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コラム「太陽掩蔽(えんぺい)法とILASの観測」

 太陽掩蔽法は,太陽を光源として人工衛星(ADEOS)から見た地球からの日の出,日の入り時に地球(周縁)大気を通ってセンサー(ILAS)に到達する太陽光の強度を,波長ごとに観測する手法です。輝度の高い太陽を光源としているため高精度の観測が可能となります。

 またADEOSの周回運動により,日の出や日の入り時に観測する大気層の高度は徐々に変化します。それを利用して高度分布に関する情報も得ることができ,その高度方向の解像度(高度分解能)はILASの高さ方向の視野の大きさで決まります(ILASの高度分解能は約2km)。ILASはオゾン(O3),硝酸(HNO3),二酸化窒素(NO2),メタン(CH4),亜酸化窒素(N2O),水蒸気(H2O)の6気体とエアロゾル量を観測します。大気中に含まれる各種微量気体成分は,それぞれ特有の波長の光を吸収する性質があります。その性質を利用して波長ごとの吸収の大きさからそれら個々の物質濃度を算出します。

 ADEOSは地球を1日に約14回周回します。それに伴いILASは南北両半球で,それぞれ約14回の掩蔽観測を行います。そして,同緯度上で経度約25度ずつ離れた地点(地球は自転しているため)を観測します。ADEOSは南極と北極を周回する極軌道衛星のため,ILASの観測緯度範囲は,年間を通して両半球の高緯度域になります。

 なお,ILASの後継センサーであるILAS-IIは,オゾンを直接破壊する活性塩素を貯蔵する物質として重要な硝酸塩素(ClONO2)の観測や高度分解能の向上(1km)など,機能の強化が図られています。

成層圏の観測は高さ約250m間隔で時間にして約20秒間の観測時間
この図は太陽掩蔽法を分かりやすく説明するための模式図です。実際,この手法で測る230kmは,地球の直径の55分の1の長さに過ぎません。