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第1セッション・講演「塩化メチルを介した大気−生物圏相互作用を探る−森から出るオゾン層破壊物質」

講演者(横内陽子)による回答

Q: 塩化メチルはオゾン層破壊にどの程度寄与しているのですか。フロン換算すると、どの程度の割合になるでしょうか。

A: 塩素による成層圏オゾン破壊への寄与率はフロン類(フロン11、12 、113の総和):62%、四塩化炭素:12%、トリクロロエタン:4%、代替フロン:5%、塩化メチル:16%、その他:1%です(2000年時点、WMO2002による)。従って、塩化メチルの効果はフロン類の1/4に相当しています。


Q: 講演内容に関する公表文献を知りたい。

A: "Y. Yokouchi, et al.,, Nature, 403, 295-298(2000) および Y. Yokouchi, et al., Nature, 416, 163-165 (2002)"をご参照いただければと思います。


Q: 沿岸海洋の海草または海藻からの塩化メチルの放出はないのでしょうか。

A: プランクトンや海草などが塩化メチルを放出する例も報告されていますが、陸域の発生量よりもずっと少量です。


Q: 塩化メチルの発生場所として、島、島の周辺の沿岸、外洋のいずれが重要なのかを確認したい。

A: 講演では、沿岸部も含めて海洋ではなく、熱帯域の島に塩化メチルの大きな発生源があることを示すデータを紹介しました。


Q: 新規性・意外性の点で興味ある内容でした。フタバガキなど以外の他の植物を調べれば、塩化メチル放出を支配する要因が明らかになるのではないでしょうか。

A: 今後、より多くの植物を調べる予定です。


Q: 塩化メチルによるオゾン破壊を食い止めるためにはどうしたらよいですか。塩化メチルを出さないシダを作ったり、塩化メチルを大量に放出する大木を伐採する必要がありますか。

A: 塩化メチルによるオゾン破壊は古代から続いているもので、それによってあるバランスが保たれてきたと考えられます。近年のオゾンホールなどの問題は人類が新たに放出したフロンなどによって引き起こされたものであり、その放出をなくすことが重要です。自然起源のものについてはその役割を全て理解しているわけではないので、現在の環境を保つためには自然生態系を変えない(従って、大木を切ったり、塩化メチルを放出しないシダを作ったりしない)ことがベストです。ただし、人類が自然環境そのものを変えてしまって、その結果、塩化メチルの自然放出量を大きく変動させることがないように注意を払って行く必要があります。


Q: 森林火災による塩化メチル放出を0.4Tg/yearとされていましたが、この数値はどのようにして求められましたか。

A: 森林火災による二酸化炭素排出量のデータベースおよび燃焼時に塩化メチルと二酸化炭素が発生する割合に関する文献値を用いて計算しています。


Q: 昼と夜(日光の影響)はいかがですか。ClがNaClからとすればNaはどうなるのでしょうか。

A: シダ類からの塩化メチル放出速度に昼夜の差は見られません。塩化メチルの原料である塩素は塩化ナトリウムのような塩類によって供給されている可能性が高いと思われますが、残りのナトリウムなどカチオンの行方も含めて今後の研究を進めたいと考えております。


Q: 最後の「大気化学と生物圏両方を考慮した研究」に興味を持ちました。これまでは化学反応を中心としたモデルが主だったと思いますが、これに塩化メチルを発生させる植物の分布などを考慮したアプローチは行われていますか。また、熱帯の森林破壊による放出量の増減などはわかっているのでしょうか。

A: 講演でも紹介しました塩化メチルの分布に関する3次元モデルでは森林の分布などを考慮しています。後の質問につきましては、これまでのところ熱帯林の破壊による塩化メチル濃度の変動は検出しておりません。森林火災によって発生する塩化メチルが増えて、減少分をキャンセルしていることも一因かもしれません。いずれにせよ、大気中塩化メチル濃度の変化が明白になるほどに森林破壊が進む事態は是非とも避ける必要があります。


Q: 塩化メチルを植物が放出する原因の1つの可能性として、海塩(水)の害を避けるための自己防御を挙げていましたが、なぜ一部の種類の植物で、その機能が顕著なのでしょうか。また、切り離した葉からもかなりの塩化メチル放出がみられるということでしたが、塩(Cl)が葉に蓄積しているということなのでしょうか。

A: 植物が塩化メチルをなぜ放出するか、どのようなメリットがあるかについてはまだ何の研究も進んでいないので、可能性を検討している段階です。ご指摘のような点も考慮して今後研究を進める予定です。また、一般に植物の葉には塩素が相当程度蓄積されています。


Q: 塩化メチルを植物が出しているとすると、表面に付着した微生物の働きによるものですか。原料となる塩素化合物は根と葉のどちらから入るのですか。

A: 植物が塩化メチルを出していることがようやく分かった段階で、生成メカニズムの解明はこれからの課題です。


Q: 木性シダは起源が古く、フタバガキは起源が新しい植物ですが、それらが塩化メチルを多く放出しているということについて何か考えがあれば教えてほしい。

A: 現段階では、木性シダ類とフタバガキ類の間に特別な類縁関係を見出しておりません。共通項を見つけるためには、より多くの塩化メチル放出植物を見つけ出すことが必要だと思います。


Q: 土壌による塩化メチルの吸収として0.3Tg/yrという値が表中に示されましたが、そのメカニズムや土壌による違いについて知りたい。

A: 文献値ですが、メカニズムや土壌の違い等に関する報告はありません。

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