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第3セッション・講演「環境浄化技術−植物で何ができるのか?−」

講演者(中嶋信美)による回答

Q: エチレン分成を抑えることで葉の老化を抑えるということですが、エチレンは接触傷害や病原菌傷害の耐性に関わる植物ホルモンであることを考えると、この植物がそれらのストレスに弱くなるということはないのでしょうか。もしそうならば、結局環境中での生存率が悪くなりオゾンの吸収効率が上がらないのでは‥と思ったのですが。

A: 本研究で用いた方法ではオゾンによるエチレン生成を完全に抑制してはいないので、接触刺激や病原菌感染に対する応答は正常のままでした。


Q: 遺伝子組換植物は元々自然界にはないものを人がつくり出したものと思うが、目標とする機能を研究することが目的で、基本的な安全性の確保に関する確認手段、体制、基準はどうなっているのでしょうか。特に大豆、トウモロコシ等は市場に出ているが本当に大丈夫でしょうか。

A: 発表の終わりの方でも述べたように、私たちは遺伝子組換え体が生態系へ与える影響についても研究を進めています。組換え体を野外で利用する前に、在来種と交配して組換えに用いた遺伝子が拡散しないかどうかを検討した上で利用するべきだと考えています。また、ご指摘のトウモロコシやダイズについては現在、本研究所で生態系への安全性について再検討を行っているところです。


Q: 組換え体の屋外での他の植物への遺伝子汚染について、組換え体の花粉飛散をなくすための雄性不稔化利用については検討されているのでしょうか。

A: 雄性不稔の遺伝子を用いた組換え体は既に作成されています。しかし、雄性不稔の遺伝子を組み込んでしまうと、組換え体として利用できるのが、当代限りとなるので(だから安全なのですが)組織培養で増やす必要がでてきます。従って観賞用の花など、単価が高いものに限られています。ただし、挿し木で増やせる樹木には有効だと思います。


Q: Bis-Aが配糖体になると吸収が促進されるメカニズムがわからない。濃度こう配にしたがって拡散移行するということ。あるいはトランスポーターが関与、PCBのような、よりkowが低い物資を吸収させるストラテジーを何か考えているのでしょうか。(吸収すればP450を使うという手が考えられるが、そもそも吸わない、という点がネックとなっているので)

A: ご指摘のとおりだと思います。BPAは濃度勾配に従って、受動輸送的に細胞内に入り、配糖体となって葉へ輸送されるので、根のBPA濃度が低下して、外部からBPAが入り込んで来るのだ考えています。


Q: 重金属を吸収しやすい植物の改良等についても研究されていますか。研究されていれば概要を知りたい。

A: 私どもの研究室では重金属を吸収させる研究は行っていません。重金属を植物に吸収させる研究は実用化段階に入っていて民間企業等で盛んに行われています。インターネットで検索するとたくさんヒットします。そちらを見ていただければ概要がわかると思います。


Q: 遺伝子組換え技術を利用した植物を用いて環境浄化技術に大変興味を持ちました。しかし、その植物を食した昆虫、微生物等が突然変異して有害化する可能性はないのでしょうか。

A: 食した昆虫や微生物がビスフェノールAを吸収した植物を食べて、消化し配糖体を元のビスフェノールAに戻す可能性があります。しかしビスフェノールAには変異源性はないので極端な有害化は起こらないと考えられますが、元に戻ることによって生物濃縮がかかる可能性があります。従って、組換え体は適切処分する必要があるでしょう。


Q: ビスフェノールAの配糖体は加水分解すれば元に戻るのではないでしょうか。とすれば食べた動物は勿論、落葉による土壌汚染の問題は残るのではないでしょうか。ポスターセッション10、「ホルムアルデヒド」は刺激の強い物質ですが、その人体に対する影響はどうでしょうか

A: 同上


Q: (1)遺伝子組み換えによる植物はphytoremediationとして使えるのか。生態系の影響がわからないならば使うべきでないと考えます。「遺伝子の汚染は分解されない」と結論づけた五箇さんと相反する主張であるように思えるのですが。(2)植物群として実際ら使用する場合、実験室のように吸収されるとは当然考えにくい(実験室では植物は無理やり吸収させられているためなど)。さらに気孔による吸収は他の要因に影響を受けやすいなどphytorediationとして実際に使える展望はあるのでしょうか。

A: (1)私も生態系への影響を十分評価し、利用した場合のメリットとデメリッを比較した上で利用するべきだと考えています。なお、五箇の主張は「環境への影響をまったく考慮せずに、単に人間の購入意欲を満たす目的で、野生種を輸入することは慎むべきである。」であると思います。従って私の主張とは矛盾しません。(2)野外では汚染物質が土などに吸着しているので、それを溶かす処理が必要です。水に溶けてしまえば、実験室と同じような吸収を示します。このことは重金属を吸収させる研究で証明されています。ビスフェノールAは水に溶けやすいので水に溶かすための処理は不要で、野外でも実験室と同じように吸収してくれると考えていますが、実証試験はしていないので明言はできません。実際に使えるかどうかについて、現時点ですぐに実用化することは難しいでしょう。だからといって研究をやめてしまうと新しい技術は生まれません。すぐに実用化できる研究は企業が莫大な資本を投じて取り組むので、我々は太刀打ちできないし、無理矢理参入すると民業圧迫になりかねません。政府所管の独立行政法人研究所の研究対象は、大学で進められている基礎研究を実用化の一歩手前まで進めることにあると考えています。こういう観点で見るとphytoremediationは国立環境研究所が取り組むべき研究であると考えています。


