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オゾン層モデル研究、世界の視点と動向

研究をめぐって

 オゾンホールの発見を端緒とした成層圏オゾン層の保護をめぐっては地上、観測気球、衛星による観測とデータ解析、それらの科学的知見に基づく世界規模のフロン規制が進んでいます。
 そして、今、世界中の大型コンピュータを使った数値モデルによるオゾン層の将来予測が次々と新たな知見を発信しています。

世界では

 1984~1985年にかけての日本の忠鉢繁とイギリスのファーマンによる南極オゾンホールの報告以来、オゾンホールは毎年南極の上空でその発生が確認されています。そして、そのオゾン減少の様子は人工衛星や地上に設置されたドブソン分光光度計によって観測・記録され続けています。この人類が初めて経験するオゾン層の大規模な減少に対し、大気化学、大気物理、大気放射、フィールド観測、衛星観測、データ解析を専門とする世界中の科学者がそのメカニズムの解明に取り組みました。この活発な研究活動によって得られたオゾン層破壊に関する科学的知見は、1987年のモントリオール議定書の採択とそれに引き続く改訂の重要な根拠となり、フロン・ハロン規制という形で先進諸国の政策に生かされ、それによって大気中のフロン・ハロン量は減少を始めつつあります。こうした科学と国際社会との迅速で密接な連携により、今まさにオゾン層はその減少に歯止めがかかろうとしているのです。

 一方、これらの科学知識を集大成して組み立てられた数値モデルを用いてオゾンホールの再現シミュレーションを行い、どのような個々のプロセスがどのようなタイミングで組み合わさって南極上空での大規模なオゾン破壊が起こるのかについての検証が行われ、さらにこうしたモデルを用いて将来のフロン・ハロン放出シナリオに基づいたオゾン層の将来予測実験が行われています。初期の数値モデルは、地球の周りの3次元大気を経度方向に平均し緯度-高度面でのオゾン分布を計算する2次元化学モデルといわれるものでしたが、最近のコンピュータの処理能力の向上により、3次元大気をそのまま表現する3次元化学モデルが主流になりつつあります。3次元モデルによって経度方向の変動が激しい極域のオゾンの輸送と破壊プロセスをより的確に再現することが可能になりました。2002年の国連環境計画(UNEP)/世界気象機関(WMO)発行のオゾンアセスメントレポートに3次元化学気候モデルによるオゾンホールの将来予測結果が初めて登場し、CCSR/NIES化学気候モデルは、2050年までの連続計算を行った数少ないモデルの一つとして紹介されました。その後の2006年のUNEP/WMOオゾンアセスメントレポートでは、CCSR/NIESを含む世界で11のオゾン層将来予測モデルの結果が紹介されています。また、WMOの下で化学気候モデル検証(CCMVal)という国際プロジェクトが2003年から始まり、3次元化学気候モデルを使ったオゾン層変動と気候変動に関する研究を行っています。国立環境研究所はこのプロジェクトに設立当初から参加しています。

2003年にドイツで行われた成層圏化学気候モデルの会議の写真
2003年にドイツで行われた成層圏化学気候モデルの会議参加

日本では

 日本では、国立環境研究所が東京大学気候システム研究センターと共同で、CCSR/NIES気候モデルをベースに3次元化学モデルの開発を1990年代後半から始めました。当時は、オゾンホールを再現しオゾン層将来予測のできる3次元化学モデルというものは国内にはなく、その開発は国内における初めての試みでした。数々の困難を克服し2000年代に入ってようやくその最初のバージョンが完成し、このモデルを使ってオゾン層の将来予測実験を行いました(2002年のUNEP/WMOオゾンアセスメントレポート)。その後、モデルにおける化学・力学両プロセスの改良を行い、CCMValプロジェクトの下で推奨されたフロン・ハロンおよび温室効果気体の将来シナリオを使ってオゾン層の将来予測実験を行いました。その結果は2006年のUNEP/WMOオゾンアセスメントレポートに掲載され、信頼性の高いモデルとの評価を得ています。2006年のオゾンアセスメントには、日本からは国立環境研究所の他、気象庁気象研究所の化学気候モデルも参加しました。

塩素によるオゾン破壊をもっとも端的に示した観測例
極渦の内部(図で南緯69度より右側)では、オゾン濃度が半分以下に減少し、逆にClO濃度が10~20倍増加している。塩素によるオゾン破壊をもっとも端的に示した観測例。

国立環境研究所では

 成層圏オゾン層の研究について、国立環境研究所では、今回紹介したモデル研究の他に実際に成層圏を観測する3つの研究が行われています。それぞれを紹介しましょう。

(1) ライダーによるオゾン層観測

オゾン層観測用ライダーの写真

 ライダーを使って1988年からつくば上空のオゾン層の観測を行っています。ライダーによって得られたデータは高度分解能がよく、晴天である限り毎晩でもデータを取ることが可能です。オゾン濃度の季節変化が高さによって異なることや、1991年のピナツボ火山爆発後のオゾン濃度の変化などをとらえることができました。得られたデータは国際的なオゾンのデータベースNetwork for the Detection of Stratospheric Change(NDSC)へ提供されました。

ミリ波オゾン分光計の写真

(2) ミリ波オゾン分光計によるオゾン層観測

 1996年10月より、ミリ波オゾン分光計を用いたつくば上空のオゾン層観測が始められました。ミリ波によるオゾン観測の特徴は、ライダーでは困難だった50km以上の高い高度のオゾン濃度が数分おきに、しかも昼夜得られることです。これによって、60kmおよび76kmの高度でオゾン濃度の半年周期の変動があることがわかり、しかもその変動のしかたがお互いに逆になっていることがわかりました。


(3) 衛星観測

ILAS-Ⅱ搭載衛星「みどりⅡ」のイメージ図

 1996年に環境庁(当時)と国立環境研究所が開発を行ったセンサーILASが搭載された人工衛星みどり(ADEOS)が打ち上げられました。ILASは1996年11月から1997年6月までの約8カ月間にわたり北極と南極のオゾン、硝酸、水蒸気、エアロゾルなどの観測を行いました。また、ILASの後継機として、ILAS-Ⅱが人工衛星みどりⅡに搭載されて打ち上げられ、2003年4月から10月まで観測を行いました。

(4) フィールド観測

 現在第48次南極観測隊に参加し、オゾンゾンデやフーリエ変換赤外分光光度計を使って、昭和基地上空のオゾンなどの大気微量成分の観測を行っています。

南極昭和基地からのオゾンゾンデの放球の写真