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コラム1「三峡ダムの偉容とその存在意義」

 万里の長城以来の世紀の大事業とされる中国・三峡ダムは1993年の着工で、2003年6月からは貯水も開始されました。膨大な水量と流れの強さから「昇り竜」と例えられた大河を舞台としたこの事業は、過去に多くの犠牲者を出してきた洪水防御が第一目的とされています。

 しかし、発展途上にある中国としては、発電、水資源、水上交通、養殖漁業などの面からもダム開発を待望する声も大きく、開発の工程は黄河にまで及ぶ巨大なものです。全長6300kmというスケールからいっても、長江の開発は「持続可能な開発」への取り組みを見きわめるには格好の存在であるといえます。ダムを挟んで上海まで続く長江流域は4億人の生活の場であり、工業や農業を始めとする中国の産業生産の約40%を担う“流域圏”です。

 ダム湖の総貯水容量は393億m3(黒部ダム湖の約200個分)で、湖水面積は約1084km2(琵琶湖の約1.7倍)、湖長は663km(ほぼ東京~姫路間)に達します。このスケールの河川から東シナ海に年間約1兆トンもの水が流入することを考え合わせると、これは海洋に限らず多くの事象も含めて広大な地域で環境変化が起こることが予測できます。

 はるか85年前に孫文が提唱した長江の「治水」の理想は三峡ダムの完成によって実現し、歴史上に多くの犠牲者を出してきた洪水被害も大幅に減少するでしょう。

 中国全体の7.5%に相当する膨大な電力エネルギー(発電量847億キロワット)も広大な国土にもたらされますが、同時にこの歴史ある国家は『三国志』ゆかりの地として世界に親しまれた張飛廟などの遺跡や自然景観の多くを2009年までに水没させてしまうことになります。この開発は中国国内でも大きな議論を呼んだ功罪が同居する国家事業なのです。

地図
三峡ダム