Q: オゾンによる葉の傷害について、植物ホルモン(SA、JA‥など)で他にも関与しているものもあるかと思うのですが、他のホルモンに関してもオゾンの吸収をつよめる遺伝子組換え植物というものについては検討されているのでしょうか。

A: もちろん検討していますが、SAやJAがオゾンによる可視障害発生に関与していることはシロイヌナズナでしか証明されていません。植物種間でメカニズムに違う可能性が高いので、もう少し詳しく調べてから取り組みたいと考えています。


Q: (1)B-D-gloucoxide以外にも配糖体としての抱合代謝物が生成し、抱物間種点がみられるはずです。すべて同一抱合体はおかしいのではないでしょうか。(2)肝ミクロゾームでは分解しませんが、腸内物菌で抱合体はもとのビスアェノールにもなりますので、Q&Aでの回答では不充分でした。

A: (1)ビスフェノールAの代謝産物についてはタバコとユーカリの培養細胞でしか確認されていません。両者とも同じものですが、その他の種では異なる可能性もあり、今後調べてみたいと思います。(2)ご指摘のとおりですが、腸に到達する前にビスフェノールAの配糖体はそのほとんど粘膜から吸収されて血中へ以降し、尿へ排泄される可能性が高いのではないかと考えています。ただし、調査結果はないので断定はできません。今後の検討課題です。


Q: 遺伝子組換え植物の例であった、ビスフェノールAを吸収、配糖体への代謝、蓄積した植物を回収するというお話がありましたが、回収後その植物はどのように処理されるのでしょうか。環境ホルモンの値も極めて低いものとなる、とありましたが、これからの技術が実跡のものとなったら、その回収する植物の量もかなりの量になると思うのですが、処理時に環境へ影響を及ぼすというようなことはでないのでしょうか。

A: ダイオキシンの出ないような焼却炉で焼却するのが一番良いと思います。


Q: 生物学的封じ込めが必須とのことでしたが、特に光化学オキシダント分解など、比較的広範囲に植栽しなければ施用の効果が見られないと思いますが、いかがでしょうか。

A: 実際に野外で利用する時には花粉を作らないように遺伝子操作した樹木へ目的の遺伝子を導入し、組換え体は挿し木で増やすようにすべきであると考えています。


Q: 遺伝子組み換え体の使用については、カルタヘナ条約でいろいろ規制がかかっているはずですが、実用化については実際の現場で使用することを想定しているのですか。それは現実的に可能でしょうか(技術ではなく規制の面で)。

A: カルタヘナ条約は輸出入に関する規制をする条約です。国内で開発した組換え植物は現在のところ農産物として利用する場合にしか規制がありません。生態系への影響を十分評価し、さらに上記のような対策をとったうえで利用すれば実用化は可能だと考えています。


Q: エチレン発生抑生遺伝子→具体的に街路樹への応用を考えて下さい。

A: 現在、森林総合研究所の研究者と共同研究を行い、樹木で同様の組換え体を作成しているところです。


Q: BPA配糖体が人間や動物に直接環境ホルモン作用は弱いにしても体積され、環境中に放出されたせ加水分解されBPAに戻るのではないでしょうか。BPA等を濃縮した葉等は最終的にどのような処理を考えておられますか。

A: BPA配糖体を食した場合上記にあるように、体内にはとどまらずそのまま尿として排泄される可能性が高いと思います。ただし、調査結果がないので断言はできません。回収した葉は焼却処分が適当と考えています。


Q: (1)ビスフェノール吸収植物の件で、葉に吸収されたあとはビスフェノール残存量はゼロになるのでしょうか。(2)残存するのであれば葉を食べる鳥などの食物連鎖で動物中に蓄積されるのではないでしょうか。

A: ビスフェノールAとしては残っていません。時間がたつとすべていくつかの代謝産物へ変換されます。発表した配糖体以外の代謝産物の構造は現在研究中です。ご指摘のような食物連鎖による代謝産物の濃縮がおこる可能性はありますが、調査したデータはありません。ですが、ほ乳類は独自のビスフェノールA排泄機構をもっているのと、配糖体の膜透過性から考えて、上記にも書いたように、蓄積は起こらないと思います。ほ乳類以外でどうなるかは調査結果がないので不明です。


Q: ビスフェノールAを吸収した植物を昆虫などが食べた場合、その昆虫又は生物濃縮して人に影響を与えることはないのでしょうか?

A: 同上


Q: ビスフェノールAの吸収能が高い植物がアブラナ科であったということに興味を持ちますが、なぜアブラナ科なのかという点についてお考えがあれば教えて下さい。

A: 植物のビスフェノールAの吸収速度は、基本的には吸水速度に依存します。これは根がビスフェノールAと接触し速やかに拡散平衡に達し、その後は水と一緒に移動するということを意味します。ところが、ビスフェノールAを配糖体にする酵素(BGT)の活性が非常に高いと、吸収されたビスフェノールAがすぐに配糖体になるため細胞内のビスフェノールA濃度が常に低濃度に維持されます。その結果拡散による組織への移行が早くなると考えられます。従って、BGT活性の高いアブラナ科の植物はビスフェノールAを吸収する能力が高くなると考えられます。

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