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研究者に聞く!!

写真左:柴田康行/ 環境計測研究センター・上級主席研究員 写真右:環境スペシメンバンキングを担当する「タイムカプセルチーム」

写真左:柴田康行/ 環境計測研究センター・上級主席研究員

写真右:環境スペシメンバンキングを担当する「タイムカプセルチーム」

国立環境研究所では環境の状態を監視し、必要に応じて警告を発したり、解決に向けた研究を進めたりしています。また、将来起こるかもしれない環境問題や新たな汚染に備えて、様々な環境試料を長期保存しています。この研究に取り組んでいる環境計測研究センター上級主席研究員の柴田康行さんに、研究の意義や成果などについてうかがいました。

環境の今を封じ込め、未来に伝える

環境試料を長期に保存する理由

Q:環境スペシメンバンキングとは、どんな活動ですか。

柴田:環境試料(EnvironmentalSpecimen)を銀行(Bank)のように長期に保存することから、英語の発音をそのまま文字にして、施設を「環境スペシメンバンク」、保存活動を「環境スペシメンバンキング」といいます。私たちは環境の状態を把握し、監視するために、試料を集めて分析しています。その一部を保存し、将来のより進んだ科学技術で過去の分析結果の検証や対策の効果を確認し、新たな情報を引き出すことが目的です。現在の環境の状態を封じ込め、未来に伝えるという意味をこめて、国立環境研究所のスペシメンバンクを「環境試料タイムカプセル」と呼んでいます。

Q:なぜ、試料を長期保存する必要があるのですか。

柴田:科学技術が進歩し、経済が発展する一方、20世紀の後半になると重金属や化学物質による環境汚染が大きな社会問題になりました。PCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシンなど問題になった化学物質は、対策を講じるとともに環境モニタリングを精力的に進めています。また、前回の環境儀で紹介したように、製造・使用前の毒性チェック体制の研究も進んでいます。しかし、数万種類もの化学物質の中には、まだ気づかれない毒性をもつもの、発がん物質や内分泌かく乱化学物質のように、曝露されてから影響が現れるまでに長い時間がかかるものが含まれている可能性があります。このようなことも考えて、試料を保存し、将来にわたってその影響を監視することが大事です。

Q:時間がたてば状況も変わるでしょうね。

柴田:分析技術は格段に進歩し、毒性情報も増えます。過去の試料を保存しておけば、以前に見逃した細かい汚染の状況を知ることができ、生物への影響もより的確に評価できます。新しい問題が起こったときに、遡って過去の状況を知ることもできます。これまでの規制や対策の効果を、将来の進んだ科学技術で検証し、改良すべき点を見出すことにも役立つでしょう。

Q:スペシメンバンキングは環境モニタリングのよいバックアップということですね。

柴田:そうです。スペシメンバンキングは環境モニタリングを補強する役割を果たしています。難しいのは、科学技術が進歩した将来に役立つように、どのような試料を集め、どのように保存しておくかです。スペシメンバンクも増えてきましたが、クジラやアザラシからミミズや木の葉まで、特色ある試料を集めています。

Q:国立環境研究所では、いつからスペシメンバンキングを行っているのですか。

柴田:1979年からで、もう30年以上続いています。私が研究所に入所したのは1982年で、その後いろいろな研究者と一緒にスペシメンバンキングに関わっています。研究を始めた頃は、ドイツや米国などの先行研究を参考にした模索が続きました。2002年に環境試料と絶滅危惧生物の遺伝資源を保存する環境試料タイムカプセル化事業が始まり、タイムカプセル棟が2004年に完成して転機を迎えました。

タイムカプセル棟の完成で長期保存が本格的に

Q:サンプルはどのくらいの期間、保存するのですか。

柴田:人の二世代に相当する数十年間保存することを目的として、保存施設をデザインしました。

Q:ずいぶん長期ですね。

柴田:発がん物質には、影響が出るまでに長い場合で30〜40年かかるものも知られています。内分泌かく乱化学物質では、胎児期や赤ん坊の時の曝露の影響が大人になって現れる場合もありました。さらに化学物質の二世代後への影響も懸念され、試験法が開発されたことが背景にあります。長期間、試料を安定に保存するために、低温でかつ光や酸素のない条件が求められます。タイムカプセル棟では液体窒素を底にためた大きな金属製断熱容器の中で試料を保存しています(トップページの写真)。容器内は窒素ガスが充満し、−160℃に維持されています。そこに均質化した試料を保存します。また、−60℃の大型の冷凍室が2室あり、丸ごとの生物試料や大気粉じんなどを保存しています(図1)。

図1 試料の保存温度

■図1 試料の保存温度

生物試料や底質試料などを変質させないように注意しながら、数十年もの長い間、安定に保存するためには、できるだけ低い温度で光や酸素による作用をおさえて保存することが重要です。動物の体はたくさんの水を含んでいます。純粋な水なら0℃で凍りますが、タンパク質などの生体分子に接する水は−20℃でも凍らないため、長い間には変質が避けられません。−60℃前後まで下げると塩やタンパク質などを含んだ水もほぼ凍り、変質も起こりにくくなるので、マグロなどを長期保存する冷凍倉庫にはこの温度帯が使われます。理論的には、氷の結晶構造が相転移を起こす最低温度である−135℃より低い温度がもっともふさわしいといえます。タイムカプセル棟では、液体窒素で冷やされた上部の空間(−160℃)で、光も酸素も遮断した状態で均質化した生物試料を長期的に保存するとともに、マグロの冷凍倉庫と同じ−60℃で生物丸ごとや底質を保存する体制をとっています。



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