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2018年12月27日

人口分布に関係する地域の問題(2):高齢の交通弱者

コラム5

 近年、高齢者による自動車事故を減らすため、高齢者の免許自主返納が勧められています。しかし、公共交通が不便な地域では、自動車が運転できないと、病院への通院や買い物、親戚に会いに行くのも難しいことがよくあります。一般に、人口密度が高い場所は公共交通の便が良く、低い場所は不便な傾向があります。私たちの分析によると、1kmメッシュ人口が2,966人以上であれば1時間に1便以上のバスが発着している傾向が見られました。

 多くの市町村で人口減少が進んでいますが、市町村の中で人口密度の高い場所を残す場合と残さない場合で、公共交通が維持できるかどうかが変わってきます。2010年時点の東京大都市圏(図6の範囲)を見ると、東京から50km圏外では、高齢の交通弱者(交通不便地域に住む高齢者)はすでに54万人(高齢者の41%)もいます。このままの傾向で人口が減っていくと2040年には109万人(高齢者の58%)もの交通弱者が見込まれます。図6は、2040年の首都圏で高齢の交通弱者がどこにどれだけいるかを推計したものです。交通弱者を減らす観点からも人口分布を適正に誘導する長期的な備えを行う必要があると言えます。

交通弱者数の推計結果の図
図6 2040年の高齢の交通弱者数の推計結果
65歳以上の高齢者のうち、「交通不便地域(鉄道駅から1km以上離れていて、1時間に1便以上発着するバス停がないメッシュ)」に住む人口を『高齢の交通弱者』と定義してメッシュ単位で算出しています。