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国立機関原子力試験研究費による研究(原子力利用研究)


1 環境有害物質が雄性生殖機能に及ぼす影響評価に関する研究


〔担当者〕

地域環境研究グループ 米元純三・曽根秀子
環境健康部 青木康展・大迫誠一郎・宮原裕一

〔期 間〕
平成10〜14年度(1998〜2002年度)

〔目 的〕
我が国においてはかつての公害問題のような激甚な環境汚染は影を潜めたが,人為的な活動に伴い,さまざまな媒体を通して多種類の有害化学物質が放出され続けている。近年,内分泌撹乱作用に基づく有機塩素系化合物などの次世代への影響があらためて提起されており,ヒトの生殖への影響が懸念されている。
 本研究においては,体内のホルモンと類似の作用あるいはホルモンを制御する作用をすることにより正常なホルモンの機能を乱す環境中の内分泌撹乱化学物質(EDCs),ならびに日本人において体内への取り込み量が多い重金属(カドミウム等)が,どのような濃度でいかなるメカニズムにより雄の生殖機能に影響を及ぼしうるのかに関する実験的研究を行う。

〔内 容〕
 異なる系統のマウス,ラットにダイオキシン類あるいは重金属類を投与し,精巣等への蓄積量の解析と,精巣等への影響評価から量−反応関係を明らかにし,系統差,感受性を規定する要因を解析する。また,ダイオキシン類,あるいは重金属の精巣および精子形成への作用メカニズムを精巣特異的タンパクの発現,精巣特異的遺伝子の発現を指標に解明する。
 本年度は異なる系統のラットにダイオキシンを投与し,ダイオキシンに対する生体の反応の鋭敏な指標とされる肝のCYP1A1mRNAの発現を定量的に測定し,系統によりCYP1A1の誘導能に30倍以上の差のあることを見いだした。また,ラットの精巣中のダイオキシン測定の条件検討を行った。

〔発 表〕B−75


2 富栄養化が水界生態系における有害藻類の増殖および気候変動気体の代謝に及ぼす影響に関する研究


〔担当者〕

地域環境研究グループ 稲森悠平

〔期 間〕
平成10〜14年度(1998〜2002年度)

〔目 的〕
 湖沼・内湾等で富栄養化が進行し生態系の遷移が引き起こされ,淡水域ではアオコが,海域では赤潮等の藻類が異常発生している。これらの藻類は温室効果ガスであるCO2を吸収固定化する主要な生物群であることも事実であるが,これらの藻類には多くの有毒物質産生種があることを鑑みた場合,藻類種の制御が重要な位置付けとなり,このような観点から水界生態系における藻類種の遷移機構を解明するには,個体群動態や物質循環を中心とした定量的な解析・評価を行う必要がある。特に,藻類の代謝産物を起点とし細菌類,原生動物などの動物プランクトン類,さらに高次の捕食者へとつながる,いわゆる腐食連鎖系が水界生態系の中で重要な役割を担っていることが知られてきている。そこで,藻類,細菌,原生動物の3種から構成され腐食連鎖構造を持つマイクロコズムを構築し,その系内における炭素循環を放射性同位体をトレーサーとして用い定量化することで富栄養化が水界生態系に及ぼす影響を物質循環と個体群動態の両側面から明らかにすること,さらに生態系の保全や地球温暖化対策に資する生態系モデルの開発を試み健全な水環境を創生することを目的に推進することとする。

〔内 容〕
 腐食連鎖系の構造を再現可能なモデル生態系として,一次生産者である緑藻chlorella vulgaris,細菌類としてPseudomonas putida,捕食者として原生動物のCyclidium glaucomaの3種の既知の生物種から構成されたマイクロコズム系を用い,この系内の炭素循環速度を定量化するために放射性炭素同位体をトレーサーとして添加して検討を行った。その結果,この3種はサイズの異なる3種のフィルターにより分画可能であり,各フィルター上の放射線量を測定し,計算により各生物に移行した放射性炭素量の経時変化を定量化することが可能であることが明らかとなった。そこで,本手法を用いることで,このマイクロコズム系における炭素循環としては,緑藻C. vulgariの光合成によるCO2の炭酸同化を起点とし,光合成時の藻類代謝産物を基質とする細菌P. putidaの増殖と,増殖した細菌の繊毛虫C. glaucomaによる捕食が主な経路であることが示された。また,本マイクロコズムでは培養開始から約2週間以降は個体数変動が非常に小さい安定期となる特徴を有しているが,この安定期においても炭素循環は停止しているわけではなく,藻類の一次生産速度と細菌による代謝産物の取込速度,そして原生動物による細菌の捕食速度は約100:10:1の速度比で炭素循環が起こっていることと同時に,このマイクロコズム系内の溶存無機炭素量をpHとアルカリ度から算出し,放射性炭素量の経時変化の測定値と併せることで炭素移動速度の絶対値を推算することができることが明らかとなった。さらに溶存酸素濃度やpHの連続計測値から求めたマイクロコズム系全体の生産速度と比較検討を行い本手法の精度検証を実施し,富栄養化が水圏の物質循環に及ぼす影響の定量化を行うための基礎データを得ることができた。

