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2019年4月25日

海洋植物プランクトンの多様性と重金属への感受性の違い

コラム4

プランクトンの顕微鏡写真
図4 外洋性植物プランクトンの例
左上は珪藻、右上は2種の円石藻、左下はシアノバクテリアの一種シネココッカスの細胞、右下は緑色藻バチコッカスの細胞の光学顕微鏡写真を示しています。スケールバーの長さは2μm。

 海洋や湖沼にいるプランクトンは肉眼で観察できるものから顕微鏡でなければ見えないものまでを含む様々な浮遊生物の総称です。そのうち、特に光合成を行い水圏の基礎生産を担っているプランクトンを植物プランクトンと呼んでいます。例えば外洋の表層域では、プロクロロコッカスやシネココッカス(図4左下)など、シアノバクテリアに属する微小な植物プランクトンがよく見られます。また、真核生物の植物プランクトンでは、緑藻の仲間であるプラシノ藻(図4右下)、ハプト藻の仲間である円石藻(図4右上)、ガラス質の被殻をもつ珪藻(図4左上)がよく見られます。これらの代表的な植物プランクトンをとってみても分類学的には全く異なるグループで、実はこうしたプランクトンの多様性の実態や生態はよくわかっていません。  

 海底資源掘削によって採掘される鉱石からは様々な種類の金属イオンが溶出することがわかっています。溶出した重金属の拡散により、外洋環境に生息している多様な植物プランクトンが影響を受ける懸念があります。しかしながら、拡散した重金属が植物プランクトンの群集構成にどのような影響を及ぼすのか、あまりよくわかっていません。国立環境研究所・微生物系統保存施設には4000株近い微細藻類の保存株が維持されています。植物プランクトンの代表的なグループはほぼ網羅されており、その中には海産の保存株も多数含まれています。これらの保存株を利用することで、個々の藻類群に対する重金属の感受性試験を実験室レベルで行うことができます。遅延発光と呼ばれる毒性感受性のパラメータを用いて、海底鉱石の中で特に溶出が顕著な亜鉛、鉛、銅の感受性試験を行った結果、重金属に対する感受性が種ごとに大きく異なることがわかりました。例えば、バイオアッセイの試験株として用いられているシアノビウム (NIES-981)は亜鉛と銅に対して鋭敏に応答します。一方で、エミリアニア(NIES-1310)のようにどの金属にも耐性をもつ種もいました。重金属に対して脆弱である種とそうでない種の存在が示唆されたため、種組成の変化を含めたモニタリングが必要と言えます。

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