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研究者に聞く!!

写真左:中村泰男/地域環境研究センター・海洋環境研究室室長 写真右:金谷弦/同研究室研究員

写真左:中村泰男/地域環境研究センター・海洋環境研究室室長

写真右:金谷弦/同研究室研究員

干潟は、多くの底生生物が暮らしており、干潟に供給されるプランクトンや有機物などさまざまな物質を「処理」しています。そのため、水質浄化の場として、また魚や鳥の餌場として重要だといわれています。しかし、この数十年の間に埋め立てや開発が進み、日本各地の多くの干潟が失われました。干潟の生態系の研究に取り組む海洋環境研究室室長の中村泰男さんと同研究員の金谷弦さんにお話をうかがいました。

干潟の生き物のはたらきを探る

残された干潟を保全する

Q: 研究のねらいは何ですか。

金谷:富栄養な内湾域に発達する干潟をフィールドにして、二枚貝や巻貝、ゴカイ類など底生生物(ベントス)を中心に干潟の物質循環について研究しています。特に、有機物や栄養塩がどのような経路で、ベントスや微細藻類に利用されているのかに注目しています。また、干潟のどこにどのようなベントスが生息しているか、ベントスがどの時期にどれくらいいるかについて、生息環境の変動との関連を調べています。

中村:金谷さんは、干潟の生態系の全体像を把握しようとしています。一方、私は、日本の干潟を特徴づける個々の生物種の保全も重要だと考えています。例えば、ハマグリは日本の砂っぽい干潟の代表的な生物で、かつてはたくさんいましたが、今は激減しています。さらに、大陸から大量に輸入されている別種のハマグリが日本の干潟に侵入する可能性もあります。ハマグリの生態については不明な点が多いのですが、それを明らかにすることで、日本古来のハマグリを干潟によみがえらせたいと考えています。

Q: 干潟研究を始めたきっかけは。

金谷:大学の卒論で干潟の研究をしたのがきっかけです。いろいろな生き物が、他の生き物や環境と関わりあって、干潟というシステムができあがっていく。そんな干潟の生態系がおもしろくて、15年以上も研究を続けています。

中村:私は大学院で無機化学を専攻したのですが、1979年に国立公害研究所(国立環境研究所の前身)に入所してから海の生き物の研究に携わるようになりました。赤潮の研究から始まり、海洋生物と環境の関わりをずっと研究しています。干潟に深く関わったのは、6年前にハマグリの研究を始めてからです。

干潟特有の生物たち

Q: 干潟の調査はどうやって行うのですか。

中村:私は有明海の干潟に行くことが多いのですが、そこではひたすら砂を掘って、ハマグリの採集をします。生態を調べるためにはたくさんの数が必要なので、数時間掘り続けることもあります。

金谷:主なフィールドは東京湾や仙台湾、伊勢湾の干潟やヨシ原です。私の場合、定量採集といって、ある一定面積に生息する生物を全て採取することが多いです。干潟の中の調査地点を何か所も回って、コアサンプラーやコドラート(一定面積の底泥を採取するためのパイプ状の採泥器・四角形の枠)を水の底においてそこにいる生物を集めたりします。調査は1年中行い、季節による変化を調べます。調査は潮が引いている時間帯に行いますが、春から夏は昼間に、秋から冬は夜中に潮が引きます。夏はとても暑いし、冬は寒いし、そこはつらいところです。

Q: 季節によって潮の引く時間がずいぶん違うのですね。干潟はどんな環境なのでしょうか。

金谷:干潟は場所によってだいぶ違います。大きな干潟があれば小さな干潟もある。タイや韓国には、沖合数キロまで続く広大な干潟もあるんですよ。

中村:砂の干潟もあれば泥の干潟もあります。

金谷:河口に近い干潟は、淡水と海水が混じりあうため(汽水域)、塩分条件も干潟によって大きく違います。

中村:干潟によって環境もさまざまなので、生き物の種類もだいぶ違います。

金谷:そこが干潟のおもしろいところですけれど、出現する生物の種数他の生息場所、例えば沿岸域の砂泥底や岩礁域と比較してそんなに多い訳ではありません。干潟は環境変動が激しいので、多くの海の生き物にとっては非常にシビアな生息環境です。しかし、シビアであるが故に、ストレスに耐えうる種が非常に高密度で生息することがあります。

干潟に流れ込んだ栄養塩や有機物は、微細藻類やバクテリアに利用され、底生生物に食べられます。底生生物は、さらに別の生物に食べられます。

図1 干潟での「食ったり─食われたり」

■図1 干潟での「食ったり─食われたり」

Q: 干潟にはどんな生物がいるのでしょうか。

金谷:干潟によって異なりますが、多毛類や二枚貝、カニの仲間やヨコエビ類、アナジャコなどが多いです。多毛類とはゴカイの仲間のことで、なかなか目に付きにくいのですが、たくさんいます。水中や泥の表面には、珪藻などの小さな藻類がいますし、干潟の後背湿地にはヨシやシオクグなどの塩性植物も生えています。ベントスは微細藻類を食べ、さらにベントスを餌とする魚や鳥が集まってきて、多様な「食ったり─食われたり」の関係が成り立っています(図1)。
干潟は、川から流れてきた有機物や生活排水が流入しますので、栄養がたっぷりある場だとも言えます。ベントスは、環境中の有機物を食べて除去してくれるので、環境の浄化にも役立っています。私は、震災前から仙台市の蒲生潟で継続的に調査をしていましたが、干潟には非常に多くのベントスが生息していました。特にイソシジミが多くて、1平方メートルあたり2千個以上が生息している場所もありました。手で砂を掘ると、ザクザク出てきます。

中村:イソシジミって、美味しくないんだよね。

金谷:いや、あの、どちらかと言えば僕は好きですが…。まあそれはさておき、2011年3月の津波により、ヨシ原が8割ほど流失しました。干潟の砂も流され、アサリなどの二枚貝はほとんどいなくなりました。8月の調査時には、ゴカイの仲間やヨコエビ類が大発生していました。これらの種はライフサイクルが短く、多くが1年中繁殖します。彼らは他の生き物のいない干潟に住み着き、資源を独占して急速に増えたと考えられます。また、秋になると他の種でも徐々に回復してきたものがいました。かかる時間は種によって異なりますが、生息環境が元に戻れば生物相も回復すると予想しています(図2)。

宮城県仙台市の蒲生干潟では、津波により多くの底生生物が著しく減少しました。しかし、底生生物の中には、数か月間で生息密度を回復した種もいました。

図2 津波による干潟への影響

■図2 津波による干潟への影響

Q: 干潟が減っているそうですが、生物の様子はどうですか。

金谷:ここ100年ほどの間に、埋め立てや護岸工事などでかなりの干潟が失われました。私が現在研究している東京湾の大井人工干潟は、人間が作った干潟ですが、出現するベントスの種数は近くの天然干潟とさほど変わらないようです。干潟の生き物は非常にたくましいので、住む場所をつくれば、ある程度は戻ってくるのです。しかし、大井干潟のヨシ原には、カワザンショウガイ類やアシハラガニが全く出現しません。ベントスの生息環境を人間の手で完全に復元することは、やはり難しいのだと思います。ホンビノスガイやコウロエンカワヒバリガイといった外来種が多いのも、東京湾奥部の干潟の特徴ですね。



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