〔発 表〕b−63,73


3 環境化学物質に対するバイオエフェクトセンサーの開発


〔担当者〕

環境健康部 持立克身・古山昭子
化学環境部 仲間純子

〔期 間〕
平成7〜11年度(1995〜1999年度)

〔目 的〕
 これまで,化学物質の環境汚染による生体影響の評価は,個々の毒性が危惧される物質について,主として動物実験あるいは培養細胞による毒性試験,および環境中における存在量の調査の手順を踏んで行われてきた。しかし,多くの化学物質が環境中に拡散しその複合汚染が進行している状況では,動物実験の信頼性の高さは認めつつも,迅速性の向上や複合暴露に要する時間や労力等の軽減を考慮に入れた新しい毒性評価系の開発が望まれている。これに対処するには,動物実験と培養細胞の中間に位置する組織同等体を用いた毒性評価系が適当と考えられる。組織同等体とは,生体組織から個別に取り出した各種構成細胞と細胞外基質を組み合わせ,組織と同等の形質を有する細胞培養系に構築したもので,従来の培養細胞の簡便さと迅速性を備えながら,他方生体組織と類似することから局所的な動物実験の特徴も備わっている。本研究では,両者の長所を兼ね備えた組織同等体を,環境化学物質の毒性評価に適した形に構築することを目指す。

〔内 容〕
 肺線維芽細胞(F)を包埋したコラーゲンゲル上にU型肺胞上皮細胞(T2)を播種した細胞培養系(T2−Fgel)は,T2直下に基底膜構造を形成した。また,T2同士は互いに密着構造で結ばれ,大気汚染物質に感受性が高いT型肺胞上皮様に扁平化することから,影響評価に適した肺胞上皮組織同等体と考えられる。この単純化した培養系で,in vivoとどの程度類似の病変を起こすことができるか,モデル実験を行い検討した。材料には,in vivo投与実験から,肺に炎症と線維化を起こし,その過程で基底膜が損傷を受けることが知られているブレオマイシン(bleo)を用いた。
 方法としては,基底膜を形成したT2−Fgelに,0.1 unit/ml bleoを2日間処理し,4日の間隔を置いて再びbleo処理を行った後2週間培養を継続して,基底膜の損傷と肺胞上皮細胞の傷害を観察した。その結果,bleo処理後1日目には,肺胞上皮の傷害及び基底膜の損傷は,認められなかった。4日目には,肺胞上皮のはく離はまだ認められなかったが,基底膜緻密板(LD)が一部断続的になり,基底膜の連続性が失われた。2度目のbleo処理後1日目には,細胞傷害はさらに拡大した。上皮細胞の一部ははく離し,残っている細胞も薄く伸展する傾向を示した。また,広い領域にわたってLDが部分的に失われ,残っているLDの厚さも不均一化した。2週間後には,上皮細胞の扁平化は一層顕著になり,LDは褶曲し厚さも一層不均一化した。このような状況下においても,コラーゲン基質中の線維芽細胞は,移動や増殖等の活動が活発化する様子は認められなかった。
 T2−Fgel培養系に対するbleo処理において,in vivo投与実験と同様に基底膜の損傷を再現することができた。このことは,in vivo投与の際に認められる炎症性細胞の浸潤は,基底膜の損傷に本質的な役割を果たしていないことを示唆する。in vivo投与では,その後上皮の修復と平行して線維芽細胞の増殖と線維化が進行するが,T2−Fgel培養系では,線維芽細胞の活性化を再現することはできなかった。この理由は不明であるが,bleoの濃度が高すぎて線維芽細胞の傷害が大きいためか,あるいは炎症性細胞が放出する成長因子や走化性因子が線維芽細胞の活性化に関与している可能性が考えられる。

〔発 表〕E−45,e−11, 56〜58


4 大気汚染物質の生体影響機構の解明と耐性植物の作出に関する研究


〔担当者〕

生物圏環境部 佐治 光・久保明弘・青野光子
地域環境研究グループ 中嶋信美・玉置雅紀

〔期 間〕
平成6〜10年度(1994〜1998年度)

〔目 的〕
 大気汚染物質は,それ自身が生物に対して毒物として作用するだけでなく,酸性雨や地球の温暖化などの原因となることから,その除去は環境保全上重要な課題である。一方植物には大気汚染物質を吸収,除去する能力があるため,大気汚染物質の生体に及ぼす影響を解明しつつ,植物の吸収能や耐性を高めることにより大気浄化に積極的に活用していくことが期待される。
 これまでの研究により,オゾンや二酸化硫黄などの大気汚染ガスと接した植物では,エチレンが発生しており,これが植物に生じる障害と深くかかわっていることが示唆されている。さらに,この大気汚染ガスによるエチレンの生成は,その生合成のキーエンザイムであるアミノシクロプロパンカルボン酸合成酵素(ACS)の活性化によってもたらされるらしいことが示された。そこでこの酵素の遺伝子を植物から単離し,その構造や発現を調べるとともに,遺伝子操作により大気汚染耐性植物の開発を試みる。

