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2016年12月28日

草原と草原生態系

コラム1

 私たちの身の回りには、松のような樹木や、庭の雑草のような草本植物があります。一般的に草原とはススキのようなイネ科の草が多いところをいいますが、草原の「原」は、広く平らな地形を意味するので、草原は広い草の土地ともいえます。広い意味では、樹木以外のすべての草が多い「原」は草原になります。このような広義的な草原には、湿原や水草地、また草が繁茂している泥炭地なども含まれます。これに対して、面積が比較的小さい草の生育する場所は、「草地」といいます。草地は、牧草地や採草地のように、農学や畜産業などで使う場合が多いようです。

 自然草原は、乾燥した場所や低温の場所、または乾燥かつ低温の場所に生育する植生です。温帯地域では、一般的に年間降雨量が300~400 mmを超えると森林になり、100 mm以下では砂漠になり、森林と砂漠の間では草原植生が成立します。

 また、降雨量と気温の変化によって、いろいろなタイプの草原ができます(図1.上下写真)。たとえば、温帯のステップ草原、寒帯地域のツンドラ、または熱帯のサバンナなどの草原があります。

 定義の仕方にもよりますが、草原の面積は陸域面積の5分の1から4分の1と大きく変わります。最近の衛星データを調べた結果、図1中央の地図のように草原は分布し、その面積はおよそ世界陸地の24%を占めます。日本は、森林の国といわれるほど森林の面積が大きいのですが、草原の面積も国土の5%程度を占めます。アメリカ、オーストリア、中国やモンゴルなどの国は、いずれも草原の面積が森林に比べ広く「草原の国」ともいいます。

 草原は、草だけではなく低木も生えており、さまざまな動物や家畜、そして人間も生活しています。草原に生活しているすべての生物とその環境(たとえば草原土壌)を含めた場合、草原生態系といいます。世界中の草原生態系は、ほとんど何らかの人為的な活動があります。いわゆるまったく人為的な影響のない「自然」草原生態系は、非常に稀です。青海・チベット高原の一部の「無人」地域には、残された自然草原があると思われます。草原地域の人為活動は、牛や羊などの家畜の放牧や畜産業が多いですが、最近、農産業や観光なども多く行われるようになっています。

図1 世界草原の分布と青海・チベット草原の風景
上下写真:さまざまな草原 1. 青海メド草原、2. チベット湿地草原、3. モンゴルステップ草原、4. コロラドの短草草原、5. ボリビア高山草原(筑波大学廣田充撮影)、6. オーストラリアサバンナ草原(東京農工大学赤坂宗光撮影)中央地図:世界の草原の分布(Dixon など(2014)を改変)

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