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付 録

ダイオキシンの毒性

TCDDは、1960年代にベトナム戦争で大量に使用された枯葉剤に不純物として混入し、奇形や不妊の原因となる可能性が指摘された化学物質である。TCDDと近縁の構造をもち、TCDDと同じメカニズムで毒性を発揮する一群の化合物を総称してダイオキシン類とよぶが、日本でも1970年代までは農薬の成分として多量のダイオキシン類が環境中に放出されていたことが報告されている。環境中に放出されたダイオキシン類は食物連鎖を通してヒトが摂取する食物を汚染し、ヒトの体内に取り込まれる。ダイオキシン類は分解されにくく、特にヒトでは半減期が長いことから、一旦体内に入ると次第に蓄積する性質をもっている。ダイオキシン類を含む農薬が規制され、また少量ではあるがゴミ焼却場の排ガスから環境中に排出されてきたダイオキシン類も規制されたことによって、現在わが国では食物のダイオキシン汚染も軽減している。しかし動物実験で低用量のTCDDがさまざまな悪影響をもつことが報告され、ダイオキシンの毒性について動物種特異性や臓器・細胞特異性、影響を受けやすい時期の特異性など未解明な部分も多いことから、その悪影響については注意が必要であろう23)

TCDDはarylhydrocarbon receptor (AhR)を活性化することによって毒性を発揮することがAhR欠損マウスを用いた実験で証明されている。TCDDは、細胞質に存在する転写因子AhRと結合することによってAhRを活性化し核移行を誘導する。核に移行したAhRは転写因子ARNT (arylhydrocarbon receptor nuclear translocator)とヘテロダイマーを形成し、CYP1A1をはじめとする種々の遺伝子のエンハンサー領域に存在するxenobiotic responsive element (XRE)に結合して、遺伝子発現の誘導や調節を行う24)。その結果、生体に種々の悪影響を及ぼすと考えられている。

図  ダイオキシンは転写因子Arylhydrocarbon receptor(AhR)を活性化して毒性を発揮する

参考文献
23)野原恵子 (2006) ファルマシア 42, 700
24) Fujii-Kuriyama, Y., and Mimura, J. (2005) Biochem. Biophys. Res. Commun. 338, 331.

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