〔内 容〕
 大気汚染耐性植物作出法の開発を目的に,植物の大気汚染感受性に関与するエチレンの生合成の遺伝子操作による改変を試みた。トマトから単離した,オゾン誘導性ACSのcDNAを,カリフラワーモザイクウイルス35SプロモーターまたはGelvinらによって開発されたスーパープロモーターの下流にアンチセンス方向につないでベクターに組み込み,リーフディスク法を用いてトマトやタバコに導入した。得られた組換え植物について,ノーザン解析を行った結果,35Sプロモーターを用いたものでは導入した遺伝子の発現によるmRNAの存在が確認されたが,スーパープロモーターを用いたものでは,mRNAが検出されなかった。次に,遺伝子発現のみられた,35Sプロモーターを用いた方の組換え植物を,0.2ppmのオゾンと接触させ,生じた障害の程度を,タバコの場合には葉面上の可視障害部位の面積率で,またトマトの場合には単位面積当たりの葉組織の重さを指標に調べたところ,組換え体の系統により様々なオゾン感受性を示すことがわかった。エチレン合成の抑制により植物のオゾン耐性が高まることが予想されるため,現在,対象の非組換え体よりも高い耐性を 示した系統に重点をおいて,その再現性やACS遺伝子の発現量,エチレン生成量などとの相関を調べている。
〔発 表〕B−94


5 西シベリア大低地から発生するメタンの起源同定のための計測技術の開発に関する研究


〔担当者〕

地球環境研究センター 井上 元
大気圏環境部 高橋善幸
地球環境研究グループ 町田敏暢
名古屋大学 森泉 純

〔期 間〕
平成6〜10年度(1994〜1998年度)

〔目 的〕
自然発生源からのメタンは大気中の二酸化炭素中の濃度を反映した放射性炭素を含んでおり,天然ガスを起源とするメタンはすでに放射能を完全に失っている。この明瞭な違いを利用して,大気中メタンに含まれる放射性炭素同位体の濃度を測定することにより,湿原からの自然発生量と,化石燃料からの人為発生量との割合を求めることができる。

〔内 容〕
 平成8年8月初旬および平成9年2月に西シベリアのスルグートおよびポロトニコボにおいて,航空機により75m,2,000m,6,000mの高度で大気を1m3サンプリングしたが,全20サンプルの14C分析を終了した。高度6,000mのサンプルは1.8ppmのメタンに130pMの14Cを含んでおり,これをバックグラウンドと考える。スルグートで冬季に採取した試料は3.2ppmのメタン濃度で,14Cは82pMしか含まれていなかった。これらのデータから,バックグラウンドに対して加わったメタンの80%は14Cを含まないメタンであると結論づけられる。ロシアでの天然ガス採掘・輸送量は12月から3月にピークを持ち,この時期の漏洩量が多いことが別の調査で明らかになった。したがって,冬季にバックグラウンド濃度に対し加わったメタンは,天然ガスのパイプラインからの漏れに起因すると考えられる。


6 GC−AMS:加速器による生体中,環境中微量成分の超高感度追跡手法の開発


〔担当者〕

化学環境部 柴田康行・田中 敦・
米田 穣・久米 博
地域環境研究グループ 森田昌敏

〔期 間〕
平成9〜13年度(1997〜2001年度)

〔目 的〕
 14C等の放射性同位体は,生体中の様々な物質代謝経路の追跡のためのトレーサーとして,また環境中の汚染物質の起源を探る有力なパラメータとして(現生生物が14Cを一定濃度含むのに対し石油石炭起源の物質は含まない)重要な役割を演じている。しかしながら,従来の方法では,目的とする14C含有物質を手間をかけて分離・精製し,その中に含まれる14C量を液体シンチレーションカウンター等の感度の低い分析手法で測定して追跡を行っていた。本研究では,14C等の長寿命放射性同位体の先端的高感度分析手法である加速器質量分析法(AMS)と,微量成分の高度な分離手法である多次元ガスクロマトグラフ(GC)とを組み合わせて,生体中,環境中の微量化学物質中の微量放射性同位体を個別に追跡できる,新しい高感度な分析システムを開発することを目的とする。

〔内 容〕
 平成10年度には,引き続きガスイオン源の実用化に関する研究を継続し,微量試料の手動導入装置を設置してイオン化に与えるキャリアガス流量など各種パラメータの条件検討を開始した。また,分取キャピラリーカラムガスクロマトグラフ(PCGC)及び大量試料導入システムを用いて,環境中の微量成分を単離するための条件検討を進めた。最適化された条件で炭素数の異なる一連のn−アルカン(n−パラフィン)を含む試料を繰り返し注入して各化合物のリテンションタイムの再現性を確認した結果,C28前後より軽い成分では1秒以下のバラツキで再現性良く繰り返し分離の可能なことが確認できた。以上の結果をもとに津波堆積物や底質試料などいくつかの堆積物試料を入手し,各成分分離のための条件検討と最適化を進めた。

〔発 表〕D−9

 


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