ICP発光分析法,蛍光X線分析法,原子吸光法,中性子放射化分析法等である。最終的には,15の異なる分析室間値が得られた。それをGrubbs法による異常値棄却に関する統計処理後,Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Fe,Mn,Ni,Cu,Zn,Sr,Baの計13元素の保証値とTi,P,Scの3元素の参考値を室間標準偏差および平均値を用いて決定した。得られた標準試料をもとに,大気エアロゾルの化学分析が行われており,日中間の測定結果の比較検討に役立っている。
〔発 表〕b−184,187


(7)地球温暖化ガスの土壌,湿地帯等活用したエコエンジニアリング制御システムの開発

〔担当者〕

地域環境研究グループ 稲森悠平・水落元之

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
本国際共同研究は,生活排水を処理する土壌トレンチ,湿地帯からの地球温暖化ガスの発生抑制できるエコエンジニアリングシステムを活用した地球温暖化ガス対策技術を開発し,日本等先進国だけではなく,中国等開発途上国も含めて汎用化することを目的としている。
 中国側のカウンターパートとしての中国科学院応用生態研究所と密接な連携の下で中国の全域への波及効果が期待でき,さらにほかの開発途上国の高度処理システムにおける地球温暖化ガス対策技術開発への貢献も期待される制御システムの開発を重要な位置づけとして研究を推進することとしている。

〔内 容〕
本国際共同研究において得られた成果は,日本側における開発された微量通気方式等を組み込んだ嫌気ろ床・土壌トレンチ処理システムの処理水がBOD9.6mg/l(除去率96%),T−N 11.3mg/l(除去率74%),T−P 0.16mg/l(除去率97%),SS 4.2mg/l(除去率99%)程度の高度な水質であり,特にT−Nの除去率が大幅に向上し,日本の建設省と厚生省等の再利用水の水質基準を十分に満足しており,再利用水としてのリサイクルが期待できることが明らかとなった。また,通気強度として1l/min/m3程度の通気量で本処理システムのCH4,N2OガスFluxは従来型の土壌トレンチと比べるとそれぞれ1/3〜1/2,1/9〜1/6程度に低下することが明らかとなった。さらに中国側における微量通気方式等を組み込んだ嫌気ろ床・土壌トレンチ処理システムもほぼ同様高度処理水質と低CH4,N2OガスFluxを得られ,中国へ応用可能な地球温暖化ガス抑制手法となるものと考えられることから,地域特性に応じた適正条件を確立するための検討を推進していくことが必要であると考えられた。
 本国際共同研究により確立された基礎データと中国に設置されたプロセスから得られた実験結果に基づき,中国の国情に合う生活排水を処理する土壌トレンチからの地球温暖化ガス発生抑制に資するエコエンジニアリングシステムの提案が可能となり,中国側は本国際共同研究を続けて国家重点環境研究課題として検討する予定となっており,本研究所においても中国側と継続して共同研究を行い,実用化を図ることの重要性について両国の認識の一致を見ることとなった。
〔発 表〕B−14,15, 18, 32, 34, 40, b−20, 31〜33, 79, 83, 242, 243, 245


(8)環境大気およびフレーム中の中間生成体に関する研究

〔担当者〕

化学環境部 藤井敏博

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
環境大気及びフレーム中の化学反応機構に関し,中間生成体(主にフリーラジカル)にスポットをあて新しい二つの強力な手法を用いて解明する。素過程の追跡をするという最も基本的なアプローチにより反応機構を明白にすることを研究目的とする。

〔内 容〕
フランス側のmodulated molecular beamタンデム質量分析計(MS・MS・MS)と日本側のLi+イオン付加反応質量分析法よる大気環境およびフレームプラズマ中の安定化学種(最終生成物),中間生成体(フリーラジカル等)およびイオンの高感度同時検出とそれぞれの挙動・役割・関連に関する研究を行った。
〔発 表〕D−35,38,d−39


(9)先端産業関連物質の健康影響に関する共同研究

〔担当者〕

地域環境研究グループ 平野靖史郎
環境健康部 青木康展

〔期 間〕
平成10年度(1998年度)

〔目 的〕
韓国日本両国はともにいわゆるハイテク産業が盛んであり,かつ,ハイテク産業に用いられる希土類元素の世界埋蔵量の8割が中国が占めている。近い将来,極東アジアにおいて,健康問題も含めたハイテク産業関連物質による環境問題が表面化することが予想される。本共同研究では,金属を中心とした新規利用物質の健康影響評価を行うことを目的とする。本研究では,韓国や日本など,極東アジアにおける希土類元素ならびにガリウムヒ素などのハイテク産業関連物質の使用状況と暴露状況を共同で調べる。また,実験動物や培養細胞を用いた実験を主として日本側において行う。

〔内 容〕
韓国,日本,中国におけるハイテク産業関連物質の使用状況と健康影響に関する文献的調査を行った。東アジアにおいてはハイテク産業からの環境汚染はあまり見られないものの,肺がんを起こす可能性が指摘されているヒ素化合物に関してはこれからも調査を続けていく必要性が示唆された。また希土類金属であるイットリウムの肺に及ぼす影響に関する実験的研究を行った。 肺に沈着した希土類金属の半減期は非常に長く,そのため希土類金属を繰り返し暴露した際の肺の炎症応答を調べることは急務とされていた。ラットに塩化イットリウムをあらかじめ気管内投与し,前投与から一ヵ月後に塩化イットリウムをさらに気管内投与して,その後気管支肺胞洗浄を行い肺の炎症応答を調べた。気管支肺胞洗浄液中の乳酸脱水素酵素,グルクロニダーゼ,アルカリホスファターゼ酵素活性やタンパク質量はすべて塩化イットリウムを前投与した群において,対照群より低下しており,前投与により肺がイットリウムに対し耐性になっていることが示された。塩化イットリウムを前投与した群の肺のマンガンタイプのスーパーオキシドジスムターゼ活性は対照群に比べ約2倍に上昇しており,前投与したイット リウムにより肺が酸化的ストレスにより耐性となったため,気管支肺胞洗浄液中の炎症指標の低下につながったものと考えられる。
〔発 表〕B−116,117


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