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自動車の環境・エネルギー対策をめぐって

 自動車によって私たちの生活が便利で快適になる一方で,環境汚染といったマイナス面もよりクローズアップされるようになりました。排ガス規制の強化とそれに伴う対策技術の進展にもかかわらず,都市部の沿道大気汚染は依然として深刻で,ぜんそくなど健康被害に苦しんでいる人はたくさんいます。また最近では,自動車を主な原因とする交通部門からのCO2排出量が年々増加していることが懸念されています。

写真:自動車

日本では

 自動車排ガスについては,昭和48年から逐次規制対象の追加や規制値の強化が行われてきました。現在は自動車から排出される窒素酸化物(NOx),粒子状物質(PM),炭化水素(HC),一酸化炭素(CO)の4つの大気汚染物質が規制対象となっています。

 最近の自動車排ガス規制については,平成8年に中央環境審議会(環境大臣の諮問機関)に「今後の自動車排出ガスの低減対策のあり方」について諮問が行われ,平成15年までに7回の答申が出され,現在も引続き審議が行われています。

 最近の主な答申の内容は以下の通りです。

1.第5次答申(平成14年4月)

  • ディーゼル自動車の新長期目標として平成17年末までに,新短期規制(平成15〜16年規制)に比べ,PMで50〜85%,NOxでは41〜50%削減
  • ガソリン自動車の新長期目標として平成17年末までに,新短期規制(平成12年規制)に比べNOxで50〜70%削減
  • ガソリン中に含まれる硫黄分の許容限度値を平成16年度末までに現行の半分の50ppm以下に低減

2.第7次答申(平成15年7月)

  • ディーゼル自動車の新長期規制(平成17年規制)以降も更なる排ガス対策を実施していくために硫黄分10ppm以下の軽油を導入

 これらの答申におけるディーゼル車とガソリン車のNOx規制の概要を図5に示しました。

 こうした自動車単体の規制に加え,大都市部ではNOxとPMによる大気汚染対策として,平成13年6月に改正された「自動車NOx・PM法」に基づき,首都圏・阪神圏・中部圏の276市町村で総量削減対策が行われています。平成14年10月からは車種規制がスタートし,NOxとPMの排ガス基準に適合しない自動車は原則として使用できなくなりました。さらに平成15年10月からは,東京都および埼玉県,千葉県,神奈川県の1都3県でディーゼル車を対象にした国よりも厳しいPMの排出規制が始まりました。

 一方,NOxやPMなどの大気汚染物質に比べ,地球温暖化の原因物質である二酸化炭素(CO2)については,現在排ガスとしての規制はありません。しかし「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)に基づきトップランナー方式の燃費基準(燃費性能において現在最良の車以上の性能にする)が定められ,燃費を抑えることによってCO2排出量を削減する取組みが始まる予定です。

図5
図5 NOx規制の推移

国立環境研究所では

 国立環境研究所では,沿道や都市大気の環境汚染の原因物質であるNOx,CO,HC等のガス状物質やPMはもちろんのこと増加の一途をたどる傾向のCO2も含め,その排出実態の解明と排出削減をめざした研究に総合的に取り組んでいます。

 温室効果ガスであるCO2は排出総量が,従来からのガス状物質やPMは排出量とともにどこで排出されたかが問題です。したがって,各々の状況に応じた望ましい技術改良や車種選択等の対策を取るために,自動車の利用状況とCO2排出量および汚染ガスの排出実態との関係を正確に把握することが必要になります。そこで実態に即したデータ収集方法の検討とデータの評価,排出実態の解明に関する研究を実施しています。

 平成13年度から開始した「車載型機器による実走行時自動車排ガス計測・管理システムの実証」(平成13〜15年)では,次のような研究を実施しています。

1.自動車に搭載可能な排ガスおよび粒子の計測装置(車載型計測システム)を用いた市街地実走行調査を行い,自動車の実際の走行状況に即した排ガス等を計測します。従来のシャシーダイナモメータ(自動車の走行を室内で再現させるための装置)で走行条件を再現した排ガス試験を実施し,それらの測定値を比較して車載型計測システムが十分な精度を持つことを検証しています。

2.自動車の使用実態に即したより的確な自動車排ガス排出量の計測・管理手法の実用化をめざしています。

3.自動車の走行動態を計測・記録する技術と排ガス計測技術を組み合わせ,走行動態と排ガス量の関係を詳細に解明することにより,局地汚染の発生機構の解明,地域の総排出量の推定,排ガス削減計画の立案,運輸事業者による排ガスの自主管理,運転者への教育・啓発等に資する一連の車載型計測システムとデータ処理技術を実用化することをめざしています。

写真
車載型計測システム

 一方,自動車から排出されるCO2に関しては,「自動車CO2排出抑制対策のための実燃費データベースの構築」(平成14年)において,携帯電話端末により全国規模4万人の自動車ユーザから収集された自己申告に基づく給油データを基に,階層構造型の自動車実燃費データベースを構築しました。これから,統計解析により乗用自動車について以下のような検証および評価を行っています。

1.自動車を所持している人の多くが経験的に感じているカタログ燃費(10・15モード燃費)と実使用時の燃費(実燃費)の違いを,型式や駆動方式,車輌重量など,それぞれの自動車の諸元ごとに検証します(図6)。

2.同じ自動車を使っていても,渋滞が多発する都市部と比較的交通が円滑な地域とでは燃費が異なってくることからわかるように,実燃費の地域(都道府県,市町村)による違いなどについて分析を行い,得られた実燃費の動向を基に自動車の燃費改善による自動車部門における地球温暖化防止対策の検討および評価を行っています。

 さらに,シャシーダイナモメータ設備を使った試験によって,運転の方法によって燃費がどれだけ変動するかの検討を実施し,同じ利用状況でありながらCO2排出の少ない運転方法の提案等をめざした研究を行っています。

図6
図6 カタログ燃費と実使用時の燃費の比較