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研究者に聞く!!

共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞のナノ粒子取込み過程の解析

体内を移行する?

Q:ナノ粒子が肺に入るとどうなるのですか。

平野:粒子の大きさによって、粒子の挙動が違います。ナノ粒子よりかなり大きいサイズの粒子(2.5〜10μm)は、気管や気管支に沈着し、その後、痰たんとともに排出されますが、それより小さい2.5μm以下のものは肺胞に沈着します。肺胞に入った粒子は、異物として捉えられ、白血球の一種であるマクロファージに食べられて肺胞表面から除去されます。このマクロファージの粒子除去作用を「貪食」とよんでいます。ところが、それらの粒子よりさらに小さいナノ粒子は、組織を比較的簡単に透過することができるので、肺胞壁を透過して血管内へ直接移行する可能性があるといわれています(図2)。

環境ナノ粒子やナノマテリアルは、粒子状物質として呼吸器から体内に取り込まれることが考えられます。これらの基本粒子サイズは1〜100nm、すなわち0.001〜0.1μmになります。これまで、粒子状物質の呼吸器における沈着や除去(クリアランス)は、主として、喉頭より下部気道に侵入する10μm以下の粒子と、肺胞領域にまで達しやすい2.5μm以下の粒子について研究されてきました。これらの粒子は、呼吸器に沈着した後、粘液・繊毛作用によりたんとして、あるいは肺胞マクロファージという白血球系の細胞が細胞内に取り込むこと(貪食)により呼吸器から除去されることがわかっていました。しかし、粒径が0.1μm以下にまで小さくなると、粒子が肺の組織そのものを通過して血流などに移行し、これまでと異なる生体作用を示すのではないかと危惧されています。

図2 肺に沈着した粒子のクリアランス機構

■図2 肺に沈着した粒子のクリアランス機構

Q:血管に入れば、体内のあちらこちらに移行するかもしれませんね。

平野:心臓まで移行して、循環器機能に影響することも懸念されています。必ずしも吸い込んで体内に入るナノマテリアルばかりとは限りません。たとえば、日焼け止めクリームや消臭スプレーなどは、皮膚から体内への侵入が考えられます。そして、粒子のサイズが小さいということは、従来の材料に比べて、重さあたりの粒子の個数が多くなるので、生体成分や細胞と接する表面積も大きくなり、強い生体反応を起こす可能性があります。

Q:同じ重さだったら、ナノマテリアルのほうが生体と反応しやすいということですか。

平野:そうです。でも、ナノマテリアルの毒性に関する情報はまだとても少ないのです。小さすぎて測定するのが難しい上に、粒子同士がすぐにくっついてしまい、その物質の影響がよくわからないのですよ。

Q:健康への影響を調べるといってもずいぶん難しそうですね。

平野:今のところ、ナノマテリアルを規制するといっても化学物質としてしかできません。安全だとされていた物質でも、粒子の大きさや形状が違えば生体への影響が変わります。だから同じ化学物質でも、物性としての影響を評価しなければなりません。それで、まず2006年から研究してきたディーゼル排気ナノ粒子とアスベスト、ナノマテリアルの体内での動態やカーボンナノチューブの生体への影響を検討しました。

アスベストより細胞毒性が強いカーボンナノチューブ

Q:なぜ、カーボンナノチューブを調べたのですか。

平野:カーボンナノチューブは、細長い円筒状の構造をした炭素の同素体です。機械的な強度も高く、電気伝導性もよいので、さまざまな素材に使われています。ところが、アスベストと同様に繊維状で分解されにくいため、生体への影響も似ている可能性があるといわれています。すでに使われている物質に健康影響があったら大変ですから、急いで調べることにしたのです。

Q:どんな実験をしたのですか。

平野:まず、カーボンナノチューブをマウスの腹腔や気管に投与しました。約1年後のマウスの肺組織を観察すると、肺の拡張を妨げるように漿膜が厚くなっていました(図3)。

カーボンナノチューブはアスベストに極めて近い形状をしています。アスベストは肺組織を透過して肺と胸郭の間(胸腔)にまで達することが知られています。そこで、カーボンナノチューブをマウスの胸腔内に直接投与して肺組織にどのような変化が起こるのかを調べたところ、(a)図に示した対照のマウ スの肺に比べ、(b)図において矢印で示したように、カーボンナノチューブを投与したマウスでは、肺をつつんでいる漿膜(中皮)が肥厚していることがわ かりました。

図3 カーボンナノチューブを胸腔内投与したマウスの肺組織

■図3 カーボンナノチューブを胸腔内投与したマウスの肺組織

Q:やはり肺への影響が大きかったのですね。

平野:ええ、肺腫瘍が発生した個体もありましたが、より詳細な研究が必要です。さらに、カーボンナノチューブをマウスに吸入させると、肺胞のマクロファージがカーボンナノチューブを取り込んでいることがわかりましたし、培養したマクロファージにカーボンナノチューブを添加すると、非常に効率よく細胞内に取り込まれることがわかりました。



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