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2016年12月28日

草原の過放牧

コラム3

 世界中多くの草原には家畜が放牧されています。家畜放牧量や放牧様式などによって、草の成長が異なり、草原の炭素収支も変わります。家畜放牧または野生動物が非常に少ない場合、草の種間競争が起こり、成長が旺盛な種類ばかりが残るようになって、草の種類は少なくなります。草原の生物多様性が低下することは、環境の変化に対して安定性も弱くなり、草の成長も悪くなると言われています。適正な強度の家畜放牧なら、草原の生物多様性が高まるとともに炭素収支も安定します。また、土壌炭素が溜まる可能性も高く、草原を持続的に利用することができます。家畜の量がさらに増えると、草の成長が家畜の餌の量に追いつかなくなります。すると植物成長が急速に悪くなり、草原の植被(植生)が薄くなり現存量も大きく低下します。これを過放牧と言います。

 過放牧をすると、植物による炭素吸収量が減少するだけでなく、植被の減少で地温が上がることにより土壌中有機炭素の分解も加速します。場合によっては、草原の砂漠化が進行します。また、生育する植物の種類が変わり、減少します。それに伴い、土壌動物や微生物の組成も変わります。その結果、草原の生物多様性が大きく低下することになります。

図3 過放牧と草原の炭素収支_1 (クリックで拡大画像を表示)
図3 過放牧と草原の炭素収支_2

図3 過放牧と草原の炭素収支
青海・チベット草原では、主にヤクや、羊が放牧されています。家畜の量が増えると、植物の生産量が減ります。詳しい因果関係は究明されていませんが、植物の成長または温暖化などによって、草原ではネズミなどの動物が増えます。草原土壌は土壌動物によって掘り返され、強風によって飛ばされます。極端な場合、砂地や砂漠になることもあります。このような過程に伴って、草原土壌炭素の蓄積速度と蓄積量が大きく低下することが予想されます。

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